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八条学園騒動記

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第三十三話 動物以下その三


「豚骨だ!そうだな!」
「ええ、間違いないわ!」
「二人共それネタかい?」
 店長がラーメンを捌きながら呆れた顔でカウンターで騒ぐ二人を見ている。
「これトリガラだよ」
「何っ!」
「嘘よ!」
 テンボとジャッキーはそれを否定する。しかし店長はそんな二人に対して言う。
「スープの色見てみなよ」
「スープの色」
「そうさ。黒っぽいだろ?それ見てわからないか?」
「いや、全然」
「あたし達は味で確かめているから」
 二人は平気な顔をしてそう述べてきた。店長は味と言われてさらに呆れてしまった。
「これの何処が豚骨なんだい。あんた達本当に冗談でやってないかい?」
「いや、全然」
「トリガラなの、これ」
「そもそもスープが白いでしょ、豚骨は」
 店長は言う。周りの客達も呆れ果てている。二人は何とスープの色で区別がつけられないのだ。今まで白いスープをトリガラと言ったこともあればその逆もあったのだ。非常に困ったことに。
「わからないの?」
「そうだったのか」
「そうだよ」
 店長はテンボに対して述べる。
「全く。味も全然違うし」
「ううむ」
「まあいいや。で、味の方はどうだい?」
「美味しいわ」
 ジャッキーが答えてきた。
「すっごく」
「ならいいけれどね」
「美味かったから今度は豚骨をくれ」
 テンボは言う。
「俺の灰色の脳細胞に刺激を与える。だからこそ」
「あたしも」
 ジャッキーも豚骨ラーメンを頼んだ。
「大盛りね」
「じゃあ俺も大盛りだ」
 二人は同じものを頼む。
「すぐにくれ」
「いいかしら」
「おうよ。じゃあ待ってな」
 暫くしてとんでもない大きさの丼に入れられた豚骨ラーメンが前に置かれた二人はそれに胡椒をかけて凄まじい速さで食べていく。それが終わってからお金を払って店を出るのであった。店を出た時には、いや店に入る時には彰子の頼みは完全に忘れてしまっていた。彰子のことすら忘れている。
「美味かったな」
「そうね」
 二人は店の出口でそう話をする。
「店長さんもいい人だったし」
「あれが豚骨ラーメンか」
 テンボはすぐに忘れるに決まっていることを呟く。
「美味かったな」
「そうね」
 ジャッキーもそれに頷く。それで綺麗さっぱり忘れてしまった。
「じゃあ学校に帰るか」
「ええ。それにしても」
「何だ?」
「また刺激が欲しくなってきたわね」
 ジャッキーはにこりと笑って言った。
「一旦部室に戻りましょう。話はそれからよ」
「ああ、わかった」
 二人は部室に戻る。推理小説やDVDが山のように置かれている。テレビもある。そうした映画研究会の部室と言っても通用する場所に一匹のオオウミガラスがいた。
「やあマーフィ」
「カァ」
 マーフィと呼ばれたオオウミガラスはテンボに挨拶をしてきた。
「留守番してくれているのか。悪いな」
「カァ」
「うんうん、流石は推理研究会の名誉部員」
 どうやら部員でもあるらしい。
「頼りにしてるわよ」
「それでさ、ジャッキー」
 テンボはふと思い出したように言った。
「そろそろ午後の授業だぞ」
「あっ、もう」
「ああ。そろそろ教室に戻るか」
「そうね。ねえマーフィ」
 ジャッキーはマーフィにも声をかけてきた。
「来る?あたし達の教室に」
「カァカァ」
 その言葉に頷く。彼は二人の後についてS1組の教室に向かったのであった。 
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