八条学園騒動記
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第二百二十一話 ニホンオオカミその八
「ちょっとだけれどね」
「じゃあ止めますか?」
「それもね」
ここでまた言う彼女だった。
「何ていうか」
「嫌なんですか」
「恥ずかしいけれど。それでも」
こう彼に話す。
「欲しかったりするし」
「何か矛盾していません?」
「それでもよ」
「それでもですか」
「ええ、プレゼントよね」
ここで彼の顔をじっと見る。彼女から見れば実に整った顔だ。
「私への」
「勿論そうですよ」
「女の子はね」
また女の子という全体枠にして自己弁護めいて話す。
「あれなのよ。付き合ってる子からのプレゼントはね」
「そのプレゼントは?」
「何でも嬉しいのよ」
こう話すのだった。
「そう、何でもね」
「そうなんですか」
「少なくとも私はそうだから」
何だかんだで逃げられずこう話す。
「だからね」
「わかりました。それじゃあ」
「そういうことだから。それでだけれど」」
「はい」
「私もよ」
ナンシーは純粋な微笑みになって話した。
「それはね」
「それはっていいますと」
「私もプレゼントは好きよ」
そうだというのである。
「贈り物をするのはね」
「先輩もですか」
「ええ、そうなのよ」
こうナンシーに話す。
「それはわかっておいてね」
「じゃあ」
「今度のデートの時」
後輩の顔をにこりとして見ながら話す。
「何がいいかしら」
「僕はですね」
「ええ、貴方は?」
「先輩が僕にくれるものなら何でも」
目を輝かせての言葉だった。純粋な瞳でナンシーを見ながらだ。そういてそのうえで彼女に対してこの話をするのであった。
「嬉しいです」
「そうなのね」
「はい」
これが彼の返答だった。
「本当に先輩がそうしてくれるものなら」
「わかったわ。けれどね」
「けれど?」
「何でもいいって言われるとね」
困った笑顔になって話すナンシーだった。
「少し困るわね」
「そうなんですか」
「だって。色々とあるじゃない」
「ものはですか」
「そうよ。だからね」
後輩に対して話す。
「それでなのよ」
「そうですか」
「何か欲しいものがわからないと。何をあげていいのかね」
「わからないからですか」
「そうよ。そういうこと」
それでだと話すのだった。
「だからね。そういうことを言うのは止めて」
「わかりました」
後輩も彼女のその言葉に頷いた。
「それじゃあ」
「ええ。それにしても狼ね」
ナンシーは狼の話に戻してきた。
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