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八条学園騒動記

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第二百十七話 イエロージャナリズムその八


「それでもね」
「それでも?」
「完璧な選手っていないから」
 彼女が今言うのはこのことだった。
「だから欠点があってもね」
「そうだね。普通だよね」
「力があってバットに当てるのも上手い」
 まずはその打撃を振り返る。
「守備がよくてしかも肩も強い」
「ここまでは完璧だね」
「けれどよ」
 ここでまた言うナンシーであった。
「完璧な選手はいないのよ」
「そして完璧な人間もね」
「そう、いないから」
「じゃあその選手の欠点は」
「今からそれを見ることにもなるわね」
 ナンシーは言った。
「ポジションは基本的にレフトだそうだし」
「レフトなんだ」
「守備はいい筈なのに」
「ということは」
「何かの問題があるのよね」
 ナンシーはジョルジュも加えてそうして考えていく。
「やっぱり」
「守備と肩はいいんだよね」
「ええ」
 それはその通りだと返す。
「そうなのよ。どっちもね」
「じゃああれだよね」
「あれって?」
「足だね」
 ジョルジュが言うのはこのことだった。
「足だよ。そのスターって選手は足が遅いんだよ」
「そうなるのね」
「だってさ。守備も肩もよくて」
 ジョルジュもこのことを頭の中に入れて話す。
「それだったらセンターとライトだよね」
「ええ、どっちかだよね」
「もっともブラックソックスの他の外野陣の守備の都合もあるけれど」
「あのチームのその外野だけれど」
 ナンシーはそちらの話もする。
「相当レベル高いらしいわね」
「相当なんだね」
「そうなの。鉄壁の守備だって話よ」
「それでレフトっていうと」
 ジョルジュはナンシーの話を聞いてそのうえで頭の中で考えていく。そうしてそのうえでだ。一つの答えを出したのであった。
「足が遅いとかしか考えられないね」
「そうなるわよね、結局は」
「野球の外野の守備はね」
 ジョルジュも野球についてはまんざらではない。むしろ知識はかなりのものだ。そしてその戦略についても話すことができた。 
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