八条学園騒動記
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第二百十七話 イエロージャナリズムその七
「それに僕もそこまでは興味がないし」
「若し興味があったらね」
「うん、その時は?」
「ただじゃおかないから」
本気の言葉だった。
「わかってるわね」
「ううん、物騒だねそれって」
「当たり前でしょ。そんなの知られたら絶対にね」
「嫌?」
「嫌に決まってるじゃない」
ナンシーの言葉は実に頑ななものだった。
「そんなのばれたら」
「彼氏いるのそんなに恥ずかしい?」
「恥ずかしいわよ」
顔を真っ赤にさせたままの言葉だった。
「恥ずかしいに決まってるじゃない」
「だからそんなに言うのがさ」
「何だっていうのよ」
「余計に駄目なんじゃないかな」
ジョルジュはその首を少し傾げさせてそのうえでナンシーに話した。
「大体ナンシーってあれだよ」
「あれって何よ」
「頑固っていうかね」
まずはそこから話した。
「素直じゃないし」
「そうかしら」
「そうだよ。クラスでもそうじゃない」
彼等のクラスでの話もするのだった。
「いつも口ではあれこれ言っても皆をフォローするよね」
とにかく素直ではないのがナンシーなのである。しかしそれでもである。皆が困ると絶対に助けるのが彼女の常なのである。
「誰かが困っていたらね」
「それは」
「そうだよね。そういうのがね」
「駄目だっていうの?」
「だから素直じゃないよね」
ジョルジュはナンシーのそうしたところを言う。
「それってどうなのかな」
「別にいいじゃない」
当のナンシーは口を尖らせて言い返す。
「だって。そのまま言うのって」
「恥ずかしい?」
「それはまあ」
「けれどそうやってもじもじしたり赤くなったりするとね」
「余計に悪いっていうのね」
「そういうこと。これは言っておくよ」
「話は聞いたわ」
一応はこう返した。しかしその口は尖ったままだ。
そしてその尖った口でだ。ジョルジュに返した。
「それじゃあだけれど」
「うん、行こうか」
「行くわよ」
こう彼に言う。
「いいわよね、それで」
「っていうか行かないと話にならないよね」
「取材だからね」
それは忘れていないナンシーだった。それはであった。
「それじゃあ行きましょう」
「やれやれ。ランニングの相手を追っかけるなんてね」
「待っていても何にもならないわよ」
こうしたことには直線的なナンシーであった。人間関係については曲線的であってもこうしたことには本当にそうであった。
そしてだ。彼女はまた言うのであった。
「だから行きましょう」
「わかったよ。それじゃあね」
「外野手だけれどどんな感じなのかしら」
ナンシーは自転車に乗りながらその取材の相手について考えていた。
「一体」
「スラッガーだったっけ」
「スラッガーでもありアベレージヒッターでもあるみたいよ」
「バッティング凄いんだね」
「それで守備もいいそうよ」
「ふうん、そうなんだ」
「強肩で。ただ」
しかしであった。ここでだ。
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