八条学園騒動記
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第二百十七話 イエロージャナリズムその一
イエロージャーナリズム
ナンシーは新聞部員である。それで色々な記事を書いている。
「八条スポーツ相変わらずだな」
「ああ、無茶苦茶な記事だな」
「今度は宇宙人かよ」
記事の一面に宇宙人の話が出ていた。
「この前は学校にメロンが手足を生やして歩き回っていたって記事だったしな」
「ジャックランタンまんまのくり抜きの顔のメロンがなあ」
「小さい手足を生やして」
ここで過去の八条スポーツが出た、見ればそこにそのメロンの化け物が出ていた。確かにジャックランタンの顔のメロンに小さな手足がそのまま生えている。漫画に出て来るようなものだ。
そしてだ。今日の一面はだ。
「ううん、エルビス星人?」
「何、今度の宇宙人って」
「一体」
「ああ、それね」
ナンシーがここで話す。
「それM八五星雲にいるのよ」
「何処、そこ」
「M八五星雲って」
皆まずそこから突っ込みを入れた。
「はじめて聞く場所だけれど」
「そこ何処なのよ」
「宇宙にあるの?」
「そうよ。光の国の向こうにあるのよ」
こう話すナンシーだった。
「そこから来た宇宙人なんだよ」
「ううん、そんなのいるんだ」
「宇宙って広いな」
「本当にね」
皆まずはその話を聞いた。一応はである。
「それで何?」
「何で連合に来たの?」
「侵略?それとも使節団?」
「何でなの?」
「ああ、観光なのよ」
それだというのである。
「それで来たのよ」
「観光って」
「何か拍子抜けするなあ」
「宇宙人なら侵略じゃないの?」
「ねえ」
皆ここで力が抜けた声でナンに問い返す。
「やるとしたら」
「それで観光って」
「何か違うんじゃないの?」
「侵略って。連合で侵略ってある?」
だがナンシーはその皆にこう返すのだった。
「今時」
「ないけれどね」
「だって。侵略しなくてもいいものは一杯手に入るし」
「お金さえあれば」
「開拓すれば」
連合はまさにそうした社会である。それだけで手に入るのである。
「じゃあそのメトロン星人も?」
「キュラソ星人じゃなかったっけ」
「エルビス星人よ」
訂正を入れるナンシーだった。
「エルビス星人だって同じよ。だから観光で連合に来たのよ」
「この青い肌で派手な服の人がね」
「リーゼントの」
見ればである。外見はあの伝説の歌手エルビス=プレスリーそのままである。それに青い絵の具を塗ったような。そんな姿であった。
「宇宙人なんだ」
「成程ね」
「わかったでしょ」
こう返すナンシーだった。
「これがそのエルビス星人よ」
「どっかで見た宇宙人だけれどな」
「第三演劇部の二年のカワッセじゃないの?これって」
「あっ、確かこの顔って」
「あいつだよね」
皆正体を見破った。
「あいつだよな」
「スタイルといい顔といい」
「絵の具塗っててわからないけれど」
「あいつじゃない」
「気のせいよ」
こう言い切るナンシーだった。
「そんな筈ないじゃない」
「いや、これってな」
「そうよね」
「やっぱりカワッセだし」
「見れば見る程」
「宇宙人なのよ」
ナンシーはどんなに劣勢になっても力説する。
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