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対決!!天本博士対クラウン

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第四百二十九話


              第四百二十九話  相変わらずの博士
 博士はこの日もだ。危険な薬を開発していた。それを見てである。小田切君は尋ねた。
「今度は何の薬を開発されてるんですか?」
「うむ、農薬じゃ」
「農薬ですか」
「撒けばそこには二百年は草木が生えぬ」
 博士は平然として言う。
「そうした農薬じゃ」
「思いきり悪魔の薬ですね」
「これを空から撒布する」
 完全にテロである。
「そうじゃな。あのならず者国家にまた撒いてやろう」
「博士って絶対にあの国で実験しますね」
「わしは普通に働いている人間には何の興味もない」
 理由は簡単でだ。面白くないのである。博士の行動の基準は多分に面白いか面白くないかが関係している。興味の湧かない相手には何もしないのである。
 それでだ。興味のある相手はというと。
「ヤクザ者やゴロツキといった連中にはじゃ」
「興味があるんですね」
「気に入らぬという意味で興味がある」
 そういうことだった。
「だからじゃ。あの究極のならず者国家に対してはじゃ」
「その二百年ものの農薬を撒布するんですね」
「撒けばそれで作物は壊滅じゃ」
「壊滅ってどれ位の作物がやられるんですか?」
「百パーセントじゃ」
 つまり撒けば本当にそこの作物が見事に死んでしまうというのだ。
「そうなってしまう。よいじゃろ」
「蝗よりも酷いですね」
「無論そこにおる害虫は生き残る」
 そうした意味で農薬ではなかった。農薬とは害虫に対するものだからである。
「さらにその害虫共が凶暴化して大型化する」
「で、その害虫が人を襲うんですね」
「食い殺していくぞ」
「何か恐ろしい農薬ですね」
 作物を殺し害虫を生かす。まさに究極の農薬だ。
「さて、開発が終わったら撒くぞ」
「あの国の上空からですか」
「そうしてやるわ」
 こうした話を平然としていく。かくしてだ。
 博士はその悪夢の農薬を開発した。それはどういったものかというと。
 ゴポゴポと沸騰し白い蒸気を出した黒い液体だった。フラスコが溶けないのが不思議だ。
 その農薬を見てだ。博士は楽しげに笑う。
「さて、完成じゃ」
「九時にはじめて十一時半に完成ですね」
「発明にも開発にも時間はかけぬ」
 博士は天才なのでそうしたことはする必要がないのだ。
「では後はじゃ」
「どうして撒くんですか?」
 小田切君はその撒布の仕方を尋ねた。それをどうするかが肝心だった。農薬はただ開発して終わりではないからだ。撒かなくてはならないものだからである。


第四百二十九話   完


                  2011・10・12 
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