対決!!天本博士対クラウン
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第二百八十一話
第二百八十一話 博士の贔屓
「わしの好きな球団はじゃ」
「そういえば博士巨人嫌いでしたね」
「うむ。大嫌いじゃ」
こうした話もするのだった。博士も一応、いやかなり疑わしいが人間である。従ってその嗜好も存在しているのである。それは野球にも反映されているのだ。
「存在自体がな」
「そこまで嫌いなんですか」
「巨人ができた頃から嫌いじゃ」
「そこまでなんですか」
「そうじゃ、とにかく嫌いで嫌いでのう」
博士の言葉は続く。
「あのドームを一度派手に吹き飛ばしたいと思ったのじゃ」
「一度ですか?」
「思い続けている。だから一度じゃ」
言葉は言い様である。確かに思い続けているのなら一度だ、そうした意味において博士は一途な人間であると言えなくもないのだ。
「一度なのじゃ」
「そういうことですね」
「わしはまあ中日が好きじゃな」
「中日ファンだったんですか」
「杉下が好きじゃ」
かつて中日を日本一に導いた大エースである。そのフォークボールはあまりにも有名だ。ただしそのフォークはあまり投げなかった。
「星野も好きじゃ」
「漢が好きなんですね」
「まあのう。それで巨人じゃが」
「はい、その大嫌いな球団ですね」
「吹き飛ばしたらどうじゃろうか」
また話が物騒な方向に向かう。
「ドームごとな」
「別にいいんじゃないですか?」
小田切君の今度の返答は素っ気無いものだった。
「それは」
「今回は止めんのか」
「僕も巨人嫌いですし」
だからだというのである。返答が素っ気無い理由もここでわかった。
「甲子園に何もしなければ」
「わしは甲子園には何の興味もない」
破壊活動が趣味の博士にとっては意外な言葉だった。
「むしろ高校野球が見られるいい場所じゃ」
「いい場所ですか」
「そうじゃ、いい場所じゃ」
また言う博士だった。
「あそこには何もせん」
「それは何よりです」
「うむ、それではじゃ」
「それでは?」
「一度あのドームを吹き飛ばすか」
巨人関係にはその破壊という趣味を平気で示す。
「カイザージョーかエンペライザーでも送ってな」
「ガメオもいいんじゃないですか?」
「悪くないのう」
「そうですね」
こうして何気に博士の次の活動がはじまった。そしてであった。
第二百八十一話 完
2010・4・19
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