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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百四話 崩壊の大地

                第百四話 崩壊の大地
   「全ては今話した通りだ」
クルーゼはミネルバ隊の者も入れた主立ったパイロット達をヴェサリウスの作戦室に集めて話をしていた。
「シホが負傷、ハイネが機体を中破、そして彼も負傷だ」
「本当ですか!?」
それを聞いてルナマリアがクルーゼに問うた。
「シホとハイネが」
「そうだ。二人共命に別状はないがな」
「そうですか。まずは何よりですね」
ニコルはそれを聞いてまずは安心した。
「だが。シホの傷は思ったよりも深かった。彼女は一時プラントに戻ることになった」
「そうですか」
「ハイネは暫く動けない。彼の機体もな」
「二人がいないのは。戦力的に厳しいですね」
レイがそれを聞いて言った。
「その穴をどう埋めるか」
「フン、心配性だな貴様は」
イザークはそんな状況でも強気だった。
「戦艦一隻とナチュラル共に対して」
「そうだぜ。向こうはこっちより数が少ないんだ。そんなに心配することでもないぜ」
ディアッカもイザークと同じ考えであった。
「だが。相手もガンダムだぞ」
アスランがここで言う。
「あのロンド=ベルのガンダムだ。しかも五機だ」
「大丈夫だ、奴等は俺がやる」
シンがそれに応える。
「あれだけの相手じゃないとかえって面白くもない」
「シン、またやけに熱くなってるね」
「そうか?」
ルナマリアの声に顔を向ける。
「あまり熱くなってると。かえってまずいよ」
「いや、シンはそれ位が丁度いい」
だがレイはここで彼を庇ってきた。
「フォローは俺がする。安心してくれ」
「済まないな」
「そしてハイネを退けたガンダムだが」
「・・・・・・・・・」
アスランはそのことが話に出ると沈黙してしまった。
(まさか・・・・・・)
「ロンド=ベルも来ているとなれば話が違う。彼等の持つマシンはどれも恐ろしい性能を秘めている」
「あの五機のガンダムもパイロット達もバルマー戦役からの者達だ。油断はならない」
「そうだ。総員戦闘配置、いいな」
クルーゼはガデスの次に言った。
「あの新型ガンダムも恐るべき戦闘力を持っている。捕獲出来ないとなれば破壊する」
「破壊」
「そうだ、新型戦艦もろともな。では総員出撃だ」
「はっ」
赤服の者達が一斉に敬礼する。そして彼等はまたヘリオポリスに向かうのであった。
「しかし、何かえらいことになったな」
トールがアークエンジェルの居住区でぼやいていた。そこは二段ベッドであった。キラやサイ、カズイ達も一緒である。女の子であるミリアリアは別室であったが。
「連邦軍の戦艦に乗り込むことになるなんてな」
「成り行きとはいえな」
サイがそれに応える。
「これからオービットまでか。どうなるのかな、本当に」
「何だ。心配なのか?」
カズイにデュオが顔を向けてきた。そこにはウーヒェイもいた。
「こっから脱出するだけだってのによ」
「大したことはない」
「落ち着いてるんだね、あんた達は」
「まっ、こうしたことには慣れてっからな」
「十倍の敵とも戦ったことがある」
「十倍っていうと」
「ティターンズとのロシアでの戦いだよね」
「おっ、知ってくれてるみたいだな」
「まあね。あの戦いテレビでやってたから」
カズイはデュオに言った。
「あの時は流石に数で押し切られるんじゃないかって思ったよ」
「しかも相手がティターンズだったしね」
サイも同じ考えだった。
「まさか。それで勝つなんて」
「数も大事だが機体の性能とパイロットも大事だ」
ウーヒェイがそれに答えた。
「総合的な戦力では俺達の方が強かった。それに」
「それに!?」
「奴等に正義はない。だから負けた。それだけだ」
「正義」
キラがそれを聞いてポツリと呟く。
「正義の為に戦ってるんですか?貴方は」
「悪いか」
ウーヒェイはキラに顔を向けて言った。
「ロンド=ベルには他にも色々な理由で戦っている人間がいるが俺は正義の為に戦っている」
「そうなんですか」
「まっ、戦いなんて人それぞれさ。守りたいものの為に戦う奴だっているしな」
「守りたいもの」
「そうさ。誰にだってあるだろ」
デュオはキラに対して語る。
「恋人とか友人とか。何でもな」
「友人」
キラはこの言葉に反応した。
「そういえば小バームとの戦い凄かったね」
「おっ、見てたか」
デュオはトールの言葉にニンマリとする。
「竜崎一矢さんの戦い、感動したよ」
「あんなに一途な人っているもんだね」
「あれはな。俺達も信じられなかった」
「あいつは。自分の手で奇跡を起こした」
「奇跡だね、本当にあれは」
サイもそれに頷く。
「あのエリカさんの為に。あそこまで戦えるなんて」
「そしてエリカを掴み取ったんだよ、自分の手でな」
「自分の手で」
キラはまたデュオの言葉に反応した。
「あれだけの障害を全て乗り越えてあいつは願いを適えたんだ。もっともそれが果たされるのはこの戦争が全て終わってからだがな」
「それでも。あんなことが出来るなんて」
「やっぱり凄い人だよ」
「中々ああしたようにはなれないけれど」
「それでもさ、希望が持てると」
「だよな、本当に」
トール達は一矢が果たした奇跡に心を弾ませていた。そしてキラの心にも何かが届いていた。そこにムウがやって来た。
「ああ、御前等そこにいたのか」
「どうしたんですか?」
「敵が来たよ。ヘリオポリス全体に強烈な電波干渉だ」
「まさか」
「そのまさかさ。連中また来やがった」
「そんじゃまっ」
「行くか」
デュオとウーヒェイはそれを聞いてすぐに立ち上がる。そしてキラもそれに続く。
「坊主も出るのか」
「はい、守りたいものがありますから」
「守りたいもの、か」
「その為にやります。やらせて下さい」
「わかった。じゃあ行くか」
「はい。行って来るね、皆」
「ああ、頑張って来いよ」
「うん」
カズイ達ににこりと笑って返す。そして彼は居住区を後にして出撃するのであった。
「実はな」
その途中の廊下でムウはキラに声をかけてきた。
「何ですか?」
「断られたら。どうしようかって思ってたんだ」
「断られたら」
「ああ。一応ロンド=ベルから助っ人が来てくれてるが数的には不利なのは事実だからな」
「はい」
「その時はあのガンダムのOSを書き換えるつもりだったんだ。それで俺が乗るつもりだった」
「そうだったんですか」
「けれどそれが杞憂に終わって何よりだ。何しろ敵は手強いからな」
「ええ」
「頼りにしてるぜ、坊主」
既にヒイロ達は出撃していた。アークエンジェルも戦闘態勢に入っていた。コロニーの中での戦いが今はじまろうとしていた。
キラのストライクガンダムが出る。ムウの乗っているのはモビルアーマーであった。メビウスという。彼のメビウスは独特でありメビウス=ゼロと呼ばれている。
「ムウ=ラ=フラガ、出る!」
カタパルトから出撃した。そしてすぐに何かを感じた。
「!?」
頭脳に直接反応するものがあった。彼はそれに対して顔を顰めさせる。
「この感触は」
「!?」
それと同じものをクルーゼも感じていた。彼もまた顔を顰めさせていた。
「何だというのだ、この感触は」
二人は同時に同じものを感じていた。そして同時に顔を顰めさせていた。
「あれかよ」
「あれか」
二人はまたしても同時に互いを見た。それがはじめての邂逅であった。
「あいつだな。間違いない」
「あのモビルアーマーか」
二人の因縁が今はじまった。まずはムウが仕掛ける。
「容赦していちゃ駄目な奴みたいだな。なら!」
彼はすぐに攻撃に入った。ガンバレルを発動させてきた。
「これで決めてやるぜ!」
「ムッ!」
メビウスが複数に分かれて攻撃を仕掛ける。無数のビームが四方八方から襲い掛かる。だがクルーゼはそれを全てかわしてしまった。紙一重ではあったが。
「何っ、あれをかわしたってのかよ」
「いい動きだ。やはり油断はならないな」
クルーゼの顔と声から笑みが消えていた。
「ならば。こちらも」
「チィッ!」
シグーの攻撃を右に捻ってかわす。二人の戦いは今はじまったのであった。
ヒイロ達も戦闘に入っていた。その相手はルナマリアとレイのザク、そしてイザーク、ディアッカ、ニコルの乗るそれぞれのガンダムであった。
「ザクは俺達が相手をする」
「ヒイロ達はガンダムを」
「わかった」
ヒイロはトロワとカトルの言葉に頷く。彼はディアッカの乗るバスターに向かった。
「ガンダムでの初陣の相手がウィングゼロカスタムなんてな」
ディアッカはヒイロが向かって来るのを見て不敵に笑っていた。
「相手にとって不足はないってね!喰らいな!」
両手に持つ巨大なライフルを放った。だがそれはあえなくかわされてしまった。
「何だとっ!」
「狙いはいい。だが」
ヒイロはかわした直後にバスターライフルを構えた。
「間合いを考えるんだな」
そしてライフルを放つ。だが今度はディアッカがそれをかわした。
「ムッ!?」
「当たってたまるかよ!」
さしものヒイロも声をあげた。ディアッカの動きは彼の予想以上だったのだ。
「俺だってザフトの赤服だ!甘く見るじゃないぜ!」
「そうだ、俺達を甘く見るな!」
イザークはウーヒェイと対峙していた。
「ナチュラル共にやられるわけにはいかないんだ!」
ビームライフルを放つ。ウーヒェイはそれを左にかわした。
「ぬわにぃっ!?きゃわしただとおぉ~~~~~っ!」
「筋はいい」
ウーヒェイはその攻撃を評して言った。
「だが。それだけでは俺には勝てない」
「おのれっ!おのれーーーーーっ!」
イザークは激昂した。ビームライフルを乱射する。だがウーヒェイはそれを全てかわしてみせる。
「今度は俺から行く!」
ドラゴンハングを放つ。それでデュエルを捉えるつもりだった。
だがイザークはそれをビームサーベルで切り払った。一瞬の迷いもない、見事な動きだった。
「ムッ」
「この程度の攻撃で俺と倒せると思ったか!」
「成程。闘志もあるようだな」
「来い!真っ二つにしてやる!」
二人の戦いも激化する。そしてデュオとニコルの戦いもはじまっていた。
「さて、どう来るかね」
「・・・・・・行きます!」
突如としてブリッツガンダムが姿を消した。
「何っ!?」
デュオはそれを見て咄嗟に身構えた。そこへ目の前にブリッツガンダムが姿を現わした。
「これで!」
「おおっと!」
ブリッツのビームサーベルをサイズで受け止める。間一髪であった。
「クッ、やはり歴戦のパイロットだけはありますね」
「おいおい、やるじゃねえかこいつ」
二人は互いを見て言った。
「ミラージュコロイドを使った攻撃を受け止めるなんて」
「まさかデスサイズと同じことするなんてな。やってくれんじゃねえの」
「けど」
「オッ!?」
ブリッツは間合いを離してきた。そして左腕を前に出す。
「これでっ!」
そこから有線式のワイヤーを繰り出してきた。それでデスサイズヘルカスタムを襲う。
「ウオッ!」
だがそれはデュオの超人的な反射神経によりかわされてしまった。これにはニコルも驚きを隠せなかった。
「そんな、あれをかわすなんて!?」
「色々芸が細かいな、それなら手加減は無用ってやつだな!」
今度は彼が姿を消した。ニコルはレーダーを探る。
「クッ、ブリッツと同じってことですね。それなら!」
彼は即座に動いた。前に出る。
その時だった。それまでブリッツがいた場所にデスサイズヘルカスタムが姿を現わす。そしてサイズが横薙ぎにされた。
「危なかったですね。間一髪ってやつです」
「面白いね、自分と似た奴を相手にするなんて」
「手強いですね、本当に」
「けどよ、こっちだってやらせてもらうぜ」
「こちらこそ!」
二人の戦いは熾烈なものになっていった。彼等がそれぞれ激しい一騎打ちを展開しているその頃キラは二機のガンダムを相手にしていた。
「このガンダム、やはりキラか」
その中の一機はイージスであった。それに乗るアスランはキラを感じていた。
「何故だ、何故御前が」
「やっぱり、あの赤いガンダムに乗っているのは」
キラもそれを感じていた。
「アスラン、やっぱりアスランなのか」
「キラ、何故だ!」
アスランは叫ぶ。
「どうしてプラントに来てくれなかったんだ!」
「それは・・・・・・」
「御前もコーディネイターなんだろう!俺達が戦う理由はないんだ!」
「けど!」
キラにはキラの理由があるのだ。だがそれは今は言える状況ではなかった。
「クルーゼ隊長が言っていた!」
もう一機のガンダムがキラに向かう。それはシンのインパルスであった。
「捕獲出来ない場合は破壊しろとな!」
「シン!」
「聞いていた筈だぞアスラン!」
シンはアスランに対してもその激しい気性をぶつけていた。
「これは命令なんだ!だから!」
「あいつがコーディネイターでもか!」
「何っ!?」
シンはそれを聞いて一瞬動きを止めた。
「アスラン、今何て言った!」
「もう一度言う!あのガンダムに乗っているのはコーディネイターだ!俺の知り合いだ!」
「何だって!?それが何故」
「ヘリオポリスに残っていたんだ。それで」
「そしてこいつがハイネを怪我させたんだな?」
「ああ」
それに答えたのが間違いだった。彼はシンの気性を忘れていた。
「わかった。じゃあハイネの仇だ!」
「何っ!?」
向かって行くシンを見て思わず声をあげる。
「シン、どういうことだ!」
「知れたことだ!ハイネの分は返してもらう!」
「あいつはコーディネイターなんだぞ!」
「だが連邦軍だ!」
「クッ!」
この言葉に反論は出来なかった。
「なら倒す。それだけだ!」
「待ってくれ、今は!」
「じゃあ御前がやるのか!?」
「うっ・・・・・・」
「撃墜してから捕虜にしてもいい。それならいいな」
「しかし・・・・・・」
「思い出せ!ナチュラルが何をしたのか!」
シンは叫ぶ。
「ユニウスセブンがどうなった!そのせいで御前の母親は死んだんだぞ!俺の家族だって危なかったんだ!」
「シン・・・・・・」
「あともう少しでな。両親も妹も」
「そうか、そうだったんだな」
「ああ、間一髪だったんだ」
シンの顔が暗くなった。
「あと一日遅かったら俺も御前と同じように家族をなくしていた」
「御前の妹さんも」
「妹は今プラントで元気にやっている」
シンは語った。
「だが友達は。沢山失った」
「そうだったな、あそこには本当に多くの人がいた」
「そのナチュラルに味方するのなら・・・・・・まずは!」
「だからあいつは違うんだ!」
それでもアスランはシンを止めようとする。
「騙されているんだ!」
「騙されているなら目を覚まさせてやる!」
シンの気は昂ぶるばかりであった。
「この・・・・・・インパルスで!」
「止めろシン!」
「黙れ!ナチュラルなんか皆この手で消し去ってやる!」
彼はキラに突撃する。そのビームサーベルを振り下ろす。
「うわっ!」
「受けたか!」
それを見たシンの目が赤く光っていた。まるで燃え上がるように。
「俺の攻撃を!こんな奴ははじめてだ!」
「まさか、これがザフトの!」
「貴様がキラ=ヤマトか!」
シンはキラに問うてきた。
「!?」
「聞いている!キラ=ヤマトなのか!」
「そうだけど君は」
「俺はシン=アスカ。ザフトのパイロットだ」
「シン=アスカ」
「アスランの戦友だ。御前はコーディネイターだそうだな」
「うん、そうだけど」
キラはそれに答えた。
「けれどそれが一体」
「何故ナチュラルに味方する!」
シンは激しい調子で問う。
「ナチュラルなんかに!どういうことだ!」
「それは・・・・・・」
「答えろ!答えなければ、そして俺達のところに来なければ俺が御前を倒す!」
「今はやられるわけには!」
だがキラはそれに従おうとはしなかった。
「やられるわけにはいかないんだ!今は!」
「キラ、何故そこまで」
アスランはそんなキラを見て呟く。
「そこまでこだわるんだ、一体何に・・・・・・」
「なら仕方ない。やらせてもらう」
シンは迷わなかった。そのビームサーベルをさらに構える。
「死にたくなかったら逃げろ!そして俺達に下れ!」
「そんなことをしたら!」
キラの脳裏にサイやトールの姿が浮かんだ。彼の守りたいものがそこにあった。
「皆が!だから!」
キラは間合いを離した。そしてビームライフルをシンに定める。
「やられるわけにはいかない!君が何を言っても!」
「ヌウッ!」
ライフルを放つ。それはインパルスの左腕を掠めた。
「かすった!?」
だが一発だけだった。他の攻撃は全てかわされる。だがシンはそれでもショックを受けていた。
「俺が攻撃をかするだと。こいつ」
「何て動きなんだ。さっきのジンよりも」
「こいつ、まさか」
「シン、油断するな!」
アスランがシンに叫ぶ。
「キラは・・・・・・キラは・・・・・・」
「アスラン」
キラもシンも彼の名を呼んだ。だがここでキラもシンも無意識のうちにまたライフルを放っていた。
「こいつ、強い!」
「これがコーディネイター!」
だが二人の攻撃はそれぞれかわされる。それはコロニーのシャフトに当たった。
「しまった!」
「コロニーが!」
コロニーが崩壊をはじめる。そして既に全ての市民達を載せていたシャトルが一斉に放たれる。崩壊したコロニーを見て操作が開始されたのだ。
最早その崩壊は止められなかった。あちこちに亀裂が走り瞬く間に残骸と化していく。クルーゼはそのコロニーを見て指示を出した。
「いかん、このままここにいては巻き込まれる」
「では撤退ですね」
「止むを得んがな」
レイに答えた。
「またあの戦艦及びガンダムには追跡を仕掛ける。今は撤退だ」
「了解」
それにレイが頷く。
「それじゃあ」
そしてルナマリアも。イザーク達もそれに続く。
「撤退か」
「まっ、こんな状況じゃな」
ヒイロ達はあえてそれを追わなかった。アークエンジェルへ戻ろうとする。
「シン、俺達も」
「ここで下がれと言うのか、アスラン!」
だが感情が昂ぶっているシンはそれを聞こうとはしない。
「ここで下がったら何にもならないんだぞ!あのガンダムは!」
「これはクルーゼ隊長の御命令だ」
アスランは落ち着いた声で彼にこう語った。
「だからここは」
「クッ・・・・・・!」
シンは歯噛みする。だがどうにもならなかった。軍において命令は絶対なのだから。
「わかった」
彼は頷いた。頷くしかなかった。
「それじゃあ下がる。これでいいんだな」
「ああ。キラ」
彼は最後にキラを見た。
「何故御前が」
「アスラン」
キラもまたアスランを見ていた。二人は互いを見ていた。
「何故。こんなところで」
「キラ・・・・・・」
「アスラン・・・・・・」
だが今はそれ以上は言えなかった。二つの勢力に別れていては。どうすることも出来はしなかった。
アスランはシンと共に戦場を離脱する。そしてアークエンジェルに向かう。
もうコロニーは崩壊していた。その周りには残骸しかない。キラはアークエンジェルに戻る時にその残骸の中に何かを見つけたのであった。
「あれは」
「ストライク応答せよ」
ここで通信が入った。ナタルの声だった。
「聞こえているか?キラ=ヤマト」
「貴女は」
「ナタル、ナタル=バジルールだ」
彼女はあらためて名乗った。
「宜しくな」
「は、はい」
「それでだ」
彼女は名乗ったうえでキラに対して言った。
「ストライクは無事か!?」
「ええ、まあ」
キラはナタルの問いに答えた。
「大丈夫ですけれど」
「そうか、じゃあ戻れ」
ナタルはすぐに命令した。
「アークエンジェルの位置はわかるな」
「ええ。けど待って下さい」
「どうしたのだ、一体」
「脱出用のシャトルが」
「シャトル!?」
「はい」
その話はすぐにアークエンジェルにも伝わった。キラが脱出用シャトルを持って来たからであった。
「こんな時にか」
ナタルはそれを聞いて苦い顔をしていた。
「まずいことになったな」
「じゃあ見捨てるのかい?」
「えっ!?」
ムウの言葉にハッとする。
「民間人を。それは軍人としてどうかと思うがね」
「それは・・・・・・」
ナタルは生粋の軍人である。民間人を救助するのは軍人としての義務であるとは認識している。だが時が時なのだ。
「ですが今は」
どうしても口籠ってしまう。
「三輪長官みたいにやるかい?」
「そんなこと、できません」
語気が強くなる。
「民間人を見捨てるなぞ。言語道断です」
「言ったな。その通りさ」
ムウはこの言葉が聞きたかったのだ。ニヤリと笑った。
「そういうことだ。いいな、艦長」
「当然です」
そしてマリューもそれに賛成であった。
「民間人を救わないで何故軍人ですか。ここは喜んで救助しましょう」
「そういうことさ。わかったな、副長」
「は、はい」
「まっ、副長もそれはわかってたみたいだけどな。あまり肩肘張るんじゃないぜ」
「別に私は」
艦橋でそんな話が為されている頃格納庫ではシャトルの回収が行われていた。整備長であるマードックがキラにねぎらいの言葉をかけていた。
「やったな、坊主」
その褐色の顔でニヤリと笑う。
「民間人の救助とはな。ボーナスもんだぜ」
「僕は別に」
キラはそんなマードックに謙遜して言う。
「たまたま見つけただけで」
「たまたま見つけても動くってのは中々できないもんなんだよ」
マードックはまた言った。
「こういう時は特にな。それだけでも大したものさ」
「はあ」
シャトルの中の民間人達が保護されていく。その中には一人の少女がいた。
「フレイ」
何とフレイもそのシャトルにいたのである。
「えっ、キラ」
フレイもキラに気付いた。
「貴方もここに!?」
「うん、実は」
キラは事情を話した。ガンダムに乗っていることも他にはサイ達がいることも。全部話した。
「そう、サイ達もいるのね」
「うん」
二人は廊下を進みながら話をしていた。宇宙空間にあるので少し飛んでいた。
「他にはトールやミリアリア達もいるよ」
「皆いるのね」
「ちょっと変な事情でね。皆いるんだ」
「そうだったの。よかった」
「よかったって?」
「知ってる人達がいてくれて。何が何だかわからないままシャトルに乗せられてコロニーが壊れちゃったから」
「・・・・・・・・・」
それが自分達の戦闘によるものだとは。とても言えなかった。
そんな話をしているうちに食堂に着いた。そこには他の民間人達もいた。サイ達も一緒だった。
「フレイ」
最初に彼女に気付いたのはミリアリアだった。
「君もあのシャトルに!」
「サイ!」
フレイはサイに気付いた。
「よかった!本当にいたのね!」
そう言いながらサイに駆け寄る。そして抱き付いた。
「不安だったのよ、ずっと!」
「不安だったって」
「何が何かわからないままここに来て。それで皆がいて」
「フレイ・・・・・・」
「けれど皆がいるから。安心してきたわ」
「・・・・・・・・・」
キラはそんなフレイを少し寂しそうな顔で見ていた。そこにヒイロ達がやって来た。
「そこにいたか」
「君は確か」
「ヒイロ=ユイ。ロンド=ベルのパイロットの一人だ」
「そうだったね。それで何か用なの?」
「スタンバイしておけ。すぐに敵が来る」
「敵が」
「そうだ。ザフトはまたすぐに仕掛けて来る。それに備えておくんだ」
「すぐに・・・・・・」
「この艦を沈めさせるわけにはいかない。民間人達もいるしな」
「またあれに乗れってことですか!?」
キラはヒイロのその言葉に顔と声を暗くさせた。トール達はそれに顔を向ける。
「ガンダムに。乗れってことですか!?」
「そうだ」
ヒイロの返事は聞き間違えようのないものであった。
「その通りだ。今は一人でも人が必要だ」
「・・・・・・・・・」
「怪我人も多い。民間人の医師や看護士にも手伝ってもらっている」
「そんなに」
「だからだ。俺達は出来ることをしなくちゃいけない」
「出来ることを」
「そうだ、わかったな。では行くぞ」
「うん」
キラはそれに頷いた。
「わかったよ、それじゃあ」
キラは格納庫に向かった。トール達はそんな彼を見て考え込んでいた。
「出来ることを、か」
カズイが呟いた。
「ねえトール」
「ああ」
トールがミリアリアに頷いた。
「そうだな」
そしてサイも。わかっていないのはフレイだけであった。
アークエンジェルは民間人を載せてまた発進した。最初にデコイを放つ。
「これで誤魔化されるかしら」
「まあ期待薄だな」
ムウがマリューに答えた。
「こんなのに引っ掛かるとは思えないさ」
「やっぱり」
「それよりもこれからどうする?」
「これからって」
「オービットに向かうには問題があるぜ」
「ええ」
それはマリューも認識していた。
「水がな。ないよな」
「はい」
「民間人がいるからな。彼等の分も確保しないと」
「けれどそれは」
「ある場所なら知ってるぜ」
「えっ!?」
「それは何処ですか?」
ナタルもそれに尋ねる。
「デブリ帯さ」
「デブリ帯というと」
「まさか」
「そのまさかさ。今はそんなことを言っている場合じゃないだろ?」
「・・・・・・・・・」
マリューとナタルは沈黙してしまった。だが水はないのは事実だったのだ。
彼等はそのデブリ帯へと向かった。同時にオービットのロンド=ベルへ通信を入れた。また一つ歴史の歯車が動こうとしていた。アークエンジェルも、そしてキラ達もその歯車の中に組み入れられていくのであった。

第百四話   完

2006・7・9  
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