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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百二話 血のバレンタイン

              第百二話 血のバレンタイン
「バームとの戦い、御苦労だった」
ブライトはバームとの戦いの結果を大塚長官に報告していた。
「全ては君達のおかげだな」
「いえ、一矢の力です」
「彼がか」
「はい、彼が最後まで諦めなかったからこそ。バームとの戦いは終わり、平和への道を掴むことができたのです」
「彼はエリカ君を救出したのだったな」
「そうです」
「見事だ。まさかとは思ったが」
「それは我々も同じです」
一矢以外の誰もこの恋が実現するとは思っていなかったのだ。誰も。
「彼は本当に奇跡を起こしました」
「奇跡を」
「そのおかげです、バームとの和解は」
「一人の少年の愛が地球とバームを救ったのだな」
「ええ、本当に」
「素晴らしい話だ。そして一矢君は」
長官の目にも熱いものが宿っていた。
「素晴らしい若者だな」
「全くです」
「そしてだ」
話は別の方へ移った。
「まずバームの人達には状況が収まり次第火星へ移住してもらうつもりだ」
「火星に」
「うむ。元々彼等はあの星に移住を願い出たのだったな」
「はい」
「ならばそれで問題ないと思う。もっとも今は火星も厄介なことになっているがな」
「火星の後継者ですか」
「彼等の活動もまた活発化する兆しを見せている」
「最近動きがなかったですが」
「同時にネオ=ジオンもな。どうやらティターンズの動きに触発されているらしい」
「ティターンズ」
「彼等がブルーコスモスを手を結んだのは聞いていると思う」
「ええ」
それは今更言うまでもないことであった。
「既にブルーコスモス、そしてその上層部であるロゴスはゼダンの門に移動している。最早彼等は完全に一体化してしまっている」
「軍人と企業家が、ですか」
キナ臭い繋がりであった。ブライトは思わず顔を顰めさせた。
「いや、少し違うな」
「といいますと」
「政治家同士の繋がりだ」
「政治家、ですか」
長官のこの言葉はいささかシニカルな響きを含んでいた。
「ジャミトフ=ハイマン大将もバスク=オム大佐も軍人である以上に政治家となっている」
ティターンズの指導者としてこれは当然のことであった。
「そしてブルーコスモスの面々もな。ムルタ=アズラエル理事もロード=ジブリール副理事もな」
「企業家である以上に政治家であるということですか」
「そういうことだ。だから彼等は手を結んだ」
「成程」
「地球圏の掌握の為にな」
「政治の世界ではよくある世界ですね」
ブライトは嫌な顔を作っていた。
「あまり好きではありませんが」
「だがこれによりティターンズはまた強大になった」
「はい」
これが何よりも問題であったのだ。
「それもかなりな。連邦軍の中にも彼等に加わる者達が出て来ている」
「彼等に」
「そうだ。連邦軍の中にもブルーコスモスに賛同する者がいたのだ」
ティターンズの時と同じである。
「彼等がその兵器ごとティターンズに加わっている。それもかなりの数だ」
「そうなのですか」
由々しき事態であった。連邦軍の戦力低下とティターンズの勢力伸張が同時に行われているのだから。
「おかげでこちらは今手薄になっている。とりわけブルーコスモスの拠点があった欧州が」
「深刻ですね」
「三輪長官を何とか宥めて太平洋の兵を少し欧州に向け、北アフリカの戦力を回して応急処置を取ったが。どうかな」
「よくあの三輪長官が首を縦に振りましたね」
「大変だったよ。岡長官やミスマル司令も協力してくれた」
「左様ですか」
「正直今地球は戦力が手薄だ。若しここで新しい敵が出て来たならば」
「守りきれない可能性も」
「また君達の手を借りることになるかもな」
「その時はお任せ下さい」
ブライトは強い声で応えた。
「そうした時の為の我々ですから」
「今君達はオービットベースに向かっているな」
「はい」
「ではそこからプラントへ向かってくれ」
「プラント」
「サザーランド提督の艦隊も向かっているがな。彼等だけでは心許ない」
「ではそちらにティターンズが」
「そうだ、ブルーコスモスの軍が向かっている」
長官の顔が暗いものになっていた。
「すぐにそちらに急行してくれ」
「わかりました。では補給が整い次第」
「うむ、頼むぞ」
バームとの戦いが終わっても彼等には休息はなかった。すぐに戦いに向かうことになったのであった。
「一難去ってまた一難ってやつだな」
ケンジがナデシコの娯楽室で呟いた。
「今度はティターンズですからね」
「連中も懲りないな。何時まで経っても」
「全くだ」
ミカ、アキラ、ナオトもそれぞれ言った。
「だからゼダンの門に今でも篭もっているんでしょうね」
アキトがそれに応えて言う。
「欧州から追い出して終わりじゃなかったですね、やっぱり」
「しぶとい奴等だぜ、全く」
ダイゴウジも忌々しげな顔であった。
「まあいい、何度でも叩き潰してやるぜ」
「しかしだ」
だがここで一平が口を挟んできた。
「どうした!?」
「暗黒ホラー軍団もいる。連中の相手もあるぞ」
「それにネオ=ジオンもな」
京四郎も言った。
「敵はまだまだ多い。ティターンズにばかり構ってはいられないのが現状だ」
「じゃあやっぱりこれからも敵を一つずつ潰していかなくちゃ駄目ですか」
「そうだ。さしあたってはホラー軍団といきたいがな」
バームとの関係からどうにも目が離せなくなっていたのだ。
「どうするべきか」
「ここでまた新しい敵が出て来たら厄介なことになるな」
「それだ」
京四郎はケンジの言葉に突っ込みを入れてきた。
「それとは!?」
「プラントだ。どうやらあそこの国防委員長であるパトリック=ザラは俺達コーディネイターでない者に対してかなり偏見を持っているらしい」
「偏見をか」
「選ばれた優性人種であるコーディネイターとナチュラルは違うってな」
「おいおい、まだそんなこと言ってるのかよ」
マサキはそれを聞いて呆れた声を出した。
「一矢とエリカのあれ見てもまだそんなことが言えるのかよ」
「人間わかる者とわからない者がいる」
ジノがそれに答えた。
「どんなものを見てもな」
「ほなそのパトリック=ザラっておっさんはアホなんやろな」
「多分そうだろうな」
ベッキーも会ってもいないのにそう言い捨てた。
「今までの戦争でそんなの全然大した違いだってわかるからね」
「スペースノイドもアースノイドもなくな」
ビルギットが言った。
「そんなの、な。もう」
「全然大した違いじゃないよ。他の星の人間とも仲良くやってるし」
「へへっ、そういうことだな」
キャオがそれを聞いてにこにこと笑う。
「俺もな。楽しくやらせてもらってるしな」
「あたしもね。ここの雰囲気が気に入ってるよ」
アムもそれは同じであった。
「私もだな」
「あんたもすぐ馴染んだね」
レッシィがギャブレーに突っ込みを入れる。
「最初はどうなるかって思ったけどさ」
「ここはいい部隊だ」
「へえ」
「クワサン殿もおられる。やはり私は女性の為に戦いたいのだ」
「まっ、こんなのもいるしね」
シモーヌは密かにレッシィと組んでギャブレーを茶化してきた。
「そんなに違いはないんだよ、誰だって」
「だがそのザラ委員長はそうは考えていないってわけさ」
「じゃあ挑発的な行動は危険だな」
ケンジは思慮深い言葉を述べた。
「ティターンズは止めなくてはならないが」
「じゃあプラントの前で迎撃ですね」
「そういうことになる」
彼はタケルの言葉に応えた。
「さもなければ大変なことになるぞ」
「サザーランド提督の艦隊と協同して」
「サザーランド提督か」
だが京四郎はその名前を聞いて顔を暗くさせた。
「京四郎さん、どうかしたの?」
「実はな」
めぐみに応えて言う。
「あの人にはいい話は聞かない」
「っていうと」
「地球至上主義者でティターンズに賛同していたことがあるらしい。それにブルーコスモスとも繋がりがあるって聞いたことがある」
「まさか」
「まさかとは思うがな」
「それでも派手なことはできないでしょう」
ジュンがそれに対して言った。
「今の状況では」
「そう思いたいがな」
だが京四郎は危惧していた。
「まさかとは思うが」
「心配性ね、相変わらず」
「どうかな」
ナナの言葉にもその危惧は消えなかった。
「そうした奴が今まで何をしてきたか。御前だって知っているだろう」4
「ええ」
それには頷くしかなかった。
「けど」
「バームにエリカやメルビの様な立派な奴もいればオルバンみたいな奴もいる」
先のバームとの決戦のことを言及してきた。
「こっちだってそれは同じだ」
「じゃあ」
「サザーランド提督には注意しておくか。注意したところで俺達ではどうにもならないが」
「そういうことだな」
鉄也の言葉に応えた。
「とりあえず俺達はティターンズの奴等を止める」
「ああ」
「奴等のことだ、また毒ガスでも使うつもりだろう」
三〇バンチ事件のことはまだ記憶に新しかった。それは容易に忘れられるものではなかった。
「そんなことはさせるわけにはいかねえな」
甲児が言った。
「皆、ここでティターンズの奴等をギャフンと言わせてやろうぜ」
「ああ」
彼等はプラントの前方に向かっていた。だがこれはプラント最高評議会が察知していた。
「連邦軍とティターンズが我がプラントに向かってきております!」
白い髪に顔に深い、刀傷の様な皺を刻み込んだ男が円卓において演説をしていた。見れば黒と紫の軍服を着ている。
「これが一体何を意味するのか。言うまでもないでしょう」
この男の名をパトリック=ザラという。プラントの国防委員長でありプラントの軍であるザフトの司令官でもある男だ。プラントきってのタカ派として知られている。
「彼等は我々に対して攻撃を仕掛けようとしております!」
「やはり」
「遂にナチュラル達が」
他の評議会の委員達もそれを聞いてザワザワと囁きはじめた。
「この蛮行を許してはなりません!今こそ我々も立つ時です!」
「待ってくれ」
だがこれを制止する男がいた。口髭を生やした端整な顔立ちの男であった。
「ザラ委員長、それはあまりに単急ではないか」
「議長」
プラントの国家元首でありこの最高評議会の議長でもありシーゲル=クラインだ。プラントの中では良識派として有名な人物であり穏やかな人柄でも知られている。
「確かにティターンズは我々に攻撃の意図はある」
「はい」
「彼等が手を結んでいるブルーコスモスは我々コーディネイターを憎悪しているのだから」
「では」
「しかしだ」
クラインはここで言った。
「連邦軍はそうではない。ましてやここに向かっているロンド=ベルは我々とは住む星が異なる者もいるそうだな」
「どうやらそのようですな」
彼等の情報はザラも知っていた。
「その彼等が。我々コーディネイターを迫害するだろうか。私にはそうは思えない」
「ですが彼等は連邦軍です」
ザラはそれに反論する。
「ナチュラル共です。ティターンズもまたナチュラルですぞ」
「それは安易な偏見ではないのか」
クラインはまた言った。
「確かに我々はコーディネイターだ」
「はい」
「だが。それだけだ」
彼は言葉を続ける。
「それに。彼等はまだ攻撃の意図すら見せてはいないではないか」
「では攻撃されるのを待っていろと」
「違う」
クラインはそれには首を横に振った。
「警戒は必要だ。しかし確たる証拠がない今彼等と戦う理由はない」
「それに今の連邦軍は良識派が多かったですな」
メンバーの一人アマルフィが言った。
「そういえば」
「ミスマル司令に岡長官もいれば大塚長官もおられる。かってのどうしようもない地球至上主義ではない」
他のメンバーもそれに賛同しだした。だがザラはここで言った。
「甘い!」
彼は自身の席を叩いて叫んだ。
「その連邦軍の主力はあの美和防人が持っているのですぞ!」
「三輪長官が」
「あの過激で異常な男がいるというのもお忘れなきよう!連邦軍もまた我等の脅威なのです!」
「だがだ」
それでもクラインはザラに対して言った。
「今彼等と戦うべきではない。只でさえネオ=ジオンもまたおかしな動きを示してきている」
「ネオ=ジオンもいたか」
「あのハマーンが動けば厄介だな」
「ここは。慎重に動くべきだ」
「ではロンド=ベルを見過ごせと」
「今は監視だけでいい」
クラインは言った。
「プラント国境に兵を出せ。そしてそれで警戒にあたれ」
「はっ」
「今はそれだけでいい。連邦軍の動き、見極めるだけでな」
「くっ」
こうしてプラントはまずは連邦軍、そしてロンド=ベルの動きを見ることになった。彼等は自軍の主力であるモビルスーツ達を出し、そこで警戒にあたることとなった。
「彼等が来たら攻撃しても構わん」
ザフトの艦隊もそこに展開していた。その旗艦であるヴェサリウスの艦橋にいる白い軍服の男が全軍に指示を出していた。
豊かな金髪を持っている。だがその顔は仮面により見ることが出来ない。妙な雰囲気の男であった。
「だが。向こうから仕掛けるまでは動くな。いいな」
「了解」
全軍それに頷く。
「おって指示を出す。それまでは待機だ」
「何だよ、折角の初陣だってのによ」
ザフトのモビルスーツであるジンの一機に乗る一人の少年がそれを聞いてぼやいた。金髪に褐色の肌をしている。
「つまらねえな、おい」
「そうだな」
それに銀髪の少年が応えた。
「ナチュラル共なぞ薙ぎ払ってしまえばいいのだ」
「それは少し焦り過ぎじゃないですか?」
緑の髪の中性的な顔立ちの少年がそれを聞いて言った。
「ティターンズはともかく連邦はまだ僕達の敵だって決まったわけじゃないですよ」
「フン、どうだか」
銀髪の少年はその言葉を一笑に伏した。
「所詮はナチュラルだ。何を考えてるかわからん」
「そうでしょうか」
「そうに決まっている。どっちにしろ来たら一人残らず叩き落してやる」
「そうだな。折角赤服もらったんだからな」
「ニコル、御前もそれは同じだろうが」
「ええ」
緑の髪の少年は銀髪の少年の言葉に頷いた。ザフト軍には特別の決まりがありアカデミーを十番以内で卒業した軍のトップガンにはエリートの証として赤い軍服が贈られるのである。この服を着る者はかなりの権限が許されている。ザフト軍は明確な階級はないが赤い軍服は上級将校の待遇である。なお白い軍服は指揮官クラスとなっている。
「ならわかっている筈だ」
銀髪の少年はニコルにまた言った。この銀髪の少年の名はイザーク=ジュール、金髪の少年はディアッカ=エルスマン、そして緑の髪の少年はニコル=アマルフィという。彼等の親はいずれもザフト最高評議会のメンバーである。すなわちプラントにおいては良家の子弟となるのだ。
「アスラン、御前もだろう」
「ああ」
イザークは側にいるジンに乗るパイロットに声をかけた。そこには群青色の髪の少年がいた。彼もまた父を最高評議会のメンバーに持つ。名はアスラン=ザラ。パトリック=ザラの息子である。
「ナチュラル共に遅れを取ってたまるか!」
「来たら一人残らず始末してやるってね」
「何はともあれ彼等が来たら僕達も動きましょう、アスラン」
「そうだな」
アスランはニコルの言葉に頷いた。
「敵が来たらな」
「ハイネもいますし」
「フォローは任せておけ」
彼等の後ろにオレンジのジンがいた。そこにいるオレンジの髪の少年がそれに応えた。
「いいな」
「ああ、頼む」
「何はともあれもうすぐ来ますね」
「ロンド=ベル、どう動くか」
「来るなら来い!まとめて撃墜してやる!」
彼等は身構えていた。その前にロンド=ベルが姿を現わす。だが彼等はザフト軍に対して背を向けてしまった。
「仕掛けては来ないか」
「おそらくは」
仮面の男の横にいる艦長がそれに応えた。
「ふむ、彼等には我々への攻撃の意図はないか」
「ではティターンズだけですね、敵は」
「さて、それはどうかな」
だが仮面の男はそれには懐疑的な様子であった。
「まだわからないぞ」
「まさか」
「どちらにしろ警戒は続ける」
男はまた指示を出した。
「敵が来たならば迎撃しろ。いいな」
「了解」
ザフト軍は戦闘態勢のまま布陣している。だがロンド=ベルはそれには構わなかった。
「ザフトは警戒しているみたいだな」
「当然だな」
ブライトはアムロの言葉に応えた。
「彼等からしてみれば我々も同じだ」
「同じか」
「そうだ、招かれざる客だ。それは変わらない」
「彼等を守る為でもな」
「少なくともこれ以上敵は作りたくはない」
ブライトは言った。
「やっとバームとの戦いが終わったのだしな」
「まだ暗黒ホラー軍団もいますしね」
「地球にもまだミケーネがいる。その状況でザフトまで敵に回すと厄介だぞ」
ブライトはケーラにも応えた。
「そしてザフトの市民達の為にも」
「責任重大だな」
「ところでザフトの指揮官ですけれど」
ビルギットが言ってきた。
「ラウ=ル=クルーゼっていうらしいですよ」
「クルーゼか」
「はい、何でもザフト軍きっての切れ者でエースだそうです」
「ザフトのか」
「そんなのを前線に送り込んでいるんですからやっぱり相当警戒しているんでしょうね」
「そうだな。なるべく彼等を刺激しないようにな」
「了解」
「丁度今ティターンズも来ましたし」
「むっ」
ブライトはトーレスの報告に顔を前に向けた。
「数は」
「およそ五百」
「あまり多くはないな」
「地球圏での戦いのダメージはかなり回復したと聞いたが」
「我々の存在を察知していなかったのか」
「どうなのだ」
「そこまではわかりませんが」
「敵艦の中にドゴス=ギア級はありません」
「アウドムラもアレクサンドリアもありません」
「ではサラミス級だけか」
「はい」
「モビルスーツもそうです」
「ティターンズの系列のものも木星の系列のものもありません」
「ジュピトリスの姿も見えません」
「どういうことだ!?」
「まさかブルーコスモスの軍か!?」
「彼等が」
ロンド=ベルの面々は次々に入って来る情報を聞いて顔を前に向けさせた。
「そういえば見たことのないガンダムに似た青いマシンが多いな」
「ああ」
それが前に展開しようとしていた。
「それに三機の。・・・・・・あれは」
「ガンダムか」
見れば三機の変わったガンダムもそこにいた。前面に出て来ている。
その中央には赤いモビルスーツがあった。そこに赤い髪と日に焼けた顔の若い男がいた。
「なあ」
彼は周りにいる三機のガンダムに声をかけていた。
「御前等、大丈夫なのか?」
いきなり彼等を気遣う言葉を口にした。
「初陣だけどよ」
「はい」
その中の一機から返事が返ってきた。
「やってみます」
「やってみますか」
赤い髪の男はそれを聞いて少し難しそうな顔になった。
「スティング」
緑のガンダムに声をかけた。
「御前はどうなんだ?」
「大丈夫ですよ」
青緑の髪の少年がそれに答えた。
「このモビルスーツなら」
「そうか。じゃあアウル」
「はい」
今度は青がかった銀髪の少年が答えた。
「御前はどうだ?」
「俺も大丈夫ですよ」
「じゃあ心配はいらないな」
「はい、隊長」
「このままプラントに突っ込みます」
「ああ、頼むぞ」
それからまた最初に声をかけたモビルスーツに声をかけた。
「ステラ」
「はい」
そこにいたのは金髪の少女であった。
「御前も頼むぞ」
「わかりました」
「ならいいんだがな」
だが彼はそれでも内心は別のことを考えていた。
「エクステンデッドか」
ふと呟いた。
「ブルーコスモスの奴等、こんな強化人間もどきまで作って何をするつもりなんだか」
彼の名をロウ=ギュールという。元々はジャンク屋だったがその整備の腕前とパイロット能力を見込まれてブルーコスモスにスカウトされた。彼は最初ブルーコスモスは単なる軍需産業だと思っていた。
「失敗したぜ」
だが今の役目を教えられて彼はまずこう思った。
「こんなとんでもない連中だったとはな」
そして今ではこう思っている。早くブルーコスモスから抜け出したいと思っているがそうは出来ない事情が彼にはあった。
「こいつ等、どうなるのかな」
彼の下にいるスティング=オークレー、アウル=ニーダ、そしてステラ=ルージュの三人のパイロットのことである。この三人は元々身寄りのない孤児であり、ブルーコスモスは彼等を引き取って強化したのだ。これはかなり特殊な強化であり、エクステンデッドと呼ばれている。
「話じゃアズラエル議長ももう三人持ってるらしいな」
所謂ブルーコスモスの切り札だ。彼はその存在そのものが気に入らなかった。強化人間という存在に嫌悪感を示す者がいるが彼もまたその一人なのだ。だが彼はその存在そのもの、強化人間という人種に対してではなくそれを戦争に利用することに嫌悪感を感じていたのだ。
「俺がいなくなっても別にいいけどな」
だがそれなればこの三人はどうなるか。それが心配だったのだ。
「最後まで面倒を見てやるよ」
彼は最初に三人にこう言った。そして彼等のリーダーとなったのだ。
そうした経緯からどうしても彼等を見捨てられなかった。今もその為に戦争に参加しているのだ。
「こちらファントムペイン」
ロウは通信を入れた。
「今から前方の敵に攻撃を仕掛けるぞ」
「ああ、わかった」
それにすぐ返事が返ってきた。
「では頼むぞ」
「了解、では行くぞ」
「はい」
三人がそれに続く。
「カオス、アビス、そしてガイアか」
彼等の乗るガンダムを見てまた呟く。
「こいつ等には。他にないのかよ」
心の中で思いながら戦いに赴く。それを合図としてティターンズはロンド=ベルに対して攻撃を開始した。
「敵部隊接近です」
クローディアがグローバルに報告する。
「先頭には三機のモビルスーツです」
「あれは・・・・・・ガンダムか」
「おそらくは」
彼女はグローバルの言葉に答えた。
「ティターンズの新型か」
「いえ、あれはどうやらブルーコスモス製です」
「ブルーコスモスの」
「連邦でも新しいガンダムを開発しているという話がありましたが」
「それとは別にか」
「おそらくは」
「ガンダムもポピュラーになったものだな」
グローバルはそれを見てまた言う。
「我々だけではなく敵も開発しているとは」
「確かにそうですね」
「しかもまた新型を開発か」
「今度は五機です」
「五機」
「連邦軍が極秘にオーブに発注したものの様です。今はオーブの資源開発惑星であるヘリオポリスにあるようです」
「よくそこまでわかっているな」
「ここに到着する直前に届いた情報です。すぐにお伝えするつもりでしたが」
「戦闘用意でか」
「申し訳ありません」
「いやいいよ。話さえわかればな」
「はい」
「しかし。オーブ製とはな」
「彼等のモビルスーツは最近評価が高まっています」
オーストラリアを拠点とする巨大企業である。島まで所有している程だ。
「ですから発注したのでしょう」
「我々に来るかな」
「その予定です」
クローディアは言った。
「新規のパイロットと共に」
「それは有り難いな。そろそろティターンズとも決着をつけねばな」
「ですね」
「その為には少しでも戦力が欲しい」
「ではこの戦いが終わればヘリオポリスに向かい」
「ゼダンの門へ向かうぞ」
「わかりました」
グローバルはティターンズとの決着をつけたがっていた。だがそれはまだ先の話になるとはこの時は誰も思ってはいなかった。ザフトとも泥沼になることも。
「よし、行け!」
ロウは三人に命令した。
「すぐに仕掛けろ。いいな」
「了解」
それを受けてステラ達三人が動く。前方に展開するアムロ達に向かってきた。
「喰らえ!」
まずは緑のガンダムカオスガンダムが動いた。変形し、モビルアーマー形態になる。何処かハンブラビか何かに似ていた。
「!!」
ビームがアムロに向けられる。アムロにとってはそれは何でもない攻撃であったが彼はそこにあるものを感じていた。
「これは」
「アムロさん!」
カミーユもそれに気付いていた。
「これは」
「そうだ、彼等は強化人間だ」
「ええ、間違いないですね」
「何だって、強化人間だって!?」
シローがそれを聞いて言う。
「ブルーコスモスも強化人間を開発しているのかよ」
「どうやらそうみたいだな」
「この感じ、間違いない」
「くっ、また私と同じ人達が」
フォウがそれを聞いて眉を顰めさせる。
「どうして。こんな」
「それがブルーコスモスの本質なのだろうな」
「クワトロ大尉」
「彼等はティターンズと同じだ。元は企業家であっても」
「ティターンズと同じ」
「目的の為には手段を選ばんということさ」
「クッ、どうしてそんな奴ばかり!」
「愚かな人間というのは何処にでもいる」
アムロはカミーユに対して言った。
「けれどそれが全てじゃない」
「アムロさん」
「だからカミーユ。わかるな」
「・・・・・・はい」
「今は。彼等を止めることだ」
「あの黒いのは俺が行きます」
「俺は青いのに行くぜ」
ジュドーも来た。
「それで何とかなるだろ」
「うん、頼む。じゃあ俺は緑の相手をする」
「了解」
「アムロ、周りは任せて」
クェスの赤いヤクトドーガが来た。ギュネイも青いヤクトドーガも一緒だ。
「俺もいるぞ、おい」
「あんたはミオちゃんと一緒にいたら?」
「何でミオなんだ?」
「それは何となくよ」
「あいつならゲンちゃんと一緒だぜ」
「ちょっと。ゲンちゃんって」
「あっ」
これは失言だった。クェスは思わず吹き出しそうになっていた。
「あんたが言うと。何か笑っちゃうじゃない」
「くっ、ミオの癖が移っちまったぜ」
「何だ、あんた等最近よく一緒にいると思ったら」
ジュドーがギュネイに突っ込みを入れる。
「癖まで似てきたのかよ」
「よっ、お熱い」
「似合いのカップルで」
「うるせえ、グダグダ言ってるとファンネル放つぞ」
ビーチャとエルの茶々に照れ隠しで言う。
「別にそんなんじゃねえよ」
「じゃあ何なんですか?」
「やっぱり気になりますよ」
「何となく波長が合うんだよ、あいつとは」
モンドとイーノに答える。
「へえ」
「あたし達とアムさんや美久さんやレトラーデさん達みたいのじゃなくてか」
「声じゃねえんだよ」
プルとプルツーにも言う。
「何かな。合うだよな」
「まあそういうのあるわよね」
ルーはそれに納得した。
「アムロ中佐だってレミーさんと馬が合うしね」
「まあな」
アムロはその言葉に少し苦笑した。
「一年戦争の時のミハルともな。合ったな」
「そうなんですか」
ファがそれを聞いて意外そうな顔になった。
「それはまた面白いですね」
「波長が合うのはな。あるな」
「確かに」
「本当にな。ミオとは合うんだよな」
「俺も実はビヒーダさんとな」
「あら、そうなの」
「何となくな。何でだろ」
実はジュドーもそうであった。
「不思議なモンだよな」
「そうよね」
「私も。かってはそうだったな」
クワトロも言った。
「今は違うが」
「クワトロ大尉も結構あるんですね」
「この人、また脛に傷多過ぎよ」
「酷なことを言うな、シモーヌ君」
「あら、御免なさい」
「で、クワトロ大尉」
「うん」
シュドーの言葉に顔を上げる。
「大尉も頼みますよ」
「うんわかった、では行くか」
三人が三機のガンダムに向かい他の者達が周りにあたる。戦いは本格的なものになってきていた。
「この動き」
カミーユは黒いガンダム、ガイアガンダムの動きに異様なものを見ていた。
「何だこれは。普通の強化人間のものじゃない」
「カミーユ、気をつけて」
「フォウ」
フォウの通信が入ってきた。
「この娘、私やロザミィとは違うわ」
「違う」
「ええ。細かいことはわからないけれど感触が」
「確かに」
それはカミーユも感じていた。
「この感触は一体」
「強化人間に近いのに」
「カミーユさん、フォウさん、気をつけて!」
ロザミアが叫ぶ。
「その娘、よくわからないけど危険よ!その娘だけじゃなくて!」
「この三人共か!」
「ウワッ!」
ジュドーはアビスガンダムのジャベリンをかわした。
「何て動きだよ、おい!」
「この動き、普通じゃない」
アムロにもそれはわかる。
「しかも。迷いは感じられない」
「まるで戦うことだけを考えているみたいだ」
「無茶はするなよ」
ロウは三人に対して言う。
「今の俺達の任務は陽動だからな」
「了解」
それにスティングが頷く。
「わかったな、二人共」
「わかった」
「了解ってとこだな」
ステラとアウルもそれに応える。だがその間にも攻撃は続ける。かなり激しい攻撃であった。
「戦う為だけに生きている、か」
ロウはそんな彼等を見て少し忌々しげに呟く。
「どうにも好きになれねえな」
だが戦いは続いていた。ティターンズは無理にでも突破しようとしロンド=ベルがそれを止める。戦いは膠着していた。
「ふむ」
クルーゼはそれを見て仮面の奥で思案していた。
「どうやらロンド=ベルは我々には敵意はないな」
「その様ですね」
ガデスがそれに頷く。
「では彼等には警戒は」
「さて、それはどうかな」
だがクルーゼはその言葉に疑問を呈した。
「彼等はそうでも連邦軍自体はわからないぞ」
「ですがその連邦軍も」
「忘れるな。ティターンズを生んだのは連邦軍だ」
クルーゼは言った。
「その地球至上主義が彼等となったのだ」
「では今こちらに来ている連邦軍の別働隊は」
「彼等には注意が必要だな」
「既にあちらにも警戒の部隊が向かっていますが」
「そうか」
「大丈夫でしょうか」
「その部隊次第だな」
「はい」
「こちらも手が離せない。上手くやってもらおう」
(さて)
クルーゼは言いながら他のことを考えていた。
(上手くやれよ、ブルーコスモス)
そして心の中で呟く。
(それでまた世界が動くのだからな)
心の中で笑っていた。しかしそれを見ている者は今は誰もいなかった。
ロンド=ベルとティターンズの戦いは続く。戦いの中でロンド=ベルはあることに気付いた。
「おかしいな」
最初に気付いたのはカワッセであった。
「シーラ様、どう思われますか?」
「敵の動きですか?」
「はい。どうも積極さが見られません」
「あえて我々を引き寄せていると」
「そんな感じがします。何らかの意図があるのでしょうか」
「その意図とは」
彼等もティターンズの動きを察知しだしていた。だがそれに気付いてもティターンズの真意に気付く筈もなかった。ティターンズの旗艦の艦橋に黄色い丈の長い服を来た一人の男がいた。
「もうすぐだな」
彼は艦長に対して声をかけていた。
「はい、間も無くです」
艦長もそれに応える。
「それで我等の作戦が成功します」
「そして汚らわしいコーディネイター共への粛清がはじまる」
「その第一歩ですな」
「そうだ、この作戦は」
「サザーランド提督の艦隊にあれが積まれているなぞ」
「奴等は思いもしないだろうな」
「ふふふ」
彼等はほくそ笑んでいた。そして戦局を見守る。邪悪と言っていい思惑がそこに絡んでいた。
それからまた暫く経った。ティターンズは損害を出しながらも戦線を維持していた。とりわけ三機のガンダムがそれに大きく貢献していた。
「あの白いの、まだやるのか!」
スティングはアムロの乗るニューガンダムに対して攻撃を続ける。
「しぶとい!誰なんだあれは!」
「やはり知らないんだな」
ロウはそんな彼を見てまた呟いた。
「アムロ=レイのことも」
「ギュール」
ここで青いマシンから声がした。そこには銀髪の青年がいた。
「ああ、あんたか」
「そろそろ時間だ」
「いよいよか」
それを聞いてさらに嫌そうな顔になった。
「そうだ、いよいよだ」
「何かいけ好かねえな、本当に」
「そうも言ってはいられない。これは戦争だからな」
「そういうことかよ」
「そうだ。仕方ない」
「チッ」
それでもロウの不安は消えなかった。
「じゃあ撤退だな」
「うむ」
「イライジャ、援護を頼むぜ」
「わかった」
その銀髪の男イライジャ=キールはそれに頷いた。
「後ろは任せろ」
「よし。御前等」
ロウはそれを受けて三人に言う。
「撤収だ、いいな」
「えっ、もうですか!?」
アウルがそれを聞いて声をあげる。
「いいところだったのに」
「それが戦争ってやつさ。わかったらさっさと撤退するんだな」
「ちぇっ」
「じゃあ隊長」
スティングはアウルよりは素直であった。
「すぐに」
「そうだ。ステラ」
「はい」
ステラにも言う。
「わかったな」
「わかりました」
「よし。じゃあイライジャ、約束通りな」
「うむ」
イライジャが後方を受け持ちロウ達も撤退した。こうして彼等は戦線を離脱したのであった。
他のティターンズの部隊も退いていく。とりあえずはロンド=ベルの作戦は成功であった。
「あれっ、もう終わりなの!?」
光竜がそれを見て少し拍子抜けしていた。
「もっとガンガン来ると思っていたのに」
「何か引っ掛かりますね」
闇竜も言った。
「ティターンズにしてはあっさりしているような」
「魂胆があるのかもね」
「はい。何かそんな気がします」
ルネにも応える。
「だとすれば一体」
「ロンド=ベルの諸君」
しかしそれを遮る形でクルーゼの通信がロンド=ベルに入って来た。
「!?」
「私はザフト軍の司令官の一人ラウ=ル=クルーゼだ」
「クルーゼ」
「まずは諸君等の戦いに敬意を表したい」
「敬意、か」
「あの仮面で言われても何か説得力ねえな、おい」
シーブックとビルギットが言った。
「企みがあるのかもね」
アンナマリーもそれを感じていた。
「我々の為に戦ってくれて。礼を言わせて頂く」
「クルーゼ司令」
ブライトが彼に応える。
「これは我々の義務です」
「義務というのか」
「はい。プラントの一般市民が攻撃を受けようとしていました。ならばそれを防ぐのが我々の務めです」
「我々は連邦政府の管轄ではないが」
「それでもです。これは連邦軍の意思です」
「ふむ」
「ティターンズが一般市民を狙っているのなら。例え彼等がどの様な立場であれ我々はそれを防ぎます」
「成程」
「それだけです。おわかり頂けたでしょうか」
「有り難いことだ。それによりプラントは救われた。だが」
「だが!?」
「ここ以外ではどうかな」
そこには何かを含んでいた。
「どういうことでしょうか」
「いや、これは失敬」
クルーゼは言葉を止めた。
「とにかく今回は貴殿等に救われた」
これは事実であった。
「おってこのことでプラントから謝礼の言葉と誠意が送られるだろう。期待していてくれ」
「わかりました」
「ではまたな。貴殿等の健闘を祈る」
「はい」
こうしてモニターでの話し合いは終わった。ロンド=ベルの面々はそれを見て思った。
「何か」
「慇懃無礼ってやつだな」
彼等はそう感じていた。
「早く帰れって感じで」
「あんた達の為に戦ったってのにな」
アムとレッシィもそう感じていた。
「不愉快よねえ」
「全くだよ」
「けれど彼等にしてみれば俺達は招かざる客なのは事実だ」
「ダバ」
「ここは彼等の庭なんだから。すぐに立ち去った方がいい」
「ダバの言う通りだな」
ダバの言葉にギャブレーも同意する。
「やはり。自分の庭に他人が土足で入り込んでいい顔をする者はいない」
「じゃあここは帰れっていうの、すぐに」
「そういうことだ」
「やれやれ」
アムは嫌な顔をして溜息をついた。
「まっ、仕方ないけど」
「謝礼を期待しておこうかね」
いささか不満は感じるが致し方なかった。ロンド=ベルはプラントの宙域から離れた。それから暫くしてとんでもない情報が入って来た。
「何だってぇ!?」
それを聞いて誰もが驚きの声をあげた。
「プラントが、馬鹿な」
「俺達が守った筈だぜ」
「だがこれは事実なのだ、諸君」
それを語るグローバルの顔も何時になく暗いものであった。
「プラントに。核攻撃が加えられた。それにより多くの犠牲者が出た」
「よりによって核かよ!」
「それも連邦軍が!」
「そしてそれを実行したサザーランド提督は姿を消した」
「何処にだ」
誰かが言った。
「あの野郎、一体何処に」
「おそらくは」
彼の噂はおおよそ知れ渡っていた。それならば・・・・・・答えは一つしかなかった。
「じゃあティターンズじゃねえか!それもブルーコスモスの奴等だ!」
「あいつ等、何処までも卑劣な!」
「だがもう遅いのだ」
グローバルの言葉は沈痛さを増していく。
「連邦軍が攻撃したことには。変わりはない」
「チィッ!」
「じゃあこのままだと!」
そこで放送がかかってきた。
「!?」
「これは」
それはプラントからの放送であった。テレビのスイッチを入れると白髪に紫の軍服の男がいた。
「私はプラント国防委員長パトリック=ザラである」
「パトリック=ザラ」
「プラント最高評議会のメンバーでもあります」
キムがグローバルに言う。
「つまり連中のお偉いさんってわけかよ」
「そんなのがわざわざ出て来るってことは。まずいな」
マサキとリュウセイがテレビを見ながら険しい顔をしていた。
「宣戦布告かな、こりゃ」
「我々はこれまでにもコーディネイターの自由と権利の獲得の為に地球連邦政府からの独立を要求してきた」
「そうだったのかよ」
甲児がそれを聞いて言った。
「初耳だぜ」
「彼等の存在は今まで誰にも知られていなかったからな」
竜馬がそれに応える。
「だから。その要求も知られることはなかったんだろう」
「そういうことか」
「俺達だってその存在を知ったのはつい最近だったな」
隼人も言った。
「それを考えると。当然なのかもな」
「しかし連邦政府はその要求を無視した上に我々を弾圧する政策を打ち出したのだ!」
ザラは言う。
「それが今だ!連邦軍の卑劣な核攻撃により銃を持たないユニウスセブンの同胞達が虐殺された!」
「やっぱり言ってきたな」
「うん」
ショウとチャムがそれを聞いて苦い顔をしていた。
「その数二十四万三千七百二十一名!まるで塵の様に殺された!我々はこれを許すことが出来ない!」
「いよいよだな」
ラッセが呟く。
「最後の言葉だ」
「ヘッ、わかっていても聞きたくはないもんだね」
サブロウタの軽口にもいつもの切れ味はなかった。
「こんな状況だと余計にな」
「我々ザフトは自らの自由と権利を守る為地球連邦政府に対して宣戦を布告する!」
「これで全ては終わりだ」
グローバルは沈痛な声で述べた。
「我々はプラントと戦争に入った」
「彼等ともですか」
「そうだ。今後は彼等も敵だ。厄介なことになるぞ」
避けなければならない戦いがはじまってしまった。これは戦乱をさらに大きくさせるものであった。地球圏の混乱は続くのであった。

第百二話完

2006・7・1  
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