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久遠の神話

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第三十話 二対一その六


「ですから。目に頼らずにです」
「そのうえで戦うべきですね」
「人にあるものは目だけではありません」
「その他のものもありますね」
「五感です」
 目以外にだ。その他の感覚もあるというのだ。
「耳や鼻もあります」
「そうですね。では」
「ラミアが人の目を惑わすのならば」
「その目には頼らずに」
「他のものを頼ればいいのです」
「では今頼るのは」
「耳です」
 具体的にはそれだとだ。高代は述べた。
「それを頼りましょう」
「耳ですか」
「目を閉じるのです」
 高代は広瀬にこうも言った。
「今は目を閉じてです」
「はじめから目はなかったとみなすのですか」
「そして戦うべきです」
「ですか。目を閉じる」
「怖いですか。目を使わずに戦うことは」
「はい」
 ここでは正直にだ。広瀬は答えた。
「俺の、いえ殆どの人間がそうでしょうが」
「人は目に頼り戦うものですね」
「先程の戦いもです」
 他ならぬだ。権藤との戦いの時においてもだというのだ。
「俺達は目に頼っていましたね」
「そうでしたね」
 光を使い権藤を何とか探そうとしていた。何故探そうとしているのかはやはり目を頼りにしているからだ。権藤を目で確認する為だったのだ。
 だがこれをだ。今の高代はこう言うのだった。
「しかし今はです」
「目を使わない」
「そうしましょう」
「それがラミアの幻術に惑わされない方法ですか」
「見るのです」
 目に頼らないと言うがだ。高代はここで見ろと告げてきた。
 そして実際に周囲を見るとだ。これがだった。
 広瀬はラミアを何体も見た。何時の間にか増えていた。そのうえで彼等を囲んでいた。 
 そのラミア達を見てだ。広瀬はこう高代に言った。
「もう既にですか」
「幻術を使ってきていますね」
「確かに。こうして」
「怪物は既に何体もいます」
「しかし一体ですね」
「そうです。一体です」
 何体もいる様に見えるがだ。実はそうだというのだ。
「一体しかいません」
「目に見える怪物達はまやかしですか」
「ではいいですね」
「そうですね。目に見えるものがまやかしならば」
「最初から見ないことです」
「わかりました」
 高代の言葉を受けてだ。そうしてだった。
 広瀬からだ。その目を閉じた。それを見てだ。
 高代も目を閉じた。そのうえでまた広瀬に問うた。
「何も見えませんね」
「はい、何もかも」
「ですが聞こえますね」
「ええ、よく」
「耳です」
 目が駄目ならばだ。それだというのだ。
「耳を頼りましょう。怪物の動きを聞くのです」
「そしてそのうえで、ですね」
「倒しましょう」
 二人は目を閉じ聞いた。怪物の音を。
 聞けば音は一つだった。ずり、ずり、という音が聞こえる。それこそは。
(間違いない)
(この音が)
 二人は心の中で呟いた。 
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