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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第九十二話 果てしなき旅立ち

              第九十二話 果てしなき旅立ち
グッドサンダーを囮にしてドクーガを誘き出そうとするロンド=ベルはアイスランドを離れシアトルに向かおうとしていた。そしてそこで通信が入った。
「シアトルからデス」
スワンが言う。
「来たか!?」
「はい、シアトルに出現したグッドサンダーにドクーガの軍が向かっているそうです」
彼女は言った。それで全てが決まった。
シアトルではもうグッドサンダーにドクーガの三隻の戦艦が向かっていた。そこには当然ながらあの三人もいた。
「フフフ、遂に追い詰めたぞグッドサンダー」
「待てブンドル」
「どうした、カットナル」
「御主その台詞前にも言ったぞ」
「それがどうかしたのか?」
「どうかしたのかではない。前はそれを言って大変なことになったな」
「それは偶然だ」
「偶然でも何でも縁起が悪い。そんなことを言うのは止めるのだ」
「今回こそは成功するぞ」
「どうだか」
「おい、とにかく今回で決めるぞ!」
ケルナグールはそんな二人をよそに血気にはやっていた。
「ここでグッドサンダーを倒しビムラーをわし等のものとするのだ!」
「うむ!」
「では参るとしよう・・・・・・むっ!?」
だがここでコールが入った。
「これは」
モニターに現われたのは何とゴッドネロスであった。彼は悠然と三人を見下ろしていた。
「首尾はどうだ、ブンドル、カットナル、ケルナグール」
「上々でございます、ゴッドネロス様」
ブンドルが応える。
「御覧の通りグッドサンダーを見事補足しております」
「うむ、ならばよい」
「これもジッターの開発したビムラー探知レーダーのおかげでございます」
カットナルも言う。
「ここに来てようやく役に立ちました」
「じゃがそのせいでわしがジッターに頼んだマシンは結局未完成だったわい」
「何だ、御主まだ注文しておったのか」
「おうよ、とびきりのをな」
「どんなものじゃ、それは」
「フフフ、聞きたいか」
「聞かれなくても言うのではないのか?」
ブンドルがそれに突っ込む。
「わかっとるのか」
「御主の性格だとな。で、どんなのじゃ?」
「ここは美しいものを期待したいが」
「おうよ驚け!」
ケルナグールは胸を張って言う。
「三十五身合体ゴッドネロスだ!」
「な・・・・・・」
「三十五身合体だと!?」
さしものブンドルもカットナルも唖然とする。
「そうよ!是非共見せたかったのだがな!」
「悪いが遠慮させてもらおう」
「わしもじゃ。聞いただけで胸焼けがするわ」
「おうおう、遠慮しおって。だがまあよい」
「油断はせぬようにな」
ゴッドネロスは三人の話にキリがついたところでまた言ってきた。
「ロンド=ベルも来るからな」
「はい」
「承知致しております」
「わしもこれよりシアトルに向かう。そしてここで」
「決戦と」
「そうだ。メカを全て出せ」
「ハッ」
「ここで決着を着ける。よいな」
「御意」
ゴッドネロスはモニターから姿を消した。そして三人は動きはじめた。
「ネオネロスめ、遂に自ら打って出るか」
サバラスもそれはわかっていた。戦闘態勢に入っていた。
「ファザー」
そしてファザーに顔を向ける。
「ネオネロスが到着したならばすぐに感知してくれ」
「はい」
「その位置を私に知らせてくれ。頼むぞ」
「わかりました」
ファザーはそれに頷いた。彼等もまた決戦に備えていた。
双方で戦いがはじまろうとしているその時だった。戦場にロンド=ベルも姿を現わした。
「来たな」
ブンドルがそれに顔を向ける。
「マドモアゼル=レミー。これが最後の戦いとなるのだ」
「あら、やっぱり局長さんもいるのね」
「まあ予想通りだな」
「予想通りのフルキャストだ。向こうも勝負をかけてきたようだぜ」
当然ゴーショーグンもそこにいた。ロンド=ベルはもう全てのマシンを出していた。
「それは好都合ってやつだな」
トッドがそれを聞いて言う。
「ここでドクーガを壊滅させればまた敵が一つ減るからな」
「そういうこと。それじゃあ気合入れていくとしよう」
「おお、やってやるぜ!」
忍が叫ぶ。
「忍さんも決め台詞言ったし」
プレセアがここで言った。
「万丈さんもここであれやってくれません?」
「おいおい、あれをかい」
「はい。久し振りに聞きたいなあって」
「参ったな。小さい女の子に言われると断れない」
「じゃあいっちょ派出なの頼むぜ」
「よしわかった。じゃあ」
マサキの言葉にも頷く。そしてあの台詞に入った。
「世の為人の為ドクーガの野望を打ち砕くダイターン3、この日輪の輝きを恐れぬのならばかかって来い!」
「おうおう、また決めてくれるわ」
ケルナグールがそれを見て言う。
「その台詞はわしの必殺ブローを防いでからにしてもらおうか」
「待て、わしの議員への立候補が先だ」
「何っ、カットナル御主まだ諦めておらぬのか」
「ええい五月蝿い、わしが諦めると思うたか!」
「無理に決まっておろう、わし等のことは全世界に放送されたぞ」
「それは一体誰のせいだ!会社経営に影響が出たらどうするのだ!」
「そんなことわしの知ったことではないわ。ケルナグール=フライドチキンは今日も大繁盛じゃからな」
「御主の嫁さんのおかげだろう、それは」
「フハハハハハハハハハ!最高のかみさんじゃぞ!」
「世の中間違っている」
それを聞いてブンドルが呟く。
「どうしてこの様な野蛮人に」
「嫉妬かブンドル、まあそう妬くな」
「妬いてはいないが」
「わしもなあ、あんなかみさんがいて人生最高よ。このままケルナグール=フライドチキンも大繁盛じゃ!」
「またえらく好き勝手言ってるなあ」
「いつも通りですけどね」
輝にバーニィが答える。
「とりあえず戦争する気はあるみたいですよ」
「じゃあこれも様式美ってやつか」
マックスにイサムが応える。
「しかしこれも最後だ。決めるぞ」
「少佐、ひょっとしたら違うかも知れないわ」
「そりゃまたどういうことだ!?」
フォッカーはリツコにそう問うた。
「ドクーガはこれで終わりでも」
「あの三人はそう簡単には消えないでしょうね」
「ふふふ、マドモアゼル=ミサト」
「何、局長さん」
ミサトは落ち着いた顔をブンドルに見せた。
「生憎私はマドモアゼル=レミーと赤い糸で結ばれている。申し訳ないがここは」
「はいはい、退いてくれって言いたいのね」
「そういうことだ。赤木博士も」
「私もなの」
「そういうことだ。それに今日の戦いで全てが決まる」
「それは同感ですね」
メグミがそれを聞いて頷く。
「何かちょっと寂しい気もしますけど」
「そんなこと言ったら復活するわよ、この人達」
「簡単に死ぬ人達ではありませんし」
そのメグミにハルカとルリが突っ込みを入れる。
「まあとにかく戦闘用意」
ミサトが指示を下す。
「ここで一気に決めるわよ」
「了解」
ロンド=ベルはドクーガに向かう。ドクーガも三隻の戦艦を中心に迎撃に向かう。こうしてドクーガとの最後の戦いの幕が開けたのであった。
「・・・・・・・・・」
「準備はいいか、ケン太」
ゴーショーグンの真吾のコクピットにはケン太も乗っていた。彼は隣にいるケン太に声をかけてきたのだ。
「う、うん」
だがそれに対するケン太の返事は今一つ元気のないものだった。レミーとキリーもそれに気付く。
「どうしたの?ゴーショーグンに乗りたいって言ったのはケン太なのよ」
「いざとなったら怖くなったか?」
「それは違うけれど」
だがやはりケン太の顔は晴れない」
「ただ」
「ただ?」
「やっぱりいいや。上手く説明出来そうにないから」
「そうか」
「ケン太君・・・・・・」
OVAはそんなケン太を心配していた。だがそれを言うことはどうしても出来なかった。
その間にもドクーガは来る。当然ながらブンドルもそこにいる。
「これで役者は揃った。ようやくフィナーレを迎える事が出来よう」
彼は高らかに言う。
「そしてクライマックスは常に美しくなくてはならない。ミュージックスタート!」
「おうおう、またいつものワンパターンがはじまったわ」
ケルナグールが音楽がはじまったのを聴いてぼやいてみせる。
「まあいいではないか。この戦いで全てが決するのだからな」
「そうか、最後の戦いか」
ケルナグールはそれを聞いて感慨に耽った。
「わしとしては奴らとの戦いが今日で終わるのは名残惜しい気もするがな」
「野蛮な御前でも感傷に浸る心を持ち合わせていたか」
「おうよ、悪いか」
「時に荒ぶる魂を呼び起こし、時にセンチメンタリズムを喚起するとは」
ブンドルはそれを受けて言った。
「戦いとは」
「真にもって」
カットナルがそれに続く。
「美しい・・・・・・」
「な、何っ!?」
自分の言葉を取られたブンドルの顔に驚愕が走る。
「これで二回目だなブンドルよ!」
「おうよ!こんな決め台詞を御前一人に独占させるのは勿体無いからな」
ケルナグールとカットナルは得意気に言う。
「ぬうう、この怒りと脱力感」
だが収まらないのはブンドルである。その整った顔に苦渋を満たして言う。
「こうなればロンド=ベルにぶつけてくれる!各機攻撃開始だ!」
そして全軍に指示を下す。
「ドクーガの送る最終楽章を奴らに聞かせてやれ!」
「そう来なくっちゃ!もうはじまってるけれどな!」
真吾もそれに応える。
「クライマックスの一つだ!派手に行くぜ!」
そしてフォッカーも遂に両軍はここに激突したのであった。
「ロンド=ベルよ覚悟するがいい!」
ケルナグール艦が突進する。
「このラムで始末してくれるわ!」
「ちょっと待て!今時戦艦にラムかよ!」
「また古風なおっさんだな!」
「フハハハハハハ!格好いいだろう!」
ケルナグールはケーン達に対して高らかに笑う。
「あれは呆れているのではないのか」
「ええい、黙れ!」
カットナルに怒鳴り返す。
「このラムで前にいる奴は片っ端から粉砕してくれるわ!」
「やらせるか!」
だがそこにコウのGP-03がやって来る。
「ここは俺が!」
「中尉、後ろは私達が!」
「任せて下さい!」
「わかった!」
突貫しながらクリスとバーニィに答える。
「コウ、横にもいるぞ!」
キースは横から来るドクーガの戦闘機を撃墜した。
「そっちは俺に任せろ!」
「済まない!」
「フン、でかくなってるとはいえモビルスーツ一機で何ができるか!」
ケルナグールはコウが来ても余裕の様子であった。
「何だ、随分面白いことになってるな」
そこに一機のマシンが姿を現わした。
「あれは」
「グラージ」
そこにいたのは一機のゼントラーディのマシンであった。指揮官機のグラージである。
「ああ、俺さ」
「御前さんは・・・・・・カムジンか」
フォッカーがその声に気付く。
「どうしてここに」
「ブリタイの親父に言われてな」
カムジンはそう答える。
「援軍でここまで来たんだ」
「援軍か」
「そうさ。そっちが何かと大変らしいんでな。それじゃあ早速入らせてもらうぜ」
「ああ」
「宜しくな」
「ところでよお」
「何だ?」
今度は柿崎が彼に声をかけてきた。
「御前、大きさだけどな」
「ああ、それなら心配ない」
カムジンはそう返した。
「ちゃんとそっちの大きさに合わせてるさ」
「そうなのか」
「だから安心しろ。あんな大きさだったらこっちが困るからな」
「わかった。それじゃあ宜しくな」
「ああ」
霧生達の小隊に入る。またロンド=ベルに新たなメンバーが入った。
そして別の者達も。シアトルに三つの雷が落ちた。
「!?」
「今度は何だ!?」
見ればそこに現われたのは三匹の獣であった。あの鷲と鮫と豹であった。
「またあいつ等が」
「どうしてここに」
「わからない。だが彼等からは敵意は感じられない」
サコンはその三匹の獣を見ながら言った。
「むしろ俺達に味方してくれているようだ。どうする?」
「どうするったってよお」
それにサンシローが応えた。
「どっちにしろドクーガを滅ぼさなくちゃいけないんだ。まあ助っ人としてここは頼りにはさせてもらおうぜ」
「そうですね。僕達は僕達でやりましょう」
「そういうことだ。では今まで通り行くぞ」
ブンタとリーは彼に同意した。
「けど何か変だよな」
しかしヤマガタケだけは違和感を感じていた。
「どうしたんだ、一体」
「いや、あの三匹な」
サコンの問いに応える。
「俺達に味方しているんだよな、今は」
「ああ、どうやらな」
「その割にな、剣呑なものも感じねえか?何処となく」
「剣呑なもの」
「俺の勘違いかも知れねえがな。何か変な感じもするんだ」
「そうなのか」
「あの三匹じゃなくて別にいる奴かも知れねえが。気のせいかな」
「いや、気のせいじゃないな」
それにリュウセイが応えた。
「リュウセイ」
「俺も感じる。何かまとわりつく感じだ」
「俺達のものにも似ているな」
「うん。何だろう、これ」
「まさか」
リンはブリットとクスハも反応を示したのを見て察するものがあった。
「第三者の意志・・・・・・いや違う」
「あの獣達と同じだけれどそれとはまた別の。私達に似ているかも」
「これは・・・・・・・」
「おかしいな、プラーナも妙なものを感じてやがる」
マサキもそう言った。
「誰かここにいるんじゃねえのか?それもとんでもねえのが」
「シュウが?」
「いや、また別だ」
マサキはリューネの言葉には首を横に振った。
「今のあいつの気配と違う。これは」
「これは」
「いや、消えた」
マサキはプラーナの気配が消えたのを察してこう言った。
「消えた!?」
「ああ、どっかへ行っちまった」
「そうみたいだな」
「消えたみたい」
「少なくとも今はここからはいなくなったんだな」
「はい」
クスハとブリットはイルムにこう答えた。
「ならいい。戦場に戻るか」
「はい」
「丁度騒がしいのが三人もいるしな」
「誰が騒がしいか!」
「カットナル、あまり薬に頼るのはどうかと思うが」
「ええい、わしの会社の薬は副作用はないわ!」
トランキライザーを噛み砕きながらブンドルに言い返す。
「だから安心せい!よいな!」
「別に不安も感じてはいないが」
「ほれ、御主のところにはゴーショーグンが行ったぞ」
「むっ」
「わしのところにはアムロ=レイか」
「連邦の白い流星か」
「何故かのう、あ奴には酷い目に遭わされた気がするな」
「わしもじゃ」
「私もだな、それは」
奇しくも三人共同じものを感じていた。
「これは何故じゃ」
「ドクーガに入るまで会ったこともなかったというのに」
「これもまた運命なのだ」
「運命!?」
「そう、連邦の白い流星とあいまみえる。これもまた私達の運命だったのだ。そして」
「はいはい、言いたいことはわかってるわよ」
レミーがそれに返す。
「あたし達のことでしょ」
「そう。私達は敵味方に別れ、戦う運命なのだよ。かくも残酷な運命だ」
「まあ人生なんてそんなものだけどね。あたしだって若しかしたらアムロ中佐と一緒になったかも知れないし」
「おい、俺とか」
話を振られたアムロは驚いた声をあげた。
「宙君かも知れなかったし」
「変な話だな」
「だから運命なのよ。運命なんてどうなるかわからないのよ」
「またえらく哲学的だな」
「真吾だってそうでしょ。若しかしたらブライト艦長や万丈さんみたいになってたかも知れないのよ」
「少なくとも声は似てるな」
「似てるっていうかそっくりだけどな」
「まああたしもミドリちゃんに声がそっくりなんだけど」
「そういえばそうですね」
「とにかくあたしとあんたが出会ったのは運命なのかも知れないのは同意よ」
「わかってくれたか」
「けれどこれで最後にしたいわね。いいかしら」
「いいだろう。どちらが散ろうとも恨むことはない」
「じゃあアムロ中佐は私に任せろ」
「わかった。だがカットナル」
「何だ?」
「私の会社の者達に伝えてくれ。この前買った絵のことだ」
「マグリットだったか」
「そうだ。あれはよく保管しておいてくれと。あれは・・・・・・いいものだ」
「わかった。それではな」
「うむ、頼むぞ」
「今伝えておいたわ」
「早いな」
「もう最後の戦いだろうが。悔いのないようにしておけ」
「何を言うか!わしはまだかみさんに最後の別れの挨拶もしておらんぞ!」
「それが嫌なら生き残れ!わしだって上院議員になるのだ!」
「私もまた真の美を知らない。ならば」
「この戦い、勝つぞ!」
「おうよ!」
「ふっ、最後の戦いにそれぞれの思いを馳せる戦士達。その心がまことに」
「おっ、またか」
「様式美ってやつだな」
「美しい・・・・・・」
「それじゃあいっちょ派手にやるか!」
「おうよ!ロンド=ベル、覚悟せい!」
両軍の戦いは熾烈なものになろうとする。コウがケルナグール艦にビームを放つ。
「これならっ!」
「甘いわっ!」
だがケルナグール艦は微動だにしたい。平然とそこに浮かんでいる。
「何だとっ!」
「ふはははははははは!そう簡単に沈むわけにはいかぬわ!」
「まさかあれを受けて平気だなんて!」
「小童、ではこちらの番だ!」
今度はケルナグールが突進して来た。
「食らえっ!」
「クッ!」
ラムで突進して来る。だがそれは間一髪でかわされる。
「ふーーーーー、間一髪」
「おのれ、今のをかわすか!」
「こっちだってそう簡単にやられうわけにはいかないんだよ!」
「そうだ、あんたに美人のかみさんがいて負けるわけにはいかないのと同じってわけだ!」
バーニィとキースが言う。
「おのれ、言いおるわ!」
「とにかく俺だってやられるわけにはいかないんだ!ここで!」
「ではこのわしを見事沈めてみせよ!」
「ああ、KOしてやる!」
デンドロビウムは空を駆る。そして今度はケルナグール艦とドッグファイトに入るのであった。
その中でサバラスはファザーと共に何かを探っていた。グッドサンダーも微動だにしない。
「隊長」
「来たか」
「はい、接近を察知しました」
「そうか、遂に」
それを聞いたサバラスの顔が引き締まる。
「ファザー、行くぞ」
「はい」
「グッドサンダーを瞬間移動させる、いいな」
「わかりました」
そしてグッドサンダーは姿を消した。そして何処かへと向かった。
「消えた!?」
「こんな時に」
エマとカツがそれを見て言う。
「どういうことなんだ、こんな時に」
シーブックにもそれがわかりかねていた。
「逃げたわけじゃないのはわかるけど」
「けど。どうしてなんだよ」
アンナマリーとビルギットにもわかりかねていた。だがわかっている者が一人だけいた。
「皆、大丈夫だよ」
「ケン太」
ケン太だけはサバラスがどうして姿を消したのかわかっていたのだ。
「隊長は決着を着けに行っただけだから」
「決着だって!?」
「うん」
彼は皆の問いに答えた。
「だから。安心していいよ」
「だが誰となんだ」
当然の疑問だった。これには真吾が問うた。
「今ドクーガの三人はここにいる」
「しかもまだまだ元気よね」
「それで決着って。まだ誰かいるっていうのか」
「それは」
ケン太は言おうとする。既にサバラスは姿を消している。彼も彼自身の戦いへ向かっていたのである。
グッドサンダーはシアトルから離れた太平洋上に姿を現わしていた。そしてそこに一隻の戦艦がいた。
「グッドサンダー、サバラスか」
「そうだ」
サバラスはその問いに答える。
「私もまた自身の決着を着ける為にここに来た」
「決着か」
「そうだ、貴様を倒す」
その戦艦にいるネオネロスを見据えて言った。
「ネオネロスよ」
そしてまた言う。
「ドクーガの時代は終わったのだ」
「ふん、こざかしい言葉を。だがわしをよくここまで追いつめた」
しかしネオネロスも臆してはいない。堂々とした調子で返す。
「それは褒めてやろう」
「今更悪あがきはしない事だな。宇宙へはばたく地球のソウルは既に誕生した」
「あのケン太とかいう少年か」
「そうだ」
サバラスは答えた。
「彼こそがこの地球のソウルなのだ」
「だがそのソウルには御前がなるはずだった」
「・・・・・・・・・」
サバラスはその言葉には答えなかった。沈黙しているだけである。
「地球と人類の暗黒面を長きに渡って支配してきたわしが生み出した御前がな」
「私にその資格はない」
そしてようやく口を開いてこう言った。
「地球を支配する道具として御前に試験管の中で作り出された私にはな」
「知っていたのか、御前は自分の生まれを」
「御前は地球の支配のためにビムラーの力を欲した」
サバラスはそれに応えて言った。
「そして、そのためにソウルに選ばれる人間を自らの手で生み出そうとした」
「その通りだ。そして」
「その内の一人が私だ」
「そしてわしの下から御前は逃げ出し、他の候補達の存在も全て無駄に終わったがな」
「無駄だと!?」
しかしサバラスはその言葉を否定する。
「そうではないぞ、ネオネロス」
「何だと!?」
「少なくとも、逃げ延びた私はこうして貴様を倒すためにここにいるのだ」
「そうか・・・・・・」
「悪の申し子として無理矢理生み出された私は、生み出した御前を倒す事でお前から解放される」
静かで落ち着いた声であった。しかしそこには怒りと憎しみが深く宿っているのがわかる。
「それが私の生き方だ」
「わしは地球と共に生きてきた」
ネオネロスもそれに応えて言う。
「御前達に倒されて地球を他の誰かに委ねるわけにはいかぬ、地球はわしのものだ」
「戯言を」
「誰にも渡さぬ。渡すぐらいなら破壊した方がよい」
「そうはさせない。その為にも」
グッドサンダーの照準を合わせる。そしてビームを放つ。
攻撃は確かに戦艦を直撃した。戦艦は炎と化し光と音の中に消え果てた。だがそれで終わりではなかった。
「無駄なことを」
オレンジの光球が海の中に沈んだ戦艦の上にあった。そしてそこからネオネロスの声が聞こえてきた。
「数百万年を生きてきた私だ、武器では倒せぬ」
「何っ」
サバラスはその数百万年という言葉に反応した。
「ネオネロス、貴様は一体何者なのだ!」
「人間が生み出した同じ人間に対する恐怖、怒り。悪魔であり神であり」
彼は不敵に笑って言う。
「さあ、私は一体何なのかな」
「クッ・・・・・・」
「では場所を変えるとしよう」
ネオネロスは形勢が自分の方に傾いているのを悟っていた。そして余裕に満ちた態度でサバラスに対して言った。
「ソウルの場所にな」
ネオネロスのオレンジの光球が輝いた。そしてグッドサンダーもまた光に包まれる。そして彼等は何処かへと姿を消したのであった。
「エネルギー反応」
ルリが言った。
「これはグッドサンダーのものです」
「戻って来たのね」
それを聞いたユリカが問う。
「はい、間違いありません」
そこへグッドサンダーが姿を現わした。戦局は乱戦になっておりドクーガもかなり奮闘していた。
「そうか、隊長が戻って来たか」
「元気みたいね」
「やっぱりリーダーは健在でないとな」
「そうだな。だが」
真吾はそこにあるもう一つの存在に目を向けていた。
「あの赤い球は。一体何なんだ!?」
「あれはネオネロスだよ」
それに応えてケン太が言う。
「ネオネロス!?」
「そう、あれこそがドクーガのボスだよ」
「ボスって」
「ケン太、わかるの!?」
「うん」
ケン太はレミーの言葉に頷いた。
「ネオネロスはビムラーの力を悪用しようとした奴なんだ」
「それじゃあ黒幕ってわけか」
キリーがそれを聞いて言う。
「今、わかったんだ」
ケン太はまた言った。
「戦いの前に色々な友達がここに集まってきていたのはあいつが来るからだったんだ」
「あいつのせいで」
「うん、僕と一緒にあいつと決着をつけるために」
ケン太もネオネロスを見据えていた。
「真吾!」
そして真吾に顔を向ける。
「ゴーショーグンをあいつのところへ近付けて!」
「了解!じゃあ行くぞ!」
「うん!」
真吾はそれに応えてゴーショーグンを向かわせる。そしてケン太の身体が青い光に包まれた。
「なっ!?」
「真吾、行って来るね」
「行って来るっておい」
「すぐに済むから」
ケン太はゴーショーグンから姿を消した。そして今度は青い球体がグッドサンダーの側に姿を現わした。
「ケン太!」
護がその青い光球を見て叫ぶ。
「えっ!あの光の球がケン太なの!」
ユキオがそれを聞いて驚きの声をあげる。
「まさか」
「いえ、間違いありません」
だがOVAにはそれがわかった。
「私にもわかります。あれは・・・・・・あれはケン太君です!」
「そんな、じゃあ」
「ケン太、一体何を」
「来たか、ソウルよ」
ケン太はネオネロスと対峙した。ネオネロスはそんな彼に対して言う。
「こうなればわし自らが御前を倒しビムラーを手に入れてくれよう!」
「これ以上メカは壊させない!」
ケン太も覚悟を決めていた。そして真吾達に顔を向ける。
「ゴーショーグン、ゴーフラッシャーを!」
「わかった!こうなったらケン太の言う通りにするぞ!」
真吾がそれに応える。
「それじゃ景気良く」
「行ってみましょう!」
レミーとキリーもそれに続く。そして攻撃に入る。
「ゴーフラッシャー・スペシャル!」
ゴーショーグンが攻撃態勢に入った。全身が緑の光に包まれる。
無数の光ん矢がシアトルを貫いた。そしてそれはドクーガのマシンにも達していた。
ドクーガの全てのマシンが緑色の光に包まれる。その動きは完全に止まっていた。
「これは一体・・・・・・!?」
エマが声をあげる。
「これは・・・・・・間違いありません」
ファがそれに応える。
「前にドクーガのロボットが自爆した時と同じ現象です!」
「何ですって、それじゃあ」
「ええ、間違いなく」
「ゴーフラッシャーを浴びたメカは意思を持ったのね」
「はい」
「そんなことを。ビムラー・・・・・・何て力・・・・・・」
「メカが叫んでる・・・・・・」
ケン太は声を聞いていた。
「戦いたくない、同じメカ同士戦うぐらいなら死んだ方がましだって」
彼は声を聞きながら呟く。
「でも、皆戦いたくないからって死ぬことはないよ」
ドクーガのマシン達に対して語る。優しい声だった。
「誰も皆に命令する事は出来ないんだ、君達は自分の気持ちで戦いを止めればいいんだ」
「馬鹿な、あの小僧何を言っておるのだ」
ケルナグールには何が起こっているのかわからなかった。
「ロボットに話しかけるなぞ」
「さあ、止めよう」
それでもケン太は言う。
「もうこれ以上戦うのは。メカ同士で傷つけ合うのはよそうよ」
ドクーガのマシン達はそれに頷いた。そして皆何処かへと姿を消したのであった。
「な・・・・・・」
これにはドクーガの三人も驚きを隠せなかった。
「わし等のマシンが」
「こんなことが・・・・・・」
「驚愕と言うべきか」
「行っちまったぜ」
デュオがドクーガの様子を見て言う。
「正気を取り戻せば悪に加担するのが馬鹿らしくなったか、当然の判断だな」
ウーヒェイも。彼はそれを正義だと判断していた。
「これがビムラーとソウルの力だというのか!」
ネオネロスもまた愕然としていた。自身の今までのものが崩れようとしているのを目の当たりにしていたからだ。
「終わりだな、ネオネロス」
そんな彼にサバラスが言う。
「貴様もドクーガも。ここで終わりだ」
「そうはさせぬ!」
だが彼はまだ諦めてはいなかった。
「この星はワシのものだ。他の誰にも渡してなるものか!」
「そんなことはさせない!」
だがそこにはケン太がいた。今彼は自身にビムラーの緑色の光もまとわせた。
「これで・・・・・・終わらせる!」
「おのれ小僧!」
「さあ皆」
ケン太は今その全身を光で包んでいた。
「これが皆を破壊へ追い詰めたドクーガの正体だ」
そしてネオネロスに向かう。
「ドクーガ、消えろ!この星から消えろ!」
「やらせん!」
二つの光球が激突した。だが崩れたのはネオネロスであった。
赤い球が爆発する。そしてゆっくりと落ちていく。
「うわっはぁ!やったよ!」
護がそれを見て叫ぶ。
「ケン太がドクーガのボスに勝ったよ!」
「ねえ真吾、キリー。状況わかる?」
「いや、俺にはさっぱりだ。こりゃちょっとついていけないぜ」
キリーには完全に把握しきれていなかった。無論問うたレミーも同じである。
「よくわからんがドクーガが終わりなのは確かなようだぜ」
「それだけね、わかるのは」
「ああ、それだけだ」
ネオネロスは沈もうとする。しかしここで踏み止まった。
「おのれソウル、このわしを倒すとは!」
彼は浮上しながら言った。
「だがわしの滅びる時、それは地球の滅びる時だ!」
そして爆発する。ネオネロスはここに滅んだのであった。
「へん!悪党の最期らしい捨て台詞だな!」
豹馬がその爆発を見て喜びの声をあげる。だがそんな彼に小介が言った。
「ひょ、豹馬さん!ネオネロスの言葉は負け惜しみではないようです!」
「何だtって!?」
その時だった。シアトル上空にミサイルが姿を現わした。
「中性子ミサイル!南極条約以前に完全に撤廃されていたはずでは」
アデルがそれを確認して思わず叫んだ。
「ちっ、水爆以上の代物かよ。とんだ置き土産だぜ!」
ベイトも舌打ちする。
「あのタコ親父、こんなものまで用意してやがったのか」
「悪態ついてる場合じゃねえみてえだぞ、勝平」
「どうしたんだよ、宇宙太」
「あのミサイルは一つじゃねえ。しかも全世界の都市に向けられてる」
「えっ、それじゃあ」
「ああ、恵子の予想通りだ」
「何て事を!あのミサイルの一つで大都市が完全に灰になりますよ!」
小介はまた叫んだ。
「何やて!洒落にならへんでそれは!」
「どうするでごわす!」
「ドクーガめ!本気で地球を滅ぼすつもりかよ!」
「文句を言ってる時間はない!俺達でミサイルを止めるぞ!」
バニングがそんな彼等を叱咤する。
「止めるってどうやって!?こんな広範囲じゃチャクラトライアングルでもカバーしきれないぞ!」
勇にもどうしていいかわからなかった。だがここであの三匹の獣達が動いた。そしてミサイルを破壊した。
「ミサイルを止めてくれたのか!?」
ニーがそれを見て言う。
「理由はわからないがあの連中は俺達に協力してくれるらしいな」
凱はそれを見てそう判断した。
「それでは・・・・・・よし!」
大文字は決断を下した。
「各機あの獣達に続け!ミサイル一つ一つを叩き落とすんだ!」
「よし!」
「放射能は心配しないで!ビムラーが爆発を抑えてくれるから!」
「ってことは弾頭ごと破壊しちゃってOKってことね!」
「うん!」
ケン太はアイビスに答える。
「各機、聞いての通りだ!ケン太とビムラーの力を信じてミサイルを叩き落とすぞ!」
「了解!」
皆バニングの言葉に答える。そしてミサイルへの攻撃がはじまった。
一発一発確実に撃ち落としていく。だがやはり数が多かった。
「おい、このままじゃまずいぞ!」
一矢が叫ぶ。
「数が多い!このままでは」
「だがやるしかない!」
しかしバニングはそんな彼に言った。
「俺達が弱音を吐いてどうする!今はそんな時ではない!」
「そ、そうか」
「お兄ちゃん、そんなことじゃエリカさんも守れないわよ」
「ナナ」
「ナナの言う通りだ一矢、ここは死力を尽くせ」
「そうだな、わかった」
京志郎の言葉に頷く。
「なら・・・・・・やらせるか!」
「そうよ、お兄ちゃんはそうでなくっちゃ」
「全く。いちいち困った奴だ」
「フォウ、撃ち漏らしは頼むぞ!」
「ええ、わかったわ」
「いっけえええええええーーーーーーーーーーーーーっ!」
ゼータツーのハイパーメガランチャーが火を噴く。それで中性子ミサイルをまとめて粉砕する。
「こうしたミサイル相手は得意なんでね!」
それにギュネイが続く。青いヤクトドーガから六つのファンネルが飛び立つ。
「いけっ!」
そして目の前のミサイルを全て撃破する。腕は確かだった。
「どうだっ!」
「ギュネイ、まだ安心は出来ないわよ」
「そうかい、レッシィ」
「呼んだか!?」
「あれっ!?」
レッシィがモニターに出て来て思わず目が点になった。
「呼んだかって」
「クェスと声を間違えたのか、また」
「そ、それは」
「私はずっと後ろにいるよ。何で間違えるの?」
「ま、まあ気にするな」
「やれやれ。それじゃああたしもあんたと大介さんの声でも間違えようかね」
「僕の声とか」
「ああ、似てるからね」
レッシィは笑いながら言う。
「何処となくね」
「そういえば・・・・・・ってえっ!?」
「どうした、クェス」
ギュネイも流石に今回は間違えなかった。
「急に声をあげてよ」
「ドクーガの戦艦が」
「何だ、あの三人また何かやるつもりか」
「違うよ、ほら見て」
「!?」
ギュネイは見た。ドクーガの三隻の戦艦が中性子ミサイルに攻撃を仕掛けているのを。彼は確かにそれを見た。
「な、何ィ!?」
「どういうことだ、これは!」
「ヤマダさん、ここは穏やかにお願いします」
「ダイゴウジだ!これは一体どういうことだ!」
ルリのいつもの突っ込みすら些細なことであった。
「あの三人が!ミサイルを攻撃しているだと!」
「どういうことなんだ、これは!」
「諸君、誤解しないでもらおう」
「へっ!?」
カットナルのこの言葉に目が点にならない者はいなかった。
「甲児君」
大介は真顔で甲児に尋ねた。
「三匹の獣達が僕達に協力してくれているのはわかるんだが」
「ああ」
「何故彼等が。これはどういうことなのだ」
「ふっ、知れたことだデューク=フリードよ」
ブンドルはいつもの気取った仕草で言った。
「私達もまた地球の為に今ここにいるのだよ」
「嘘だろ、それは」
トッドがまず突っ込みを入れてきた。
「その怪しい外見で言われてもな。まあ人は外見じゃねえが」
「あの三人は特別よね」
キーンもトッドの言葉に頷く。
「見るからに、だものねえ。それでよくもまあ」
アムもそれは同じであった。誰も彼等を信じようとはしない。
「ええい、外見は関係ないわ!」
「わし等は決して怪しいものではない!」
カットナルとケルナグールがたまらず反論するがやはり誰も信じようとはしない。ナオトに至ってはこう言う始末であった。
「幾ら何でも肩に烏止まらせてたり青い肌してたり戦場でグラス片手にしてりゃ説得力ないだろう」
「そういや滅茶苦茶変だよね、連中」
雅人がそれに頷いた。
「シャピロも大概だったけれど」
「貴様等、わし等が信用できぬのか!」
「わしは議員に立候補するのだ!支持者がいなくては困る!」
「わしはニューヨークにいるかみさんを守るのだ!」
「・・・・・・世の中間違っている」
エイブがケルナグールのいつもの言葉を聞いて呟いた。
「あの様なあからさまに怪しい男に美しき奥方なぞと。やはりこの世の中はどうかしている」
「言うに事欠いてそれか!」
「だからわし等はそもそも人を無闇に殺したりもせぬわ!」
「美しい地球はそのままにだ」
ブンドルも言った。
「美しき地球を守る為に今諸君と協力しようと言うのだ。その申し出、断るというのか」
「どうしますか、博士」
ミドリが大文字に問うた。
「彼等の申し出を。受けますか」
「そうだな」
大文字は腕を組んだ。そして考えながら答えた。
「今は少しでも人手が欲しい。彼等の申し出、受けよう」
「よかろう」
ブンドルはそれを聞いて満足そうに声をあげた。
「あのロンド=ベルと共に戦う。栄誉なことだ」
「では早速行くぞ!」
「うむ!」
「ミュージックスタート!」
ブンドルはまた音楽をかけさせた。
「ロンド=ベルとドクーガの最初で最後のダンスだ。美しく戦え戦士達よ!」
「確かにドクーガとしては最後だな」
「そうだな。その後はわからんが」
「よーーーし、のってきたぜ!」
それにバサラが呼応する。
「どいつもこいつも歌いやがれ!俺の歌を聴けーーーーーーーーーーっ!」
何はともあれドクーガの面々も戦闘に参加した。そしてミサイルを次々に破壊していく。
ミサイルはその数を順調に減らしていく。だが最後の一発が危なかった。
「真吾、あれ!」
「わかってる!」
真吾はレミーに応えた。そして攻撃態勢に入る。
「ゴーフラッシャーーーーーーーーッ!」
緑の数条の光が最後のミサイルを撃つ。それで全ては終わったのであった。
「ミサイル全弾撃墜しました」
ミドリが報告する。
「周囲への放射能の影響もありません」
「御苦労、諸君。これでドクーガは完全に滅んだ」
「これでドクーガも終わりか」
「長いようで短かったわね」
真吾とレミーは大きく背筋を伸ばしていた。
「有り難うよ。今回は御前さん達に助けられたな」
「ふっ、礼なぞいい」
ブンドルがキリーにこう答える。
「私達は美しき地球を守る為に戦っただけだからな」
「それでこれからはどうするの?」
「まあわしは議員に立候補だな」
「わしはケルナグール=フライドチキンの社長に戻るか。かみさんも待ってるしな」
「私は・・・・・・。会社の会長にでも就任し、闇に咲く華となろう」
「そういやあんた達それぞれ会社も経営してたりするんだな」
「うむ」
「そっちは儲かっておるぞ」
ジュドーにそう答える。
「羨ましいなあ。金があってよ」
「おいおい、俺達だってそうなるんだよ」
モンドがジュドーに言う。
「そんな弱気でどうするんだよ」
「ほらほら、イーノにも言われちゃって」
エルも入ってきた。
「まあ俺が社長だから安心だけどな」
「あたし管理部長だし」
「あたしは営業部長だったわよね」
「プルとプルツーってそんなに偉かったのね」
「ルーは総務部長じゃない」
「お互い偉いさんだな」
「ほう、御主等も会社を経営しておるのか」
「シャングリラのジャンク屋だけどな」
「シャングリラか。そっちのケルナグール=フライドチキンも宜しくな」
「ああ。あそこはリィナのお気に入りなんでな。贔屓にさせてもらってるぜ」
「よしよし。いい妹さんを持っておるな」
「そっちにはわしの会社のドラッグストアもあるぞ」
「私の化粧品の店もな。君の妹君にはコロンをプレゼントしよう」
「つっても俺の妹まだ小学生なんだけどよ」
「エマ中尉やハルカさんにでもあげたら?」
「私に?」
「悪くない考えね」
「そうだな。ではそうさせてもらうか」
ルーの言葉に頷く。
「美しきレディをさらに美しく飾るレオナルド=メディチ=ブンドルの化粧品。是非お試しあれ」
「何でいきなり商売になるのよ」
「これで最後だしな。それではまた」
「シーユーアゲイン」
これでドクーガの三人とは別れた。こうしてドクーガとの戦いもその幕を降ろしたのであった。
「何はともあれこれで終わりだな」
「ああ」
一同はそれぞれの艦に戻る。だがグッドサンダーから声がかかった。
「!?」
「今度は一体何だってんだ!?」
「何でも真田博士から話があるそうよ」
「それはまた」
「何だろな、今度は」
こうして皆グッドサンダーに集まった。博士はそれを確認してから話をはじめた。
「まずはありがとうございます」
博士はまずは一同に礼を述べた。
「ロンド=ベルの活躍でドクーガは完全に壊滅しました」
「いえ、我々にとってもドクーガは敵でしたから」
大文字がそれに応えた。
「御気になされずに」
「左様ですか」
「ねえ父さん」
ケン太が父に問うてきた。
「これでビムラーは最後の覚醒を迎えることが出来るの?」
「いや、そうではない。ネオネロスはビムラーの覚醒を妨げる障害の一つに過ぎない」
「違うの?」
「そうだ。ビムラーの目的は全ての生命体の宇宙規模の共存にある」
「全ての生命体の共存」
「またスケールが大きいな」
「自分の星の中で争いを繰り返す生命体はビムラーの力を受け取る資格はないのだ」
「おいおい、何かすっごく偉くないか」
真吾が言うとそれにキリーが続いた。
「全く、裁判官みたいだね」
「止めなさいよキリー。少なくとも平和な星の方が誰にとっても望ましいじゃない」
「レミーの言う通りだな」
真吾がそれに頷いた。
「第一、俺達はビムラーの意志だからではなく俺達自身の意志で平和のために戦っているんだ、ってロンド=ベルの皆なら言うだろうな」
「じゃあ父さん、地球に平和が戻った時こそ、ビムラーは最後の覚醒を迎えるんだね?」
「その通りだ。その時こそビムラーは力を解放し、選ばれし者を銀河に旅立たせるだろう」
「そうなんだ。きっと、その時にオルファンも銀河に飛び立つんだね」
「人類にとっては新たなステップを迎えるための戦いは最終段階に入っている」
博士は言う。
「課せられた試練はあまりに強大だ。だがそれに打ち勝つ力を人類が持っていることを私は信じている」
「父さん・・・・・・」
だがここで異変が起こった。ケン太が最初にそれに気付いた。
「何だかモニターがぼやけているよ!」
「これか」
「一体・・・・・・どうしたの!?」
「大したことはない。私が消えるだけだ」
「消えるって・・・・・・それって若しかして」
「そうだ」
博士は我が子に答えた。2
「ケン太、御前に伝えるべき事は全て伝えた」
「父さん・・・・・・」
「私のビムラーの代行者としての使命は終わったのだ」
ケン太「父さん!父さんは消えてしまうの!?」
「私の存在はもうすぐファザーの中から消滅する」
「そんな・・・・・・」
「しかし」
だがここで博士は言った。
「それは一時の別れだ。ケン太」
「うん」
「人は何時か時間さえ支配出来る存在になる。その時には御前と私も再び出会えるだろう」
「また、出会えるんだね」
「そうだ。だから安心してくれ」
博士はまた我が子に言った。
「父さん」
ケン太も父に対して言った。
「僕、泣かないよ。父さんとビムラーの教えてくれた未来へ進んでみるから」
「有り難う、ケン太」
父と子であった。機械の中にあってもそれは変わらなかった。
「獅子王博士」
博士は今度は獅子王博士に声をかけてきた。
「はい」
「全てはこの戦いの果てに明らかになります。世界を覆う無秩序な戦いは終局に向けて」
「終局に向けて」
「とりあえずは向かっています」
「とりあえずは」
「まずはドクーガは倒れました」
「はい」
「ですが敵はまだ多い。特に」
「バルマーと宇宙怪獣ですね」
「はい」
ミサトの言葉にも応えた。
「彼等もいます。そして」
「そして!?」
「いえ、これはまだ不確かなので」
言おうとはしなかった。それにはロンド=ベルの面々は深くは聞かなかった。
「左様ですか」
「はい。ではケン太」
「うん」
ケン太は父に顔を向けて頷いた。
「また会おうね」
「うむ、その日を楽しみにしているぞ」
「父さん・・・・・・」
父は消えた。だがケン太は泣かなかった。父との約束どおりに。
「強くなったな、ケン太」
彼にキリーが声をかけてきた。
「キリー」
「そうね」
そして今度はレミーが。
「旅がはじまった頃だったらきっと泣きべそかいていたわね」
「ビムラーの意志ってのは知らないが」
真吾も言う。
「御前の成長ぶりは俺達が保証するぜ」
「有り難う、皆」
「ケン太」
そして今度はサバラスが声をかけてきた。
「真田博士が言う通り、御前の旅はもうすぐ一つの結末を迎える」
「うん」
「それでサバラス隊長」
ミサトがサバラスに問う。
「貴方はこれからどうされるおつもりですか?」
「そうです。それを知りたいのですが」
リツコもそれに続いた。
「私ですか」
サバラスはそれに応えた。
「私はグッドサンダーでビムラーの最後の覚醒を待ちます。次に我々が出会う時は人類の旅立ちの時でしょう」
「うん、サバラス隊長、それまでビムラーを守ってね」
「了解だ。真吾、キリー、レミー」
彼は次に三人に顔を向けた。
「君達は引き続きケン太のガードを頼むぞ」
「そのガードってのはロンド=ベルで最後まで戦えってことだよな」
「そうだ」
「やれやれ。ボーナス貰ってお役御免ってわけにはいかないか」
「ぼやかないの、キリー。ここまで来たら、エンディングまでお付き合いさせてもらいましょうよ」
「レミーの言う通りだな。俺としてもこの戦いの結末に興味が出てきたしな」
「そそ、どうせなら私達も参加してハッピーエンドを盛り上げなくちゃね」
「それでは諸君」
「シーユーアゲイン」
これでサバラスとも別れた。そしてその別れた彼等にまた別の客が来ていた。
「この馬鹿者共が!」
「ゲッ、生きていたのかよ」
サブロウタがモニターから飛び出てきかねないその男を見て言った。
「最近見ないと思ったら」
「すぐに日本に来るのだ!」
「一体どうしたのですか、急に」
「どうしたもこうしたもない!」
ミサトにこう返す。
「うわ、凄い声」
「ミサト、耳栓は用意しておかないと駄目よ」
「ガイゾックだ!ガイゾックが出たのだ!」
「ガイゾックが」
「そうだ、今破壊活動の限りを尽くしておる。連邦軍が抑えてはいるが」
「それにも限度があると」
「だからだ、すぐに戻って来い!」
かなり勝手な話ではあった。だがそうも言ってはいられなかった。相手がガイゾックならば。
「よいな、そしてすぐにガイゾックを倒せ。以上だ!」
そこまで言ってモニターから消えた。とりあえずは台風は姿を消した。
「言うだけ言って消えたな」
「結局自分では何もしないわよね」
ケーンとアスカの言葉も届いてはいない。
「しかし行かねばなりませんよ」
ジョルジュがそんな彼等にかわりに言う。
「ガイゾックは。放ってはおけません」
「ああ、すぐにでも行こうぜ」
「奴等何するかわらないからね」
ヂボデーとサイシーがそれに頷く。
「そうとなればすぐに日本に向かおう。皆それでいいな」
「ああ」
一同アルゴの言葉に頷いた。
「では行くぞ。日本へ」
「そしてガイゾックをぶっ潰してやる!」
彼等は次の敵に向かっていた。そしてガイゾックとの戦いも最後の局面を迎えようとしていたのであった。戦いは次第に次の舞台に入ろうとしていたのであった。

第九十二話完

2006・5・14  
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