久遠の神話
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第十七話 六人目の戦士その九
「少なくともな。今の君達は敵じゃない」
「今は、ですか」
「そうだ。君は俺のことをどう思っている」
「ええと、それは」
「君は戦うことはしないな」
「はい、それは」
確かだった。このことは頷くことができた。
「その通りです」
「それなら余計にだ。俺としても戦わずに済むにこしたことはない」
「じゃあ僕が戦いを降りれば」
「それでいい。俺の目的は最後まで生き残り目的を達成することだからな」
あくまでだ。目的を達することができればいいというのだ。
「剣士として強くなることにも興味はない」
「生き残ることだけですか」
「それ以外に目的はないからな。最後までな」
「だから戦わなければいいんですね」
「そういうことだ。それでどうするのかな」
上城だけでなく樹里と聡美も見ての問いだった。
「君達は」
「はい」
最初にだ。聡美が応えた。
そうしてだ。こう広瀬に言ってきたのである。
「では。お誘いを受けます」
「わかった。それじゃあまずは君だな」
「僕も。それじゃあ」
次は上城だった。まだ戸惑いを見せているがそれでも答えてきた。
「お願いします」
「そうか。君もか」
「お願いします。じゃあ」
「私も。上城君が行くのなら」
最後は聡美だった。戸惑いながらも続いたのだ。
「そうさせてもらいます」
「よし、じゃあ三人共だな」
「茶道、日本文化ですね」
「そうさ。まあどっかの国は起源って言ってるがな」
「起源ですか」
「茶道の起源は自分の国にあるって言ってるんだよ」
日本文化の一つのはじまりは自分達にあると主張しているというのだ。聡美はその話を聞いて目をしばたかせ怪訝な顔になる。しかしだ。
茶道だけでなくだ。広瀬はこうも話した。
「茶道の他には剣道や柔道、折り紙に盆栽もあったか」
「多いですね。何か」
「他にもあったな。とにかく何でも起源を言う国だ」
「変わった国もありますね」
「デモで全身に蜂をまとったり他の国の国旗を食い千切ったり集団で寒中水泳もあったか。他には暗黒舞踏もやったりしていたか」
「あの、どういった国ですか?」
広瀬の話を聞いていていよいよわからなくなりだ。聡美は広瀬に怪訝な顔で問い返した。
「その国は一体」
「わからないか、やっぱり」
「変態の国でしょうか」
「まあ変態は多いかもな」
広瀬は視線を右にやって考える顔で答えた。
「実際にな」
「そうとしか思えないです」
「まあ。茶道の起源を言っていてもな」
「気にすることはないですか」
「起源なんてどうでもいいからな」
彼は言うのだった。
「それ言ったらお茶は中国からだからな」
「もっと言えばインドですよね」
「そこからはじまって日本の文化になったんだ」
広瀬は上城にも応えながら話す。
「それで起源とかどうでもいいからな」
「ですよね。調べればわかることですし」
「それで言うのって何か」
「おかしいですけれど」
「世の中おかしな人間も多い」
広瀬はふと難しい顔になって述べた。
「そうしたことを言う人間もいる」
「国もですね」
「そうした起源を」
「頭には入れておくべきだが気にしなくていい」
これが広瀬の話だった。
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