久遠の神話
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第十七話 六人目の戦士その八
「戦うっていうんですか?上城君と」
「ははは。剣士は戦い合うものだからな」
「だから今も」
「いや、今は遠慮させてもらうさ」
目も細めさせてだ。広瀬はこう詰め寄る感じの樹里に返した。
「俺もいつも戦いたい訳じゃないからな」
「そうなんですか」
「俺も色々と事情があるんだ」
「事情、ですか」
「つまりプライベートだな」
笑いながらだ。この表現を出すのだった。
「それなんだよ」
「じゃあ今は」
「僕とは」
「俺はこうしたことでは嘘は言わない」
広瀬独特の表現で上城にも告げたのだった。
「それは保障するさ」
「そうですか。それじゃあ」
「またな。ただな」
「ただ?」
「気をつけるんだな」
上城のその目を見ての話だった。
「また出て来たみたいだからな」
「剣士がですね」
「ああ、知ってたか」
「はい、銀月さんから聞きました」
そのだ。聡美を見ての言葉だった。
「そのことは」
「そうか。それなら話は早いな」
少し不敵に笑ってだ。広瀬は応えてだ。
そのうえでだ。あらためて上城に言ってきた。
「その六人目は俺が倒す」
「広瀬さんがですか」
「言ったな。俺は生き残る」
だからだというのだ。
「その為にはな。全員倒すからな」
「だからだっていうんですか」
「君も何時か倒すがその前にだな」
「六人目のその人を」
「会えば倒す。まずはそいつだ」
こう告げてだった。彼はだ。
今は上城達にだ。こんなことも言ってきた。
「それで今はだ」
「今はですか」
「どうだ?暇ならな」
「暇ならですか」
「茶室はどうかな」
聡美も見ての言葉だった。
「丁度茶道部で茶会を開いている。それに参加するか」
「えっ、この大学の茶道部で、ですか」
「そんなことをしてるんですか」
「お茶もまたいいものだからな」
今は屈託のない笑みで言う広瀬だった。
「だから。いいかな」
「え、ええまあ」
「それなら」
上城と樹里がだ。驚きを隠さないまま応える。その二人を見てだ。広瀬はすぐにその理由を察してだ。そのうえで彼等にこう話してきたのだった。
「俺が誘いをかけるのは意外かな」
「えっと、それは」
「その」
「俺だって戦うばかりじゃない」
それを断っての言葉だった。
「こうしてだ。君達と一緒に過ごすこともある」
「戦う相手でもですか」
「確かに戦うが敵対してる訳じゃない」
そういう関係ではないというのである。
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