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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第八十九話 異邦人達の挽歌

                  第八十九話 異邦人達の挽歌
 夜になり両軍はまた動きを開始した。夕刻での戦いと同じ陣形のまま戦いに入る。
「黒騎士を呼べ」
「はっ」
ドレイクは黒騎士をモニターに呼んだ。すぐにその仮面が姿を現わした。
「御呼びでしょうか、閣下」
「言うことはわかっていると思うが」
「はい」
彼は主君の言葉に頷いた。
「まずは先程の褒美だが」
「はい」
「どれでも好きなものを選ぶがよい。戦いの後でな」
「その前に一つ我が儘を聞いて頂きたいのですが」
「何だ、申してみよ」
「ショウ=ザマのことです」
彼は言った。
「あの裏切り者のことか」
「はい。あの男の首、私が挙げても宜しいでしょうか」
「ここでわしが否と言っても行くのであろう」
「・・・・・・・・・」
この言葉には答えはしなかった。
「全ての因縁、断ち切らんが駄目に」
「宜しいでしょうか」
「行くがいい」
彼はそれを認めた。
「止めはせぬ」
「有り難き幸せ」
「だが一つだけ覚えておけ」
「何でしょうか」
「そなたは。より大きくなれるのだ」
「大きく、ですか」
「それは覚えておくのだ。よいな」
「はっ」
ガラバも前線に向かった。既に前線ではアレンとフェイが指揮にあたっていた。
「あの旦那も来たみてえだな」
「ああ」
アレンはフェイの言葉に頷いた。
「どっちにしろこれが最後だろうからな。旦那も自分の腐れ縁を何とかしたいんだろう」
「御前はどうなんだ、アレン」
「俺か」
「ああ。あの坊やが御前さんを狙ってるそうじゃねえか」
「来たら戦うだけだな」
アレンの返事は素っ気無いものであった。
「俺は別にあいつは意識してないからな」
「そうか」
「それよりもフェイ」
アレンは今度は逆にフェイに声をかけてきた。
「何だ?」
「この戦いが終わったらどうするんだ?」
「そうだな。適当にいい領地でも貰って楽に過ごすか」
「そうか」
「御前さんだってそう考えてるんだろ?」
「まあな。ジェリルみたいにはなりたくはない」
「・・・・・・ああ」
これにはフェイも頷いた。あの時のことを思い出し暗い顔になる。
「ああして無茶な戦いばかりしてると。ああなりかねないからな」
「そうだな。そしてあの旦那も」
「やばいだろうな」
「わかるか」
「感じるだろ?オーラ力を」
アレンは無言でフェイの言葉に頷いた。
「まずいことになるぜ、多分」
「あの旦那も破滅か」
「そうなってもショウ=ザマをやりたいんだろうな」
「あの日本人の坊やをか」
「俺達なんかよりずっと因縁があるみたいだからな」
「難儀な話だな、生真面目過ぎるってのも」
「俺達みたいにある程度不真面目にやれねえからな」
「それがあの旦那だ。まあ最後まで見届けようぜ」
「ああ」
彼等はズワースに乗っていた。ドレイク軍の切り札とも言える強力なオーラバトラーである。その黒い姿が夜の空に浮かんでいた。
「敵軍の布陣が終わっています」
「思ったより早いな」
グローバルはシャニーの報告を聞いて呟いた。
「だがそれは我々も同じ」
「はい」
「ここまで来たならば多くは言わない。全軍攻撃だ」
「わかりました」
戦いはすぐにはじまった。両軍それぞれ動き激突した。忽ちのうちに乱戦に突入していた。
空と陸から攻撃を仕掛けるロンド=ベルに対してドレイク軍は空でその機動力を生かして巧みに戦おうとする。だがロンド=ベルの火力は圧倒的であった。
「そう簡単にやらせるかよ!」
ビーチャの百式のメガランチャーが火を噴く。そして敵軍に大きな穴を開ける。
「そこだあっ!」
「一気に仕掛けろ!」
そこに他のガンダムチームの面々が攻勢を仕掛ける。総崩れになろうとする。だがそこに赤い三騎士がやって来た。そしてロンド=ベルの攻勢を食い止めんとする。
「ここはあたし達が!」
「やる!他へ行け!」
キーンとガラリアが入った。そして赤い三騎士の相手に回った。
赤い三騎士の動きを止めてもまだドレイク軍には駒があった。アレンとフェイが果敢に突っ込む。
「遅れるなよフェイ!」
「ああ!」
二人はそのまま突っ込む。だがその前に二機のダンバインが姿を現わした。
「アレンか!」
「ほう、坊やのおでましか」
アレンはそのうちの一機がトッドのものであるのを見て不敵に笑った。
「俺はもう坊やじゃない」
トッドはそんなアレンを見据えて言う。
「軍に入った時からあんたを越えることを考えていた!そして今越えてやる!」
「感謝するぜ、俺を目標にしてくれたことはな」
まずはそれに礼を返した。
「だがな」
しかしすぐに元のシニカルな笑みになった。
「はいそうですかとやられるつもりはない。覚悟はいいな」
「こっちだってな!」
トッドも剣を抜いた。
「もう四の五の細かいことはなしだ!勝ってやる!」
「では俺は退けてやろう!」
「来い!」
二人はぶつかり合ったその横ではマーベルのダンバインがフェイのズワースと対峙していた。
「お互い恨みはないけれどね」
「これが戦争ってやつだからな」
「ええ、行くわ」
「来な。それで終わりにしようぜ」
二人も剣を抜く。そして派手に斬り合う。空中で激しい剣舞が展開されていた。
戦場はそのものが乱舞の場となっているようであった。そしてその中でグランガランとゴラオンも前線で激しい砲火を放ち、敵の攻撃の中にあった。
「リムル=ルフトはどうしていますか?」
その中でエレはエイブに問うた。
「ゲア=ガリングに向かっています」
「ゲア=ガリングに」
「はい、全ての因果を断ち切る為に」
「そうですか」
「ニー=ギブンはウィル=ウィプスに。そしてショウ=ザマはスプリガンに」
「それぞれの敵に向かっているのですね」
「はい」
「わかりました。では我々はその援護に向かいましょう」
「どちらへ」
「ゲア=ガリングにです」
エレは言った。
「ビショット=ハッタもまた野心を持つ男」
「確かに」
「彼を止めます。それでいいですね」
「御意」
「では私はウィル=ウィプスに向かいましょう」
「シーラ様」
シーラがモニターに現われた。
「あの巨艦を倒すには我々も覚悟が必要です」
「では」
「はい。いざとなればこのグランガランを犠牲にしてでもあの巨艦、そしてドレイク=ルフトの悪しきオーラを防ぐつもりです」
その言葉は本物であった。シーラの強い意志がわかった。
「わかりました、では私も」
「ここが正念場ですね」
「はい」
二人の女王はそれぞれ頷き合った。
「参りましょう・・・・・・!?」
だがここで急に二人の顔が変わった。
「その悪しきオーラは」
「憎しみ、そして」
二人は同時にそのオーラを感じていた。
「怒り。これは」
「ショウ=ザマの方へ!」
シーラは叫んだ。
「大変です、カワッセ艦長」
「は、はい」
シーラはモニターの中で咄嗟にカワッセに声をかけた。
「すぐにショウ=ザマに連絡を。とてつもなくドス黒いオーラ力が貴方に迫っていると」
「そのオーラの主は」
「これは・・・・・・」
「バーン=バニングス」
エレが言った。
「彼もまたそのオーラを」
「まさか」
「大変なことが起ころうとしております」
シーラは重い顔でこう言った。
「またあの惨劇が」
「起ころうと」
エレの顔も重いものとなろうとしていた。戦いとはまた別の恐ろしいことが起ころうとしていたのであった。
その頃ショウのビルバインとリムルのビアレスはほぼ同時にそれぞれの目標へと辿り着いていた。スプリガンとゲア=ガリングがその前にあった。
「ヒィッ!」
ビショットはリムルのビアレスの姿を認めて思わず悲鳴をあげた。
「また来た!」
「何を恐れておられるのですか!」
ルーザはそんな彼を叱咤する。
「敵が来れば倒せばいいだけのことではないですか」
「し、しかし」
「臆することはないのです」
そしてその言葉通り彼女は臆してはいなかった。
「ここで倒せばいいだけ。さっきは上手くいかなかったが」
「お母様、やはり」
「役に立たない駒を消すだけ」
またあの邪悪なオーラがゲア=ガリングを包んでいた。
「それだけのこと!」
「もう私も迷わない!」
リムルも覚悟を決めていた。
「ここでお母様を!」
「ガキが!死ね!」
オーラキャノンを自らの手で放つ。だがそれはあえなくかわされた。
そしてそのリムルの後ろにゴラオンもやって来た。二隻の戦艦が対峙する形ともなった。
「リムル=ルフトへの援護を」
「はっ」
エイブはエレの言葉に頷いた。
「この戦艦を沈めなければ。この戦いは終わりません」
「わかりました。各砲座撃て!」
ゴラオンからの攻撃もはじまった。二隻の戦艦も互いに戦闘に入った。
ショウはミュージィのブブリィと戦っていた。その巨体からは想像も出来ない程の俊敏な動きでショウを翻弄していた。
「クッ、相変わらず動きが素早い」
「感心してる場合じゃないよ、ショウ」
そんな彼にチャムが言う。
「このままだと」
「わかってるさ」
ショウはそんなチャムに応える。
「ここは。一気に仕掛ける」
「どうするの?」
「まとめてやっつける」
「スプリガンまで?」
「そうさ。まあ見ていてくれ」
そう言うと前に駆った。そこへブブリィとスプリガンの攻撃が加えられる。だがビルバインは巧みな動きでそれをかわす。
「ここでショウ=ザマを倒せば」
ミュージィはブブリィのコクピットからショウを見据えていた。
「ショット様が夢に近付かれる」
「ミュージィへの援護を強くしろ」
ショットはショットでミュージィと共にショウを攻撃していた。
「ミュージィがいなければ。私も」
彼は今本心を語っていた。野心、そしてミュージィへの想いを。その為攻撃は何時になく真剣なものであった。
「ミュージィはやらせぬ!」
「ショット様の為に!」
二人は同時に攻撃を加えた。今それが同列になった。
「今だ!」
ショウはその時を待っていたのだ。その剣に全てのオーラを集中させる。
「これで・・・・・・!」
ビルバインも緑色に輝いていた。オーラが全てを包む。
「仕留めてやる!覚悟!」
そしてオーラに包まれた剣を一閃させた。緑の光が稲妻となってスプリガンとブブリィを襲う。
「うおっ!」
それがオーラボンバーとオーラクルーザーを同時に払った。そのまま突き抜けていく。
だがダメージは確実に与えた。ブブリィもスプリガンもそのダメージは大きかった。
「スプリガン、大破です!」
艦橋で悲鳴が起こった。
「も、もうもちません」
「馬鹿な・・・・・・」
ショット自身もダメージを受けていた。倒れ込み口から血を出している。
「わ、私が敗れるというのか・・・・・・」
「ブブリィもかなりのダメージを受けています」
「何だと!?」
ショットはそれを聞いて立ち上がった。満身創痍であるが何とか立つことは出来た。
「ミ、ミュージィは無事なのか」
「ショット様」
ミュージィがモニターに姿を現わした。
「私ももう・・・・・・」
「そうか」
見れば彼女も血を流していた。ショットはそんな彼女の顔を見て力なく微笑んだ。
「ならば一緒だな」
「はい」
ミュージィはショットのその言葉に頷いた。
「私達は。一緒だ」
「最後も」
「そうだ。一緒に行くぞ」
「わかりました、ショット様」
「ミュージィ・・・・・・」
これが最後の言葉であった。スプリガンもブブリィも爆発した。そして二人は炎の中に消えたのであった。
「ショットもこれで最後ね」
「ああ」
ショウはチャムの言葉に頷いた。
「これで。あの男も終わった」
「ショウ、油断するな!」
「!?」
不意に勇の言葉が通信に入って来た。
「どうしたんだ、勇」
「そっちに来るぞ!」
「来る!?何が」
「ショウ、黒騎士です」
シーラの通信も入って来た。
「黒騎士がそちらに向かっています」
「奴が・・・・・・」
「ショウ=ザマ、そこかっ!」
オーラキャノンの砲弾が襲い掛かる。だがそれは何とかかわした。
「この攻撃、やはり!」
「そうだ、私だ!」
ガラバがビルバインの前に姿を現わした。
「ここで。決着をつける」
「やはり。御前は自身の憎しみをコントロール出来ないのか」
ショウにもそれがわかった。憎悪のオーラが彼のガラバを包んでいるのがはっきりと見えた。
「私には。もうそんなことはどうでもいい」
黒騎士は憎悪に燃える目でショウを見据えていた。
「貴様さえ倒すことが出来れば!参る!」
「ならば俺も!」
二人は同時に動いた。
「御前の悪しきオーラ、切り払ってやる!」
「そうはさせん!」
ショウは続いて戦いに入った。ショットもミュージィも倒れても彼の戦いはまだ続いていた。
そしてリムルも戦っていた。ゴラオンの援護を受けながらゲア=ガリングに攻撃を仕掛けている。
「何をしているのですか!」
リムルのビアレスは巧みに攻撃をかわす。それを見てルーザは苛立っていた。
「オーラバトラー、小娘一人。倒せないというのですか」
「この顔は・・・・・・」
最早ビショットは蚊帳の外であった。彼は離れた場所からルーザを見ていた。
「悪鬼の顔だ」
そしてこう呟いた。だがその声はルーザの耳には入らない。
「私は・・・・・・この様な女を抱いていたのか」
「こうなれば私の手で!」
またオーラキャノンの射撃を自ら行う。
「始末してくれましょう!死ぬがいい!」
「ハァッ!」
だがリムルはその砲弾を切り払った。見ればその全身が緑色に輝いている。
「これで・・・・・・!」
それはオーラトマホークにも宿っていた。それを投げる。
斧は緑の光を放ちながら唸りをあげて飛ぶ。そしてゲア=ガリングを貫いた。
「ヌウッ!」
「陛下、エンジンを完全に破壊されました!」
ビショットに家臣から報告が入る。
「エンジンをだと」
「はい、最早この艦は」
「そんな筈がない、ゲア=ガリングが、我がクの国の艦がそんな簡単に」
ビショットはそれを必死に否定しようとする。だが艦橋でも火の手が次々とあがっていた。
「沈む筈が・・・・・・・ヌオオオオオオッ!」
「リ、リムル!」
ルーザは最後の叫びをあげた。
「やはり御前は産むべきでは・・・・・・!」
それが最後の言葉であった。ルーザもまた炎に包まれた。ゲア=ガリングはその巨体を炎に包ませながらゆっくりと沈んでいく。そして空中で爆発して消えてしまった。
「終わりましたね」
「はい」
リムルはエレの言葉に頷いた。
「これで。お母様は」
「貴女は自身の手で全てを終えられました」
「私の手で」
「悪しきオーラ力を。払ったのです」
ここでエレはあえてこう言った。
「そして業を消し去られたのです」
リムルに母殺しの罪を感じさせない為の配慮であった。
「また。生まれ変わったら」
リムルはポツリと呟いた。
「その時こそ親子三人で」
それが彼女本来の願いであったのだ。果たせはしなかったが。だが何はともあれ彼女は己の決着を己自身でつけたのであった。
赤い三騎士もそれとほぼ同時に倒れていた。
「クッ、素早い!」
「まさか俺達が!」
「ビショット様、今そちらへ!」
キーンとガラリアの連携の前に敗れ去っていた。二人が背中合わせで放ったオーラキャノンの射撃によりトリプラーを破られたのだ。そして主君の後を追っていた。
「見事なものだな、キーン」
ガラリアは後ろにいる彼女に対して言った。
「まさか。上手くいくとは思わなかったぞ」
「仕掛けてくるのはわかっていましたから」
キーンはガラリアにそう返した。
「わかっていたら。対処は出来ます」
「そうか。どうやら御前も成長したようだな」
「えへへ」
「声もな。そのうち私より色気が出るかもな」
「まさか」
「まあそれも楽しみにしておこう」
「ビショットもショットも倒れたか」
「はい」
戦局はドレイクにも伝わっていた。
「あの二人が。まさかこうも簡単に」
「御二方の軍は既にほぼ消滅しております」
「うむ」
「ショット殿のおられた場所には黒騎士がおりますが」
「ショウ=ザマと交戦中だな」
「はい」
「そしてロンド=ベルはその軍の殆どをこちらに向けて来ようとしているのだな」
「グランガランが突撃して来ています」
「シーラ=ラパーナ、何処までも私の前に」
「如何為されますか?」
「構わぬ、ここで戦う」
それでもドレイクは退くことはなかった。それが出来ないことは彼自身が最もよくわかっていた。
「ここでな。よいな」
「はっ」
「アレンとフェイはどうしているか」
「交戦中です」
「そうか」
「他のオーラバトラー部隊も。その全てが」
「ここはウィル=ウィプスだけで凌がなければならぬか」
今目の前にグランガランが現れた。そしてもう一人。
「ニー=ギブン。アの国の者か」
それを思うとドレイクの胸中にあるものが宿った。
「アの国ではじまり、アの国で終わる」
彼は呟いていた。
「それが運命ならば。従わねばならぬかもな」
グランガランとウィル=ウィプスの戦いもはじまった。そしてニーもその中にいた。
「これでそろそろ・・・・・・」
トッドはその剣を振り被った。
「終わりにさせてもらうぜ!」
「ウオオオッ!」
その一撃がアレンのズワースを撃った。その動きが止まる。
「クッ、ドジったか!」
「決めるわ!」
マーベルも攻撃を出していた。オーラバルカンで牽制した後で懐に飛び込み突きを入れる。
「クウッ!」
そしてフェイのズワースも動きを止めた。
「ここまでかよ!」
二機のズワースはゆっくりと大地に落ちる。トッドはその様子を上から見下ろしていた。
「終わったかね」
「まあこの戦いはこれで終わりでしょうね」
マーベルがそれに応える。
「けれどまだ別の戦いが」
「わかってるさ、それは」
トッドはそれに答えた。
「俺もこれでも聖戦士だからな」
「自覚が出て来たということかしら」
「それなりにな。おっ、あの二人生きてるみたいだぜ」
「あら」
見ればその通りであった。アレンとフェイは無事脱出していた。
「しぶといね、どうも」
「人間そう簡単には死なないわよ」
「どうやらそうみてえだな。まあまた機会があったら会うだろう」
「それじゃあ行くわよ」
「おう」
二機のダンバインは飛んだ。そしてまた戦場に向かうのであった。
その間ショウと黒騎士は激しい応酬を繰り広げていた。互いに一歩も譲らない。
「黒騎士!いやバーン=バニングス!」
ショウは黒騎士、いやバーンに問うた。
「まだやるというのか!」
「言った筈だショウ=ザマ!」
バーンは彼に向かって言う。
「私の騎士の誇り、それを取り戻す為に!」
「無益な戦いを続けるのか!」
「無益な戦いなどではない!」
彼は言う。
「貴様を倒すこと・・・・・・決して無益ではない!」
「そして憎悪に心を飲み込まれてもか!」
「それでもだ!」
彼の心に迷いはなかった。
「貴様を倒す!それだけだ!」
「まずいよ、ショウ」
チャムはショウの耳の側で囁く。
「このままいっちゃうと」
「だがやらなくちゃいけない」
ショウも退けなかった。
「このままではどのみちバーンは」
「うおおおおおおっ!」
ガラバが突進して来た。
「悪しきオーラに飲み込まれる!それなら!」
オーラショットを放った。
「そのオーラ力を払う!これで!」
オーラショットがガラバを貫いた。
「やった!?」
「いや、まだだ!」
「この程度で!」
だがまだガラバは動いていた。
「私を、私を止められるものかあああっ!」
「や、やっぱり!」
「バーン、遂にか!」
またしても異変が起こった。バーンのガラバをその黒い悪しきオーラが包んだ。そして異様に巨大化していった。
ガラバ、そしてバーンがハイパー化した。その巨大な姿をショウ達の前に姿を現わしたのであった。
「ショ、ショウ」
「バーン、御前も」
「これだ、この力だ!」
だがバーンはハイパー化に恐れを抱いてはいなかった。むしろその逆だった。
「この力があれば私は貴様に勝てる!」
ショウに向かって叫ぶ。
「何も恐れることはない!今日こそ貴様を倒せる!」
「そこまでして勝ちたいというのか!」
「何を今更!」
彼は言う。
「私は負けぬ!遂に貴様を倒す時が来たのだ!」
「クッ!」
「ショウ、まずいよ」
チャムが耳元で囁く。
「大丈夫だ」
だがショウはこう言ってチャムを宥める。
「ああなっても、あいつは勝てはしないさ」
「何で?」
「悪しきオーラは。倒される運命にあるんだ」
ショウは言う。
「バーン!貴様の望み通りここで決着をつける!」
「元よりそのつもりだ!」
「この俺の手で!貴様の悪しきオーラを断ち切ってやる!」
ビルバインは天高く駆った。そしてその頭上めがけて襲い掛かったのであった。二人の最後の戦いが幕を開いた。そしてグランガランとウィル=ウィプスの戦いもはじまっていた。双方互いにオーラバルカンを撃ち合う。
「オーラキャノンは撃てぬか」
「この距離ですと」
家臣の一人がドレイクに答えた。
「そうか。シーラ=ラパーナ考えたな」
「どうされますか?」
「ならば仕方がない」
だがドレイクはそれもよしとした。
「各砲座に伝えよ」
そして言った。
「それぞれ怯むことなく撃て、とな」
「はっ」
「そしてもう一人」
ニーの存在も忘れてはいなかった。
「若僧を。始末しておくのだ。よいな」
「わかりました」
ウィル=ウィプスは弾幕を張っていた。だがニーはその間を巧みにすり抜け攻撃の機会を狙っていた。
「例え化け物でも」
彼は探していた。
「弱点はある!そこを斬る!」
バルカンの攻撃は彼には通じなかった。そしてそれをシーラが援護していた。
「ニー=ギブンを行かせるのです」
その為の接近しての攻撃であった。
「そして。全ての災いを」
その間にもニーは飛ぶ。そして遂に一点を見つけた。
「そこだあっ!」
ニーのレプラカーンが赤から緑になった。そしてハイパーオーラ斬りを放つ。
「ドレイク!貴様の野心もここまでだ!」
緑の刃がウィル=ウィプスの巨体を一閃した。光が貫いた後でウィル=ウィプスはその動きを止めた。
次の瞬間火の手があちこちであがる。運命は決したのは誰の目にも明らかであった。
「お館様!」
「ヌウ・・・・・・」
ドレイクも負傷していた。爆発した際の破片が胸を貫いていた。
「すぐにお手当てを!」
「いや、よい」
だがその家臣を下がらせた。
「それよりも。そなた達は早く逃げよ」
「ですが」
「この艦はもう持たぬ。そして私もな」
「そんな・・・・・・」
「器ではなかった」
ドレイクは口から血を漏らしながら言った。
「それだけのことだ」
「クッ・・・・・・」
ドレイクはゆっくりと目を閉じた。そして紅蓮の炎の中に包まれウィル=ウィプスも沈んでいった。何とか脱出艇達が離脱したがそこにドレイクの姿はなかった。ドレイクも遂にここに倒れたのであった。
「閣下!?」
その爆発はバーンにも聞こえていた。咄嗟に顔をそちらに向ける。
「バーン、御前の相手は俺だ!」
「わかっている!」
怒りに満ちた声で応える。
「閣下の仇も。取らせてもらう!」
攻撃を放つ。だがそれは冷静なものではなかった。
「これなら!」
ショウは分身でかわした。そして一つになったその瞬間に動いた。
「はあああああああああああああっ!」
「ムッ!」
「バーン!これで終わりだあっ!」
ビルバインが一瞬巨大に見えた。だがそれは一瞬のことだった。
「俺の全てのオーラ力!今ここで!」
「いっけえええええええええええ!」
チャムも叫んでいた。今二人は同じになっていた。
「ハイパーオーラ斬り!やっちゃえええ!」
「決める!」
そして緑の光がその場を覆った。ビルバインとガラバは交差していた。
「馬鹿な、この力をもってしても私が・・・・・・」
ガラバは敗れていた。炎に包まれようとしていた。
「バーン、御前はオーラの使い方を知らなさ過ぎた」
ショウは振り向いて言った。
「それがこの結果だ!御前は自分のオーラに飲み込まれたんだ!」
「クッ」
歯噛みする。
「私は、私自身に敗れたのか」
「そうだ」
「フン、今になってそれに気付くとはな」
ガラバはゆっくりと落ちていた。
「因果なものだ」
そして地面で爆発する。それが最後のドレイク軍の機体であった。
ドレイク軍との戦いはようやく終わった。夜はもう明けようとしており、朝日が昇りはじめていた。
その朝日の中でロンド=ベルは戦後処理にあたっていた。連邦軍も協力していた。
「やれやれ、朝も早くから送還かよ」
「まあそう言うな」
生き残ったドレイク軍の将兵達はとりあえずは捕虜収容所に送られることになった。そしてそこで今後の身の振り方を考えさせられることとされていた。これはミスマル司令及び今議会の中心にいる政府の穏健派の考えであった。アレンとフェイもその中にいた。
「生きているだけでも儲けものなんだからな」
「それもそうか」
アレンはフェイの言葉に頷くことにした。
「これからどうするかゆっくりと考えられるしな」
「で、御前はどうするんだ?」
「俺か?」
「ああ。また役者に戻るのか?」
「俺はどうも役者の才能はあまりないみたいだしな」
少し苦い笑いを浮かべて応えた。
「それは止めとくさ」
「そうか」
「それよりも連邦軍に入れるのか?」
「多分大丈夫だと思うぜ」
アレンは言った。
「今は一人でも人手が必要だからな」
「そうか。じゃあそっちも悪くないか」
「軍人になるのか」
「パイロットにな。空を飛ぶのも悪くはねえしな」
「そうかい、じゃあ俺もそうするか」
「御前も軍に戻るのか」
「古巣にな。それじゃ軍でも宜しく頼むぜ」
「ああ」
二人はこうして第二の人生を歩むことになった。他の者はバイストンウェルへの帰還を望む者達が多かったが彼等はこの戦争が終わるまでとりあえずは地上に留まってもらうことになった。戦いのことは咎められることはなかった。これはドレイク達が戦死していたせいであったがやはりミスマル司令や穏健派の意向によるものであった。
「あの三騎士も生きていたそうよ」
「あれで?」
キーンはマーベルの言葉に驚きの声をあげた。今彼等は戦後処理が終わりダブリン郊外の空き地でくつろいでいたのだ。だがパイロットスーツや鎧は着たままでヘルメットや兜だけ外していた。
「爆発してたのに」
「咄嗟に逃げ延びたそうね」
「そうだったの」
「彼等はバイストンウェルに帰りたいそうよ。それまで地上にいるって」
「そう」
「何が何かわからないままラ=ギアスや地上に送られていたから。そう考えるのも当然でしょうけれど」
「けれど帰られるのは戦争が終わってからなのね」
「ええ。私達もね」
「それまでは戦いっと」
「そうよ。ドレイクは倒れたけれど敵はまだいるわ。頑張りましょう」
「ええ」
「それで面白い旦那がこっちに来てるぜ」
トッドが二人のところにやって来てこう言った。
「面白いって?」
「奇跡の生存ってやつさ」
「まさか」
「そう、そのまさかさ」
そしてその男がやって来た。
「俺達に挨拶しに来てくれたぜ」
「バーン=バニングス」
ショウは彼の姿を認めて思わず声をあげた。
「どうしてここに」
「それよりもよく生きていたわね」
「運がよかったのだろうな」
「運が」
「そういう問題じゃねえと思うけどな」
「だとすれば運命か。何はともあれ私は生き残った」
「それで。どうしてここに来たのかしら」
マーベルはそこまで聞いたうえで問う。
「まさか。ショウとまた戦う為かしら」
「いや、そうではない」
だがバーンはそれを否定した。
「私が来たのは別の理由だ」
「それは一体」
「ショウ=ザマ」
彼はショウに顔を向けてきた。
「貴様はあの時私に言ったな」
「最後の戦いの時か」
「そうだ。あの時私は自分に負けたのだと言ったのを覚えているな」
「ああ」
「貴様に敗れるよりも自分に。悪しきオーラに飲まれたのだと」
「そうだ、確かに言ったさ」
ショウもそれを認める。
「御前はその悪しきオーラに取り込まれたから負けたんだ」
「そうだ、今それがようやくわかったのだ」
バーンは静かな声で述べた。
「私は。オーラの使い方を間違っていた」
「そして今度はそのオーラをどうするんだい?」
「それを見る為にここに来たのだ」
トッドにそう返す。
「私も。御前達と共に戦わせてくれ」
「俺達とか」
「ああ。是非頼む」
「こりゃまた意外な展開だな」
流石のトッドも戸惑いを見せた。
「バーンの旦那が俺達の仲間に入りたいなんてよ」
「ですがよいことです」
シーラがここで出て来た。
「バーン=バニングもまた。正しきオーラ力に気付いたのですから」
「はい。ならば彼を迎えましょう」
「エレ様も」
「それで宜しいですね」
「御二人が言われるのなら」
他の者に異論はなかった。
「それで」
「はい。これで全ては決まりました」
シーラが代表する様に言った。
「バーン=バニング、私達の元へようこそ」
「はい」
こうしてバーンがロンド=ベルに参加することになった。ガラバは破壊されており残っていたズワースを使用することに
なった。彼はオーラバトラーの小隊に編成されることになった。
「また本当に意外ね」
クェスがその話を聞いて言った。
「あんたもここにいるし。何か色々と集まってるわね」
「俺が来てるのも意外かよ」
ギュネイはそれを聞いて顔を苦くさせた。
「だってあんた元々ネオ=ジオンだし」
「それを言ったらプルやプルツーもだろ」
「あっ、そうか」
「御前あの二人とやけに仲がいいけれどな」
「あと美久さんやレトラーデさんとも仲がいいわよ」
「何か引っ掛かる顔触れだな」
「ヒギンスさんやレッシィさんともね」
「それはわかるな」
「前は子供は嫌いだったんだけれど」
「声で選んでる気がするんだけれどな」
「あんたもそうじゃないの?この前ミオちゃんと仲良く話してたじゃない」
「まあな」
否定するつもりもなかった。
「何かな。波長が合うんだ」
「キャラクターが全然違うのに」
「それでもだよ。あと綾波には鳥さんって言われたな」
「何が何かわからないわね、それは」
「俺の声も何か色々聞き間違えられるんだよな。何でかな」
「ブライト艦長みたいね」
「あの人もそうだよな」
「弾幕薄いぞ!何やってんの!って」
「まあ声が格好いいからいいだけどな」
「そういえばあの人フォウさんと仲がいいよ」
「つっても堅物だから浮気はないだろうけどな」
「クリスさんとも仲いいし。ノリコさんのこともやけに気にかけてたわよ」
「凄い関係だな、何か」
「まあそうね。実はあたしもウラキ中尉は気になるし」
「ほお」
「他の世界で。何かあったのかした」
「ペンタゴナがどっかでじゃねえのか?」
「具体的ね、また」
「そんな気がするだけだけどな」
「そうなの」
「まあ声の話は止めておこうぜ。タシロさんとあの長官だって声が似てるし」
「そうね」
「こら!早く出んか!」
そしてここでその長官の怒鳴り声が飛び込んで来た。
「ゲッ、噂をすれば」
「何とやらね」
「ガス少尉!いるならいるで返事をせよ!」
「了解。それで何の用件でしょうか」
「今太平洋は大変なことになっておる」
「この人が長官だってだけで充分だけれどね」
「だから聞こえるぞ」
「ドクーガがまた活動を開始したのだ」
「ドクーガが」
「左様、連中がオルファンに興味を示しているようなのだ」
「オルファンに」
「今オルファンはユーラシア大陸に上陸し、シベリア上空で留まっている」
「シベリアですか」
「そうだ。そしそこにドクーガが向かっている。それを迎え撃つのだ」
「わかりました。そして連邦軍は」
「今ガイゾックに戦力を集中させておる。奴等は奴等で奇怪な行動を取っているからな」
「具体的にどんなことですか?」
「相変わらず殲滅作戦をとっておる。しかしそれだけではない。何かをしておるのだ」
「その何かを御聞きしたいのですが」
「最近日本で突如として爆破テロが起こっている」
「らしいですね」
「それと関連があるやも知れぬのだ。今は調査中だ」
「それじゃあ太平洋軍は回せないのですね」
「そうだ。それでは宜しく頼むぞ」
言うだけ言ってモニターから姿を消した。後には苦い顔のギュネイとクェスだけが残った。
「何か好き勝手言ってくれるだけ言うな」
「けれど大変なことは本当みたいよ」
「ああわかってる、すぐに皆に報告だ」
「うん」
二人はすぐに仲間達に三輪の話を伝えた。彼等は勝利の喜びに浸る時間もなくすぐにシベリアに向かうことになった。
「やれやれってところだな」
キリーはゴラオンの中で自伝をキーボードで叩きながらぼやいていた。
「暫くドクーガの連中の話を聞かないと思っていたら」
「急に出て来たわね、また」
「何でもずっとミケーネやアフリカの連邦軍と戦っていたそうだけれどな」
「そうだったの」
レミーは真吾の言葉に顔を向けた。
「まあアフリカでもいつもの調子だったんだろうけど」
「あの三人はそうそう変わりはしないさ」
「あそこまで個性が強いとな。自伝を書かせると面白いものができそうだ」
「おいおい、商売仇かよ」
「確かキリーのホットドッグ屋の前がケルナグルール=フライドチキンだったな」
「ああ。あれであのおっさん商才あるんだ」
「何度聞いても意外ね」
「しかも奥さんまで美人で愛妻家ときたものだ。世の中おかしなものだ」
「けれどあの三人根っからの悪人じゃないわよ」
「まあな」
「仲間だったら案外楽しく酒でも飲めそうだがな」
「そうね。ブンドルは何かと五月蝿そうだけれど」
「そろそろそのブンドルとも決着をつけたいな」
「あの三人ともな」
「それを考えるといい機会ね、ここでドクーガともケリをつけましょう」
「ああ」
今度はドクーガ、そしてオルファンとの戦いが待っていた。ロンド=ベルに休む時間はなかった。

第八十九話完

2006・4・26  
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