万華鏡
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第七話 お泊り会その四
「それでな」
「他にも?」
「車だってダークミラーでな」
「本当にその人学校の先生だったの?」
「そうだったんだよ」
「ううん、信じられないけれど」
琴乃はいよいよ眉を曇らせる。
「そんな先生がいるなんて」
「信じられないだろ。八条高校じゃ一人もいないだろ」
「そんな先生はじめて聞いたわ」
「だよな。普通はそうだよな」
「何でそんな先生がいたのよ」
「どうしてだろうな。あたしの中学校公立、市立だったけれどな」
つまり神戸市立だったというのだ。五人がいるこの町だ。
「そんなおかしな先生が本当にいたんだよ」
「懲戒免職になってから再起不能になって何よりね」
「もう絶対に会いたくないな」
美優も嫌っていることが明らかだった。言葉にもそれが出ている。
「あんな奴にはな」
「そうよね。けれどそんな先生もいるよね」
「聞いた話だとコネで入ったらしいな」
「コネ?」
「何でも妙な、教育委員会にコネが効く立場だったらしくてさ」
「親戚の人が教育委員会の偉いさんだったとか?」
「いや、また別だったらしいんだよ」
教育委員会だけでなくコネというものは色々だ。地域やそうしたことも関わったりするものである。まだ高校生の彼女達にはわからないことだが。
「その縁で高校までどうしようもないゴロツキでもな」
「高校の時から酷かったのね」
「ああ、とんでもないならず者だったんだよ」
そうだったというのだ。
「で、剣道だけ出来て大学に入ってさ」
「そこからコネで先生になったのね」
「酷い話だろ。それで先生になってな」
「やりたい放題だったのね」
「もう暴力教師で有名だったよ」
好き勝手に暴力を振るえる仕事が世の中には二つあると言われている。それはヤクザ者と学校の教師だと。
「先生ってよく自衛隊馬鹿にするけれどな」
「自衛隊は違うでしょ」
「震災の時凄かったらしいよな」
「うん、お父さんもお母さんもいつも言ってるけれど」
琴乃達が今いる神戸はかつて阪神大震災で致命的なダメージを受けた。何千人も死んだ。東日本大震災までは日本で最悪の悪夢だった。
「その時自衛隊の人達が凄く頑張ってくれたって」
「だよな。けれどその先生はな」
「何してたの?震災の時」
「前ちらって聞いたんだよ」
あくまで噂だが、だというのだ。
「ゴロツキ仲間と一緒に火事場泥棒みたいなことやってたらしいな。まだ高校生だったらしいけれどな」
「うわ、最悪」
「証拠はないけれどな」
それどころではなかった。震災の時は。
「ものを盗んだり人を襲ったりしてな」
「酷いことしてたのね」
「そうみたいなんだよ。自警団ぶってな」
「その実はだったの」
「そんな奴が教師だったんだよ」
「世の中酷いことがまかり通るのね」
「けれど。悪いことってやっぱり最後はな」
どうなるかというのだ。その果ては。
「報いがあるよな」
「その大学生の人に悪事を暴かれて通報されて」
「で、返り討ちにあって再起不能になったんだよ」
「本当に自業自得ね」
「悪い奴は絶対にそうなるんだよ」
美優は今この世の真理の一つを話した。
「この学校にはそうした人がいない様に願うよ」
「そうね。本当にね」
こうした話をしながら五人は部室に入った。そこでまずはジャージに着替えてランニングやサーさっとトレーニングをした。それからだった。
曲の演奏だ。その時に先輩達が言う。
「汗かくからね」
「水分はしっかりと補給してね」
脱水症状、熱中症には気をつけろというのだ。
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