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FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-

作者:joker@k
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番外編  十五歳ルシア×S級モンスター×悪戦苦闘

 
前書き
短かッ! 

 


 今ルシア・レアグローブが対峙している魔物は並の力量ではない。S級と呼ばれるモノに認定されている程の凶悪で凶暴なモンスターである。三メートルを優に越す体長。ゴリラに似た姿をしているがそれは外見だけの話であり比べ物にならない程の威圧感を放っている。自身の身を守るため銀色の剛毛という鎧で覆われ背中から生えている三本目、四本目の強靭な豪腕が特徴的である。

 その四つの豪腕から振り下ろされる拳は地を割り、爆音を奏でる。
 先程からまったく効かないまだ十五歳の少年の攻撃に対して相手は一撃必殺の拳を振るうだけだ。

 圧倒的な力の差。金髪の少年が今まで経験したことのない格上相手の命の奪い合い。

 DBも歯が立たず、デカログスの刃も剛毛によって阻止される。
 それに対して金髪の少年はすでに満身創痍だった。一撃、ただ一撃、左からの猛撃を受けただけで左腕はすでに曲がらぬ方向に曲がり、肋骨は二本折れて内臓も傷ついてしまった。

 少年は初めてのS級クエストに対して多少の慢心があった。今まで圧倒的な力で敵を下し続けたルシアは敵と命のやり取りをすることに対して恐怖というものを知らなかった。故にこの時初めて体験することになる。



―――恐怖、畏怖、そして明確な死への想像



 様々な感情が金髪の少年を襲いそれが少年の行動を束縛する。感情というものは戦闘時にしても重要な要素の一つである。それが己にとって有効に働くときもあれば、マイナスに働くときもある。

 恐怖によって身体が硬直することなど人間誰しもが経験したことがあるだろう。争いの多いこの世界で、特に魔導士ギルドに所属している者ならばS級になる以前に克服すべきことである。

 しかしルシアは特別だった。数多の能力に戦闘中それを瞬時取捨選択する才能、天性の身体能力、これで乗り切ってきた。いや乗り切る以前に苦戦したこともなかった。敵に仲間を人質に捕らえられたときでさえ、瞬時に作戦を立て仲間を救出し一対一ならば絶対勝てると自信を持っていた。


だが――


「ぐッッ!!」

 一瞬の硬直の結果がこの様だ。煩く感じるガチガチガチと聴こえてくる音が恐怖からくる歯音だと気がついたとき、自身のあまりの情けなさに少年は歯を食いしばるが、再び真正面にいる敵と向き合ったとき、何の感情も持たないような無機質な瞳に再び恐怖する。

 今まで戦ってきた魔物達とは一線を画す強さ。ただ単に身体能力だけの問題ではなく、その魔物が放つ殺気や威圧は段違いだった。

 本来この少年の気質からすれば強者という存在は喜ぶべきことなのだろう。本人もそう思っていた……しかし、それは同じ強さのステージに立っている場合の話。ギルダーツの時のように別次元で同じステージにすら立てていない相手との【死闘】はまた違ってくる。

 それをたった今少年は気がついた。戦うことは好きだ、しかし今のこれが戦いと言えるのか。否。これは戦いですらない。攻撃がまったく効かずただ逃げ惑っているだけだ。そんな葛藤の中、敵は待ってはくれない。

 その巨体から考えられないほどの速度で向かってくる敵に足が竦み、身体が思うように動かない。敵が自慢の豪腕を振り上げた時やっとのことで回避するもその時の風圧により少年の未だ小さい体はいとも簡単に吹き飛んでしまう。大地に身体をぶつけながらもゴロゴロと転がった先でようやく勢いが止まる。地に手を着くと少し大きめの水溜りがあった。水に映る自分の泥だらけの情けない顔を見た瞬間、今まで沸々と煮えたぎっていた感情が爆発した。それは……


――憤怒


 この極限で不安定な精神状態の中で日頃では考えられないような感情の起伏が起こる。先程まで感じていた恐怖や畏怖を拭い去るほどの自分への怒り。こんな醜態を晒しておいて何が戦闘狂だ。何がバトルジャンキーだ。自分への怒りが収まらず、震える握りこぶしから血が滴りだす。今度の震える歯音は恐怖からではなく、怒りからくるものへと変わっていた。


「なんて――無様」

 ポツリと漏らした一言で先程までの怒りが一周して失せていった。俯いていた顔を上げると不敵な表情を浮かべ、口元は三日月型へと変わっていた。魔物は瞬時にその変化に気がついた。さっきまでとはまるで違う変化に初めて表情が曇る。だがどちらにしろ相手は傷つきまともに戦える状態ではない。
 そう、気を持ち直しただけのはず……なのに、なのに何故。


――――自分が捕食される側だと本能で感じるのか


 魔物は戸惑いを隠せなかった。
 そして魔物はここでの分岐点を間違えた。素直に野生らしく本能に従い、逃げることが正解だった。逃亡を選択しなかった理由はプライドと今までの優位性。その考え方は間違いではなかった……ただ、相手が悪かった。

 少年が靴の爪先を地面に何度か叩き魔物に向かって不気味に微笑んだ。次の瞬間、少年は凄まじい速さで魔物の真正面に現れた。咄嗟のことであるが十分に対応できた速さにも関わらず、あまりの突然のことに驚愕し硬直して攻撃動作が一瞬遅れてしまった。それが明暗を分けてしまった。

『粉砕の一撃(オールクラッシュ)

 ルシアの鋭い右ストレートが接触した瞬間、魔物の上半身が木っ端微塵に吹き飛んだ。残る下半身からは血飛沫が噴出し辺りに血の雨が降り注ぐ。

 粉砕のDB【粉砕の一撃(オールクラッシュ)】は特殊DBに属している。名前の通り触れたモノを全て粉々に砕く能力。このあまりに危険なDBはこの戦闘中初めて扱えるようになった。どうして使えるようになったのか明確には分からないが恐怖を克服し精神的に成長した結果だとルシアは感じていた。といってもまだまだ錬度やコントロールが甘いためルシアの右手から肩に掛けての皮膚も粉砕してしまったが。


 戦いが終わり応急処置をしながら、ルシアは良い経験になったと思うと同時に自分の異常性に気がつく。数分前まで格上相手に恐怖していたにも関わらずその時の戦闘を思い出すと高揚し、血が滾る。また戦いたいという想いが強いのだ。この矛盾した感情を異常といわず何と言う。

 明らかに常人とはかけ離れたこの思考回路にルシアは心の底から安堵した……よかった、俺は戦闘狂だと。昔から喧嘩をすることが好きだった。ルール無用の戦いに惹かれルシアの主体性(アイデンティティ)の一つでもあった。それが今回の戦闘によって失われてしまうのではないかと危惧していたが……

 降り続く雨が血ではなく、本当の雨だと気がついたと同時に処置した両腕の痛みにも気がつく。恐らく、興奮して戦闘中は痛みを感じなかったのだろう。ため息一つ吐き、今度はまるで違う悩みごとをしながら、けれどルシアらしい悩みを抱えて帰路につく。



 この怪我が完治するまで戦えないな……と。

 
 

 
後書き
某サイト時代に載せていたあとがきをそのままペーストしときます

これは本当はボツにする予定の作品でした。何と言うか書きたいことが纏まらず衝動でノリで書いちゃったぜって感じだったので。ただ、最近は更新が遅くなっているし、ストーリーには関係ない話だから良いかなと思い投稿しました。

この話で書きたかったことを箇条書きすると

一、ルシアくんの初めての苦戦とその心情(ギルダーツは命のやり取りではなかったので)

二、極限状態の戦闘時の心理。これぐらいデタラメで理屈なしで良いと思う。

三、ルシアくんはやっぱり戦闘LOVE

これを書きたかったのですがあまり上手く書けませんでした。

文章量についてはごめんなさい。一つの戦闘で書けるのはここまでが限界のようです。 
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