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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第七十五話 アイザム、死す

              第七十五話 アイザム、死す
メルビとダンゲは何やら話していた。そしてメルビはその中でダンゲから色々と聞いていた。
「そうか、ボアザンも色々とあるのだな」
「はい」
ダンゲは沈んだ顔で頷いた。
「本来ならばあの方が皇帝となられる筈だったのですが」
「だがそれは適わなかった。そしてズ=ザンバジルがか」
「そうなのです。あの男が皇帝になって以来ボアザンは腐っていくばかりです」
「嘆かわしいな。そして今のボアザンになったと」
「ハイネル様も。今は行方知れずですし」
「プリンス=ハイネルもか」
「はい」
「彼のことは以前から聞いていた」
メルビは答えた。
「聞いていると。リヒテルに似ているな」
「リヒテル殿と」
「そうだ。リヒテルもまた一本気な男だ」
彼は言う。
「正義と己の信念を信じ、そして戦う。卑怯や未練とことさらに嫌う」
「ハイネル様もそうであります」
「だからこそ。怖いのだ」
「怖い」
「純真過ぎる男は。時として簡単なことに気付かない」
彼はまた言った。
「そして。簡単なことに気付かない。それが時として悲劇に繋がるのだ」
「ハイネル様は危ういところで気付かれました」
「うむ」
「そして。今も戦っておられます」
「リヒテルも。そうなればよいが」
メルビは言った。
「今のままでは。あの男にとってもよくはない」
「はい」
「そして。オルバンにしろズ=ザンバジルにしろ」
彼等についても言及する。
「滅ぼさなければならない。ああした輩こそが平和の敵だ」
その声はとりわけ強いものであった。彼もまたオルバンやズ=ザンバジルに嫌悪感を抱いていたのである。
ビッグファルコンを占領したバーム軍は勝利の美酒からすぐに醒め次の戦いに取り掛かろうとしていた。リヒテルはアイザムを交え作戦会議を行っていた。
「ロンド=ベルはダイモビックに撤退しました」
ライザが報告する。
「そしてそこで反撃の機会を窺っております」
「フン、無駄なことだ」
だがリヒテルはそれを一笑に伏した。
「最早地球人共に勝利はない。次の鉄槌を受けるだけだ」
「それではまたゾンネカイザーを」
「無論だ」
バルバスに答える。
「すぐにゾンネカイザーを出せ。そして一気に日本を占領するぞ」
「いや、待てリヒテル」
だがそんな彼をアイザムが制止した。
「アイザム」
「ダイモビックへの攻撃は少し待ってはくれないか」
「どうしたのだ」
「今俺は新たな戦闘獣を開発中だ」
彼は言った。
「それが完成してからでも攻撃は遅くはないと思うのだが」
「そうだったのか」
リヒテルはそれを聞いて頷いた。
「また戦闘獣を開発してくれていたのか」
「ああ」
アイザムも頷いた。
「それからでもいいと思うのだが」
「わかった、ならばそうしよう」
リヒテルはアイザムの言葉に従うことにした。
「そのメカとゾンネカイザーがあれば御前の勝利は確実なものになる」
アイザムはさらに言った。
「よし、ではそれが完成してから本格的に動くぞ」
「うむ」
「ロンド=ベル征伐だ。バルバス、今から備えておけ」
「畏まりました。しかしアイザム様には感服致します」
「それはまたどうしてだ?」
「ゾンネカイザーを作りながら今またこうして新たなメカを開発されるとは。見事という他ありません」
「誉められるまでもない」
(急がなければならないのだ)
彼はこの時口と心で違うことを言っていた。
(俺には)
リヒテルを見ながら心の中で言う。
(残された時間はあまりないのだから)
彼は何かを隠していた。だがそれはリヒテルに対しても言うことはなかった。
勝利を収めたバーム軍に対してロンド=ベルは敗戦から立ち直り反撃に取り掛かろうとしていた。その中心にたのはサコンであった。
「こうした時に頼りになるのはやっぱりサコンさんだよね」
「口惜しいけれどそれは認めるわ」
アスカが珍しくしおらしいことを言った。
「あの人は特別よ」
「アスカもそんなこと言うんだね」
「そうよ。悪い?」
逆にシンジに言い返す。
「あの人は本当の天才だから」
「アスカさんが言うと説得力がありますね」
「カトル君」
「アスカさんが認める人ですから。信頼できますね」
「何か変な言い方ね」
「アスカさんは口には出されない方ですから」
カトルの言い分ではこうである。
「心ではどう思われていても。けれど本当は皆さんを認めていらっしゃるでしょう?」
「誰がよ」
だがアスカはここでいつものアスカに戻った。
「あんたは別にどうとも思っていないけれどね」
「はい」
「あたしはジュドーとか甲児とかケーンみたいな馬鹿は嫌いなのよ」
「そうなの」
「あとあんたみたいにウジウジしたのとかね」
シンジにも言う。
「男ならはっきりする。まあ最近ましになったけれど」
「カトル君のおかげかな」
「いや、僕は別に」
カトルはここで謙遜する。
「シンジ君の努力のせいだよ。僕は何もしていないよ」
「カトル君」
「確かにシンジは努力したよな」
「そうだな」
これにデュオとウーヒェイが頷く。
「最初は大丈夫かと思ったが。強くなった」
トロワも続く。
「シンジは昔のシンジではないということか。俺と同じように」
「いや、あんた最初から全然変わってないし」
「厳しいな」
ヒイロには流石にアスカの突っ込みも効果があまり見られない。
「本当に。けれど人間味が出て来たかもね」
「ヒイロもロンド=ベルに入って変わりましたからね」
「否定はしない」
カトルにこう返す。
「シンジ君と同じで」
「そうかもね。僕もカトル君に出会えてよかったよ」
「シンジ君」
「何時までもクヨクヨしていられないし。それに最近何か周りに色々な人が増えたし」
「変態爺さんは論外よ」
無論マスターアジアのことである。
「アスカってあの人がとにかく嫌なんだね」
「嫌ってものじゃないわよ。素手で使徒は破壊しちゃうし」
「それは映像で見た」
トロワが言う。
「正直驚いた」
「あまり驚いているようには聞こえないわね」
「いや、トロワがこう言うなんて珍しいんだ」
「そうなの」
「人間ではないと思った」
「というか完璧に人間じゃないし」
「じゃあ何なのかな。一応生物学的には人間らしいけれど」
「使徒なんじゃないの?」
「またそんな」
「可能性はゼロではない」
だがヒイロはそれを否定しなかった。
「そうなの」
「ってあんた知ってるでしょ」
アスカが驚くシンジに言う。
「使徒のDNAは人間のそれと殆ど同じなのよ」
「それは知ってるけれど」
「使徒じゃなきゃ説明できないわよ、あんなこと。身体の能力を一〇〇パーセント引き出してもあそこまでできるとは思えないわ」
「いえ、可能よ」
「綾波」
「人間の身体の能力は殆ど引き出されていない状態だから」
彼女は言う。
「完全に引き出すことができれば」
「それ何回も聞いてるけれどね」
アスカは反論する。
「それができていればあのバームのメカだって倒せるわよね」
「あれはちょっと難しいですね」
カトルが言う。
「何か特別な事情がありますから」
「特別な事情」
「攻撃を吸収する。あの能力がある限りは」
「烈風正拳突きまで効かなかったし」
「それをどうするかです。サコンさんに期待するしかないですね」
「つまりあたし達は今は見てるだけしかできないのね」
「残念ですが」
「面白くないわねえ、本当に」
アスカは口を尖らせた。
「見てるだけなんて。あたしの性に合わないわよ」
「だったら騒げばいいと思うよ」
シンジが言う。
「どう騒ぐのよ」
「ファイアーボンバーみたいに」
「ああ、熱気バサラね」
「アヤさんは間近で生演奏が聴けるって大喜びしてるよ」
「好きな人にはたまらないかもね」
「アスカは嫌いなんだ」
「嫌いじゃないけれど」
だがどうもアスカの言葉の切れ味が鈍い。
「あたしはミンメイさんの方が好きだったのよ」
「そうだったんだ」
「ああした派手な曲はちょっと・・・・・・って時があるから。ミンメイさんの曲は落ち着くじゃない」
「うん」
「そうした曲がねえ。好きなのよ」
「おいおい、こりゃまた意外な趣味だな」
「アスカこそああした曲が合うと思っていたがな」
デュオとウーヒェイがまた言う。
「好みとはわからないものだな」
ヒイロも続く。
「特に音楽は」
「まあ気分がいい時は聴いてみたら?ミレーヌもいるし」
「あの娘って確かあたし達と同じ歳よね」
「うん」
「胸もそんな感じだし」
「それ本人の前で言うとことだから止めた方がいいよ」
「いいのよ、どうせあたしも貧乳だし」
「私も」
「胸の大きさなんてどうでもいいんじゃないかな」
カトルはケロリとした顔で述べる。
「ほら、大きい胸だって小さい胸だってそれぞれ個性だし」
「随分知ったようなこと言うわね」
「僕には姉が二十九人もいますから」
「・・・・・・うわ、凄いわね」
それを聞いたアスカの顔が崩れた。
「それ作ったお父さんも」
「カトル君はマグアナック隊の人達もいるしね」
「彼等にはいつも感謝しています。何かあったらすぐに駆けつけてくれますし」
「本当にすぐにね。まあそれは置いておいて」
アスカはそう言いながら手で何かを移す動作をする。
「話が変な方向に行っちゃうから。けれどどうしたものかしら」
「バーム軍のこと?」
「そうよ。サコンさんなら大丈夫だと思うけれどね」
「そうだね」
彼等は待つ身として不安を抱いていた。ヒイロ達ですら内心ではそうであった。だがサコンはその中で粛々と調査を進めていたのであった。
「あの超弾性金属だが」
「ああ」
サコンは大空魔竜の会議室にいた。そこに豹馬や一矢達が集まっていた。
「結論から言うと破ることはできる」
「それは本当なのか!?」
一矢はそれを聞いて思わず立ち上がる。
「一矢、落ち着いて」
だがここでちずるに止められる。
「気持ちはわかるけれど」
「済まない」
めぐみにも止められる。一矢はそれに従いまた席に着いた。
「グランヴェールとガッテスの攻撃でそれがわかった」
「魔装機神の攻撃で」
「そうだ。超弾性金属と言えど分子で構成されているからな」
「つまり急激な温度差で分子結合を崩壊させるのですね」
小介が問う。
「簡単に言えばそうなる」
「つまりあれか」
豹馬がそれを聞いて言う。
「冷たい水を浴びて熱い風呂に入ったら身体が痺れるのと同じだな」
「そういうことじゃないですけど」
「あれっ、違うのか」
「まあここはサコンさんのお話を聞きましょう」
「ああ」
小介に言われて黙って話を聞くことにした。サコンの話は続く。
「それでだ」
「はい」
「その急激な温度差を与えることで超弾性金属の効果を無効化する」
「それでゾンネカイザーを破ることができるんだな!?」
一矢はまた問うてきた。しかしサコンはそれに対して首を横に振る。
「いや、残念だがそれだけじゃ駄目だ」
「どういうことなんだ」
「超弾性金属は回復力もまた尋常なものじゃない」
サコンは言う。
「それを受けてもものの数秒で回復してしまう」
「じゃあどうすればいいんだ」
「方法はある」
だがサコンは言った。
「あるのか」
「分子が分解されている間に攻撃を繰り出す」
「攻撃を」
「それも強力な打撃系の技をだ。そしてそれができるのは」
サコンは一矢を見据えた。
「一矢、御前とダイモスしかいない」
「俺しか・・・・・・!」
「そうだ、温度差と打撃攻撃の両方ができるのはダイモスしかない」
彼は言う。
「そんなことが・・・・・・出来るのか」
「出来る」
ここで一人部屋に入って来た。
「博士」
それは和泉博士であった。彼は部屋に入り一矢に対して言う。
「ダイモスのエネルギー源であるダイモライトの出力を二〇〇パーセントにすれば」
「可能なのですか」
「そうだ。ダイモスならできる」
博士は言葉を続ける。
「ダイモスにはそれだけのポテンシャルがあるからな」
「それじゃあ」
「うむ。ダイモスなら出来る」
博士は頷いた。だがここで豹馬が言った。
「ちょっと待ってくれよ」
「どうしたの、豹馬」
「いや、気になるんだけれどよ、ちずる」
「私はめぐみよ」
「おっと、声が似ているから。すまねえ」
「いいわよ」
「確かにそっくりでごわす」
「そうだね」
大次郎と日吉が横で頷いていた。
「その二〇〇パーセントの出力なんてどうやって出すんだ?幾らダイモスにそれだけのポテンシャルがあってもよ」
「粒子が必要だ」
博士は豹馬にこう答えた。
「粒子が」
「そうだ、今使用しているタキオン以上のな。超粒子が」
「そんなのがあるのかよ」
「理論上では存在が証明されている」
サコンがこう説明した。
「それじゃあ」
「だがそれを発生する手段はまだ研究中だ。もう少し待ってくれ」
「じゃあ今はどうすることもできねえのかよ」
「こんな時に」
ここで警報が鳴り響いた。
「!?」
「敵か!?」
それは敵襲を知らせる警報であった。一矢達はそれを聞き立ち上がった。
「今ゾンネカイザーが来たら勝てないぞ」
「どうする!?」
「いえ、違うみたいよ」
会議室に映し出された映像を見てナナが言った。
「そうなのか」
「ええ。あれ見て」
見ればそこには敵は映っていなかった。一羽の鳥であった。
「鳥!?」
「どうやら鷹らしいな。しかし何で鳥なんかに反応したんだ?」
「!?あれは」
その鷹を見た剛博士が声をあげた。
「知っておられるのですか、剛博士」
「はい、あれは私が作ったものです」
四ッ谷博士にこう答える。
「作った」
「ええ。ボアザンにいた頃に。私が作ったメカ鷹です」
「メカ鷹。そんなものを」
「あれは友人に贈ったのですが。それが何故地球に」
「友人といいますと」
「ボアザンの将軍だった者です。非常に優れた人格の持ち主で」
「あっ」
ナナが声をあげた。
「その鷹が何か落としたわ」
「あれは・・・・・・カプセルか」
京四郎が言う。
「そうみたい。何なのかしら」
「あのメカ鷹が彼のものだとしたら」
剛博士は一同に言う。
「危険なものではない。すぐに調べよう」
「はい」
こうしてカプセルが回収された。そしてすぐにダイモビックの中に持ち込まれた。サコン達はそれを会議室に持って来た。
「とりあえずは危険物ではないようですね」
「うむ」
皆サコンの言葉に頷いた。
「それでは開けます」
サコンが開けた。するとそこから二つのものが出て来た。
「花と指輪!?」
京四郎はそれを見て眉を顰めさせた。そこにあったのは指輪と一輪の花であった。
「どうしてこんなものが今」
「!その花は」
一矢がその花を見て声をあげた。
「どうしたのお兄ちゃん、そんなに慌てて」
「これは俺がエリカに贈った花だ」
「えっ!?」
皆それを聞いて驚きの声をあげる。
「一矢君、それを知っているのは」
「俺とエリカだけです」
一矢は剛博士にこう答えた。
「その花がわざわざ贈られたってことは」
「そうだ、ナナ」
一矢の声はうわずっていた。
「このカプセルの贈り主はエリカだ!エリカは生きていたんだ!」
「おい、マジかよ!」
リョーコがそれを聞いて興奮した声をあげる。
「エリカが生きていたのかよ!」
「おおっ!奇跡だな!」
ダイゴウジも興奮していた。
「こんなことがあるなんてな!」
「愛は勝つっていうけれどね」
サブロウタも笑っていた。
「一矢さん、おめでとうございます」
「ルリちゃん」
「エリカさんは貴方の為にカプセルを届けて下さったのです」
「俺の為にか」
「はい、地球とバームの為に。この戦いを終わらせる為に」
「エリカ、君は」
「何かよお。すげえ泣けてくるよな」
リョーコは本当に泣いていた。
「あの二人見ていると。本当に応援したくなるぜ」
「そうだな。あそこまで一途になれるなんて」
「旦那もわかるか」
「わからない奴はいない。竜崎もエリカも」
「ホンットウにすげえよ。あそこまでな」
「困難はまだまだ多いが」
「あの二人ならきっと・・・・・・やってくれるぜ」
「そうですね」
二人の言葉にルリが頷く。
「一矢さんとエリカさんは。必ず」
「ああ」
「どんな困難も乗り越えてくれます。私達はそれを見守りましょう」
「障害があったらあたし達が叩き潰してやるよ」
「この命にかえてもな」
リョーコもダイゴウジも一矢とエリカが好きだった。だからこそ側にいるのであった。
「サコン君」
大文字がサコンに声をかけた。彼は指輪を調べていた。
「何かあったのかね」
「指輪の中にマイクロフィルムが隠されていました」
「マイクロフィルムが」
「はい。映像に出してみますね」
「うむ」
すぐに映像に出された。それはかなり困難な数式であった。
「これは・・・・・・」
「どうしたんだ、サコン君」
それを見た大介が声をかける。
「何かの数式の様だが」
「只の数式じゃない」
彼は言う。
「これは・・・・・・超粒子の発生方式だ」
「超粒子の!?まさかそれは」
「はい、ダイモライトをパワーアップさせるその方式です」
剛博士に答える。
「それでダイモスがパワーアップ出来るんだな」
「ああ」
京四郎にも答える。
「まさかな。エリカがこんなものを届けてくるなんて」
「だが。このアイザロン粒子」
サコンは呟いていた。
「これを考え出した者は恐ろしい程の頭脳の持ち主だ」
「御前がそこまで驚くとはな。エリカもとんでもない知り合いを持ったものだな」
「よし、ではすぐに改造に取り掛かろう」
和泉博士はこう言って立ち上がった。
「サコン君」
「わかっていますよ」
大文字とサコンが立ち上がった。
「それでは我々も」
「喜んで協力させてもらいます」
四ッ谷博士と剛博士も立ち上がった。今地球の頭脳達がダイモスの為に集結しようとしていた。
「一矢」
今度はリーが一矢に声をかけてきた。
「こっちはこっちでやるか」
「ああ、わかっている」
一矢も立ち上がった。
「特訓だな」
「そうだ、新しい必殺技のな」
「時間はあまりない。徹底的にやらせてもらうぜ」
サンシローも言う。
「望むところだ。それじゃあ行くか」
「おう」
彼等は今地球を救う為に再び立ち上がった。そしてその先には希望を見出していた。
それから数日後。リヒテルは遂に出撃準備を整えていた。
「聞け、勇敢なるバームの兵士達よ!」
彼は翼を持つ戦士達に対して言う。
「時は来た!遂に我等の約束の場所を手に入れる時が来た!地球を手に入れる時が!」
高らかにそう宣言する。彼の目にもまた希望があった。
「話し合いを拒否し、卑劣な謀略を使い我が父を殺した愚かな地球人共!奴等を滅ぼし安住の地を手に入れるのだ!」
それが彼の正義であった。そこには一点の曇りもなかった。
「では行こうぞ!正義の戦いに!」
彼自ら出撃しようとする。だがその時であった。
「リヒテル様!」
「どうした!」
バルバスが彼に報告してきた。
「ビッグファルコンに接近して来る機体があります!」
「ロンド=ベルか!」
「おそらく。これはダイモスのものです」
「何っ、ダイモスだと」
ライザの報告に声をあげる。
「はい」
「竜崎一矢め、まだ諦めておらんのか」
リヒテルはダイモスと聞き怒りで目を光らせた。
「余の妹をたぶらかしたばかりでなく。またしても余の前に立ちはだかるというのか」
「待て、リヒテル」
だが激昂しようとするリヒテルをアイザムが制止した。
「アイザム」
「何の策もなしに来るとは思えぬ。ここは様子を見た方がいい」
「そうだな。ゾンネカイザーを出撃させよ!」
彼は指示を下した。
「ダイモスを八つ裂きにせよ!そして地球制圧の序曲とするのだ!」
「ハッ!」
リヒテルの言葉に従いゾンネカイザーが出された。ゾンネカイザーは一直線にダイモスに向かって来た。
「一矢!」
ダイモスの側にいるガルバーから京四郎の声がした。
「新しい烈風正拳突きならゾンネカイザーも倒せる筈だ」
「ああ」
一矢はそれに頷く。
「やってみろ。そして御前が求めるものを掴め!」
「頑張ってね、お兄ちゃん」
「わかってる。エリカと・・・・・・全ての人達の為にも」
一矢は前を見据えていた。
「この戦い負けるわけにはいかない!」
「この戦い負けるわけにはいかぬ!」
リヒテルも叫んでいた。
「バームの為に!必ず勝つ!」
今二つの星の未来をかけて運命の戦いがはじまろうとしていた。そしてダイモスとゾンネカイザーは向かい合った。
「行くぞ、ゾンネカイザー!」
一矢は身構えた。
「御前を倒し・・・・・・エリカと全ての人達を守り抜く!」
「行くのだゾンネカイザー!」
リヒテルも言う。
「ダイモスを倒せ!そして我等の安住の地を掴むのだ!」
両者は同時に前に出た。まずはゾンネカイザーが爪を繰り出した。
「何のっ!」
だが一矢はそれをかわした。
「今度はこちらの番だ!」
そして頭部から青い光を放った。
「フリーザストォォォォォォォォォォォムッ!」
一矢は叫ぶ。
「何っ!」
アイザムはゾンネカイザーが揺れたのを見て思わず声をあげた。
「どうした、アイザム!」
「ゾンネカイザーがダメージを受けている」
「何だとっ!」
それを聞いてリヒテルも思わず声をあげた。
「馬鹿なっ!そんな筈が!」
「いや、事実だ」
彼が開発したマシンである。認めないわけにはいかなかった。
「どういうことだ、まさか」
「まだだっ!」
一矢はなおも攻撃を続けていた。
「ダイモスの真の力はこんなものじゃないぞ!」
今度は胸を開いた。そこから炎を繰り出す。
「ファイアァァァァァァブリザァァァァァァァァァァァドッ!」
炎の竜巻がゾンネカイザーを襲った。そして天高く吹き飛ばす。
「ヌウッ!」
アイザムの顔が歪む。
「これで決めてやる!」
ダイモスと一矢は構えに入った。20
「必殺!烈風!」
「馬鹿め!また同じことを!」
「いや、違う!」
アイザムはリヒテルの嘲笑を否定した。
「あの攻撃は、まさか」
「アイザム、どうしたのだ」
リヒテルもアイザムの様子が尋常ではないことに気付いた。
「まさか、俺の理論を」
その間にもダイモスは飛ぶ。そして天高く舞うゾンネカイザーに狙いを定めた。
「だとすればゾンネカイザーは」
「正拳突きぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーっ!」
ダイモスが拳を放った。そしてゾンネカイザーを撃つ。拳はそのままゾンネカイザーの装甲を撃ち破っていった。
ゾンネカイザーとダイモスが交差した。そしてゾンネカイザーは光と化す。今一矢とダイモスはこの強敵を撃破したのであった。
「ゾンネカイザーが!」
「まさか!」
それを見たバルバスとライザが驚きの声をあげる。
「いや、これは道理だ」
「どういうことだ、アイザム」
「リヒテル、御前程の男が今まで何故勝てなかったかわかった」
アイザムは言った。
「彼等は俺の研究を知っていた。アイザロン粒子をな」
「そなたが研究していたあれをか」
「そうだ。それでしかゾンネカイザーは破れはしない。だとすれば彼等は知っていたのだ」
「馬鹿な、そんな筈が」
「それだけ地球人が手強いということだ。どうやら俺が考えていたよりもな」
「ぬうう」
「こうなってしまっては最早打つべき手は一つしかない」
アイザムはそう言うとビッグファルコンの司令部を後にした。
「アイザム、何処に行くつもりだ」
「すぐにわかる」
そして司令部から姿を消した。すぐに出撃を知らせるサイレンが鳴った。
「リヒテル様、大変です!」
格納庫から報告が入る。
「どうした!?」
「アイザム様が出撃されます!」
「馬鹿な、どういうことだ!」
「どうされますか!?」
「止めよ!早まったことをするでない!」
「リヒテル、それは違うな」
だがここでアイザムがモニターに姿を現わした。
「アイザム!」
「俺は早まってはいない。最後の戦いをするだけだ」
「最後の戦いだと!?」
「そうだ。俺の命の炎はもうすぐ消える」
「何っ!?」
「アイザロン粒子の研究の時の事故でな。俺の身体はもう幾許ももたんのだ」
「何故それを余に打ち明けてくれなかった」
「すまぬ」
「何故話してくれなかったのだ、何故だ」
「御前を心配させたくなかった。それに」
「それに」
「話したところで。俺の命の炎が延びるわけでもなかった」
「くっ」
その通りだった。リヒテルといえども歯噛みするしかなかった。
「その時俺は決めたのだ。ならばこの命、御前にかけようと」
「アイザム、余の為にそこまで」
「リヒテル、悲しむことはない」
アイザムは優しい頬笑みを浮かべてこう言った。
「俺は御前と出会えて満足している。俺を認めてくれた御前と会えてな」
「アイザム・・・・・・」
「俺の人生は短かった。だが満足している。他の者よりも遥かに素晴らしい人生を送れた。御前のおかげでな」
「何という方だ」
「これ程の方に神は何と惨い」
バルバスもライザも泣いていた。バームの全ての者が泣いていた。皆アイザムの気高い心に打たれていたのだ。
「御前と勝利を祝えなかっただけが心残りだが」
「それは今からだ!」
「その言葉、覚えておく」
彼は笑みを浮かべたままこう返した。
「では行く。そしてダイモスを倒して来る」
「頼む」
リヒテルも頷いた。
「アイザムよ、そなたの生き様見届けようぞ!」
そして遂にアイザムは出撃した。同時にロンド=ベルも戦場に到着した。
「一矢、やったみたいだな!」
豹馬が一矢に声をかける。
「無事で何よりだ」
健一も言う。皆戦いに備えて布陣している。
「いや、まだだ」
だが一矢はまだ気を許してはいなかった。前を見据えている。
「まだ来る。手強い男が」
「フッ、竜崎一矢よ」
赤い獣と人が合わさった様なマシンが出て来た。
「俺とリヒテルの話、聞こえていたようだな」
「盗み聞きするつもりはなかったがな」
一矢はこう返す。
「アイザムといったな」
「うむ」
「御前のことはわかった。だが俺も負けるわけにはいかない」
「それはこちらも同じことだ。俺が地球に来たのは半分が貴様を倒すことだったのだからな」
「では行くぞ、アイザムよ」
「来い、竜崎一矢」
二人は対峙した。その後ろでガルバーが展開する。
「付き合うぜ、一矢!」
「京四郎!」
「こうなりゃ御前の好きなようにしな!」
「お兄ちゃん、負けないで!」
「ナナ、済まない!」
ここでバーム軍も兵を出してきた。コブラーダもいた。
「アイザム、他の者は余に任せろ!」
その艦橋にはリヒテルがいた。
「リヒテル!」
「そなたの最後の戦い、余としても出来る限りことをしようぞ!」
「済まぬ、リヒテル!」
「礼はよい」
リヒテルも笑った。友に向ける最後の笑みだった。
「ロンド=ベルよ、余が相手だ!」
そしてロンド=ベルに指を突き付けた。
「来るがいい!ここで決着をつけてやる!」
「面白え!やってやるぜ!」
忍がそれを聞いて声をあげる。
「総員バーム軍に向かえ!」
ブライトも指示を下した。
「あのマシンは一矢に任せろ!我々は我々の敵を討つ!」
「そうこなくっちゃね!」
「さっすがブライト艦長、話がわかる!」
レッシィと沙羅がそれを聞いて言った。
「じゃあ行くよ!」
ヒメが前に出た。
「一矢さんの為に!」
「そして地球の為に!」
今バームと地球をかけた二つの戦いがはじまった。一矢とアイザムは死闘の中央で睨み合っていた。
「俺の挑戦を受けてくれたことにまずは礼を言おう」
アイザムは言った。
「竜崎一矢よ、噂通りの男だな」
「礼はいい」
だが一矢はあえてこう返した。
「俺も負けられないんだ。だからこそ俺もここにいる」
「そうか。ならば話が早いな」
アイザムは不敵に笑ってこう言った。
「このギメリアは俺の最後のメカ戦士に相応しい」
そして言う。
「必ずや貴様を倒し、勝利の栄光の中で我が生涯の幕を閉じさせてもらおう!」
「ならば俺も!」
一矢も言った。
「この拳に命をかけて戦おう!」
「行くぞ!」
「来い!」
二人は激突した。まずは爪と拳が撃ち合う。
「ヌウッ!」
「クッ!」
ダイモスの右肩が、ギメリアの左肩がそれぞれダメージを受けた。
「やるな」
「そちらこそな」
両者は再び睨み合いをはじめた。容易ならざる相手だと再び思い知らされた。
「だがこの程度で」
「やられるわけにはいかぬ」
そして再び互いに攻撃を仕掛ける。それが暫くの間続いた。
ダイモスもギメリアもダメージを受け続ける。だが両者はそれでも戦い続けた。退くつもりはどちらもなかった。
両者は互角だった。腕は全く同じだった。だがここで違いが出た。
アイザムの身体であった。アイザロン粒子に蝕まれた彼の身体は今にも倒れんとしていたのだ。そしてそれが出た。
アイザムは身体のバランスを一瞬だが崩してしまった。
「ヌッ」
「今だ!」
そして一矢はそれを見逃さなかった。すぐにフリーザストームを放つ。
「しまった!」
「アイザム!」
それを見たリヒテルが叫ぶ。だが遅かった。
ファイアーブリザードも来る。ギメリアは忽ちのうちに天高く飛ばされてしまっていた。
「これで!」
一矢は身構えていた。
「喰らえーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
そして拳を繰り出した。それで全てが決した。
「アイザム!」
「リヒテルか」
だがアイザムもギメリアもまだ生きていた。友の声に応えた。
「済まぬ、リヒテル」
最後に詫びた。
「俺は。何の役にも立てなかった」
「そんなことはない!」
だが彼はそれを否定した。
「そなたは充分に闘った!」
「いいのだ。これが全てだ」
だが彼はその言葉を遮ってしまった。
「俺は負けた。それが全てだ」
「アイザム・・・・・・」
「竜崎一矢よ」
彼は今度は一矢に顔を向けた。
「見事だ。御前程の男は。宇宙には二人といない」
「アイザム・・・・・・」
「勝てはしなかったが御前の様な素晴らしい男と最後に闘えたことは。俺にとっての最後の栄光だ」
彼は一矢を認めた。だからこそ言った言葉であった。
「敵でなければな」
これが一矢への最後の言葉であった。
「ではリヒテル、お別れだ」
口から血を出した。顔には死相が浮かんでいる。
「御前は俺の生涯で唯一人の友だった」
「アイザム・・・・・・」
「そして最後に言っておく」
「何をだ」
「暗黒四天王には。注意しろ。ではな」
「アイザムーーーーーーーーーーーーッ!」
爆発が起こった。アイザムはその中に消えた。リヒテルの親友にしてバームきっての天才科学者の見事な最後であった。それを見るバームの戦士達の目から涙が止まることはなかった。
「アイザム、見事であった!」
無論リヒテルも泣いていた。
「よいか皆の者!」
そしてバーム全軍に対して告げる。
「今ここに一人の誇り高き勇者が散った!我等はその弔い合戦をしようぞ!」
「無論であります!」
バルバスも泣いていた。そしてライザもまた。
「リヒテル様、我等も!」
「うむ、全軍総攻撃だ!」
彼は海底城にいる残りの兵力にも声をかけた。
「そして地球人共を撃て!アイザムの為にも!」
「ハッ!」
バーム軍はその持てる兵力全てを投入して来た。そしてロンド=ベルに立ち向かう。
「きやがったぜ」
豹馬はそれを見て呟いた。
「バームの奴等、本気になりやがった」
「だが俺はもう負けない」
一矢はそれに対して言う。
「この地球の為、そしてエリカの為にも」
「けれど一矢さん、無理は禁物ですよ」
「ルリちゃん」
「貴方に若しものことがあれば悲しむ人がいます」
「ああ、わかってる」
一矢はそれに頷いた。
「俺は死なない、エリカの為にも」
「はい」
「地球の為にも。この拳に誓って!」
「不思議ですね」
ルリはナデシコのモニターを切った。そしてポツリと言った。
「どうしたの?」
それにユリカが問う。
「いえ、一矢さんを見ていると」
そしてルリはそのユリカに言葉を返した。
「応援したくなります。どうしても幸せになって欲しいです」
「そうね」
ハルカがそれに頷いた。
「一矢君を見ていると。他人のことなのに自分のことに思えるわ」
「はい」
「目が離せないのよ。絶対に幸せになって欲しいわ」
「そうですね」
メグミもそれに賛成した。
「彼みたいに一途だと。本当に」
「一矢さんは凄い人です」
ルリはあらためて言う。
「一人の人をあそこまで好きになれて。そして強い人です」
「そうね」
ハルカはそれにも頷いた。
「彼は一度再起不能にもなってるのよ」
「そうだったんですか」
「ええ。そこからリハビリして立ち直って。強いのよ」
「その強さがあるからあそこまで人を好きになれるのね」
「多分ね」
ハルカは今度はユリカに応えた。
「強くなければ愛を貫けない」
「そして優しくなければ、ですね」
「ルリルリもわかってきたわね」
「この前までわかりませんでした」
ルリは静かに言葉を返した。
「けれど。ロンド=ベルの皆さん、特に一矢さんを見ていると」
「わかってきたのね」
「はい」
「それでいいのよ」
ハルカはそこまで聞いて優しく頷いた。
「愛ってのもね。知っていくものなのよ」
「知っていくこと」
「一矢君だって最初は知らなかったと思うわ」
「そうなんですか」
「ヒイロ君いるでしょ」
「はい」
「あの子だって。最初はもっと感情がなかったそうよ」
「えっ、そうなの」
ユリカはそれを聞いて声をあげた。
「今よりも」
「ええ。まるでサボテンだったそうよ」
「うわ、何か凄そう」
「それがリリーナちゃんに会ってから変わったそうよ」
「リリーナさんに」
「あの娘も強いわよね」
「はい」
ルリはまた頷いた。
「そして優しい」
「リリーナさんも。そうですね」
「強いのと優しいのって反対みたいだけれど違うのよ」
ハルカは言う。
「強くないと優しくなれないの」
「両方ないと」
「人間ってのは駄目なのかも知れないわね。まあ素直じゃない娘もいるけれど」
「アスカさんですね」
「何でそこであたしが出て来るのよ」
アスカがモニターに出て来た。
「あっ、聴こえた?」
「聴こえてますって。何か最近何かっていうとあたしなんだから」
「それは御前に原因があるぞ」
「そうそう」
「あんた達が突っ込むとは思わなかったわね」
同じくモニターに出て来たウーヒェイとデュオにこう返す。
「まあダバさんみたいな人が突っ込むとは思えないし」
「俺が?」
ダバも出て来た。
「ダバさんもそうですよね」
ルリはダバの姿を認めてまた言った。
「強くて。優しくて」
「俺は人間ってのは心があるものだと思う」
ダバはルリに率直に述べた。
「強さも優しさも。その中の一つなんだ」
「その中の」
「ああ。どちらも必要なものだ」
「流石わかってるわね」
ハルカはそれを聞いて満足そうに頷いていた。
「苦労人だけはあるわ」
「いや、そんなに苦労しているわけじゃないけれど」
ダバはそれには照れを見せた。
「けれど。それがないとバルマーと同じだし」
「バルマーと」
「彼等には心が感じられないんだ」
「心が」
それに反応したのはルリだけではなかった。
タケルもであった。彼は顔色を変えていた。
「兄さんもそうだった」
「彼は。洗脳されていると思う」
「洗脳」
「間違いないな」
ライはそれに同意した。
「バルマーはいつもそれを使う。レビの時も」
「そうだったな」
レビ本人がそれに頷く。
「私も。かっては」
「それを考えると。バルマーは感情そのものを否定しているんだ」
ダバはさらに言う。
「ポセイダルもそうなんだ。彼等は人を兵器としか見ていない」
「それじゃあ兄さんも」
「そうだな。彼もまた」
ライが言う。
「利用されているだけだ。兵器としてな」
「クッ、バルマーめ」
「けれど今は落ち着くんだ」
ダバがタケルを窘める。
「さもないと。取り返しのつかないことになるから」
「ええ」
「レビの時もやれたんだ。あんただってやれるさ」
リュウセイがタケルに声をかけた。
「大丈夫だって。何かあれば俺達だっているし」
「また気軽に言うわね」
アヤがここで入って来た。
「そんなに簡単だとは思えないけれど」
「なせばなる」
だがリュウセイはそれでも変わらなかった。
「なさねばならぬってね。そう言うじゃねえか」
「相変わらず単純だな、御前は」
「悪いのかよ」
「いや、悪くはない」
ライはそれをよしとした。
「結局その通りだからな」
「何だ、わかってるじゃねえか」
「けれど貴方も暴走はしないようにね」
アヤがここで釘を刺す。
「一番やんちゃなんだから」
「やんちゃって子供じゃあるまいし」
「私から見れば子供よ」
アヤは微笑んでこう返す。
「まるで弟みたいよ。手のかかる」
「ちぇっ」
「あの」
「何、ハーリー君」
「そんなこんな言ってる間に変なのが出て来ましたよ」
「変なの?」
「はい、これです」
ハーリーはレーダーを指し示した。
「海底城の方から新手です」
「まだいたのかよ」
「何か。魚みたいな形をした戦艦が四隻出ていますけれど。その周りにもはじめて見るマシンが一杯です」
「あら、本当ね」
ユリカがそれを見て言う。
「何かしら、これって」
「どういうことだ!?」
この時リヒテルはモニターを通じて暗黒四天王と話をしていた。
「知れたこと、助けに来てやったのだ」
ダンケルがそれに答える。
「我等は同盟を結んでいる。助けるのは当然のことだ」
「それをどういうこととは。心外ではあるな」
キラーとアシモフがそれに続いた。
「リヒテル殿、助太刀をするのだぞ。感謝されてはどうかな」
「いらぬ!」
だが彼はデスモントにこう返した。
「これはアイザムの弔い合戦だ!誇り高きバームの戦いなのだ!」
彼は言った。
「それに対して邪魔立ては不要!大人しく見ていてもらおうか!」
「不要とな」
「そうだ!バームのことはバームでかたをつける!同盟とはいえいらぬことをしないでもらおう!」
「これがオルバン大元帥の命であってもか」
「何!?」
その名を出されるとリヒテルも言葉を止めざるを得なかった。
「今何と」
「聞こえなかったか。オルバン大元帥直々の御命令なのだ」
ダンケルが言った。
「我等はそれを受けて出撃した」
デスモントが続く。
「貴殿等を助ける為にな。これでわかったか」
「くっ」
キラーの言葉は高圧的であったがリヒテルは反論することができなかった。
「ではこちらも戦闘に参加させてもらう。よいな」
「わかった。では協力を頼む」
リヒテルは最後のキラーの言葉に遂に頷いた。
「我が軍を助けてくれ」
「了解した。では行くぞ」
「うむ」
こうして暗黒ホラー軍団も戦闘に参加してきた。バーム軍と混ざって攻撃に加わる。
「ここで新手とはな」
「何、大したことはないさ」
ピートにサンシローが言う。
「あの程度の数、一気に蹴散らしてやるぜ」
「いや、ここは慎重に行こう」
しかし大文字が血気にはやる彼を制止した。
「はじめて見る敵だ。積極的に攻撃は仕掛けないように」
「チェッ、面白くねえなあ」
「下手に動いて怪我でもしたらどうする」
ピートは不満を述べるサンシローに対して言った。
「ここは冷静に行け、いいな」
「チッ、仕方がねえなあ」
「サンシロー、こっちに来てくれ」
そして神宮寺から声がかかった。
「バーム軍の主力が来た。宜しく頼むぜ」
「おうよ、ストッパーだな」
「まあそういうところだ」
「わかったぜ、じゃあそっちに向かうぜ」
「俺達もだ」
「当然ですね。行きますよ、ヤマガタケさん」
「おうよ、それじゃあ派手に・・・・・・ってのは駄目だったんだな」
「いや、バーム相手ならいいぞ」
サコンがこう応える。
「思う存分やってくれ」
「それじゃあ派手に行くぜ」
「サンシロー君はやはりその方がいいかもな」
大文字は急に元気になるサンシローを見て呟く。
「では我々は暗黒ホラー軍団に向かおう。ピート君、舵をそちらに切ってくれ」
「了解。それでは早速」
攻撃に入った。
「ヴォーグアイ!」
腹からもう一つの頭部を出した。そしてその目から光を放つ。
「まずはこれで小手調べだ!」
光は敵の小型のマシンを小隊単位で撃った。それで一掃してしまった。
「何だ、大したことねえじゃねえか」
それを見た武蔵が言う。
「こりゃ楽な相手かもな」
「雑魚はそうかも知れないがな」
しかし隼人はまだ懐疑的であった。
「何かあるのか、隼人」
「戦艦はそうはいかないだろう。あの四隻の戦艦」
ダンケル達が乗るそれぞれの色の戦艦を指差しながら言う。
「嫌な予感がする。気をつけろ」
「隼人がそこまで言うんなら」
深い付き合いである。武蔵も頷くものがあった。
「やばいな。それじゃあ迂闊には進まないでおくか」
「そうしてくれ。リョウ、御前はそのまま前に来る敵だけをやってくれ」
「わかった。だが」
「だが。何だ?」
「ドラゴンでこのままいけるだろうか」
竜馬の顔は考える顔になっていた。
「ドラゴンでか」
「ライガーもポセイドンも。このままで大丈夫か?」
「リョウ、何が言いたいんだよ」
弁慶が懐疑的な彼に対して問う。
「ドラゴンでどうか、なんて」
「真を出さないと駄目なんじゃないか」
「真を」
それを聞いた弁慶の顔が変わった。
「リョウ、本気なのか!?」
「冗談でこんなことは言わない」
竜馬はこう返した。
「これからバルマーも本格的に来る」
「ああ」
「そして宇宙怪獣も来るかも知れない。それを考えるとな」
「真ゲッターの力が必要なのか」
「俺はそう思う。隼人はどうだ?」
「いいんだな」
隼人は答えるかわりにこう問い返してきた。
「リョウ、真ゲッターの力を解放して」
「危険だがこれからのことを考えるとな」
竜馬はそれでも言った。
「あの力を解放するしかないかも知れない」
「制御出来る自信はあるんだな」
「やってみる」
彼は言う。
「やらなければ。地球が危ない」
「わかった。じゃあ考えておけ」
隼人は竜馬に任せることにした。
「御前が俺達のリーダーだ。ここはリーダーの御前が判断しろ」
「わかった」
彼は頷いた。そして戦闘に戻った。
一矢は今度はリヒテルと対峙していた。リヒテルはコブラーダを駆ってダイモスの前にいた。
「竜崎一矢!アイザムの仇を取らせてもらうぞ!」
「望むところだ!だがその前に一つ聞きたいことがある!」
「何だ!?」
「エリカのことだ!エリカはまだ海底城にいるのか!?答えるんだリヒテル!」
「フン、エリカならもう海底城にはおらぬ」
リヒテルは事実をありのままに述べた。
「何っ」
「エリカは裏切者として海底城から追放した!もうおらぬわ!」
「そうか、やはり」
一矢はそれを聞いて頷いた。
「もうエリカは御前の下にはいないのか」
「卑劣な地球人を愛する様な者は余の妹ではない!ましてや誇り高きバームの民でもない!」
「そうか、わかった。エリカは他の場所で生きている」
「その様なこと最早余の知ったことではないわ!これで心残りはないか!」
リヒテルはコブラーダを前に出してきた。
「余の手で葬ってくれる!アイザムの仇としてな!」
「リヒテル!」
一矢はリヒテルに対して言った。
「この戦いが避けられない戦いだというのなら俺は決して退きはしない!」
宣言した。
「それが俺達の信じる平和への道なのだから!」
「ほざけ、卑劣漢共が!」
リヒテルはまだ見えていなかった。
「貴様等が平和だと!笑わせるな!」
「俺達もバームの民も同じだ!」
一矢はそんなリヒテルに対して言い続ける。
「翼があろうとなかろうと!同じだということを見せてやる!」
「では見せてみるがいい!」
コブラーダからミサイルが放たれた。
「余を倒してな!」
一矢もリヒテルも引けなかった。互いの信じるものの為に。だが戦争はそうではなかった。
バーム軍は損害を大きくしていた。一度激しくぶつかり、そこでサイバスターのサイフラッシュで大きなダメージを受けた。そこで総攻撃を受けたのだ。
暗黒ホラー軍団も同じであった。手持ちの戦力はかなり減っていた。これを見てデスモント達四天王はすぐに決断を下した。
「潮時だな」
「うむ、敵の戦力はわかった」
彼等はそれぞれ言った。
「撤退する。ダリウス大帝に報告せねばな」
「予想以上の戦力だ、これはかなり時間がかかるかもな」
「そうだな」
彼等はそのまま戦場を離脱した。この時バーム軍は見捨てていた。
「リヒテル様、暗黒ホラー軍団が!」
「放っておけ!」
彼はそれを無視した。
「所詮当てにはしておらぬ!我等は我等の力だけで地球人共に正義の鉄槌を下すのだ!」
「ですが」
「まだ何かあるのか」
「ビッグファルコンが」
「何!?」
バルバスの言葉に身体の動きを止めた。
「ビッグファルコンが。どうかしたのか!?」
「今敵の攻撃を受けています!」
「何だと!」
「今だ、進め!」
三輪は軍を率いてビッグファルコンに攻撃を仕掛けていた。
「捕虜は取るな!バームの者は皆敵だ!」
「チッ、今頃来やがったぜ」
一平はそれを見て苦々しげに舌打ちした。
「しかも無差別攻撃ときたものだ。つくづくとんでもねえ奴だな」
「あんなのでよく連邦軍のお偉いさんやってやれるね」
「それが不思議でごわす」
日吉と大次郎も言う。
「あれでよく。司令官が務まるものでごわすな」
「色々と事情があるんだろう」
健一も苦い顔をしていた。
「俺達の知らない何かがな」
「けれどこれでビッグファルコンは解放されそうよ」
「ああ」
めぐみの言葉に頷く。
「これでバーム軍の戦力も殆ど壊滅した」
「ええ」
「とりあえず一つの危機は去ったわけだ」
「リヒテル様、どうされますか」
ライザが問う。
「このままでは我等は」
「ヌウウ、こうなっては致し方ない」
リヒテルは怒りを抑えながら言う。
「撤退せよ!海底城まで撤退だ!」
「リヒテル様、大変です!」
「今度はどうした!」
艦橋に入って来た将校に対して顔を向ける。
「海底城が!地球人に占拠されました!」
「何だと!」
「海底城にも別働隊を向けておる!勝利の時は近いぞ!」
三輪はそう叫んで兵士達の士気を鼓舞する。
「行け!退く者は敵前逃亡とみなし銃殺する!」
「無茶苦茶言ってやがるな」
「本当に変わらないのね、あの人だけは」
それを聞いた京四郎とナナが呟く。
「それに自分じゃ殆ど何もしていないのに」
「それは言うな、ナナ」
だが京四郎が彼女を窘める。
「あいつには何を言っても無駄だ」
「わかってるけど」
「全軍撤退せよ!」
リヒテルは断腸の思いで決断を下した。
「小バームまでだ!よいな!」
「ハッ!」
バーム軍は速やかに撤退した。こうしてビッグファルコンを巡る戦いは終わった。そしてバーム軍も地球から去ったのであった。
「とりあえずは地球から去ったか」
クワトロはそれを見て呟いた。
「まずは危機は一つ消えた」
「はい」
カミーユがそれに頷く。
「小バームがあるにしろな。それはまた後で対処すればいい」
「とりあえずは勝ったと見ていいな」
「そう思っていいと思う」
アムロにも答えた。
「そうか。全ては一矢のおかげだな」
「いや、俺は」
当の本人はアムロのその言葉に恐縮を見せた。
「皆とあのメカ鷹のおかげだから」
「そういえばあのメカ鷹は」
シーブックがそれに気付いた。
「剛博士の知り合いの方のものだったな」
「そうだ、私の同志だ」
剛博士はシーブックのその言葉に答えた。
「彼はボアザンの貴族の出身だった」
「ボアザンの」
「だが自分で角を切り落とした。そして貴族であることを捨て私の同志となったのだ」
「そうだったのですか」
「強い人ですね」
セシリーが言った。
「貴族の証である角を切り取って信念を示されるなんて」
「並大抵の信念じゃできないよな」
「ええ」
「そうだ。彼は素晴らしい人物だ。だが」
しかしここで疑問に思うことがあった。
「彼は何故地球に。追っ手から離れる為にボアザンから逃れているとは聞いていたが」
「それにエリカも一緒のようだが」
一矢もそれに気付いた。
「これは一体」
「ゲリラ活動でもはじめたんじゃないかな」
シーブックは言った。
「ゲリラ活動」
「ああ、よくある話だし。それか平和的な手段でバームと地球の戦いを止めさせようとしているか」
「リリーナと同じか」
ヒイロはそれを聞いて呟いた。
「そうだな。それも生まれた星や立場の違いを越えて」
「凄いことじゃないのか、それは」
カミーユは宙の言葉に驚きを隠せなかった。だがそんな彼にダバが言った。
「凄いことなのか?俺達だってそうじゃないか」
「えっ」
「俺はペンタゴナから来たしタケル君だって」
「そうか」
「かっては敵味方に別れていた者もいるじゃないか。それを考えると俺達だって同じさ」
「それもそうですね」
マックスがダバのその言葉に頷く。
「僕とミリアだってそうでしたし」
「あの頃が何か懐かしいわ」
「お互いエースの座を競い合っていたけれど」
ミスティがここでミリアに声をかける。
「今となっては過去の思い出ね」
「そうね。まさか今度はバルキリーに乗るなんてお互い思いもしなかったわ」
「僕だってフリード星から来ているし」
「そういや大介さんって王子様だったんだよな」
「あたしはお姫様だったのよ」
「何かえらくお転婆なお姫様だな」
「ちょっと甲児、それどういう意味よ」
「おっと、いけねえ」
「ははは、甲児君もマリアも相変わらずだな」
「けれど大介さんが宇宙から人だってことは忘れていたわよ」
ちずるが言う。
「そうなんだ」
「だって大介さんは大介さんだから」
「僕は僕」
「そうよ。他の星の人でもそれは変わりないわ」
「そうだな、生まれた場所や立場が違うだけなんだ」
ショウがそれに頷く。
「例えバイストンウェルにいてもラ=ギアスにいてもこれは変わらないんだ」
「けど東部と西部の違いはあるぜ」
「それは貴方だけよ」
マーベルがトッドに突っ込みを入れる。
「いい加減そうやってふざけるのも止めた方がいいわよ」
「しゃくかい?」
「いえ、飽きただけ」
「厳しいね、どうも」
「けどトッドっていつもそればっかり言うから」
キーンがそれに突っ込みを入れる。
「何かお決まりのパターンなのよ」
「キーンの言う通りだ。他に言うことを考えた方がいい」
ニーまで言った。
「さもないとマーベル以外にも飽きられてしまうぞ」
「俺は別に他人から飽きられてもどうにも思わないけれどな」
「うわっ、芸人失格」
「芸人でもねえしよ」
トッドは今度はミオに返した。
「まあ俺のことはいいってことだ。それよりもこれからどうするんだい?」
「これから?」
「そうさ。何時までも勝利の余韻に浸っていられる場合じゃねえだろ。敵を待っていたらやられちまうぜ」
「それならちょっと頼みたいことがあるんだ」
「どうした、甲児」
宙が彼に尋ねる。
「光子力研究所に寄ってくれねえか。ちょっと掘り出したいものがあるんだ」
「掘り出したいもの?」
「マジンカイザーさ。そろそろあれの力が必要になってきた」
「マジンカイザーか」
「ああ。ミケーネとの奴等の戦いもこれからが正念場だしバルマーの奴等もいやがる。あれの力が必要になってきたんだ」
「いいんだな、甲児君」
鉄也が彼に問う。
「あれの力を解放して」
「それしかねえ」
甲児は強い言葉でそれに応えた。
「これからの戦いの為には。あの力を使いこなすしか」
「わかった。そこまで言うのなら俺に異存はない」
鉄也はそれを聞いて満足そうに頷いた。
「では行こう、そしてあの力を解放するんだ」
「よし、では次の行く先は決まったな」
「はい」
皆大文字の言葉に頷いた。
「光子力研究所に向かおう。そしてマジンカイザーの力を解放するんだ」
「わかりました」
こうしてロンド=ベルは勝利の余韻もそのままに光子力研究所に向かった。その途中シナプスはジャクリーヌから報告を受けていた。
「そうか、指揮系統の混乱以外はさしてダメージはないか」
「はい」
「あれだけ無茶な攻撃を仕掛けて。ビッグファルコンの堅固さには驚かされるな」
「三輪長官はかなり上機嫌で基地に入られたそうです」
「そうか」
シナプスはそれには特に感情を示さなかった。
「ではそちらは気にしなくていいな」
「はい」
「我々も安心して次の行動に移れるというものだ」
「ただ、最近一つ気になる報告が入っております」
「バニング少佐」
バニングもこれまでの活躍が認められ少佐になったのだ。やはり士官学校出身ではなく、またアムロ程派手な活躍ではなかった為その昇進は少し遅いと言えば遅かった。あくまで程度の問題であるが。
「日本で最近テロ事件が頻発しております」
「テロ事件」
「はい。街中で突如として爆発が起こるのです。それで大勢の犠牲者が出ているそうです」
「無差別テロか」
「おそらくは。何者の仕業かまではわかりませんが」
「ミケーネじゃないんですかね」
それを聞いたバーニィが言う。
「ちょっと違うんじゃないかしら」
だがクリスがそれに異議を示した。
「違うかな」
「ほら。ミケーネはもっと直接的な攻撃を好むから。それに暗黒大将軍も七大将軍もそうしたことは嫌いだし」
「そうだな。彼等はそんなことをする位なら名乗り出て攻めて来る」
コウもそれに同意した。
「あしゅら男爵やブロッケン伯爵だってそうだったし」
「リヒテルでもないよなあ」
「彼がそんなことをする筈もないしな」
バーニィノ言葉に今度はコウが答えた。
「ティターンズやネオ=ジオンは離れ過ぎているか」
「それに彼等ともどうも毛色が違う」
「じゃあ一体」
「詳しいことがわからないのが余計に怖いですね」
「それがテロだからな」
コウはクリスにも答えた。
「これも調査していくか」
「そうだな、ウラキ中尉の言う通りだ」
シナプスもそれに頷いた。
「作戦と並行してな」
「はい」
彼等の戦いはただ戦場にいるだけではなかった。多くの障害が立ちはだかっていたのだ。そしてこのテロが後に大きな事件を引き起こすことを彼等はまだわかってはいなかった。
敗北したバーム軍は小バームにまで逃れていた。リヒテルはそこでオルバンに謁見していた。
金髪の濃い髭を生やした男である。顔はいかめしいがそこには何故か卑しさも感じられた。濁った目の持ち主であった。
「閣下、もう一度」
リヒテルは彼の前に片膝をつき言う。
「私にチャンスを」
「黙れ!」
だが彼はそれを認めなかった。
「貴様は負けたのだ!わしの期待を裏切ってよくもそんなことが言えるな!」
「そこを何とか!」
リヒテルはすがるようにして言った。
「アイザムの仇を討ち、そして汚名を雪ぐ為にも!」
「ならぬと言っておる!」
しかしオルバンはそれをあくまで認めようとはしなかった。
「貴様はこの小バームにおいて謹慎を命じる!」
「そんな!」
「不服だというのか!」
オルバンはリヒテルを見下ろして言った。
「バームの指導者であるわしに対して!」
「それは!」
「ゲロイヤー参謀!」
「はっ」
卑しい顔の小男が出て来た。
「こいつを連れて行け!わしの目の前から消せ!よいな!」
「おおせのままに。さあリヒテルよ」
左右に控える兵士達に彼を押さえさせる。
「来るがいい」
「おのれゲロイヤー!」
リヒテルはその怒りをゲロイヤーに向けてきた。
「この恨み忘れぬぞ!」
「黙れ、さっさと行け!」
オルバンはそんな彼に対してさらに叫んだ。
リヒテルは抵抗も空しく連行されていった。そして重い扉が閉じられる音がした。
「フン、若造が」
オルバンは一人になると呟いた。
「奴は鋭い。リオン暗殺の黒幕がわしだと知れば面倒なことになるな」
「オルバンよ」
ここで部屋にある大型モニターのスイッチが開いた。
「はい」
そこにはあの髭の赤い顔の男がいた。口は額にある。暗黒ホラー軍団の総帥であるダリウス大帝であった。
「地球から撤退したそうだな」
「はい」
オルバンはそれに頷く。
「あくまで一事的なものですが」
「ならばいいがな」
ダリウスはあえて多くは語らなかった。
「そしてその司令官は」
「只今更迭しました」
「そうか。では以後は我等の四天王が指揮を執る。これでよいな」
「はい」
「そしてだ」
ダリウスは言葉を続けた。
「小バームを地球圏へ移動させよ」
「何とっ」
「不服なのか?」
「いえ、それでは小バームの民を危険に晒すことに」
実はこれは嘘である。オルバンは民のことなぞ何一つ考えない男である。ただ自らの保身の為であった。これがオルバンの正体であった。
「犠牲を恐れる者が勝利を掴むことはできぬ」
ダリウスはそんな彼に対して言った。
「それにこんなことに臆していてはバームとゼーラの友好は成り立たぬぞ」
「わかりました」
そこまで言われては引き受けないわけにはいかなかった。
「それでは仰せのままに」
「うむ」
ダリウスは鷹揚に頷いた。それは主が僕、いや奴隷に対してする動作であった。
「案ずるな、あの青い星は我等のものになる」
「はい」
「我等のものにな」
その言葉には深い意味があった。だがオルバンはそれには気付かなかった。ダリウスだけが知っていたのであった。

第七十五話完

2006・2・21 
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