真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第7話 未来の覇王 前編
前書き
第7話 未来の覇王 前編
母上誘拐事件から2年の歳月が経過しました。
私も今年で7歳です。
私が母上を山賊から救出したことは、すぐに領内に広がりました。
もちろん山賊狩りをする麻袋の怪物が私であることもです。
巷では、『山陽の麒麟児』などと言われています。
恥ずかしいです!
いつのまにかちょっと頭の良い『神童』から、昇格していました。
あれ以来、都督のジジに武官としての手ほどきを受けています。
年齢的な理由もありますが、軍属ではないです。
都督のジジの個人指導です。
私の志に感動したのか、お爺々様が都督のジジに相談したらしいです。
都督のジジも快諾してくれました。
お爺々様の授業はどうなったかというと、今でもスパルタ教育が続いています。
都督のジジの指導が入るので、お爺々様の授業時間が減るのだと思っていました。
以前より過酷になった気がするのですが、私のせいでしょうか?
明らかに過酷になっています。
「正宗よ。お前の理想を現実にするにはこれまで以上に頑張らねばならない。これからは今まで以上に精進せよ。よいな。山賊狩りは暫く禁止というではないか。その時間を当てれば今まで通りじゃ」
そう、父上、母上から山賊狩りは暫く禁止されました。
危険な行為は、私がもうすこし成長したら考えるそうです。
山陽郡の山賊はというと壊滅状態です。
山賊達にとって、私は恐怖の対象になっているので、残った山賊も領内から逃げていったようです。
過労で私の心は擦り切れそうです。
これも孫策のせいです。
恋姫の孫策は好きなキャラの一人でしたが、今の私には最も嫌いな女です。
孫策を倒して私のハッピーライフを必ず実現してみせます!
そんな過労気味の私ですが、楽しい時間があります。
都督のジジの計らいで、武官達の調練に参加できることです。
「キャァーーー!劉ヨウ坊ちゃまよーーー!」
「若君様ーーー!」
「キャァーーー!」
私は女性の武官達の人気者になっています。
辛い毎日ですが、この瞬間だけ疲れが吹っ飛びます。
それは睡眠を取ることができるからです。
言ったそばから睡魔が襲ってきます。
今日も朝方まで、教育ジジのスパルタ教育だったので眠いです。
「・・・・・・・・・ぐぅ」
「若君様、かわいいわね」
「ふふっ、そうね」
「本当に頑張っていらっしゃるもの」
女性の武官達はやさしい人ばかりです。
この状況は勿体無い気がしますが、睡魔には勝てませんでした。
過労な毎日を送る私に手紙が来ました。
差出人は姉上です。
姉上は現在、洛陽で宮仕えをしています。
その姉上が私に洛陽で勉強しないかという誘いです。
父上、母上にそのことを伝えると姉上から既に聞いていたようです。
「洛陽はこの大陸の中心だ。いい経験になると思うから行ってきなさい」
「さびしくなるけど、私も賛成よ頑張ってきなさい」
洛陽への行くことは両親も賛成のようでした。
私も洛陽がどんなところか興味がありましたので、この機会に行くことにしました。
そうと決まれば、善は急げです。
都督のジジや知り合いに別れの挨拶をしてきました。
「若君、頑張ってくるのですぞっ!」
都督のジジはそう言うと洛陽までの護衛として、配下の兵士を10人着けてくれることになりました。
私に護衛が必要かどうかは疑問です。
父上、母上から危険なことは禁止されているので仕方ないです。
洛陽への旅路に出たのですが・・・。
「あの、お爺々様・・・」
「なんじゃ、正宗よ」
「何故、ついてこられているのでしょうか?」
「あたりまえじゃ。お前が羽目は外さぬよう儂がお目付役を買って出たのだ」
「そうですか・・・」
「それにじゃ、お前の勉強に遅れが出ては不味いからの」
洛陽でも、私に勉強をさせる気ですか、お爺々様。
洛陽に行ったらお爺々様のスパルタ教育から開放されて、久しぶりにのんびりできるかなと思っていました。
それがものの見事に打ち砕かれました。
空が晴天なのとは対照的に、私の心には雨が降っていました。
つまらない家庭教師を追い出してやったわ。
馬鹿の一つ覚えのように、本に書かれている通りことを教えるような教師など、この曹猛徳に不要よ!
お母様にも困ったものね。
家庭教師を寄越すなら、もっとましな人間を送ってきて欲しいものね。
ああ、ムシャクシャするわね!
「何か私が興味を引くような話はないかしら」
私は夏侯姉妹に時間潰しになるような話題がないか聞いてみた。
「そうですね~、う―――ん。あっ!そう言えば街で三頭軍の麒麟の話を聞きました。華琳様」
夏侯姉妹の姉、夏侯惇こと春蘭が初めて耳にする話を振ってきた。
「姉者、三頭軍の麒麟ではなく、山陽郡の麒麟児だ」
春蘭の妹、夏侯淵こと秋蘭が姉の発言を訂正した。
やっぱり間違っていたのね、春蘭・・・。
「そうなのか秋蘭?」
いつもの何気ない風景ね。
「姉者しっかりしてくれ・・・」
相変わらず春蘭はしょうのない子ね。
「山陽郡の麒麟児、山賊3,000を単騎で殲滅したという話だったかしら」
この陳留から2郡先の山陽郡で話題になっている人物らしい。
太守の妻を単騎で乗り込んで救い出したらしい。
無謀ではあるが、勝算あっての行動というのなら大した人物ね。
「確か・・・歳は5歳だったからしら、事実なら化け物ね」
流石に無理だろうと思ってしまう。
春蘭も子供ながら、正規軍の兵士に1対1の戦いで後れをとることはない。
しかし、山賊3,000といったら話は変わってくるわ。
絶対に無理ね。
それだけの数の山賊達を相手に正攻法では勝ち目がないわ。
策を弄しようにも一人では何もできない。
「信憑性は疑わしいと思います。この手の話、往々にして尾ひれがつくものです」
秋蘭の考えが妥当な線ね。
「ええ、その通りね。でも、秋蘭、火のないところに煙は立たないというでしょ」
火のないところに煙は立たない。
少なくとも山賊を単騎で殲滅したのは、私たちと同じ子供ということは確か。
面白いわね。
暇つぶしにはなりそうだわ。
「会ってみたいわね、その山陽郡の麒麟児に」
私はまだ見ぬ「山陽郡の麒麟児」に想いを馳せてしまったわ。
この私を後悔させない人物であって欲しいわね。
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