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髑髏天使

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第五話 襲来その六


「わかったな」
「それが髑髏天使にも影響するか」
「最初は違ったようじゃがな」
「最初は?」
「うむ。最初は天使だけじゃった」
 こう牧村に話す。
「太古の髑髏天使はな」
「太古のか」
「髑髏天使は五十年に一度現われるな」
「ああ」
 このことはもうわかっていることだった。しかしそれだけではないというのだ。
「それは昔からじゃった」
「昔からか」
「キリスト教よりもまだ昔からあった」
「その頃の髑髏天使はどうだったのだ?」
「残念じゃがそれはわからん」
 これについては首を横に振る博士だった。
「全くな」
「全くか」
「太古から存在していたのはわかった」
 これは認めるのだった。
「しかしじゃ。わかったのはそれだけでな」
「他はまだか」
「わかっていないことの方が圧倒的に多い」
 髑髏天使という存在についてはまさにそうなのだ。とにかく何もかもがわかっていないのだ。文献もまだ解読中であり髑髏天使のことは謎に包まれているのである。
「圧倒的にな」
「圧倒的か」
「そうだ。それでだ」
 また言う博士だった。
「大昔の髑髏天使についてはまだわかっておらん」
「わかったのは太古からいたことと九つの階級があること」
 牧村は呟いた。
「それだけか」
「とりあえず天使の上は大天使じゃ」
 このことはわかっているのだった。
「しかし大天使がどういったものかもわからん」
「わかった。わかっていないのがな」
 顔を暗くさせたわけではないが少し憮然としていた。
「それがな」
「まあこれについては少し待ってくれ」
 また答える博士だった。
「少しな。それでじゃ」
「それで?」
「今闘っておる相手じゃが」
「あの烏か」
 闘いの話になり牧村の目の光が鋭くなった。
「そうじゃ。空を飛ぶな」
「ああ」
「空を飛ぶ相手が出て来たらとりあえずはサイドカーを呼べ」
「それでいいのか」
「そうじゃ、それじゃ」
 指差すようにさせた右手を上下に振りながら答えた。
「それでじゃ。呼べばそれでいい」
「わかった」
 博士の言葉に静かに頷いた。
「それではな。そうしよう」
「まずは闘ってみることじゃ」
「闘わないとどうにもならないか」
「そもそも闘わないとならないものじゃろ」
 博士の今の言葉は何を今更といった色が含まれていた。
「違うか?」
「それが髑髏天使だったな」
「うむ」
 牧村の言葉に対して頷く。
「その通りじゃ。それが髑髏天使じゃ」
「なら。闘うだけだ」
 牧村の方も結論は出て来た。
「もう決めていることだがな」
「覚悟はしておるのじゃな」
「闘わなければ死ぬ」
 前から言っていることであるし話していることであった。
「だからだ。俺はそれだけだ」
「そうじゃったな。まあ今度の闘いはじゃ」
「サイドカーか」
「それを使うとよい。後は君に任せるぞ」
 牧村に任せるとまで言ってきた博士であった。
「闘いに関してはわしは何も言うことはできんのじゃ」
「そうなのか」
「わしが知っておるのは文献のことと妖怪や魔物のことだけじゃ」
 ここで博士は妖怪と魔物とはっきり分けてみせた。あえて牧村、即ち髑髏天使と闘う者達を魔物と呼んでみせたのである。ここには博士自身の考えがあった。 
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