髑髏天使
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第二十三話 異形その九
「わしが丹精込めて作り出したものじゃからな」
「全面的に改造を施してくれたな」
「科学だけではない」
博士の知識はそうした現実の世にあるものだけではないのだ。その裏に隠されているものもまた使う、そうした類のものであるのである。
「錬金術も入れておるしのう」
「おかげでガソリンの補給をしなくて済むようになった」
「空も飛べるしのう」」
「そうだ。空だ」
牧村は今度はこのことに言及した。
「空を飛べることが最も有り難いな」
「髑髏天使として空を飛ぶだけではなくじゃ」
「マシンも使ってか」
「一人ではなく実質的に二人になる」
博士の言葉ではそうなることだった。
「あのマシンは君の思うまま動かせるからのう」
「俺の脳波に基いて遠隔操作が可能か」
「他には人工知能も搭載しておるのじゃよ」
科学も入れているのだった。博士は科学否定主義者でもなかった。
「じゃからかなり自由にも動いてくれるのじゃ」
「有り難いマシンだな」
「その有り難いものを使わずしてじゃ」
さらに言う博士であった。
「生き残るというのも難しいことじゃよ」
「わかってきた。それではだ」
「次の戦いでどうなるかじゃが」
前置きはここでも為された。
「機会があればやってみてくれ」
「わかった。そうさせてもらう」
「君が生き残る為にな」
「髑髏天使としてか」
「ふうむ」
しかしだった。ここで博士は微妙な声を出してきた。今の牧村の言葉に対して思うところを見せたいかのような言葉だった。そして彼もそれに気付いたのだ。
「何かあるのか」
「いや、今髑髏天使と言ったのじゃが」
「それが何かあるのか」
「君は人間じゃな」
博士はここで彼に問うた。
「そうじゃな。人間じゃな」
「人間でなくて何なのだ」
こう問い返しもする牧村だった。
「俺が人間でなくて」
「そうじゃ。君は人間じゃ」
博士はまた牧村に顔を向けた。そうしてそのうえで再び彼に告げた。
「君はな」
「それがどうかしたのか」
牧村は博士の今の言葉に対して問い返した。
「俺は人間だが」
「しかし君は髑髏天使だと言った」
「それが何かあるのか」
「気になってのう」
難しい顔になっていた。
「いや、君は人間じゃ」
「それは疑いようも否定もできない事実ではないのか」
「髑髏天使はどうなのかじゃな」
「髑髏天使はか」
「髑髏天使は五十年に一度この世に姿を現わしそのうえで魔物と戦う」
その髑髏天使のことを話すのであった。
「髑髏天使は人間であるとは何処にも書かれていないのだ」
「人間とはか」
「人間である君がなるとしても人間とは決して書かれてはいない」
博士はこのことを強調するようにして語るのだった。
「どの文献にものう」
「髑髏天使は人間ではないのか」
「それもまだわからん」
それについてはということであった。わからないというのである。
「しかしそれだけに余計に人間である存在なのかどうかというと断定できんのじゃよ」
「わかっていれば断定できる」
牧村は言った。はっきりとしていればそれで断定することはできる。しかしわかっていなくてはそれは憶測の域を出ない。そういうことであった。
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