真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第71話 黄巾賊の幹部の足取り
私が揚羽に見送られ洛陽を起ってから一月が立ち、現在、私と将兵達は冀州広平郡を北上しています。
この間、私は練兵を兼ねて小規模の黄巾賊の集団を殲滅しながら進軍しました。
私の率いる軍は四万とはいえ、急ごしらえの編成軍のため、兵士の大半が農民です。
これでは満足に戦陣を組むなど無理です。
それで冥琳の献策を受け、数千人規模の黄巾賊の集団に的を絞り攻撃を仕掛けて練兵しています。
一月しか立っていませんが、冥琳、星、真希のお陰で士気、練度が最初の頃に比べ大分ましになりました。
この黄巾賊の討伐では、兵士の練兵以外にも目的があります。
それは情報収集です。
私は情報収集を兼ねて毎回十数人位の賊を捕虜にして、彼らから情報を引き出すため、討伐の度に有益な情報を提供した者の中から1名だけ死罪を免じています。
私は兵士達に大休止を取らせ陣幕にいます。
「お前達の中で最も有益な黄巾賊の情報を提供した者を一人だけ生かしてやろう」
私の目の前には先日討伐した黄巾賊達が縄に縛られ兵士に組しかれています。
「地獄の獄吏と言われるテメエが俺たちを開放する訳ないだろ!殺るなら殺りやが・・・・・・」
私はその賊が言い終わる前に、双天檄で頭を吹き飛ばしました。
「話す気がない者に用はない。これ以上下らぬ言葉を吐けば、連座でお前達全員を斬首に処す」
私は動かなくなった死体を一瞥して、他の賊を睨みつけました。
「お、お願いです。き、き聞きたいことがあるなら何でも話します。で、でですから命だけは!」
一人の賊が声を震わせ、必至になって私に言いました。
「て、テメエ!天和ちゃんを裏切るつもりか!」
ガタイの良い賊が私に話しかけた賊に怒りに満ちた表情で言いました。
「う、うるせえ!俺はただ生活に苦しくて参加しただけだ。なんで、死ななくちゃなんねぇんだ!」
「天和と言うのは誰だ。お前達の話し振りでは賊共の幹部と見たがそれで間違いないか」
私は自分で白々しいと思いつつ、彼らの会話に割り込みました。
「はい、そうです。天和は黄巾賊の首領で、張角が本名です。妹に張宝こと地和と張梁こと人和がいます」
賊はベラベラと話し出しました。
「クソ、テメエ許さねえ!」
ガタイの良い賊だけでなく、他の賊も兵士に取り押さえているのも気にせず暴れ出しました。
「そいつらにもう用はない。私に有益な情報を話したこの者以外の首を刎ねよ!」
私が賊を取り押さえる兵士に命令を下すと、彼らを引きずって連れて行きました。
「くそ、裏切り者、テメエを殺してやる!劉ヨウ、テメエも殺してやる!」
私は罵声を上げて暴れる賊達が連れ出されるのを確認すると残った賊との話を再開することにしました。
「話を戻すが、お前は張角の居場所を知っているのか?」
私は確信の部分を聞きました。
「い、いえ、知りません。で、でですが、仲間の皆が冀州鉅鹿郡広宗県に向かっていました。俺達の頭がそこに皆が集まって再起を図るって言っていました」
賊は震えながら私になかなか有益な情報を話しました。
多分、史実では張梁が広宗で皇甫嵩に討ち取られたはずなので、そこに人和がいるはずです。
恋姫原作では張角、張宝、張梁は一緒でした。
つまり、広宗に彼女達三人がいる可能性は高いです。
これで黄巾の乱も終わります。
私のいた世界には「政教分離」という言葉があります。
政治勢力と宗教勢力の邂逅は悪弊しか生まないので、彼女達を華琳の手で助け出させることを見過ごすことはできません。
この私の手で彼女達に引導を与えてやります。
もし、華琳が邪魔をするようなら、彼女を窮地に落としてでもあの三人を殺します。
「冥琳、今の話を聞いたな」
「はい、そこに黄巾賊の首領でなくても、かなりの大物がいると思われます。我々は冀州に入り、既に20日で7万前後の黄巾賊を討伐しており、黄巾賊達は危機感を抱いているのでしょう」
冥琳は薄く笑いながら私に言いました。
「お前の命は約束通り助けてやる。衛兵はいるか!」
私は冥琳から賊に視線を戻し言いました。
「はっ!劉将軍、何か御用でしょうか!」
衛兵は私に気合いの篭った返事をしました。
「こいつを開放してやれ。有益な情報を私にもたらしたので、この者の死罪を免ずる。それと褒美として五銖銭を千五百銭、一週間分の米を渡してやれ」
私は衛兵に指示を出しました。
「あ、ありがとうございます!」
賊は頭を地面に擦り付けて感謝していました。
「お前はお前自身のお陰で命拾いしただけ、お前に感謝される筋合いはない。それと忠告しておく、次は無いからそのつもりでいろ」
私はそれだけ言うと衛兵に目配せをして、その賊を連れて行かせました。
衛兵が去り誰もいない陣幕で、冥琳は周囲に誰もいないことを再度確認すると私に声を掛けてきました。
「正宗様、広宗では決戦が予想されるので、目的地に向かうまでにできるだけ敵の戦力を削ぎ取るべきです。現在の我が軍の練度を考慮して、二万程度の軍なら軽微な負担で討伐できます。今後の方針ですが、まず、あの賊の情報通りに鉅鹿郡広宗県に進軍しましょう。用心して、先方に斥候を多数放ち、警戒を怠らぬようにいたします」
冥琳は真剣な表情で言いました。
「それで構わない。これまでの黄巾賊の討伐で兵の練兵もそれなりの成果を出している。鉅鹿郡広宗県にいる賊の幹部の首級を必ず上げる」
「正宗様、この戦で功を立て、より高き官位と所領を得て、乱世への前哨戦といたしましょうぞ!」
冥琳は私の目を力強く見つめて言いました。
「冥琳の言う通り、この戦が私にとって重要な意味を持つ。決して、他の者に遅れを取る訳にはいかない。狙うは張角、張宝、張梁の首だ!」
私は冥琳に進軍の準備を速やかに行わせ、二刻程の後、軍を率いて広宗に向かいました。
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