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トリコ~食に魅了された蒼い閃光~

作者:joker@k
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第九話 動き出す物語

 
前書き
移転完了!
取り敢えずこれでトリコは全て移転できました。

元々フェアリーテイルの小説もどきの続きが全然書けず、気分転換に書いたのがこのトリコなんです。つまり更新速度は亀なんですよね。まぁだからと言ってもフェアリーテイルが兎だというわけではなく、少し早い亀なんですけどね。優先順位の問題です。ただトリコをここまで多くの人が読んでくださっているとは思わなかったので驚愕している次第であります。まぁ二作目なんで処女作のあちらよりも文章的には少しマシになってるからでしょうね。ド素人の割にはですけど。 

 
 グルメタウン。通称「満腹都市」。グルメステーションと言われるこの都市の駅は一日の平均利用者数は二千五百万人以上とも言われている。グルメの都市と言われるだけのことはあり、多種多様な料理を食すことができる食の楽園。

 その中でもグルメタワーと呼ばれている建物は特に有名であり三百階以上ある高層ビル全てがレストランとなっている。特に最上階の十星レストランは一般人ではまず立ち入ることができず富豪や権力者ですら数年待ちの予約を経てやっと利用できる超高級レストラン。


 今俺はゲロルドのケバブを食べながら携帯でグルメタウンの情報を見ている。どこのサイトも似たりよったりな情報だ。あとは殆ど節乃食堂についてぐらいか。有料サイトなら穴場情報やら何やら情報を得られると思うが今のところ別にそれ程興味はない。

 この都市に来て約一ヶ月。未だ全てのレストランや屋台を制覇できず様々な店で料理を食べ歩いている。それ程数多くの店が乱立しており尚且つ今の所ハズレの店に出会っていないというのが驚きだ。全部美味い。全店舗美味って凄くね?

 例えば屋台の焼きそばだ。これがよく出来てる。ただ美味いだけではなく屋台特有のあの何とも言えない普通のレストランの焼きそばとは違う味を極限まで引き出している所がもう感動だ。

 あの脂っこく野菜が極端に少ない屋台特有の味をそのままに旨みだけを引き上げている。もうこれは凄いとしか言い様がない。おかげで屋台を回っている時は常にお祭り気分だ。ワクワク感が止まらないぜ!

 その焼きそば、脂がのっているホネナシサンマを食べながら三ツ星自販機の飲料を飲み食べ歩く。まさに至福の時だ。まぁ三ツ星の自販機は一缶十万円と中々値が張るが、その金額に相応しい味ばかりだ。特に水晶コーラとレモモン絞り100パーセントはお気に入り。

 こんな自販機があるのにも関わらず治安が良いのはここの都市の警備体制が優れていることが起因すると課長☆ブログというサイトにも書いてあった。確か無銭飲食ですら数秒で警備が飛んでくるらしい。そう言えば原作でもその辺のことが触れられていた気もするがあまり覚えていない。

 とっくにお昼を過ぎていたので前から目をつけていた高級回転寿司「美久呂」に入店する。一貫で数万とあるが気にせず目の前に流れている皿を取る。

 イカまぐろ、タイガーひらめ、フルムーンホタテ、炙りレモン鯖、ベルまぐろ、ファルコン巻き、クリームえんがわと次々と流れてくる寿司をわんこ蕎麦を食べるペースで口に運んでいく。一々口の中が幸せになる最高に憎いシースーばかりだ。ちくしょう、てやんでい、べらぼうめぇ。

 あっという間に皿のビルがいくつも生まれ、お支払いは前世の時ならば気絶しちゃうほどの金額となったが正直いつものことだ。最近手にしたブラックカードを店員に差し出し会計を済ませる。そう、つい最近プラチナから限度額無制限のブラックへとなったのだ。

 それは態々俺が滞在しているホテルまでカード会社のお偉いさんが訪ねてきて、ブラックを渡されたのだ。勿論最初はそのことに戸惑ったのだが、お偉いさんの説明で納得した。どうやらトムからの紹介ということもあり少し気になって俺の一月のカード料金を調べて見たらプラチナの限度額限界まで使っていたことを知り、さらにきちんとその分のお金を支払っていたことに驚き、すぐに会社で会議が開かれたらしい。

 それもそうだ。支払い能力があり限度額限界まで使ってくれている顧客を会社の利益的に考えてそのまま放置できるわけがない。しかしすぐさまブラックカードにするほどまだ信頼関係を築けていない。限度額無制限のブラックカードにするということは一種の信頼関係の証でもある。

 会議ではまだブラックは早く様子見するべきだとの意見が出たらしいのだが、そこはこのお偉いさんが何とか抑えてくれたらしい。何故そこまで俺を信頼してくれているのかと聞くと、笑顔ではぐらかされてしまった。ん~何故だ。

 そんなこともあり俺はジュラルミンケースで現金を持ち歩かなくて済んだ。一食でとんでもなく食べるので下手すれば一回の会計で数千万近く払ったこともある。ブラックカード様々である。

 そんな俺がいくらよく食べるからと言っても普通の店ではそこまでの金額にはならない。そうこれはグルメタワーの中層階や上層階のレストランでの話だ。あそこは一見客は入れないのだが紹介でなら入店できる。

 一番初めに紹介してくれたのは俺が最初に宿泊したあの五つ星ホテルの従業員だ。あそこで十日近く泊まっていたのでお礼に捕獲レベルの高い動物をノッキングした状態でプレゼントしたのだ。その時俺に四天王の存在を興奮しながら教えてくれた人が紹介してくれた。


 プレゼントしたあの時従業員達が本当に嬉しそうに喜んでくれたのが凄く嬉しかった。あそこまで喜んでくれるとは思わなかったから。その時ふと思った。もしこの話を前世の時の俺が物語のように読んでいたらどんな感想を抱いただろうと。自分のことだけに容易に想像ができた。善意で一頭何千万もする動物を無料であげるなんて少年誌の王道のような人物だなとでも思っただろう。そんな考えを持っていた俺がここまで変われたのは何故だろう。

 強くなったから。命の大切さに気がついたから。自身に余裕が出来たから。それもあるだろうが、単純にこの世界の壮大さのおかげだと思った。漫画やアニメの世界でこんな人いねぇよと思われる個性豊かな登場人物達がいる。それは過去に経験したモノの影響もあるだろうがやはり世界の不思議や先程も言った壮大さも人格形成に関係してくると思う。少なくとも俺がそうだ。

 前世では考えられないような壮大な動物、島、滝や神社など感動する物が数多くある。それを見れば心が洗われるというか、純粋に感動してしまう物が無限にある。ゆえに人に多大なる影響を及ぼしてしまうと思う。それが善にしろ悪にしろ……。

「あぁ~やめやめ! 何こんなこと考えてんだ俺。柄じゃねぇよな」

 ポリポリと頭を掻いて、サングラスを掛けてベンチから立ち上がる。っていうか俺いつの間に座ってたんだ。無意識って怖っ。街に設置されている時計を見ればもう六時を過ぎていた。っとそろそろ行かないとな。


 目的地はまたもや我らがトムさんに教えていただいた店でもある。数日前までトムさんに新しく買った携帯で呼び出され一緒に飲んだときその店を教えてもらった。何でも美食屋なら一度は訪れるべき場所らしい。というか原作でも出てきた店なのでよく知っていたが、正直忘れてた。う~む、しかし忘れていたのは仕方がないと思うんだ。だってあちらこちらにこの都市は美味いモノがあるんだもの。みつお。


「っと、到~着。うへぇ、混んでやがるな――ベビーロッジ」

 グルメタウン中心部にある見た目は木造の一軒家。出会いの酒場「ヘビーロッジ」。世界中から名だたる美食屋が情報と仕事を求め日々訪れる酒場。より屈強な美食屋を求め依頼人も多く集まることから出会いの酒場とも言われている。byトムさん。

 まるで西部劇に登場する酒場のように両開きの扉を開くと想像以上に店内は騒がしかった。いいねぇいいねぇ。活気があるねぇ。だけどちょっとうるさいよ。いやかなりうるさいよ。もう……うるへぇい!!

 カウンターに席が空いていたので迷わず座る。俺が扉を開けてからカウンター席に座るまで何人かが俺を観察していたが無視無視。

「おう、マスター。とりあえずビール頂戴。大でね」

 黒い丸椅子に足を組みながら座りサングラスを外す。サングラスを外したのは勿論原作キャラでもあるモリ爺をよく見るためだ。おっさんなのにムキムキだな。

「ん? 新顔だな……へぇ最近はトリコ達以外ぱっとした奴がいねぇと思ってたが、お前さんは合格だな」

 トリコ達を引き合いに出されちゃ誰も太刀打ち出来ねぇだろと思いつつも、あれだけの原石を見た後じゃ仕方がないのかなとも思う。まぁ俺はまだ会ったことないけど。

「そう? あの目利きのモリ爺に言われたら自信になるよ。ビールはよ」

「ヘッ思ってもねぇようなこと口にするな。強さには自信ありって顔に書いてやがるぜ。ほらよ、当店自慢のエナミルビールだッ!」

「うおっ! でかっ。んじゃいただきま~っす――ぷっはぁーたまらん!生きててよかった」

「餓鬼のくせに良い飲みっぷりじゃねぇか」

 未成年だとバレてることに一瞬冷や汗を流すが、もう飲んでしまったことは仕方がないと開きなおる。こういう時は開き直るのが一番だ。

「あら……ばれてーら」

「目利きのモリ爺なめんな」

「参りました。さすがっす」 

 エナミルビールと一緒に出された枝魔目を食べながらビールを飲み干す。枝魔目は中の豆が眼球のように不気味な枝豆だ。見た目は悪いが味は程良い塩がきいて実に美味。だが正直普通の枝豆のほうが良い。何せ気味が悪い。まだまだ飲み足りずマスターにビールの追加を頼もうとしたらすでにおかわりが用意されていた。さすがっすモリ爺。

「にしてもお前さん、新人の割にはきちんと勉強してきたんだな。ったく最近の若いモンはワシが目利きで有名なことを知らずにこのBarに来るもんだ」

「はっはは……俺もどちらかといえばモノを知らないほうに入るんだけど、今回は事前にトムによく教えてもらったからな」

 苦笑いしながらビールを飲む。だって下手すれば新人の中で一番常識的な知識ないの俺かもしれないし。只今勉強中です。捗ってないけどな。

「あ?トム? ってことはお前さん、まさか――蒼雷のライデンかっ!!!」


――静寂


 マスターの叫びであれほど騒がしかった酒場が一瞬にして静寂した。そして静寂したと同時に痛いほど多くの視線が俺の背中に突き刺さっている。
 っていうか蒼雷のライデンって何!? ちょっと格好良いじゃない!恥ずかしさより俺の奥深くに眠っていた中二心が震えちゃったじゃない!責任取りなさいよっ!取り敢えずある程度予想はつくがマスターに尋ねる。

「な、何それ?」

「ふむ、知らぬは本人ばかりか。実は最近美食屋やその手の企業の中でよく話題に上がっている人物がおる。突如として世界の台所(ワールドキッチン)に現れた若き青年が鰐鮫をノッキングした状態でそれを背負いながら海の上を走り持ってきた、と」

 一息つき、乾いた喉を癒すためかビールを一気に呷る……それ俺のビールなんだけど。しかしそんなことは気にしないとばかりにマスターは続きは話す。

「それ以降も鰐鮫クラスとはいかないが高ランクの動物達を度々ワールドキッチンに持ってきているらしい。それが蒼雷のライデン。この二つ名は実際にライデンの戦闘を目撃した人物からの証言で付けられたとのことだ」

「……」

 あ、開いた口が塞がらねぇぜ。口にビール入れてないでよかったぜ。実はトリコのように周囲に騒がれるような人気者も良いなと考えていた時期が俺にもありました。しかし、結果として注目を浴びるということはただただ気恥ずかしいだけでした。おわり。

「って何でそんなに話題になってんだ?」

「はぁ~そりゃあお前さん決まってるだろうが。名のある美食屋でもなく、まだ見た目十七、八の男が捕獲レベル二十代後半の鰐鮫をノッキングし、あまつさえ海上を走って登場だ。そりゃあ話題になるに決まってる」

「な、なるへそ。そりゃあそうだ。ってマスターはトムと交流あるんだ」

「あぁたまにトムの野郎が飲みに来るぜ。数日前だったかな、電話で今話題のライデンが近い内にトムの紹介でこのBarに来るって知らせてくれたわけよ。それでお前さんがライデンだと気がついたわけだ。納得したかい、蒼雷さんよ」

「……胃が痛くなるほどにな。ちくせう」

 恐る恐る後ろを振り返ると酒場にいる全員と視線が合うのではないかと思うほど注目されていた。恥ずかしいので、そっとサングラスをかけ直す。視線の種類は様々だ。疑いの眼差しを向ける者もいれば、ただ単に好奇心で見てくる奴もいる。まるで動物園だ。檻の中にいる珍しい動物として見られているみたい。はぁどうせなら美女に見つめられたいよと思っていると、おぉ!凄い美人発見!邪魔なのでさっとサングラスを外す。


 綺麗なプラチナブロンドをストレートに背中辺りまで伸ばし、左耳にだけ髪をかけるようにして出している。切れ長の綺麗な瞳に眼鏡がよく合っていて、まるで美人秘書。着ているワインレッドのスーツもその秘書の印象を強くしているのだろう。何よりその長い美脚を網タイツで覆っている所が実にエクセレントッ!スーツの上着から覗く豊満な胸はもはや凶器だ。あの母なる大地に埋まりたい。 

「ん? 誰見てやがんだ――ははぁん、さてはライデン、エイダに見惚れてやがるな? 止めとけ。見えるだろ、エイダの足元に転がってる哀れな男が。エイダに絡んでノッキングされやがったんだ。エイダは俺も認める程の腕っぷしだ。だから止めとけ」

「ノッキングだとっ!? だとするとあいつは堂々とエイダたんの下から美脚を眺め放題ということか! ゆるさん、ゆるさんぞぉおおお」

「ライデンってそんな奴だったのか……イメージ変わったわ」

 イメージなどクソくらえだ。キャラなど煩悩の前には何の意味もない。あの野郎最初からノッキングされることを計算してあの位置に倒れたのだとすればかなりの手練だ。もしかしたらパンツだって見える可能性もある。なんて猛者だ。勉強になるぜ、ちくしょう。

「おいライデン、そんな鼻息荒げるな。ヤバイ奴に見えるぞ。っというか今回依頼について忘れてねぇだろうなっ!」

「……マスター。俺には今成さなきゃいけない事があるんだ。止めないでくれ!」

「セリフだけは格好良いけどよ!――――ほら、依頼人が来たぞお前らッ!!!」


 ギギギと錆び付いた扉が開き一人の男を筆頭に複数の黒服の男たちが現れた。


「IGO開発局食品開発部長、ヨハネスです。今回の依頼について説明させていただきます」

 混沌としたヘビーロッジにヨハネスの声が虚しく鳴り響いた。

 
 

 
後書き
やっとヒロイン出せました。ふぅ……。ヒロインのイメージがあの文だけでは中々想像つかない人はFF13に登場するジル・ナバート中佐で調べてみてください。そんな感じの外見の人です。ていうかそのまんまです。

ライデンのイメージが多分今回の話で大分変わったと思いますが私の中では最初からこんな奴でした。ただこの面を披露する場面がなかったんですよね。こんなオープンスケベなヤツですが、実は……。この続きは次話にて。

課長☆ブログ……原作八巻でセツ婆の店の前でうろついてた三人組の内の一人のブログ。原作九年前から変わらず部長である。

高級回転寿司「美久呂」……原作八巻で一瞬だけ登場。

「イカまぐろ、タイガーひらめ、フルムーンホタテ、炙りレモン鯖、ベルまぐろ、ファルコン巻き、クリームえんがわ」これらの名前は原作六巻の第四十四話の扉絵?みたいなところで書いてあった名前です。オリジナルは入れない!と気合を入れているのはいいけどそろそろ限界を迎えつつあります。はい。

ヨハネス出しちゃいましたね。原作九年前なのに部長ってどうなんだろうと思いましたが就任したばかりってことにしときますか。課長にするか迷ったんですけどね。 
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