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混沌の魔術師と天空の巫女

作者:白鋼
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第1章 ニルヴァーナ編
  さようなら、化猫の宿・・・

魔導士ギルド 化猫の宿(ケット・シェルター)でナツさん達を連れて、身体を休めていた。

「マスター。」

俺はマスターのいるテントへ入る。

「やったよ、俺達・・・。」

「うむ。よくやってくれた。」

「・・・マスター、みんな、どうしても言うのか?」

「・・・それがワシらの使命じゃからの。」

「・・・・・・。」

ウェンディにシュルル、ミント、そして俺にとって、
知らなければいけない話になる・・・。
それが・・・どんなにつらい話でも・・・。




































妖精の尻尾(フェアリーテイル)青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)
 そしてコージにウェンディ、シャルルにミント。
 よくぞ六魔将軍(オラシオンセイス)を倒し、ニルヴァーナを止めてくれた。
 地方ギルド連盟を代表してこのローバウルが礼を言う。」

ナツさん達と俺達を集めて、マスターはそう言う。
周りには俺達のギルドメンバーもいる。

「どう致しまして、マスターローバウル!六魔将軍(オラシオンセイス)との、激闘に次ぐ激闘!
 楽な戦いでは・・・ありませんでしたが、
 仲間との絆が我々を、勝利に導いたのでぇす!!」

「「「さすが先生!」」」

「ちゃっかり美味しいとこ持って行きやがって・・・。」

「この流れは、宴だろ!」

「あいさー!」

「それはいいね~!!」

ミントは宴にノリノリだった。

「ハイハイハイハイ一夜が・・・。」

「あ、あの~皆さん・・・それとウェンディ達、
 マスターから、もう1つ話さなければいけない事があるん・・・です・・・。」

「「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」」

「「コージ?」」

「お兄ちゃん?」

俺は正直、その話は言いずらい・・・。

「コージ、ここからはワシが話す。
 皆さん・・・ニルビット族の事を隠していて、本当に申し訳ない・・・。」

「その事ですか?」

「全然気にしてねーのに、な?」

「あい。」

ナツさんの言葉に同意見のハッピー。

「マスター、私達も気にしてませんよ。」

「そうだよ、マスター。」

「気にしないわ。」

ウェンディ達はそう言うが、この後から聞く言葉にどうなるか・・・。

「皆さん、これからする話をよく聞いてくだされ。」

ついに、話すんだね、マスター・・・。

「まず、ワシらはニルビット族の末裔などではない。
 ニルビット族そのもの・・・400年前、ニルヴァーナを作ったのはこのワシじゃ。」

「え・・・。」

「400年前・・・だと?」

みんな驚いている、無理もない・・・俺も話を聞いて、信じられなかった・・・。

「400年前、世界中に広まった戦争を止めようと
 ワシは善悪反転の魔法『ニルヴァーナ』を作った。
 ニルヴァーナは、ワシらの国となり平和の象徴として一時代を築いた。」

俺もその話は聞いた、だが、これには続きがあった・・・。

「しかし、強大な力には必ず反する力が生まれる。
 人々の闇を光に変えたぶんだけ、ニルヴァーナはその闇を纏っていた。
 人々の闇と光はバランスを持っている。
 それを無制限に光だけにすることは危険な事だった。
 闇に対して光が生まれるように、光に対して必ず闇が生まれる。」

「そう言えば、確かに・・・。」

グレイさんは何かわかったかのように言っていた。

「人々の闇・・・殺意、憎悪、悲しみ、苦しみ、
 その強大で邪悪なそれはニルヴァーナを介しワシらにまとわり憑いた。」

「そんな・・・」

「地獄じゃ。戦争をしている人間の膨大な悪意、ワシらは共に殺し合い・・・全滅した。
 生き残ったのは、ワシ1人だけじゃった。今のワシは人などではない。
 あんなものを作り出してしまった罪を
 償う為にこの世に残るただの思念体、力無き亡霊じゃ。
 ニルヴァーナを封じる事しかできなかった弱きワシに変わり
 ニルヴァーナを破壊できるものが現れるまで、
 400年前・・・今、ようやく役目が終わった。」

「そ、そんな、話し・・・。」

ウェンディ・・・本当にゴメン・・・。マスターは静かに笑うだけだった。



そして・・・



「何これ、みんな!?」

「あんた達!?」

「何で!?何でみんな消えていくの!!?」

「どうなってるんだ!?人が消えていく!!」

「・・・っ!」

消えていく・・・7年間、一緒にいたギルドのみんなが、
昨日まで一緒に暮らしていたみんな消えていく・・・。

「イヤよ!!!みんな・・・!!!消えちゃイヤ!!!!」

ウェンディが叫んでも、誰も答えない。みんな笑って消えていくだけだった。

「騙していて、すまなかったな。ギルド者は皆、ワシが造り出した幻じゃ。」

「ッ!?」

「何だとォ!!?」

「人格を持つ幻だと!?」

「何という魔力なのだ!!」

みんな驚いてそう言っていた。

「なんで、そんなものを作ったんだ・・・?」

エルザさんがマスターに聞く。

「儂は、ニルヴァーナを見守るためにこの廃村に一人で住んでいた。
 じゃが7年前、ある少年達がやって来た。
 そして1人の少年がもう1人の少年と少女預かってほしいと頼まれた。」

「その少年達って・・・」

「そう、俺とウェンディ・・・そしてジェラールだ。」

ルーシィさんがそれを聞こうとしたときに、俺はそう言う。

「その少年のあまりに真っ直ぐなその瞳に、ワシは思わず承諾してしまった。
 そして、預かった2人の為に、ワシは・・・偽りの仲間を造り出した。」

「2人の為に作られたギルド・・・。」

「嫌・・・そんな話し聞きたくない!みんなも何か言ってよ!!!!」

ウェンディはそう泣け叫んだ。

「マスター!」

俺はマスターに怒り、そして言った。

「何でそんな事をいうんだ!!!偽りじゃねー!!!!
 あんた達は俺達のギルドの仲間だろ!!!」

わかっていた・・・知ってはいた・・・でも俺は・・・我慢ができなかった・・・。

「役目とか偽りとかそんなの関係ないだろ!!
 俺達はを預かって今日この日まで仲間として暮らしてきたんだぞ!!!
 それをこれで終わりだなんていうのはどうかと思うぞ!!!!!」

「・・・すまん、コージ。だが偽りは偽りじゃ。」

「・・・っ!」

事実、それは変わらない・・・それでも・・・!

「ウェンディ、シャルル、ミントよ。
 もうお前達に偽りの仲間はいらない」

マスターはウェンディ達の後ろの方へと指をさした。ナツさん達だった。

「本当の仲間がいるではないか。そしてそこにも。」

マスターは俺に指をさす。

「マスター・・・っ!」

徐々にマスターの体が消え始めていた。

「お前達の未来は、始まったばかりだ。」

「マスター!!」

「マスター!!!!」

俺とウェンディは叫ぶ。さらにウェンディは消えゆくローバウルの下に寄った。

「皆さん、本当にありがとう。この子達を頼みます・・・。」

その時、俺達の体にあった化猫の宿(ケット・シェルター)のマークが消えていった・・・。

「マスターーーーーーっ!!!うわああああああああぁぁぁ!!!!!」

マスターが立っていたその場所で、ウェンディが泣き崩れた・・・無理もない・・・。

「・・・・・・。」

俺は泣き崩れるウェンディに近づく。

「ウェンディ・・・。」

「ぅう・・・お兄・・・ちゃん・・・。」

俺は優しく、ウェンディを後ろから抱きしめた。

「ゴメン・・・。」

俺は謝った。

「俺の・・・俺のせいで・・・!」

「お兄ちゃん・・・。」

「コージは・・・知っていたんだね・・・。」

「・・・ああ。」

後ろにいたミントの言葉に俺は顔を向かずに答える。お前も泣いているんだな・・・。

「シャルル・・・ミント・・・本当にゴメン・・・。」

俺は謝る事しかできなかった・・・。

「俺はお前を1人にしない・・・もちろん、お前らもな・・・絶対に・・・。」

マスターがいなくなった今、俺が何とかしないとな・・・そんな時だった・・・。

「愛する者との・・・別れの辛さは、仲間が埋めてくれる・・・。」

エルザさんが俺の肩に手をつけて、そう言った。

「来い、妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ・・・。」 
 

 
後書き
どうも、白鋼です。第1章の最後の話、いかがでしたでしょうか?
次回から第2章に入ります。お楽しみに~! 
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