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FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-

作者:joker@k
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第八話 平和な一週間~お買い物とお引越しとお仲間と~




 あれから一週間。俺とエルザは早くもギルドに馴染んでいった。ギルドの皆は俺の悪役面に誰も恐がらず接してきてくれた。なんでも俺レベルの悪役面の奴がもうギルドにいるから慣れてると遠まわしに言われたが……どう考えてもラクサスのことだろ。

 まぁ俺のことはともかく、エルザもギルドに予想より早く馴染んでいったのが嬉しい誤算だった。心の整理がまだ必要だと思っていたのだが、グレイが一役買ったらしい。その時の事情は詳しくは知らないが、エルザの初依頼のとき一緒に行動したのがグレイだった。というより、俺とマカロフがグレイにエルザと共に依頼を受けてくれるよう頼んだのだ。俺が意図的に紋章を付けていなかったので依頼には一緒に行けないことに残念そうにしていたのだが、そのおかげでグレイが同行しギルドに馴染むきっかけになってくれた。

 ここのギルドの皆は仲間であり家族でもある。そう教えてくれたのはマカロフだった。そう、エルザに今必要なものは頼れる、そして共に支えあっていく仲間達だと思う。それをマカロフにぼやくと、苦笑いしながら俺を見つめていた。何故だ。




 そのエルザとグレイが依頼に行っている一週間、その一週間の間俺はというと、依頼に着て行く装備をオーダーメイドしに行った。何故かエルザにハートクロイツというお店で注文しろと要望があった。いや、要望というより、もはや命令に近かったが。俺はそのハートクロイツという名前にどこか引っかかりを覚えつつそのお店へと向かった。そう、向かったのだが…。

「入りづれぇな」

 武器や防具が売っているであろうそのお店は、予想よりも遥かに大きくそして綺麗な店だった。俺はゲームに出てくるような古びたお店を想像していたので嬉しいような寂しいような複雑な感情を抱いた。何より入りづらい理由が、圧倒的に女性客が多いということだ。たまに、青髭を生やし女装したおじさんが入っていくが。恐らく、ここは女性客専門店なのではないだろうか。そのお店の入り口付近で立ち止まっていた俺に店の店員であろう人が俺に声を掛けてきた。

「いかがなされましたか?」

「いや、服をオーダーメイドで作ってもらおうと思って友人に勧められたこのお店に来たんだが入りづらくてな」

「そうですね、当店は女性のお客様に人気があるため来店されるお客様の八割女性のお客様となっております。ですが、男性服も扱っておりますのでご安心ください。もちろん、良品質でオーダーメイドも受けたまわっております」

「そうか。なら、悪いがその場所まで案内してくれないか?」

「はい、それではご案内いたします」

 店内に入るとまるでデパートの中にいるような、綺麗な空間が広がっていた。恐らく衣服だけじゃなく様々な商品を扱っているのだろう。見事なまでに女性客ばかりだ。女性特有の化粧や香水の匂いが入り混じって独特な香りが充満している。苦手な人はすぐに気持ち悪くなってしまうかもしれない。

「しかし、こんな綺麗な場所に武器防具も扱っているとは信じられないな」

「え!? あのお客様失礼ですが、武器防具は当店では販売しておりません」

「……しかしエルザが、いや友人がこの店で注文したと言っていたのだが」

 確かにエルザは依頼を受けに行く前にハートクロイツというお店で注文したと嬉しそうに語っていた。もしかしたら同名のお店があってそっちと間違えたか?

「あぁ! お客様のご友人とはエルザ・スカーレット様でしたか。……そうですね、わかりました。ではお作りいたしましょう」

「どういうことだ? この店では武器防具は取り扱ってないんだろ?それに何故エルザの名前がでてくる?」

「はい、確かに当店では取り扱っていないのですが、先日エルザ様がいらした際どうしてもハートクロイツで作って欲しいと頼まれまして特別にお作りしている最中でございます。その際ご友人もオーダーメイドで作るかもしれないから宜しく頼むとおっしゃっておりました」

 無茶苦茶言うな、あいつは。元日本人の感覚からしてみれば考えられん程の暴挙だ。しかし、思い出した。ハートクロイツと言えばRAVEに出てきたヒロインのエリーもそこのお店の武器を使っていたような気がする。大人気だな、ハートクロイツ。

「なるほどね。エルザが無理を言ったようですまなかったな」

「いえ、我が社の製品をご覧になった際に大変気に入っていただき、是非にとのことでしたので私達も嬉しくなってしまいました。ですのでお気になさらないでください」

「そうか、ではさっそく頼むとするか。寸法やデザインなどはこの紙に事細かに記載してある。それを見て何か疑問があれば言ってくれ」

 俺は昨日結構な時間を掛けて事細かに書き連ねたデザインを店員にその場で渡した。その店員さんは俺の渡した紙をその場でじっくり何度も往復させるように見て顔を上げた。

「はい、丁寧に書かれていたので問題はありません。鎧の部分は胴体部分だけでしたので、もしかするとエルザ様よりお早くできあがる可能性がありますね。ただ、やはり冒険者様用の衣服ということで特別丈夫な素材が必要になってきます。お値段もざっとこの程度掛かると思います」

 俺は電卓のようなモノで弾かれた数字を見て、内心冷や汗がでた。あのときグレイ戦で儲けてなかったら危うかったかもしれない。その値段で(ギリギリ)大丈夫だという旨を相手に伝え俺はグレイに感謝しながら店を出た。




 そして六日目、俺は新たに新調したハートクロイツ製の衣服を身に纏っていた。胴体の部分には身体のラインに沿うように鎧にしては薄く、そしてハートクロイツがデザインしたであろう綺麗な模様が刻まれていた。どこか神聖さを感じるデザインだ。鎧というより、鎖帷子の役割に似ているのかもしれない。それほど鎧としては薄くできている。

 その上から黒のロングコートを直接着込み、下半身も黒のスキニーのパンツと丈夫なブーツを履いている。さらにこの上から黒のマントを羽織っている。黒一色を避けるため、全身に金色の幾何学的な模様を施した。これで見事原作通りのルシアの格好となった。鎧の模様など所々はオリジナル要素があるが。そしてマントにはフェアリーテイルの大きな紋章を入れてもらった。ついでに左手の甲にも紋章を入れてもらった。

 これで俺も晴れて依頼を受けられるというわけだ。ギルドの皆やカナからには似合ってると賞賛され少し気恥ずかしかった。何故か一瞬前世のときの髪を切った翌日、クラスの友達から指摘された時のことを思い出した。あのちょっと気恥ずかしい感覚と同じだろう。

 それはともかく、誤算があるとすれば予想以上にお金が掛かったところ。せっかく賭けで儲けたお金でふうぞ……大人の社交場で鬱憤を晴らそうとしていたのに、当分先の話になりそうだ。クソッ!まだ十三歳だけど!クソッ!

 そのあと俺はこれから住む場所に移動する。この日までギルドの寮に無料で住まわせてもらっていたのだが、子供と言っても俺は前世では十八歳だ。あまり甘えてばかりもいられない。エルザからしてみれば同じ十一歳らしいのだが、やはり鏡で見てみると十一歳では無理がある体格と背格好をしている。

 そのままギルドの寮に住むというのも良いのだが、家賃七万Jの良い物件を見つけたので契約しておいたのだ。荷物はまったくないので、今日から俺の家となる場所へと向かう。恰幅の良い眼鏡を掛けた大家さんに挨拶し、部屋に向かう。必要最低限の家具はもうすでに買って運び込まれていたので、あとはこれを整理するだけだ。俺はとりあえず部屋着に着替え、一息入れる間もなく動き始めた。




 あれから数時間掛かり、無事部屋の片付けを終えたときには外を見れば辺りは暗くなっていた。エルザがグレイと共に依頼をしにいってからもう六日目だ。明日になれば丁度一週間になる。大丈夫だろうかと心配しつつも俺はこの六日間の間の出来事を回想する。オーダーメイドや家、家具の購入、そしてギルドの皆との交流で忙しかった。

 マカオとワカバのおっさん二人に挟まれながらさり気なくお酒を拝借したり、カナと二人で遊びに出かけ次の依頼を一緒に受けることを約束したり、ラクサスと一触即発になりそうになりマカロフに殴られ止められたりといろいろあった。そしてこれからもいろいろとあるのだろう。

 最初はいつ原作が始まるのか、いやもうすでに開始しているのかもしれない、そんなことばかり考えていた。でも、もうそんな些細なことどうでもいいことだと気がついた。どちらにしろ俺はこのギルドで生き続けなければならない。ならば襲い掛かる火の粉は払うだけだ。俺にそしてギルドの仲間に手を出すのなら容赦はしない。

 俺は魔剣デカログスの手入れをしながら決意を固めていた。こいつも早く使いこなせるようにならないと。複数の雑魚相手ならいいがラクサスぐらいの強敵になると、まだ肉弾戦のほうが有利はずだ。十の姿に変わる剣も切り替えを素早く行うことができなければ弱点になる。そして第七の剣を除くとこの通常形態にして第一の剣アイゼンメテオールは一番重量があり、つまりこの剣を苦もなく使いこなせるようになれば大抵の剣も振ることができるということだ。今後の課題は魔剣の切り替え速度の向上と身体能力の向上だろう。それができれば、魔剣デカログスの扱えるようになれば、確実にもう一ランク俺は強くなる。俺はデカログスの柄の部分を強く握り締めていた。



 ゴンゴンゴンと俺の新たな住居の扉にノックする音が聞こえ俺の思考の渦は現実へと呼び戻された。誰だこんな時間に、と俺はゆったりとした足取りで玄関へと向かい扉を開けると。

「ルシア、今帰ったぞ」

「……エルザか、お帰り。とりあえず上がれ。グレイが持っている荷物が異常に重そうだ」

「は、はやくしてくれっ! 手の感覚がもうないんだっ!」

 何故かグレイの顔が見えないほどの食材を抱えながら、玄関前でフラフラと漂っていた。このまま放置するのも面白いが、さすがに十歳児にする仕打ちじゃないなと思い、助け舟を出す。グレイの持っている荷物を半分ほど俺も持ち部屋へ案内する。

「どうしたんだこんな時間に。というよりこの食材は何だ?」

「ルシアの引越し祝いと私の初依頼達成を記念して皆で食事でもと思ってな」

「はぁ、重たかった」

 なるほど、と思いつつもグレイも連れて来たってことは上手くコミニュケーションがとれてるってことか。良いことだ。何かしらの心境の変化があったのか、変わりつつあるのか、そのどちらにしても良い方向に前進している。しかし、この食材は一体誰が調理するんだ。エルザは俺が疑問を浮かべている間にいつの間にか黒のニットのセーターの上からエプロンを着ていた。……もしかして料理でもする気か?できるのか?

「何だその不安そうな顔は。心配いらないぞ、依頼先のおばさんに教えてもらったんだ」

「エルザあの時かなり気合入ってたもんな。おかげであの程度の依頼に六日も掛かっちまったけど」

「なるほど。だが、この食材の量は多すぎじゃないか? 他に誰か誘うか」

「ん~じゃあカナでも呼んでくるぜ。俺達と年齢も近いしな」

 俺とエルザもその意見に同意し、グレイは多少疲れが残っているのかゆっくりとした足取りでカナを迎えにいった。俺が行ってもよかったんだが、カナがどこに住んでるのかわからない。じゃあ行ってくるとグレイが玄関から出て行ったあと、不安になっていたエルザの様子を窺いに行く。意外にもキッチンではポニーテイルに髪を結んだエルザが手馴れた手つきで食材を捌いていた。

「ふふっ意外か? 私が料理できることが」

「あぁ正直意外だな。女剣士=料理が爆発するっていう固定概念にとらわれ過ぎてたか」

「ば、爆発などしないぞ。むしろどうやったら爆発するのだ……私も依頼で出会ったおばさんに教えてもらわなかったら今でも料理はできないと思うが」

「まだ十一歳だろ? できなくて当然だ」

 エルザは微笑みながらも淀みない手つきで次々と仕度を進めている。見事なもんだ。特に包丁捌きなんかは主婦顔負けのスピードだ。俺は冷蔵庫から取り出した飲み物を片手にエルザの包丁捌きに魅入る

「あぁ、ところでまだ貰っていないぞ」

「あ? 何を?」

「合鍵だ」

 飲んでいる飲料をそのまま噴出してしまった。昨日もやったな、これ。エルザは何をやってるんだとばかりに呆れた顔で俺を見ている。おい、お前にそんな顔する権利はないぞ。

「合鍵を貰ってないもなにも、あげる予定などない」

「何!? それでは一緒に寝れないではないかっ!」

 包丁捌きが綺麗な千切りから突然まな板をぶった切った。おい、新品だぞ。どれだけの力を込めれば普通の包丁でまな板が切断されるんだ。

「今まで一緒に寝ていたのは商人の馬車でしか寝れるところがなかったからだろ。それに今のエルザは精神的にだいぶ落ち着いてるしな」

「うぐっ、今は暴れだしたいくらいだ」

「元気な証拠だ」

 眉間に皺を寄せながら俺をにらんでいるが家にいるときぐらい一人で過ごしたいしな。だが、まだ十一歳の子供でもある。その点を考えると渡してもいい気がするが…悩みどころだな。よく見るとだんだんと涙目になってきている。


「…………リビングの机に置いてある鍵を持ってけ」

「あ、あぁ! 有難うルシア。お礼に愛情込めて美味しい料理作るからな!」

 途端にエルザは鼻歌を歌いながら気分良く料理を再開し始めた。仕方がないか……まだ子供だ。人恋しいのかもしれない。しかし、精神年齢十八歳で子供について悩むことになるとはな。すると突然玄関あたりが騒がしくなった。恐らくカナとグレイが来たのだろう。エルザも料理を終えたのか皿に料理を装いながらリビングのほうへと運んでいく。カナもそれを手伝いながら二人が仲良く話しているのを見ると、少しはあの楽園の塔の呪縛から解放されたんだろうと安心した。

 俺が少し離れた位置で壁に寄りかかりながらその光景を見ていると、三人から早くこいと声がかかる。もう食べる準備が整ったのだろう。この世界にきて、ギルドに来てから緊迫した時間を多く過ごしてきた。だから偶にはこんな平和な一週間があってもいいだろう。こんな時間がこれからも続けばいいと俺は心の中で想いつつあの騒がしい三人の下へと向かっていった。





 翌朝、何故か三つあったはずの合鍵が二つ無くなっていた。透明のテーブルの上には怪盗カナという置手紙ならぬ置きカードが置いてあった。


 
 

 
後書き
エルザちゃんはマカロフと一緒に目を直しに行った帰り道でハートクロイツに立ち寄りました。良い子なエルザちゃんはマカロフに遠慮しつつも一つだけ好きな物を買ってあげるという提案でハートクロイツ製の鎧を買っちゃったのでした。以上、後付け設定でした。

 
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