真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第64話 周瑜の治療は命がけ? 前編
昨日、私に士官した泉を沙和に預けて、私は自宅の自分の部屋で周瑜が来るのを待っています。
彼女の病を治療する場所は人目を避け私の部屋にしました。
彼女を迎えに行ったのは水蓮です。
「正宗様、周公瑾様をお連れしました」
水蓮の声が戸越しに聞こえました。
「入ってくれ」
「はっ!失礼します」
水蓮は戸を開け入ってきました。
その後を周瑜が続いて入ってきました。
「劉司隷校尉、お人払いをお願いします」
周瑜から人払いを頼んできました。
私は水蓮に目配せをすると、彼女は意を察し部屋から出て行きました。
私は水蓮が部屋から完全に離れたことを気配で察すると周瑜に視線を戻しました。
「周公瑾殿、治療を始めましょう。そこに座ってくれ」
私は椅子に腰掛け、対面に用意した椅子に彼女が座るように促しました。
周瑜は緊張した表情になり、椅子に座ると上半身の服を開けました。
私の目の前に上半身裸の周瑜が恥ずかしそうにしていました。
私の脳は思考を一瞬停止していました。
「劉司隷校尉、ど、どうされたのです・・・・・・」
周瑜は恥ずかしい顔をしつつも私の挙動に不安を感じたのか話しかけてきました。
「周公瑾殿、服を着てもらえないか?」
私は意識を取り戻し、周瑜の上半身から目を反らしながら、彼女に言いました。
「服を着ていては治療はできないのではないですか?」
「あなたの服はそれほど厚くないので、服越しからでも構わない。申し訳ない。先に言っておくべきだった」
私は彼女に目を反らしながら言いました。
未だに彼女の上半身は目に焼き付いています。
「なっ!そ、それを早く言ってください!」
周瑜は声高に言うとゴソゴソと衣擦れが聞こえました。
「劉司隷校尉、も、もう大丈夫です・・・・・・」
周瑜が私に声を掛けて来たので彼女の方を振り向きました。
彼女は平静を装っているが顔を赤らめていました。
「で、では、始めます」
「お願いします」
私は周瑜の胸の真ん中当たりを服越し手で触れると、目を瞑り精神を集中して治癒の力を放出しました。
「これは・・・・・・」
周瑜の驚きの声が聞こえました。
「周公瑾殿、治療の最中なので落ち着いてください」
私が声を掛けると周瑜は何か言いかけましたが黙りました。
彼女に私の力を放出している最中、彼女と触れている手に妙な違和感がありました。
これが彼女の病巣なのか分かりませんが、時間がするごとにその違和感が小さくなっていることに気づきました。
私はこの違和感が完全に無くなるまで力を放出しました。
あれから半刻ほど経過しました。
周瑜と触れている手に感じる違和感がなくなったので力の放出をやめました。
酷く体がだるいです。
不治の病を直すのはこれ程体力を消費するのでしょうか。
振雷・零式を何度も放ってもこれほどの体力の消耗はありませんでした。
立つ気力すら湧かないです。
私が浅はかでした。
「周公瑾殿、治療は終わりました。多分、病は治っていると思います。私の言葉が正しいか医者に見てもらって確かめてください・・・・・・」
私は周瑜にそういうと意識が遠のいていきました。
周瑜が驚いて駆け寄ってきましたが、無性に眠くて堪りません。
次に、同じような機会があったら気をつけて使わないと・・・・・・。
私の意識は完全に無くなりました。
目を覚ますと私の周囲には麗羽、揚羽、美羽、周瑜がいました。
私はベットに寝ているようです。
「正宗様、大丈夫ですの!」
「良かった・・・・・・」
「兄ざま、良かったのじゃ―――」
麗羽、揚羽、美羽が涙を流していました。
「劉正礼殿、大丈夫ですか?」
周瑜は私の表情を伺うとほっとした表情になりました。
彼女達の声を聞きつけ、奈緒、彩音、猪々子、斗詩、七乃、榮奈、真希、凪、真桜、沙和、星、水蓮、泉、渚、亜莎、明命がぞろぞろと入ってきました。
その後、彼女達から説教を受け、何をやっていて私が倒れたのか説明をするように言われましたが、私は周瑜の手前黙っていました。
麗羽と揚羽と水蓮は事情を知っているのでそのことについて何も言いませんでしたが、私が意識を失ったことについては凄く怒っていました。
「正宗様、黙っていては何も分かりませんわ!」
「意識を失うなど尋常ではないです。何故、そのような危険な真似をなさったんですか!」
「私はこんなに危険なことであればお止めました!」
麗羽、揚羽、水蓮の怒りは収まりそうにありません。
それは彼女達以外も同様です。
「私も意識を失うとは予想がつかなかった。治療中、体力の消耗を感じはしたけど・・・・・・」
私は意識を取り戻して何度目になるかわからない台詞を口にしました。
「この私が説明いたします」
ずっと、傍観していた周瑜は私と彼女達の間に入ってきました。
「周瑜さんでしたわね。何を説明するというのですの?」
麗羽が周瑜を見て言いました。
「袁本初殿、全てです。劉正礼殿がこのような事態になったのは私の病を治療してくださったからです」
周瑜は迷いなく彼女の秘密を口にしました。
「周公瑾殿、話してしまって良かったのか?」
私は重い体を無理矢理起こして言いました。
すると揚羽が私の体を支えてくれました。
「揚羽、すまない」
「そう思うのでしたら無茶をなさらないでください」
揚羽は私の顔を心配そうに見やりました。
「劉正礼殿、私の病はもう治ったのでしょう?ならば、隠す必要はありません」
周瑜は軽く微笑みました。
「しかし、医者に見てもらわなければ証にはならない」
「劉正礼殿、自分の体のことは私が一番承知しているつもりです。あなたの治療お陰で私は普段より調子がいい。私はあなたの言葉を信じます」
周瑜は私の目を見てしっかりと言いました。
彼女のその瞳には一切の振れも感じられませんでした。
同時に私の心には彼女に対する後ろ暗い気持ちが去来しました。
「私は不治の病を煩っておりました。このことは私の親や一部者しか知らぬこと。そんなとき、あなたから手紙を受けました。手紙の内容は士官を条件に、私の治療をするとありました。当時の私はあなたが何故私の病について知っているのか疑問でしたが、私は藁をも縋る想いで、あなたの元に参りました。切っ掛けはどうであれ、あなたは意識を失い今も立ち上がれないほど衰弱してまで、私の病を直してくださいました。あなたが本当に卑劣な人物ならば、そこまでして私を救いはしないと思います」
周瑜は私を真っ直ぐと見つめながら話しました。
麗羽、揚羽、水蓮達以外は私と周瑜の間にあった事実に驚いています。
これでよかったのかもしれません。
いずれ麗羽達以外にもこのことは話さなければいけないと思っていました。
ですが、私は周瑜に持ちかけた取引を後悔はしていません。
手段など選んでいてはこれから訪れる国の乱れを正すことなどできないし、私の未来を変えることもできない。
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