FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一話 現状把握と新たなる出会い
だいたいトリップやら憑依をした場合、俺は森林やら家の中で眼が覚めると思っていた。いや、何故と言われれば困るんだが。ただ珍しいのではないだろうか。この俺の今の現状は。
「完全に……牢屋だな、ここは」
幾何学的な模様が施された牢屋に俺の体の手足は鎖で固定されており、その鎖は壁へと伸びて一体化していた。つまり、俺は身動き一つできないってわけだ。……いきなり難易度高すぎだろっ!どうすりゃいいんだ。というよりも、あの男も最初から牢屋からのスタートだよ、の一言ぐらい俺に言っておけ!さすがに出だしがハードモードすぎるだろう!
俺が無様にも混乱し、慌てふためいている所にそれは現れた。
黒々とした、漆黒の闇。この世全ての闇がその黒曜石のような石に集約されているのではないかと思わせるほどの存在感を放っていた。たまに漫画で使われる圧倒的存在感とは恐らくこのことを言うのだろう。ただ不思議と俺にはその闇が心地よく、安心をもたらしてくれていた。まるで太陽の光に包まれるがごとく、漆黒の闇が俺を包み込んだ。冷たく、でもどこか暖かい前世界では感じられないこの矛盾した体験に俺は場違いにも興奮していた。
ふっと気がつくと闇は消え俺の胸の位置には直径五センチほどのアクセサリーが着いていた。そのアクセサリーは黒い石を中心に、左右からまるで竜の翼のような形状のモノがついており、石の真下からは生えるように刀身が伸びている。
何だこれはと思いつつも、どこかで見たことがある。既視感。一体どこだっただろうか。これほどの物が前の世界にあれば絶対に覚えているだろうし、逆にこれほどのモノが前世界にあっただろうかと考えはじめたとき、膨大な量の知識が流れ込んだきた。
例えていうならばそう、何かを思い出したときに近い感覚だ。ただそれの比ではないくらい膨大な情報だったので頭痛と酔いがする。この石、いやこのDBのせいなのか、はたまたこの肉体に魂が馴染んだのか、憶測だけならいくらでもできるが今はそんなことしている場合ではないことは確かだ。ってそう言えば最後にあの白い部屋にいた男が肉体に情報を付与するとか言ってたな。これがそうなのか。
とりあえず、その知識について整理しよう。情報が一気に流れ込んできて自身でも把握ができない。収まってきた頭痛と酔いを完全に治すためゆっくりと深呼吸する。少し楽になったか。気休め程度だが。
まずは言語。恐らくこの世界で使われているであろう文字や言葉の知識が流れ込んできた。正確には体に馴染んだと言った方がいいかもしれない。恐らく今俺が思考しているこの言葉もすでにこちらの言語になっているだろう……うん、なってるな。まるで長年使ってきたかのように話すことができる。これはありがたい。
そしてもう一つ。これは俺に与えられた力、DBについてだ。
元々DBとはフェアリーテイルという漫画の前作【RAVE】に登場する力だ。世界中に散らばる闇の力を持つ邪石と呼ばれ、心が弱いと悪にとりつかれてしまう。あぁ、まぁそういうことだ。つまり主人公達が使う力ではなく敵の勢力が好んで使う力ってわけだ。
……神様とやらはきっと俺の顔だけでそう判断したに違いない。自分でいうのも難だが俺はRAVEのラスボスでありDBマスターのルシア・レアグローブに顔が似ている。二次元の存在と似てるなんてまずないとは思うが、髪の色が異なるだけで本当に似ている。
もちろん俺は黒でルシアが金色だ。だがさっきから俺の眼に映る自分の髪の毛であろう金髪を見ていると嫌な予感がしてくるのだが、鏡などのような自身を映せるものがないので確認しようがない。
このDBは原作に登場するDBとは違い、この石に全てのDBの『能力だけ』を詰め込んでいるようだ。つまり、DBであってDBではないのだ。これには俺は安心した。闇の力というのをこの石からは本能的に感じるが邪悪ではない。エンドレスの危険性は皆無というわけだ。
そしてこのDBにはランクというものが存在する。
普通のDB<上級DB<最上級DB<六星DB<マザーDBこれはシンクレアに近づくにしたがって、能力も強力なモノへとなっていく。そして原作にはなかった特殊DBという分類もあるみたいだが、今は情報を整理することで精一杯なので置いておこう。しかしこのDBがあれば簡単にここから脱出できるのではないかと一瞬思ったが、その思惑はすぐに新たな知識によって砕かれた。
DBの熟練度とDBPという概念だ。これによると今の段階では俺はノーマルのDBしか使えないみたいだ。熟練度とは普通のDBを使用し続け、ある一定まで使いこなさなければ次の上級DBを使用することすらもできないといったもの。もちろん使い続ければ威力は向上していく。そしてDBPとは簡単に言えば、MPと同じ概念だ。これも熟練度と同じく使えば使うほど容量が増えていくみたいだが、今は乱用はできないってわけだな。
この鎖だけなら今すぐ脱出はできるはずだが、恐らくこの牢獄からの脱出となると迎え撃たなければならない敵がわんさかと出てくるはずだ。たぶん。今の俺のDBPで考えるとまだ辛いはず。それに敵の強さの基準すら知らないのは危険だろう。どちらにしろ、ここの情報収集しなければならない。だがそれ以前に……
「飯ぐらい出してはくれるとは思うんだがなぁ……出してくれるよな、たぶん」
今の現状で取り乱さないのはこのDBのおかげなのだろう。前の世界でだが結構な修羅場を経験した俺でさえこんな牢屋にぶち込まれ鎖で身動きが取れない状態なら不安に押しつぶされそうになる。最初のDBの闇で包み込まれたときかなりの安堵感があった。こいつとは良い相棒になれそうだ。
その時、コツコツコツと俺の牢屋に近づく足音が聞こえてくる。その足音が俺を閉じ込めている強固な扉の前で止まった。
(……ここの監視員かなにかか? どちらにしろ油断はできない。いざとなれば……)
俺は覚悟を決め、この部屋に来るであろう相手を見るために扉に眼を向けた。ギギィとさび付いた重厚な扉を開ける音がし、そこに現れたのは
「お、女の子?」
少しくすんだ、しかしそれでも十二分に綺麗な緋色の髪が特徴的な女の子だった。
ページ上へ戻る