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トリコ~食に魅了された蒼い閃光~

作者:joker@k
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第三話 武器と雪辱




 この世界に来て二週間。何とか暮らしております。住居は岩場近くにある狭い洞窟で何とかなっている。ただ洞窟から何歩か進めばすぐ海なので毎朝塩害のせいで髪がベタベタな状態での起床だ。洗濯物もベタベタになるので違う場所に移動して干さなければならないのも面倒。

 でも約得と思えるところもある。それはザリガニフィッシュがよく釣れるということだ。
 そう、捕獲レベル1、2程度なら俺でも勝てるようになったのだ!これは俺のグルメ細胞が壁を超え進化したからだと思う。あぁ釣れると言っても別に釣竿をたらして釣っているわけではなく、俺が海の近くを歩いていると勝手に襲いかかってきてくれるのだ。……なめやがって。


 何より驚いたのが、自分の食欲の旺盛さだ。体長七メートル程もある魚を一日で食べきってしまったのには驚愕したが、何というか逆に気持ちよさもある。食べ物をそれも美味しい物を多く食べられることって気持ちの良いことなのだ。

 美味しいのにまだまだ食べたいのに満腹で食べられないといった経験はある人はあると思う。俺も前世で高級なお寿司屋さんでその状態に陥ったことがある。

 最近ではザリガニフィッシュ一匹では一日もたなくなってきている。今では二匹程度ならペロリだ。
 そして食べ終わったあとに自分が強くなっていると実感できるのも嬉しい。実感できるほどの強化。これがたまらなく快感なのだ。今ではあのエレキバナナの木をそれ程力を入れることなくたやすく折ることができる。


 ……そう思い出した。そのエレキバナナ。中毒性のある麻薬食材だというのにあれから中毒症状がまったく見られなかった。いや、美味しくまた食べたいとは思うが別にそのせいで気が触れるといったことにはなっていない。むしろ快調なぐらいだ。

 このことについてはある程度予想ができる。
 それは俺の電気体質。元々前世で静電気体質だった俺は雷に打たれ、もはや電気体質と呼べるほどに進化した。このせいでこの世界に放り込まれたわけだが、これがエレキバナナと抜群に相性がいいと思うのだ。

 詳しいことはぶっちゃけ分からない。そういう知識もないし。だけどこの電気体質が絶対に関わっているということだけは確信している……。

 そしてその電気体質がグルメ細胞により更に強化され、今では俺の大事な武器となっている。まだ両手に電気を纏う程度で、相手の動きを一時的に止めるだけだがいずれは某忍者の千鳥とかやってみたい……動体視力の問題もあるけどね。
 ちなみに両手に電気を纏わせる技名は雷掌(イズツシ)。キルア・ゾルディック君の技をモロパクリです。



 あとあの黄金のアクセサリーについても新たな発見があった。
 これが一番驚愕したんだけど、あれは俺の電気に反応して形を自由自在に変えることができる。形だけじゃなく色や質量や硬度もだ。ある時は鞭のように柔らかくしなやかに、ある時はトンファーにして硬度を高めてぶん殴る。またある時は切れ味抜群の刀に。

 中々というか、かなり便利な一品だがこれが意外と難しい。まず思うようにその形や硬度にするのに結構時間がかかる。そして俺がその武器を使いこなせていないというのが一番の欠点。

 ヤシの実のように木に実っているものを鞭を使って華麗に取ろうとしても鞭など扱ったことがなく失敗。トンファーや刀なども使えるには使えたが生身で戦ったほうがよかったと思える場面も幾度もあった。つまり修行中ということだ。

 今のところタイマンでは己の肉体のみで、複数で襲われたときには槍にして振り回しながら戦うのが良いと思っている。その槍に電気を纏わせることも可能だったが燃費が悪く、すぐ電池切れになる。この世界の肉体はかなりハイスペックなこともあり下手に武器を使うより肉弾戦のほうがいいのだ。慣れてるしね。

 そうそう、それとこの黄金棒に名前をつけてあげることにした。いつまでも黄金の棒じゃ可哀想というか、ダセェし。その名も

―――愚神礼(雷)賛(シームレスバイアス)

 神への皮肉とパクリだ。礼賛でも雷賛でも書き方はどっちでもいいよね。読み方は一緒だし。まぁ戯言だけど。

 あとは泉に映ったとき分かったことだが前世の時と顔つきが変わっていなかったことも少し嬉しかった。何というかどうせなら美形にして欲しかったとは自然と思わなかった。感覚的な問題なので明確な理由は分からないけど。意外と前世に未練があるのかもしれない。

 ただ髪の色が黒から白に近い銀髪になっていたのには驚いた。瞳の色も真っ赤だったし。ただ自分でいうのもなんだけど自然な感じだった。もっとコスプレっぽくなるかと思ったが意外と大丈夫そうだ。

 年齢はよく分からないが十歳前後といったところだ。ただこの二週間であのプニプニだった手が大分固くなってきているのは嬉しい……ような悲しいような。


 この二週間での出来事と発見はこのくらいかな。

 さて、話は変わるが今日は一大イベントなのだ。そろそろ捕獲レベルを上げてもいいと思う。一週間ごとに捕獲レベルを上げていっているのだが今のところ捕獲レベル2が俺の最高記録だ。よって今日はランク3を目指す。

 そうなると俺の頭の中には自然と奴の顔が思い浮かんだ。


――バロンタイガー


 俺が初日にビビリまくっていたあいつだ。手帳を見るに肉は固くて美味くはないが、牙や体毛が高額で売れるらしい。勿論売るあてなどないし、下手したらここは無人島だ。最初はバロンタイガーはバロン諸島にいると記載されていたため、ここがバロン諸島かとも思っていたのだが何故かピンとこない、いやビリッとこない。

 まぁつまり売れないんだから自分の布団か絨毯替わりにしようということだ。高額で取引されているのだから素材はいいのだろう。牙の使い道は今ひとつ分からないけど。

 戦う前に俺は朝食用にと昨日取ってきたセレ豚(捕獲レベル1以下)にアゲハコウモリ(レベル2)の羽に付着しているリンプンを香辛料としてふりかけて焼き上げて完成。腹が減っては戦ができぬってのは名言だな。

「いただきます」

 俺はセレ豚の骨付き肉、いや漫画肉を勢いよくかぶりつく。うんめぇ。ハチャメチャに美味。引き締まったきめ細かい肉質が何とも言えない食感を体験させてくれる。香辛料のスパイシーな味と香りがこれまた食欲を刺激する。さらに豚肉特有の食べやすさもあってか、瞬く間に一匹丸々完食してしまった。

「ご馳走様でした」

 生きるものを自分の手で殺し、食す。それだけで前世とは違い強く思いを込めてこの言葉を言うことができる。感謝。食べることへの、そしてその食材に対しての感謝。前世ではこんなにも強く思わなかったな。

「いただきますとご馳走様か。良い言葉だ。良い言葉は決してなくならないってね」

 最近多くなってきた独り言を漏らし出発した。


 目標はバロンタイガー。屈辱を晴らす時が来た。あの時見逃したことを後悔させてやる。


 
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