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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第41話 友の死

 地下にある非常施設内に設けられたブースの上で、甲児は暗い顔をして座っていた。その隣には一緒に来たシローと、そして共にやってきたはやても座っている。

「兄貴…なのはは大丈夫かなぁ?」
「分からねぇ…後はもう医者の先生に任せるしかない」

 甲児はとても歯痒い思いがした。光子力研究所に辿り付いたは良いが、その外観は見るも無残な光景となっていた。
 まともな建造物など一つも残っていない。殆どが見事に破壊の限りを尽くされていた。その隣では真っ二つになったダイアナンAと胴体に風穴を開けられたボスボロットが横たわっていたのを見た時は正直言葉を失った。
 今、マジンガーZは所員総動員で修理を行っているがかなり酷い状況だと告げられた。今までどんな敵と戦ってきたが、超合金Zを溶かす相手は初めてであった。
 しかも、あの敵は恐らく先発隊に過ぎない。きっとすぐ本隊が来るに決まってる。
 だが、それに対してこちらの戦力は余りにも少ない。

「こんな時、ゲッターチームが居てくれりゃ心強いんだけどなぁ…」

 甲児が天井に設置されていた蛍光灯を眺めながら呟いた。
 ゲッターチーム。以前共に戦った仲間である。最終戦を前に機体が破損してしまい参加できずにいた。恐らく修理も大方終わり、もう少ししたら共に戦ってくれるようになるだろう。
 そう思っていた。
 その時、手術室のランプが消え、扉から医者の先生が現れた。酷く疲労していた。

「先生、どうなんですか?」
「なのはちゃんは…どうなんですか?」

 甲児達が答えを求める。その問いに医者の先生は重苦しい顔をしていた。

「彼女に、ご家族はいらっしゃいますか?」
「えぇ、居ますけど…それが一体…」
「……」

 甲児の問いに医者は一度俯き、再び甲児の顔を見た。その時の顔は真剣その物であった。

「最悪の覚悟をしておいて下さい」

 その言葉を聞いた時、三人は真っ青になった。最悪の覚悟をしておく事。それは即ち彼女の死を意味している。

「そんな、そんなに危険な状態なんですか?」
「全身のダメージが著しく酷い状態なんです。その上多量の出血のせいで血液が足りない状況です。この中で誰か彼女と同じ血液型の人は…」

 医者の言葉に誰もが俯いてしまった。
 甲児の血液型は違うから使えない。シローもはやても違う。もし同じだったとしても二人の年では使えない。

「先生…中に、入っても良いですか?」
「ええ、ですが絶対に患者は安静にしておいて下さい」

 医者の許しを得て、三人は中に入った。其処に居たのは全身を包帯で巻かれて意識不明のまま横たわっているなのはが居た。
 微かに息をしてはいるが殆ど虫の息だ。危険な事に変わりは無い。

「とにかく、所員の中から輸血に使える人を探します」
「お願いします」

 甲児は深く頭を下げた。そして再びなのはを見た。
 今のなのはは必死に死神と戦っているんだ。
 負けるな! お前なら絶対に勝てる。だから絶対に死神なんかに負けるんじゃない!
 声を発さず心の中で甲児は叫んだ。今の自分達では彼女に何もしてやることが出来ない。それがとても甲児には歯痒く思えた。

「それじゃ、私は所員達の血液型を確認しに行ってきます。皆さんは少し休んでて下さい」
「それもそうだな…」

 言われた通り、甲児達は部屋を出て行った。今すべき事は次の闘いに備える事である。
 今あの敵が来た際に戦えるのは恐らく自分とゲッターチーム食らいしかいない。
 そう思っていた時だった。

「かかか兜ぉぉぉ! 一大事だぁぁ!」
「どうしたんだぁ、ボス!?」

 いきなりボスが真っ青になって甲児の元に走ってきた。
 只事じゃなさそうだ。そして、それを聞いた甲児もまた青ざめる事となる。

「実は、さっき連絡があって……ゲッターチームが……」




     ***




 時を少し遡り、浅間山山中にある早乙女研究所。其処を今数機の謎の円盤が襲撃をしていた。緑を基調とした敵勢円盤である事は分かる。
 今は何とかバリアを張って凌いではいるが危険な事に変わりはない。

「畜生! 折角平和になったってのに…博士、此処はゲッターロボで追い払いましょう!」
「待つんだリョウ君! まだゲッターの修理は完了してない。ゲッター1以外はチェンジ出来ない状況じゃ!」

 当のゲッターロボはまだ修理が完了してないらしく、現在も修理中のことらしい。

「ゲッター1になれるなら充分です。隼人、武蔵! 行くぞ」
「あぁ、奴等の好き勝手にさせる訳にはいかねぇな」
「その通りだぜ! 奴等においら達の力を見せてやるぜぇ!」

 三人の若者が駆け出す。例え修理が完了してなくても戦えれば問題はない。
 三人は直ちに用意されたゲットマシンに乗り込む。機体の各所はどれも傷だらけのままであった。それでも戦えない訳ではない。

「リョウ君。敵の力は未知数だ。気をつけるんじゃよ」
「了解! 発進します」

 三機のマシンが発進する。その間凄まじい振動と爆発が起こる。
 どうやらバリアがやられたのだろう。発進口から出た時、目の前で爆発が起こった。
 一瞬焦る竜馬。速度を上げて一気に飛びぬける。そのお陰で爆発に巻き込まれる事はなかった。
 だが、背後では敵の攻撃を受けて研究所が崩壊してしまった。

「あぁ、研究所がぁ!」
「武蔵、来るぞ!」

 隼人の言葉を聞き再び敵を見る。目の前には数機の円盤が飛来している。
 絶対にこいつらを許す訳にはいかなかった。

「隼人、武蔵、ゲッター1になって敵を蹴散らすぞ! チェンジ、ゲッター1! スイッチON!」

 三機のマシンが空中で合体し、ゲッター1になる。その周囲を先ほどの円盤郡が取り囲む。

「貴様等を絶対に許さん! ゲッタートマホーク!」

 両手にトマホークを持ち襲い来る円盤を次々と切り裂いていく。数では圧倒的な物量を誇ってはいるが個々の能力は大した物じゃない。
 これなら傷ついたゲッター1だけでもどうにか出来そうだ。
 だが、その時周囲を囲んでいた円盤達が下がりだす。

「何だ? 引き下がっていくぞ」
「大方逃げるんじゃねぇのか?」
「油断するな! 何か来るぞ!」

 隼人が言う。すると、上空から一体の巨大な怪獣が現れた。
 その姿は生き物にも見えた。紫の体色に手足、そして頭部から生えてる形で伸びた触手。いかにも不気味なその敵がゲッターに迫る。

「これでどうだ!」

 怪獣目掛けてトマホークを振るう。だが、その怪獣の体の周囲に展開されていた管が絡みついてきた。

「何!?」
「リョウ、振り払えないのか?」
「駄目だ、凄い力で身動きが取れない!」

 気がつけば全身を絡みつかれてしまっていた。手足が全く動かない。

「リョウ、こうなったらゲッタービームで焼き払っちまえ!」
「駄目だ、ビーム発射口はまだ修理が終わってないから使えない!」

 修理が万全でない為に、まだゲッタービームは使えない。すると、徐々にゲッターの高度が下がっていくのを感じた。このままでは地面に激突してしまう。

「くそっ、こうなったら一旦分離するしかない! オォォォプン、ゲェェェット!」

 竜馬が叫び、ゲッター1は三機のマシンへと分離していった。
 三機のマシンが怪獣に向かい砲撃を開始する。だが、分離状態では効果的なダメージが与えられないようだ。
その時、怪獣が突如鎌の様な物を飛ばしてきた。
 突然の事だったので回避が間に合わず、イーグル号とジャガー号にそれが命中してしまう。

「ぐあっ!」
「うおっ!」
「リョウ! 隼人!」

 武蔵の見ている前で不時着していくイーグル号とジャガー号。今の二機は飛行も合体も出来ない。残ったのはベアー号だけだ。

「畜生! おいら一人でもやってやる!」

 武蔵のベアー号がミサイルを放ち怪獣を攻撃する。だが、それをヒラリとかわしベアー号にも鎌が命中した。機体から黒煙が噴き上がる。

「んがぁぁ! こ、こんちくしょうぅぅ!」

 横腹を抑えながら武蔵が怪獣を睨む。先ほどの鎌の一撃のせいで武蔵の横腹からは血がドクドクと流れ出ていたのだ。だが、此処で自分が倒れればアノ怪獣を誰が倒すのか。

「へ、へへ……こうなりゃ、男巴武蔵の最期の男気を見せてやらぁ!」
「む、武蔵…何する気だ!?」
「リョウ、隼人、おいらが居なくなってもしっかりやれよ! それから、ミチルさんに言っといてくれ。おいらが死んだら…線香の一本を挙げといてくれ…てよぉ」
「馬鹿野郎! 何縁起でもねぇ事言ってるんだよ! お前らしくねぇだろうが!」

 竜馬が叫ぶ。急ぎとめようとするも、今のイーグル号は飛び立つ事が出来ない。無論それはジャガー号も同じだった。
 推進部が損傷している為に飛行が出来ないのだ。
 そんな二人の見ている前で黒煙を噴き上げながら怪獣目掛けて突撃していく。

「うおおぉぉぉぉぉ! 男巴武蔵の一世一代の突撃食らいやがれぇぇぇぇぇ!」

 武蔵の叫びが木霊する。それが最期の言葉であった。
 その直後、怪獣とベアー号は激突し、激しく爆発を起こした。その光景を目の当たりにした二人は信じられないと言った形相でそれを見ていた。

「お、おぉぉぉ…」
「む、武蔵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 隼人は口を大きく開き、竜馬は武蔵の名を叫んだ。閃光が止んだ時、其処にはもうベアー号の姿は無かった。そして、武蔵の姿も―――




     ***




 ベアー号の突撃により怪獣は爆散してしまった。その映像を不気味な部屋で座っていた男が満足気に見ていた。

「ふん、あれが噂のゲッターロボか。噂程でもなかったな」
「いかがでしたか、バレンドス親衛隊長?」
「拍子抜けだ。この程度の戦力を倒した所で俺の株は上がらん。寧ろ下がる事になってしまう。それよりも今はスカルムーン基地の建設に力を注げ」
「ハッ!」

 兵士は敬礼をし、すぐさま姿を消した。残ったバレンドスは手に持っていた赤い雫の入ったグラスを一気に煽る。

「フフフッ、このスカルムーン基地が完成した暁には、この青い星は我等ベガ星連合軍の物となる。楽しみな事だ…フハハハハ!」

 バレンドスの高笑いが部屋一杯に広がっていく。その笑い声はこの地球の最期を告げる笑いにも聞こえるようであった。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

ゲッターが破壊され、残された防衛の要は傷ついたマジンガーZだけとなってしまった。
そして、遂に始まる七つの軍団の本隊による総攻撃。
その軍勢の前に力尽き、倒れる我らがマジンガーZ。
だが、其処へ現れるは新たな鋼鉄の巨人の姿であった。

次回「偉大な勇者」お楽しみに 
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