最期の祈り(Fate/Zero)
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過去語り
前書き
一応アンケートの結果に基づいて、フランス編を先にします。ただ、本編を待って下さっている方もおられるので、更新速度を上げて何とか対応したいと思います。
昼下がり。パリの町には明るい日差しが雲間から差し込んでいた。街は、来週のカーニバルに向けて少し陽気と殺気が入り乱れている。そんな街中の中央から少し外れた所に、『大きい』という単語が矮小に思えるほどのホテルがあった。そのホテルは予約は常に1ヶ月前から受け付け、キャンセルした場合払い戻しどころか違約金を徴収するという高級思考の塊のようなホテルだった。そんなホテルの最上階、つまり最高級ルームの一室に二人はいた。一人はフランスの代表候補生にして表向きは3人目のISの男性パイロット、シャルロット・デュノア。もう一人は、突如謎のISを携え表れた2人目、衛宮切嗣。
あの日から3日が経った。その間に軽い一悶着があったのだが、今では2人揃って机に向かう程度の仲にはなった。
「ごめん、ここの理論が良く解らないんだけど……」
「データ領域の話?簡単に説明すると……」
今、2人は学園の授業の為の予習に明け暮れていた。
最も、シャルロットの方がISに触れていた時間が長い上に、大半の基礎事項は殆ど網羅しているので、寧ろ切嗣の予習を手伝うという形に近いが。
「……それにしても、こうも扱いが面倒くさい兵器を使う事になるとはね」
時計の短針が4の数字を指し示した頃に、漸く切嗣は事務的でない発言をした。
「兵器って……まぁ、アラスカ条約のお陰でスポーツの延長的なモノの収まっているだけだけども……」
「僕からしてみればISはただの兵器にしか見えないよ。正直、軍事利用されていない事が奇跡に思えるくらいだ」
シャルロットの言う通り、ISの軍事転用は条約で禁止されている。だが、条約は人の手により作られたもの。誰かが無くして(破壊して)しまえばISは簡単に戦略兵器となりうる。そのことは、恐らく誰もが認識している。しているが、ただ指摘しないだけ。
それが日常として受け入れてしまっているこの世界の住民は感覚が麻痺してしまっているが、切嗣は現状の兵器を紙屑同然にまで貶めた武器が、数が限られているとは言え、個人が携帯しているという現実が恐ろしくてたまらない。
「まぁ、そうならないようにアラスカ条約を締結したのだろうけど……少し喋り過ぎてしまったね」
そこまで一気に喋ると、大きく椅子にもたれ掛かり一つ息をはいた。
「そう言えば一つ気になっていたんだけど」
「うん?何が?」
少し沈んだ空気を払拭するようにシャルロットが前々から気になっていた事を聞いた。
「切嗣はどうやってISに乗れるって分かったの?」
そう、これは恐らく世界中の誰もが気になっているところだろう。日本政府は偶々ISに触れたら反応したと発表したが、それを鵜呑みにした人は少なかろう。
「……政府からは口止めされてるけど、誰にも喋らないなら」
「喋らない喋らない!だから……」
「はいはい」
目を好奇心に輝かせ、せがんでくるシャルロットを見ていると不思議な感覚に襲われた。
(……なんだったかな、この感覚は?随分と懐かしくもあるけど、胸も刺されるようだ)
どうしても思い出せない。しかし、目の前のシャルロットを見ているとどうでもいいような感じがした。
「先ずは何から話そうかな」
…………
「最初の切欠は織斑先生と出会ったことかな?海に浮かんでいた僕を助けてくれたのがあの人だからね」
「海に?一体何があったの?」
「ごめん。実はそれ以前の記憶が無いんだ」
「あ……ごめんなさい」
何か無神経な事を訊いてしまったと顔を曇らせたが、気にしないでと返された。
「そこから一悶着あって、結局織斑先生の家で暫く厄介になることになったんだ」
その後のこと
――――――――――――――――――――――――
「済まんな。食事は全部弟に任せていたからろくなものが作れん……」
夕時、織斑家の食卓には凄惨な料理が並んでいた。荷崩れした目玉焼き。焦げすぎた肉じゃが。メトロダウンしたご飯。
「は……はは」
普段から雑食だった切嗣も笑う事しか出来なかった。目玉焼きが荷崩れって……
「ま、まぁ僕も料理出来ないですし」
そう言うと切嗣は意を決し、箸を付けた。
「ど、どうだ?不味いか?」
不安げに尋ねる千冬。不味いが先に出るあたり大体覚悟は出来ているのだろう。
「……普通だ。え、どうして?味は普通……と言うか美味しい……?」
ところが見た目に反し、味は至って普通だった。
「本当か?」
心なしか、千冬の声も弾んでいた。
「ええ」
少なくとも「泰山」のバイオテロよりは。
そこからは、黙々と食事が続いた。
…………
「しかし、何でお前は海に沈んでいたんだ?」
食事が終わりひとごこち着いたあと、リビングのテーブルに二人は向かい合っていた。
「すみません。それは僕にも……」
彼女には記憶が無いと言ってある。……全くの嘘では無い。少なくとも、この世界に来てからの記憶は一切無い。
「そうか……何か自分の記憶の手掛かりになるような物は無いのか?」
そう言われても、どうしようもない。何せ今の切嗣には銃は愚か、何も無かった。
「在ればここまでは苦労しなかったのですけどね……ん?」
一応ダメ元でポケットをまさぐっていたら、何かが切嗣の手に触れた。
「これは……?」
引っ張り出してみると、何かキラキラ光る宝石のようなモノが出てきた。
「……衛宮、それをどこで手に入れた?」
突然、千冬の声が険しくなった。
「コートのポケットに入っていたんですけど……っ!?」
手の中で宝石見たいなモノを弄んでいると、突然それは光を放った。
「くっ」
本能的にそれを手放す。ゴトンッという音を立て、それの光は急に収まった。しかし、依然として千冬の顔は険しいままだ。
「これは、一体……?」
さっきまでの平和な空気とは裏腹に、張りつめた空気が漂っていた。
そんなとき
「ちーちゃーん!」
兔が現れた。
「……は?」
正確に言えば天井から。
「ちーちゃんが男の子連れ込んでたから心配になって来ちゃ、あいたっ!?」
突如現れたうさみみを付けた女性に、躊躇いなく千冬は蹴りを放った。
「うう、ちーちゃんがショタコンに加えバイオレンスに……ってごめんごめん!?だからその足を下ろして!」
尚も懲りずに何かを宣っていた女性に対して、踵を高く上げて黙らせた。
「それ以上人聞きの悪い事を言うと……沈めるぞ?」
……バイオレンスなのはあながち間違って無いんじゃ……
「一体、何が?」
完全に場の流れから取り残されてしまった切嗣が困惑の声をあげる。
「ああ、一応紹介しておこう。コイツは篠ノ之束。これでもISの産みの親だ」
「これでもは余計だよ!?」
千冬はこの世界にいる誰もが知っているような単語を上げた。しかし、
「IS?」
切嗣の反応は芳しく無かった。
「……何か事情が有りそうだね」
切嗣の反応と、テーブルにあるISのコアに目をつけ、目を光らせる束。
「……君、名前は何て言うの?」
「……衛宮切嗣。失礼ながら、ISというのは一体?」
…………
――――――――――――――――――――――――
「そこからは、アレに目をつけられてね。色々教えて貰った代わりに、僕のISの情報を提供することになったんだ」
時間にして30分。その間、切嗣はずっと喋り続け、シャルロットは瞬き一つせずずっと聞き続けていた。
「こんな所かな。僕がISに乗ることになった経緯は。後は、普通に編入試験を受けて入学しただけだよ」
「……結構大変な目にあったんだね」
シャルロットの顔には同情の色が濃く出ていた。
「まぁ、結果的には良い方に事が運んでくれたから助かったけど」
喋る切嗣の顔は、とても老け込んで見えた。
「さて、休憩も終わった事だし早く予習を終わらせてしまおうか」
「うん。そうだね」
はぁ、と息を吸い気合いを入れる。
(早く勉強を終わらせて行かないと)
「楽しみだね。カーニバル」
「!うん///すっごく楽しみ!」
後書き
嘘次回予告
カーニバル即ち祭。パリの町に古くから伝わる因習「綿流し」
1人死んで1人消える。その謎を解明するために今、言峰(偽)が立ち上がる。
「祟りじゃー!オヤシロ様の祟りじゃー!」
「場所を考えろよフランス人」
「煮干し買って来い」
「な、何でフランスに神社が!?」
「それは禁則事項です」
フランス政府の意味不明なダム建設に隠された真実とは?
「貴様が、犯人だ」
「ちょい待ち!?汝メニー騙されてるよ!」
「ISはどこいった?」
次回、「綿流し編」乞うご期待!!
――――――――
嘘です。絶対に真に受けないで下さい。書けるわけがありませんので……
次回更新は、出来れば今夜になるかもしれません。(更新されてなかったら、「ああ、筆者の野郎くたばったのか」程度に考えておいて下さい。)
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