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ゲームの世界に入った俺は伝説のサムライになりました。

作者:ユウスケ
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1話 鬼眼のキョウ

『王都ガライア』にとある噂が流行り、その噂は伝説となっていた。

伝説を目撃した冒険者は言った。

血のような真紅の鎧に身を包み、
大量発生した千のモンスターを五尺の大太刀で埃を払うかのように斬っていた。
そいつは、鬼のような真紅の瞳をしたキョウという名の男だった。

その特徴から噂の男はこう呼ばれるようになった。

『鬼眼のキョウ』

突然姿を現した男は英雄か?それとも悪鬼羅刹か?
その答えは……誰も知らない。


☆☆


モンスターを狩りまくり、膨大な資金を手に入れた後
俺は冒険者を辞めて薬屋となり『王都ガライア』を出た。
何故、冒険者を辞めて薬屋になったかと言うと、モンスターを狩る殺伐とした生活よりも、
病気や怪我で困っている人の助けになれる商売のほうが気分的に楽だし、仕事を
するなら人に感謝されるような仕事がいいと考えたからだ。

「さて……何所に行こうかな……」

薬箱と護身用の愛刀を背に黒い着物姿で道を進む。
目的地は気分と風任せ。
さてさて、この先どんな出会いが待っているのやら……


☆☆☆


薬屋となって旅を始め、いろんな村や町を歩き回る事、数ヶ月。
『ギャスパルクの復活』のランダムスタート地点の一つである
アルダ村に到達した。
しかし何故だろう?
村の人たちは何故かこっちをチラチラ観察してはひそひそと話をしている。
もしかして、旅人が珍しいのだろうか?
それとも俺の格好がおかしいのだろうか?
自分の服装を確認するが特におかしいとは思わない。
むしろ西洋風のこの世界にサムライというクラスがあり、着物とか刀が普通に存在する方
がおかしいと思う。
しばらく村を歩いていると、頭上にイシュラと表示されている中学生くらいの少女が
真剣な表情で、錆び付いたボロボロの西洋剣を片手に俺のところまで走ってきた。
何だろうか?もしかして出て行け、とか言われるのだろうか?
正直かなり不安だ。

「あ、あなたが噂の『鬼眼のキョウ』?」

俺の目の前で立ち止まり、俺に噂の人物かどうか尋ねる少女。
確かに俺には鬼の眼のスキルがあるし、頭上のキャラクター名もキョウだ。
しかし、そんな中二臭い呼ばれ方をした覚えは無い。
つまり人違いだろう。←(本人です)

「いやいや、違うよ。確かに名前は一緒かもしれないけど、人違いだよ。」


「そうですか……。ほら、見なさい!この人が『鬼眼のキョウ』なわけないじゃない!!
それに良く見たら瞳も真紅じゃなくて黒よ!黒!!」

俺の言葉で人違いだと分かったのか、少女は振り返り隠れている少年達に向かって
大きな声で報告をしていた。
すると……。

「確かに瞳は黒だ……それによく見たらこの兄ちゃん、強そうには見えないよな……」

「うん。とてもじゃないけど、一人でモンスターを倒せるとは思えないよ」

「イシュラの方が強そうだ!」

隠れていた男子たちは誤解とわかったのか、俺に近づいて観察し各々の感想を口に
出す。
オイコラ、坊主共。
一応これでも、124LVのサムライなんだぞ?
と言ってやりたいが、確かに俺が優男で強そうに見えないのは事実だし、
いくら高LVでも、ステータスを見ない限り
この少年達にはLV5の村人Aぐらいにしか見えないのだろう。
悪気はないんだ。ここは一つ大人として対応しよう。

「俺の名前はキョウ。薬屋をしながら旅をしているんだ。誰か病気の人が居れば
手ごろな値段で薬やヒールスクロールを提供するよ」

俺が自己紹介を兼ねて、薬屋である事を話すと子供達は俺に対して
哀れなものを見るような目で見て来た。
なんだこれ?地味に傷つくぞ。

「その……キョウさん。
今、アルダ村には怪我人も病人もいないし……それにね…この間、薬屋の人が
来たばっかりだから…。」

「………」

気まずそうに言う、少女イシュラちゃんに現実を突きつけられてショックを受ける俺。
そうだよね。うまくいかないのが人生だよね。

「落ち込むなよ兄ちゃん。きっとそのうちいい事あるよ」

「飴いる?」

「かんばって」

落ち込んでいると慰めてくれる少年達。
その少年達の中には自分のおやつであろう飴玉をくれようと
する子まで居た。
全員とても優しい眼をしていて、本当に俺のことを慰めようとしてくれているようだ。

「ははは、ありがと。じゃあ、飴玉のお礼にこの薬をあげよう」

少年達の励ましで、癒された俺は優しい彼等に笑顔で傷薬をプレゼントした。
完全な赤字だが、問題ない。
代金は彼等がくれた励ましの言葉だ。

「え?僕達もいいの?」

「ああ、もちろんさ!」

飴玉の少年以外にも薬をプレゼントされるとは思わなかった、少年は戸惑いながら
自分達も貰っていいいのか?と質問してきたが、俺は気前のいい返事と共に彼の手に
薬を渡す。

「ありがと、兄ちゃん!」

「頑張ってね!」

薬を俺から受け取り、お礼を言った後、これ貰ったー!と両親にと思われる
大人に笑顔で見せる少年達。
見せてもらった両親はすみませんねーみたいな感じで軽く頭を下げて
家に帰っていった。

よし!テンションも上がって来た事だし、次の町か村に行きますか。

くー…

やる気十分に一歩踏み出した俺だったが、腹の虫が『待てよ、飯でもく・わ・な・い・か?』
と語りかけてくる。
時間的に恐らく昼飯の時間なのだろう。
………。
先に飯を食べてから出発しよう。


☆☆☆



「ごちそうさま……」

空になった皿に手を合わせた後、会計を済ませ、店の外に出た俺はアルダ村の門へ
向かって歩き出す。
さて…次はどの町、村に行こうかな……。
そんな事を考えながら歩いていると、門の方に人が集まっている。
何かあったのだろうか?
人だかりに近づいて見ると……。

「き、君はとっても美人さんなんだな!だから、僕と友愛するんだな!!」

「や、やめてください!…放して!」

頭上にポッポと表示されている、三十過ぎぐらいの太った魔法使い装備の男が
レヴィアと表示されている
美少女にハァハァと手を握りながら詰め寄っている。
それに対して美少女はとても嫌がっており半泣きだ。

「ま、待ってくださいポッポさん!依頼は取り下げしますので娘には手を出さないで
くださ……ぐぅ!」

「おいおい、この鬼眼のキョウ様とリーダーであるポッポさんにこんな田舎まで歩かせた
上に依頼を取り消すだ?ふざけんなよコラ。」

娘のされている事に耐えかねたのか、頭上にオランドゥと表示されている
美少女の父親は太った男に抗議するも
頭上にキョウと表示されているサムライ風の装備をした片眼が赤い男に蹴られて転んでしまう。
おいおい、何だよこいつら?
依頼って言ってたけど、もしかして冒険者か?
態度が最悪だな……。

「お、お父様!大丈夫!?」

「イ、イシュラ。私は大丈夫だから離れてなさい!」

ふつふつと怒りを感じていると俺が薬をプレゼントした少年達の中に居た少女、イシュラ
ちゃんが美少女の父親に駆け寄る。
どうやらあの子も彼の娘らしい。

「むむ!おっぱいはちっちゃいけど美少女なんだな!君も友愛するんだな!!」

「いや!!」

「おいおい、ポッポさん。独り占めしてないで俺にもやらせてくれよ」

ポッポと表示された豚野郎はまだ子供のイシュラちゃんにまで手を出し始め、
鬼眼のキョウもゲスな瞳で姉妹を見ている。
その光景を見ていた村の人達も怒りの目を冒険者の二人に向けている。

「や、やめてください!依頼料は差し上げます!!
ですからどうか…どうか娘達は見逃してください!」

もうなりふり構っていられなくなった父親は、ついに娘を救うために
死んでも下げたくないであろう頭を下げ、娘を守ろうと土下座をした。
だが……

「……おい、おっさん。
さっきからうるせぇな……死ぬか?」

このゲス野郎はうるせぇと刀を鞘から引き抜いた。
そして、今まで我慢していた村人達がついにキレた。

「ふざけんなよ!イシュラとレヴィアを放して村長に謝りやがれ!!」

「そうだ!謝れ!!」

「そんで二度とこの村に来るんじゃねー!!」

キレた村人達は、怒声を上げながら二人の少女を救うため詰め寄っていく。

「っち、鬱陶しい村人共め。この俺様を怒らせたんだから覚悟は出来てるんだろうな?」

詰め寄る村人達が鬱陶しいと感じたのか。
鬼眼のキョウと名乗っていた男が刀を上段に構え、近くのスキンヘッドの村人に
振り下ろす……。
もう見てられん!!
背中に担いでいた薬箱を下ろした後、
素早く振り下ろされる刀に向かって突撃し、村正で居合いをする。

キン

「へ?」

俺の村正が相手の刀に接触した瞬間、相手の刀は小さな金属音と共に真っ二つになり、
斬り飛ばされた刃は宙をクルクルと舞い、サクッという音を立てて地面に突き刺さった。



「覚悟を決めんのはテメェだ。」

 
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