SAO<風を操る剣士>
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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第五章 オレンジギルド
第33話 ある男のお願い
前書き
少し短めです。
※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。
リズと別れてから、俺とシリカは装備も整っていない状態で上の層を動き回らない方が良いということになり、今日は中層くらいを見て回る事にした。
なので中層に行く為に最前線である第五十六層の《転移門》へ向うと、《転移門》のあるゲートの前でキリトと、泣いてキリトに頭を下げながらお願いをしている男がいた。
他のプレイヤーは関りたくないのか、二人の事を見て見ないフリをしているが……流石に知り合いの俺達まで見ないフリっていうのはどうかと思う。
俺はシリカにどうするか確認の為に目を合わせると、シリカも気になっている事が分かったので、二人でキリトの元へ近づく。
「キリト、どうしたんだ?」
「お! シュウにシリカ、久しぶりだな。……今丁度、この人のお願いを聞き終わったとこなんだ」
「シリカ……シリカってもしかして…」
俺達が近づくのと、キリトはもう男からお願いを聞き入れた後だったらしい。
俺は改めてキリトにお願いした男の方を見てみる。
どうやら、装備の見た目的に中層プレイヤーみたいだけど、こんな所で何をキリトに………ん? そういえば、この男さっきからどこ見てるんだ?
気になって男の視線の先をたどると………シリカがいた。
そういえばこの男、俺達が近づいた時もシリカの名前を呟いていたような……となると、どっちだ。
《竜使いシリカ》として名前が結構知られているシリカにとって、こうやって見られたり名前を囁かれる…なんて事は結構多い。(ダンジョンに長い間いた為か、最近は以前より少なくなったけどな)
けど、こうやってシリカの事を見てるプレイヤー…あるいはピナを見たり、名前でシリカの事を知ったプレイヤーが起こす行動は、4パターンある。
①見てるけど、『あれが《竜使い》か~』とか呟いているだけで何もしない。(呟かない場合もある)
②シリカに握手などを求めてくる。……ホントあいつら、何考えてるんだろうな。
③ファンになったり、偶にナンパ。
④これはもっとも珍しいケースだけど、初めて会った時のリズのようにお願いをしてくる場合。
さて、このプレイヤーは……
「あ、あなたは《竜使い》のシリカさんですか?」
「え……そ、そうですけど…」
「あ、あの、もし今僕がお願いした人とお知り合いなんでしたら、一緒に僕のお願いを聞いてくれないでしょうか? ……できれば、そこのお兄さんも一緒に…」
……どうやら④だったらしい。
シリカが遠慮がちに《竜使い》である事を認めると、男はシリカと俺(ついで)にキリトと同じお願いを聞いてくれと言ってきた。
なるほど…今の攻略組だとシリカの名前を聞いても、暫く攻略会議に出ていない所為かそこまで上級プレイヤーには思われないが……この男は中層プレイヤーだ。情報力に攻略組と差があり、未だに上級プレイヤーとして思われたんだろう。
まぁ実際、シリカは今の攻略組の平均よりレベルは高いけどな。
なので見た目が頼りなさそうに見えたのか、キリトと一緒にお願いを聞いてくれと言ってきた訳だ。
それにしても……俺のことを『お兄さん』と呼んだって事は、中層プレイヤーにまで『ビーターの兄がいる』っていう噂は広まってるんだな。…ちょっと複雑だ。
「とりあえず、お願いの内容を聞かせてもらえますか? それに先にお願いをされたのは、そこにいるキリトさんなので、一緒に行って良いかキリトさんに……」
「あ! 俺は別に良いぞ。シリカ達が手伝ってくれるなら、探すのが大分楽になるし……もし一緒にやるんだったら、説明も俺が歩きながらしてやるよ。もし説明を聞いてから嫌になったら、俺がこの人に後で教えるよ」
「宜しくお願いします!」
キリトが良いと答えたのに乗っかるように、男は頭を下げてお願いをしてくる。
そんな男の姿を見て、シリカは俺の方へ向いて『お願いを聞いてあげても良いですか?』と目で話しかけてきた。
まぁ、話しを聞いた後からでも断れるし……今のところは引け受けても良いか。
そう思い、俺はOKを出す為に首を縦に振った。
そして俺のOKサインを見てから、
「分かりました。なら、引き受けさせてもらいますね。説明はキリトさんから歩きながら聞かせてもらいます」
「あ、ありがとうございます!」
シリカが丁寧にお願いを引き受けた事を言うと、男は再び頭を下げてお礼を言ってきた。
それにしても…お礼されるのはいいんだけど、場所がな……結構目立ってきてるぞ…
「よ、よし、なら早速行くか……付いてきてくれ」
キリトも流石に居心地が悪くなってきたのか、男に『それじゃ、少し待っていてくださいね』と声をかけてから、俺達に付いてくるように言いながら歩き出す。
俺とシリカも男に一応、一礼してから(頭を下げてるから見えてるか分からないけど)キリトの後ろに付いて行った。
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キリトが《転移門》で指定した街は、第三十五層の《ミーシェ》だった。
街に着くとキリトは、
「歩きながら説明するって言ったけど、やっぱりそこら辺の宿屋の部屋を借りて話をしよう」
と言うので、俺達は宿屋へ向い始める。
宿屋に着き、『帰って宿屋に泊まるとコルがさらにかかるし、面倒だから今日はココに泊まろう』ということが話し合いで決まったので、俺たち二人とキリトは部屋を借りた。
そして、キリトが部屋が二人部屋で広い俺達の部屋に来て、男からのお願いの内容を俺達に教えてくれた。
あの男のギルドは自分以外のメンバーを第三十八層で、犯罪者ギルドの《タイタンズハンド》という奴らに殺されたらしい。
そして残されたあの男の人にキリトは、全財産を使い買った《回廊結晶》で、殺したギルドのメンバーを『黒鉄宮の牢獄に入れてくれ』とお願いされたらしい。
「これが俺のお願いされた内容だ」
「……なるほどな」
キリトがあの男のお願いを何で聞いたのかがよく分かったよ。
ギルドで一人だけ生き残る苦しみを知っているからな。……まぁ、キリトの時と大分状況が違うけど、それでも仲の良かった奴が死んでる事には変わりない。
…これは手伝うしかないな。
「…分かった。俺も出来るだけ手伝うよ」
「あたしもです」
「ありがとな、二人がいればそいつらを見つけるのが大分助かるよ……それで、このクリスタルのことなんだけど…」
そう言ってキリトが自分のポーチから、少し大きめの結晶を取り出す。
「それが牢獄に繋がってるのか」
「ああ、出口を牢獄に設定してあるらしい……それで、これを誰が持つかだけど…」
「あ! その前に一つ聞いて良いですか、キリトさん」
「ん? なんだ、シリカ」
キリトの話の途中に気になる事があるらしく、割り込んで質問をしてきたシリカの為に、一時アイテムの話を中断してキリトは質問に答える。
「なんでそのギルドの事を探すのに、まず最初に三十五層なんですか?」
「ああ、それは……あの男の話しだと犯罪者ギルドの主な活動場所は、三十二層から三十八層らしい。だから、その中心の層であるこの層から探し始めて、この層で見つからない時は上に行くのと、下に行く二つに分けて探すつもりだったんだ」
「なるほど、ということはキリトさんと一緒に探すのは三十五層だけなんですね」
「ああ……だからこれをどっちが持つか、って話なんだけど…」
探し方の説明が終わり、キリトが話を戻して《回廊結晶》を再び前に出す。
…この際だし、良い機会かもな。
「キリト、ならこの際だし俺と共通アイテムウィンドウを作ろう」
「……それしかないか。まぁ、別にシュウとなら良いか…」
キリトがそう言ってOKを出したので、俺は早速フレンドリストからキリトを選んで、キリトに共通ウィンドウ受諾の為のメッセージを送る。
キリトがそのメッセージを受諾して、俺のフレンドリストのキリトの所に共通アイテムウィンドウ…つまり共通のアイテムストレージのボタンが出た。
「よし、ちゃんと出来てるぞ」
「…そうだ、シリカともしなくちゃな」
シリカとも共通ストレージを作らなきゃと思ったのか、キリトはウィンドウを操作してシリカにメッセージを送る。
それをシリカは受諾した。……そして、シリカが受諾した後に気付いんだけど…
「…なぁシリカ、別にシリカはキリトと作らなくても大丈夫だったんじゃないか?」
「………あ」
なんで必要ないかいうと、俺とシリカは去年のクリスマスに結婚をして全ての共通化している。
アイテム画面とお金は一つに統一されて、お互いのステータスやウィンドウなども自由に見る事が出来るようになった。
そして、全データを共通してるという事は見るだけじゃなくて、相手のウィンドウの設定などもいじる事が出来る。…なので、本当に信頼できる人とじゃなきゃ結婚は出来ないで、このSAOでは男女比を関係なくしても、結婚するカップルは稀なのだ。
あと、自分のウィンドウを出してから相手のウィンドウを見る事も可能なのだが……結婚すると共通化の為か、出した時に普段は可視モードにしなくちゃ相手には無地の板にしか見えないプレイヤーのウィンドウ画面が、シリカのだけは可視モードにしていなくとも見れるようになった。
…そういえば、少し前にイタズラでシリカの起床アラームの時間を変更した時は、不機嫌になったシリカに謝るのに苦労したなぁ。……もうやらない事にしよう。
まぁそんな訳で、シリカはキリトと作らなくても良かったんだが……俺とシリカの言ってる意味を、キリトはまだよく分からないらしい。
「えっと……作る必要が無いってどういうことなんだ?」
訳がわからんといった顔で、俺に聞いてくるキリト。
仕方ない……ちゃんと説明するか。
でも照れくさい所為もあり、俺はちょっと簡潔に説明した。
「…一言で言うと……結婚」
「……はい?」
「シュウさん、それだけじゃ上手く伝わりませんよ。その……キリトさん、あたし達……結婚したんです」
照れくさそうにキリトに言うシリカ。
シリカから理由を聞いて、キリトはどんな風に言えば分からないのか、戸惑いながら言う。
「えっと、その……おめでとう…」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
キリトの言葉にお礼を返した後、キリトは納得顔になって俺達に聞いてきた。
「……そっか~、結婚したのか……でも、これだけ二人で一緒にいるのに結婚してない方が可笑しいのかもしれないな。…ちなみにいつしたの?」
キリトは何気なく聞いてきたのだが、俺はその質問は凄く答えにくかった。
……でも、答えないわけにはいかないよな…
「……去年のクリスマス、お前と戦った後だ……なんか、悪いな…」
「あはは、別に余り気にしなくて良いぞ。まぁ思い出したくないのは事実だけどな。……それにしてもあの後か~……その時から部屋を一緒にしたのか?」
「……いや、ゲーム開始1日目からだよ」
大丈夫だと言いつつも、話題をそらしたキリトに乗っかり答えると、キリトが信じられない者を見るような目つきで俺達を見てきた。
「……えっ……それなのに結婚したのがこないだなのか!?」
「うるさいな! こっちにも色々あったんだよ!」
「そうですよ! この鈍感なシュウさんに気持ちに気付いてもらうのに、どんなに苦労したことか!」
「シリカ! お前は俺の事を責めてるのか、キリトの事を責めてるのかどっちなんだ!?」
「どっちもです!」
……ソウデスカ。
こんなやり取りを、俺達は昼ごはんを食べるまでしていた。
そして食べ終わった後、ついに犯罪者ギルド探しを開始した。
後書き
結婚については、自分が勝手に想像した事も入れました。
感想や間違いの指摘、待ってます。
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