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SAO<風を操る剣士>

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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第五章 オレンジギルド
  第32話 武器強化

 
前書き
やっぱり、良いタイトルが思いつかない……

※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。 

 



 2024年02月23日午前五時三十分………最前線第五十六層



「あんたたちねぇ……顔出すんなら、もっと早く顔出しなさい!」
「いやぁ、だから悪かったって…」
「ご、ごめんなさい、リズさん」
「まったく、『クエストから帰って来た』っていうメッセージを貰ってから、もう二ヶ月よ! その間、顔出さないってどういうこと!」

 俺たちは今、最前線の第五十六層にあるリズの簡易店に来ていた。
 『簡易店』という理由は、リズは以前から《ベンダーズ・カーペット》という簡易的なプレイヤーショップをひらけるアイテムを使って、各層を歩き回りながら商売をしているのだが、どうにもリズはどうしても欲しい《職人用プレイヤーホーム》が出来たらしく、その為にお金を貯めて、そこを拠点に商売を始めるらしい。

 そして、そのハウスを買うお金を貯める為に、最前線で働いているリズのお店に久しぶりに寄ったら、この()(さま)だ。(ホームの事は、この店に行く前にメッセージを送り、返ってきたリズのメッセージに、場所となんでそこで働いているのかの理由が書かれていた)

「ま、まぁ色々あったんだよ。クエストやってる間の他の層の状況を、情報屋から買った情報を元に確認しにいったりさ」
 リズに言ったように、俺とシリカはこの二ヶ月を使ってアルゴから買った情報を使いながら、実際にその層へ見に行っていた。……食べ物が美味しい店を探して食べたりな。
 その為、武器の強化などを大分行(だいぶおこ)なっていなかったので、久しぶりに顔を出す感覚でリズの店に言ったら、この文句の嵐だ。

「ふぅ~ん、それであたしに顔を見せもせずに二ヶ月もいたと。……まぁ良いわ、文句も言ってスッキリしたし、生きて顔見せてくれたからね」
「し、心配してくれてたんですね。リズさん」
「当たり前でしょ、友達なんだから。……それで、今日はどんな用で来たのよ? 武器の強化?」
 心配してくれた事に感謝しながらも、リズに聞かれたので俺は用件を伝える事にした。

「そうだよ。俺とシリカの武器と防具とアクセサリーを、今から渡す素材で出来る所まで強化してくれ」
(よろ)しくお願いします」
 そう言って俺とシリカは、(あらかじ)め脱いで置いた防具と武器を、ウィンドウを出してリズに送る。
 ついでに言えば、前に使っていた武器と防具にアクセサリーを素材に戻して、武器たちの強化に使ってもらう為に、俺とシリカの今現在の格好はそこら辺のショップで買った服で、なんとも頼りない。

 なので、コレだけの量をやってもらうのには時間がかかるだろうと思い、シリカと無理して朝早くから起きてリズの所に来たのだ。
 しかし、リズが俺達から送られて来たアイテムを見て、思いもよらぬ事を言ってきた。

「うわ~、これは時間のかかる仕事を押し付けたわね。…この武器と防具全部でしょ? コレは今日中じゃ無理よ」
「………マジで?」
「ええ。だってこれ、前にあんた達が使った武器とかのインゴット…つまり素材に戻す作業もするんでしょ? それにこの量を二人分だからね。他のお客さんから頼まれてる物もあるし。……大体、予めメッセージを送ってくれたり、こまめに来ていればこんな事にはならなかったのよ。シュウ達くらいじゃない? こんなに強化を溜め込んでた攻略組は…」
「………すいません」

 リズが正論だよ。今は攻略組と言っていいのか分からないとか、ダンジョンで手に入れた武器たちが当分強化しなくてもやっていけるくらいだったとか……言いたい事が山ほどあるけど、正論過ぎて何も言い返せない。
 それにアルゴから情報買う為に、ほとんど金が無くなって出来なかった事もあるんだけどな。

「……リズさん、ごめんなさい。あたしがもっとしっかりしていれば…」
 確かに今回は、シリカも珍しく連絡を入れる事や強化の事を忘れていた。
 その事を気にして、リズに申し訳なさそうに謝るシリカ。
 謝るシリカを見て、俺もリズに謝る。
「俺からも悪かったな。こんな朝早くから…」
「……別に良いわよ。……ただその代わり、代金(だいきん)はしっかり頂きますからね」
「……ありがとな」

 リズの奴……ありがたいよ、本当に。
「それじゃ、明日の夜くらいに取りに来て。あんた達優先でやっておいてあげるから」
「すみません、宜しくお願いします。……あ! そういえば、リズさん朝ご飯食べましたか?」
「食べてないけど……なんで?」
 お礼を言った後に、何か思いついたようにリズに聞くシリカ。

 朝ご飯の事について聞くってことは……
「なら、一緒に食べませんか? せめてものお礼にご馳走します! ……良いよね、お兄ちゃん?」
 予想道理、リズを誘う為だった。
 俺としても断る理由は無いので、
「ああ、いいぞ」
 と、リズの前なので妹モードのシリカにOKを出した。

「それじゃ、お言葉に甘えさしてもらおうかな。……ドコで食べるの?」
「う~ん、そうだなぁ……なら、俺に付いてきてくれるか?」
「良いわよ。それじゃあ、行きましょうか」
「ああ」
「はい」

 リズが近くの宿屋に《リンダーズ・カーペット》を預けるのを確認して(《リンダース・カーペット》は自分のアイテムストレージに入れられないので宿屋に預けた)から、俺は二人を連れて歩き始めた。



=====================



「あ~、美味(おい)しかった~。ご馳走様(ちそうさま)
「ご馳走様でした」
「ご馳走様」
 俺は二人を連れて、近くの厨房を貸してくれるお店に来ていた。
 そこで俺達が(シリカが自分も作ると言った為、二人で作る事になった)料理を作って、今丁度食べ終わった所だった。

「まさか、シュウ達が料理できるなんて……それに、まさかSAOでご飯と味噌汁が出るなんてね。懐かしかったし、驚いちゃった」
「確かに驚きますよね。…あたしもSAOで初めて食べた時、凄く懐かしく思いました」
「二人とも、作った俺に感謝するんだな」
 俺は二人が絶賛しているので、冗談口調でワザとらしく偉そうに言った。

「感謝はするけど、これ出来たのって偶然だよね。お兄ちゃん」
「……ソウデスヨ」
「何それ! なら、余り感謝できないわね」
「…でも、真剣に作ったんだぞ!」
「はいはい…」
「分かってるよ。ありがとう、お兄ちゃん」
「………おう」
 冗談で言ったんだけど……こうやってシリカに笑いながらお礼を言われると、やっぱり嬉しいな。

「ま、まぁ、お礼を言われるために作ったんじゃないんだけどな。それでもやっぱり、お礼を言われると嬉しいよ、ありがとなシリカ」
「も、もう……それくらいで頭撫でる事ないのに……」
 俺はお礼を言いながらシリカの頭に手を乗せて、シリカの頭を撫でる。
 シリカもリズの前だからか少し文句を言いながらも、俺の手をどけようとしない。
 流石(さすが)にキスや一緒に寝るのは無理だけど、頭を撫でるくらいなら俺だって出来る。

 そうやって、シリカの頭を撫でる事数十秒……俺はそこで、リズが俺達の事を見ていることに気付いた…というか、思い出した。

「………………」
「な、何だよ…」
「いや……マジであんた、シスコンなんだな~っと……それに、シリカも嫌がってるように見えないしさ……ホントに仲良し兄妹だな~…って、思ったのよ」
 ……そろそろ本格的に、俺達に対する誤解を解かなきゃいけないんだろうか。
 丁度、厨房を借りた為にココの部屋には他の人はいないし。
 でも誤解を解くと、必然的に色々と言わなきゃならないから、どうしようか迷うんだよな。

「………リズ、もしもの話をしていいか?」
「何よ?」
「もし、俺とシリカが『兄妹じゃない』って言ったら、信じるか?」
 俺がそう聞くと、リズは考え始める。

「う~ん……正直シュウとシリカって、基本的に似てないのよね」
「そうかもな」
「そうですよね」
 俺とシリカが同時にリズの意見に賛成する。
 当たり前だ。だって本当の兄妹じゃないんだから。

「……でも、(たま)に似ている所もあるのよね。う~ん……やっぱり、兄妹なんじゃない?」
「そ、そうか…」
 ……驚いた。まさか本気で兄妹って信じられてるとは……俺とシリカって、本当に似ている所があるんだろうか?

「何? こんな事聞くってことは、誰かに似てないとでも言われたの? ……まさかそれとも……」
「そ、そうなんだよ。良く似てないって言われるから、そんなに似てないか聞きたくなってさ……そうだよな、シリカ」
「う、うん」
 リズが余計な事を言い出さないうちに、俺はリズの意見をシリカと一緒に肯定した。
 ……もう、あと(しばら)くはこのままで良いや。なんか、誤解解く気がなくなっちゃたしな。

「ふ~ん、まぁいいんだけどね。それより、あたしコーヒーが飲みたくなってきたから、飲んでも良い?」
「別に良いですよ」
 リズが急にそんな事を言い出したので、俺の代わりにシリカが答える。
 よく、ご飯と味噌汁の後にコーヒ-なんて飲めるな。……俺はいつも無理だけど。

 俺がそんな事を考えてる内に、リズはウィンドウを出し、コーヒーを取り出した。
 ………なぜか3つ。
「コレ、ご飯のお礼でシュウとシリカの(ぶん)。ご飯と味噌汁の後だから飲みたくなかったら言って、あと少しなら耐久値も大丈夫だろうから、他の飲み物に取り替えてあげる」
 そう言って、俺とシリカの前にコーヒーを差し出すリズ。

「あ! どうもありがとうございます、リズさん。飲ませて貰います……少し砂糖入れてもいいですか?」
「いいわよ」
 シリカはお礼を言い、リズからのコーヒーを受け取り自分の砂糖を出す。

 さて、俺がリズに今言う事は一つだな。
「リズ……取り替えてくれ」
「ん? 別に良いけど、何飲む?」
「お茶で良いよ」
「分かった」
 俺のお願いを聞いたリズは、コーヒーを引っ込めて、代わりお茶を俺に出してくれた。
 よ、良かった~。


「それより、コーヒー出す時にあたしのストレージの容量の余りを見たんだけど、ほとんど余って無いのよ」
 コーヒーを飲み始めてから何十秒か経ってから、リズが俺の方を向いて言ってきた。
「な、なんだよ」
「この原因って、シュウ達のアイテムの所為(せい)だと思うんだけど、何か物凄く重い物とかある? あたしのストレージ容量って、職人用だからそんな簡単に埋まらないんだけど…」

 このSAOでストレージ容量を多くするには、基本的に《筋力値》の値と拡張(かくちょう)スキルの熟練度、それにマジックアイテムなどで持っていられる量は多くなる。
 どんな職人だって《所持容量拡張》は最初に上げ始める……しかも《筋力値》を結構上げるリズみたいな鍛冶屋は、それなりに容量は多い。
 そしてストレージの容量は、体積ではなく重さで決まる。

 …ちなみに俺とシリカのストレージ容量は、俺の容量とシリカの容量に《共通アイテムウィンドウ》という共通のストレージの(ぶん)が加わり、さらに結婚をするとボーナスとして容量が結構多くなる。……このボーナスの容量拡張は、このSAOでの結婚の利点の一つだ。

 なので、鍛冶屋であるリズのストレージを一気に埋める程のアイテム…つまり物凄く重いアイテムは、俺達が渡したアイテムの中に………あるな……
 心当たりがあるので、確認の為にシリカの方へ向くと、シリカも首を縦に振った。
 ……やっぱり、あれしかないよな…

「リズ……もしかしたら、その原因は……俺とシリカの剣だ」
「ホントに? ……ならちょっと予定が変わるけど、この剣だけ先に強化しちゃうから、少し待っててくれる?」
「……悪いな」
「良いわよ、別に。……だけど、この剣の代金は先に払ってね……場所だけど、ココは今貸切し状態だから、ココでやっても良いのよね?」
 感謝と悪いことしたな、という気持ちを胸にしまいながら、リズに『良いはずだぞ』と答え。

 それを聞いたリズはさっそく立ち上がって、道具を取り出してからウィンドウを出し、俺達のアイテムを実体化させる。…まずは俺の《ヘビーハードネス》からやるらしいな。
 俺の《ヘビーハードネス》が一瞬空中で具現化して、それをリズが掴んだ。
 ………すると………
「キャッ!!!」
 ……俺の聞いた中でもっとも女の子らしい声を出し、リズは俺の《ヘビーハードネス》を落として、その勢いで転ぶ。
 良かった……リズの奴、指を挟んでないみたいだ。落ちた剣も、足に当たらなかったしな。

 けど頭から転んで、でんぐり返しをしてしまったので、流石に心配になり声をかける。
「お、おい! だ、大丈夫か!」
「り、リズさん、大丈夫ですか!」
「…………い、痛った~」
 俺達が声をかけてから少しして、リズが頭に手を置いて痛そうにしながら立ち上がる。
 圏内だったので、どうやらHPに以上は無いらしい。
 ……どうでも良いけど、でんぐり返しの時にリズがスカートじゃなくて良かった。
 コレがもし接待用のNPCがよく着ているような服だったら……見えてたな。

 と、そんなくだらない事を考えていたら、リズが痛みが少し治まったのか俺の方に歩いてきて、俺の服の胸元を掴む。
「ちょっと! 何よこの重さ! ぜんぜん持てないじゃない!」
「いや、だから最初に重いって言っただろ」
「限度ってモンがあるでしょうが!」
 そんな事言われてもなぁ…、と俺が困り果てていると、シリカが俺の剣を持ってリズの元へ再び持っていった。

「リズさん……確かに重いですけど、宜しくお願いします。あたしも手伝いますから」
「……分かったわよ」
 やっと俺の服からリズは手を離して、シリカの持っている剣を再び掴む。
「………も、持ち上がったわよ……」
 ゆっくりとだがシリカの手から剣が離れていき、それと同時に剣とリズの手も離れていく。

 そして、何とかリズは自分の道具ある所に《ヘビーハードネス》を置いた。
「…ふぅ……それにしてもシュウ、あんた良くこんな重い剣を片手で持てるわね。シリカも軽々持ってたし…」
「俺もそれの重さには参ってるさ……けど、リズとはレベルとかの差もあるからな、一応は持てるよ」
「あたしも軽々とは持ってませんよ」
「ふ~ん……それで、強化の種類は何にするの?」
 リズは俺達の言葉を、聞いているのか聞いていないのか分からない返事をした後に、俺の方を向いて聞いてくる。
 …そう、これなんだよなぁ、俺が悩んでるのは。

「う~ん、とりあえず《頑丈さ》を上げてくれ。その後は……《重さ》と《鋭さ》どっちにしようかなぁ?」
「え……あんた、まだ《重さ》上げる気なの!?」
「ああ、でもな~………よし、決めた! 《頑丈さ》四割で、《重さ》と《鋭さ》を三割ずつで頼む!」
「……どうなっても知らないからね」
 そう呟いた後、リズは俺の剣の強化に取り掛かった。



=========================



 午前九時を回る頃、やっと武器の強化が終わった。
「はい、出来たわよ。二人とも」
 そう言ってリズがウィンドウを出して、俺とシリカに剣を送ってくる。
 それを受け取り、俺達もお金を渡す。

「…それにしても、シリカもあれ以上《重さ》を上げるなんて、兄妹そろってバカ?」
「そんな事無いですよ、その方が攻撃力が増して戦いやすいんです」
 シリカも俺とまったく同じ強化内容にしたことに、リズは冗談まじりでバカ呼ばわりしたが、それとさらり受け止めてシリカは理由を説明する。…まぁ、シリカの剣も重いからな。

「…まぁ、シリカが良いんだったら、あたしはそれで良いんだけど……それよりさぁ、シュウ達って今最前線で起きている《フィールドボス》について知ってる?」
 その理由を聞いて納得? したのか、他の事を俺達に聞いてきた。

 《フィールドボス》というのは、各層のボス部屋にいる《フロアボス》とは違い、アインクラッドの各層の圏外フィールドで、要所要所という間隔で何体か配置されているボスのことだ。
「……《フィールドボス》がどうしたんだよ」
「それがさぁ、あたしの友達の話なんだけどね。第五十層あたりから《フィールドボス》が攻略組が着く頃には、もう倒されてるんだって……それであたしの……もう名前出しちゃうけど、アスナっていう友達が『そんなに強いのに《フロアボス》の攻略に来てないなんて、無責任にも程がある!』って怒ってたのよ。これを今攻略組では《フィールドボス事件》って言うらしいんだけど……その事について何か知らない?」

「……………サァ、ヨクワカラナイナ」
「……………ソ、ソウデスネ」
 やべっ、思い切り俺もシリカも片言になっちまった!
 心当たりがあるとすれば、有り過ぎる! だってそれ、俺だもん! …正確に言うと、俺とシリカだけど。


 ことの始まりは、俺達がダンジョンから返ってきた後にアルゴから、
『今のアーちゃんとシュー助たちは、きっと気が合わないヨ』
 と言われて、フロアボスの攻略参加を()めるように言われたので、コルを貯めるのと(貯金の為)アルゴに先のフィールドの情報を上げる為(他の情報を安くして貰ったお礼)に、フィールドをすすんでたら《フィールドボス》と戦うハメになった。
 しかもそれが、いち早く情報を知ろうとした為に《街開き》をしてすぐだったのだ。
 攻略組は武器や体力を回復させる為に、街で少し休んでる時に俺達はズカズカ先に進んで行く。

 流石に悪いと思うので、攻略がしやすいようについでと思い《フィールドボス》は全て俺たち二人で倒すことにした。
 それに、全ての《フィールドボス》と二人で戦えば、迷宮に何日か入って、大勢で《フロアボス》に倒したくらいの経験値が貰えた。
 なので倒した後は、さっきリズに言ったように下の層へ行っていた。

 そして、何回もそれを繰り返していたら……まさかそんな風に思われるなんてな。
 まぁ、《フィールドボス》の経験値とドロップアイテムを取れなくなったら、不満が溜まるのも当然だろう。
 でも、これでアスナが言うように《フロアボス》攻略まで出たら、気まずいなんてモンじゃない。
 だから、これからも危険を承知で《フィールドボス》はシリカと二人で倒す事に決めたのだ。
 シリカも良いと言ってくれた。……《ビーター》としても、ココは譲れない所だ。
 今日リズの所に来る前の日…つまり昨日も迷宮の前までの《フィールドボス》は全部倒してきた。


 ……けど、まさかあのアスナがそんな事を言っているなんてな。
 ()めるつもりは無いので、絶対にバレないようにしないといけないんだけど………リズの話に気が動転して、言葉が片言(かたこと)になってしまった。

 シリカも俺と一緒だったのか、片言になってたし……どうしよう、リズが凄い疑いの眼差しで見てくる。
「…………ねぇ、何でそんなに焦ってるのよ…」
「い、いや、あ、焦ってなんか無いぞ。な、なぁ、シリカ」
「う、うん、そ、そうだよね、お兄ちゃん」
 ……ここまで声が震えてると、逆に教えてるようなもんだな。

「………そういえば、シュウ達に返ってきたってメッセージ貰った時期と、この《フィールドボス》の事件が始まった時期って、ほとんど同じなのよねぇ」
「……ソ、ソレハ、偶然デスネ」
「……シュウさん、片言すぎですよ」
 俺に小声で指摘するシリカ。
 シリカだって、さっき片言になってたくせに!!
 と、シリカにツッコミたいのだけれども、リズに追い込まれてそれ所ではない。

「……いい加減にして、白状しなさいよ。今言えば、誰にも言わないから…」
 俺の耳元でどこぞの刑事のように言ってくるリズ。
 ……これはもう、隠し切れないな…

「……分かった。言うよ…」
「……誰にも言わないで下さいね、リズさん」
「もちろんよ!」

 その後、俺達の話を聞いたリズの口止め料として、俺達は時々リズにご飯を作ることになった。
 ……ホント、これだけですんで良かった。


 リズに話してから俺達が貸しきった店を出る頃には、すでに十時を回っていた。








 
 

 
後書き
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