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大阪の病院の幽霊

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第四章

「そうそう、私が若い頃からね」
「お二人は活躍されていましたね」
「旦那と一緒に舞台を観て」
 二人のそれをというのだ。
「子供達や孫達とテレビでね」
「観ましたね」
「新喜劇に出た時もあって」
 それでというのだ。
「その時もね」
「楽しまれたんですね」
「そうだったよ」 
 昔を懐かしむ顔で話した。
「笑わせるって気迫がね」
「ありますね」
「そう、昔の漫才はね」
「笑わせる、ですね」
「絶対にね」
 観る人達をというのだ。
「その気迫があったんだよ」
「お二人にもありますね」
「どの人達にもね」
「あったんですね」
「そうだったんだよ」
「今とは違いますね」
「今はね。テレビに出てる人達は」 
 彼等はというと。
「ただテレビに出てね」
「売れたいですね」
「そんな人が多いね」
「よく言われますね」
「だからね」
 そんな有様であるからだというのだ。
「どうしてもね」
「面白くないですね」
「そうだよ」
 これがというのだ。
「そんなのだからね」
「そうですね」
「けれどね」
 それがというのだ。
「昔の漫才はね」
「笑わせる、ですね」
「舞台でもテレビでもね」 
 場所は違えどというのだ。
「全力でそうさせよう、どんなに落ち込んでいても」
「笑わせる」
「それがあったんだよ」
「気迫ですね」
「この人達にもあったから」
「面白いですね」
「その面白さを観られて」
 今病院の屋上でというのだ。
「いいんだよ、病院は昔より怖くなくなっても」
「お笑いはですね」
「笑わせる、それがね」
「あって欲しいですね」
「今はね」
 それこそというのだ。
「ユーチューブであるけれどね」
「笑わせる気迫は」
「さもないとね」
「観ないですね」
「テレビは点けたら」
 それでというのだ。
「観なくても視たことになるからね」
「駄目ですね」
「若い頃はね」
 老婆はふう、と溜息を出して言った。
「カラーテレビ買ったって喜んでいたのが」
「昭和ですね」
「子供の頃何とか一家で白黒テレビを買って」
「白黒ですか」
「それ買って大喜びしてたんだよ」
 そうだったというのだ。
「働く様になって自分で奮発してカラーテレビ買って」
「喜んでおられて」
「そうだったのがね」
「今はですね」
「テレビは面白くなくなって」
 そうであってというのだ。
「観なくなったよ」
「お笑いもですね」
「そっちは昔でいいのに」
 それでもというのだ。
「テレビもね」
「そうですね」
「けれどね」
 老婆はそれでもと話した。
「今こうして観られてね」
「よかったですか」
「そう思うよ、うちの旦那なんか」 
「どうなんでしょうか」
「もうテレビなんて観ないから」
「そうなっておられますか」
「昔はよく野球の試合だって観ていたのが」
 それがというのだ。
 
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