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大阪の病院の幽霊

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第三章

「どうなんだい?」
「はい、一番出るのはお笑いの人です」
 由希はこの時も正直に答えた。
「昨日行った帰ったです」
「ああ、あの女流漫才の」
「あのコンビです」
「ずっと長く活躍したね」
 そのコンビ名を聞いてだ、老婆は懐かしむ顔になって話した。そして由希にこんなことを言ったのだった。
「あの二人はずっと仲よくて」
「一生一緒でしたね」
「高校時代の部活で一緒になってね」
 そうしてというのだ。
「そこから漫才コンビ組んで」
「ずっと一緒にやってきて」
「お互い独身で」
「言うなら夫婦でしたね」
「そうだったんだよ」
 とても温かい目になって話した。
「あの二人は」
「お歳になっても漫才やっていて」
「舞台でもテレビでもね」
「長かったですね」
「そうだね、先に行ったが亡くなって」
「帰ったさんがですね」
「それであの二人がだね」
 由希にその目で尋ねた。
「この病院に出るんだね」
「実はお昼にも出まして」
「幽霊はお昼にも出るって私言ったけれど」
「出るんですよ」
 これがというのだ。
「屋上に」
「へえ、あれかい?」
 老婆は由希の話を聞いて言った。
「漫才の練習してるのかい」
「はい、舞台の服を着て」
「そうなんだね、私道頓堀であの二人見たんだよ」
「そうだったんですか」
「あそこのお好み焼き屋に入ったら二人でいて」 
 そうしてというのだ。
「一緒にお好み焼き食べていたよ」
「仲よくですね」
「そうだったんだよ、それで今もだね」
「一緒ですね」
「見てみたいね、じゃあ歩ける様になったら」
 老婆は微笑んで言った。
「ちょっとね」
「屋上行かれますか」
「そうするよ」
 笑顔で言ってだった。
 老婆は手術を受けた、そして体力が回復して歩ける様になると由希に付き添われて屋上に出た。すると。
 そこで痩せて顔が長く黒いロングヘアで顎が尖った女と太って茶色の髪の毛を短くした丸顔の女が二人並んで漫才の練習をしていた、実際に漫才をして。
「ここはそうしよか」
「いや、こうした方がええんちゃう?」
「それでいく?」
「どやろ」
「そやね、それがええやろか」
「ほなね」
 こんな話をしながらだった。
 漫才をやっていた、衣装は舞台のそれだった。
 その二人を見てだ、老婆は言った。 
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