ビスタチオ
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第一章
ビスタチオ
キャラバンが出発しようとしている、その時に。
キャラバンのうちの一人である行商人のアブドラー=ハシャーン大柄で口髭を生やした若い彼はキャラバンの団長に言われた。
「今回もな」
「はい、ビスタチオの実をですね」
ハシャーンは白く長いひげの長老に応えた。
「持っていきますね」
「ポケットに入れてろ」
「服の」
「それで行くぞ」
「わかりました」
「そしてだ」
長老はさらに言った。
「やはりいつも通りな」
「アッラーにですね」
「安全を祈るぞ」
「わかりました」
「そうして行かないとだ」
さもないと、というのだ。
「砂嵐なり盗賊なりな」
「出て来ますね」
「そうなるんだ、用心棒は雇ってるがな」
見ればキャラバンの中には武器を持っている者達もいる、ハシャーン達にしても腰にはシミターがある。
「俺達も刀持ってるしな」
「それでもですね」
「砂嵐とかはどうしようもないだろ」
「砂漠で迷っても」
「だからな、アッラーに旅の安全を祈ってな」
「ビスタチオも持って行きますね」
「ああ、いいな」
「わかりました」
ハシャーンは長老からビスタチオを貰った、それをズボンのポケットに入れてキャラバン全員でだった。
アッラーに祈った、そのうえで出発し。
街から砂漠を駱駝に乗って進んだ、昼は休み夜に進むが。
「足元にも注意しないとな」
「そうなんですよね」
若い用心棒がハシャーンに応えた。
「砂漠は」
「蛇に蠍がいるからな」
「だからですね」
「ああ、駱駝に乗ってな」
実際に彼等は駱駝に乗っている。
「そしてな」
「靴もちゃんと履くことですね」
「刺されたり噛まれたら終わりだ」
蠍や蛇にというのだ。
「だからいいな」
「はい、足元には注意ですね」
「くれぐれもな、あとな」
ハシャーンはさらに言った。
「服もちゃんと着ないとな」
「ですね、砂漠では」
「昼は暑くてな」
「夜は寒いので」
「だからな」
「昼は休んで夜に進んでいますが」
「その夜は寒いだろ」
「この通り」
見れば誰もが服をしっかり着ている、街にいる時よりも厚着であることがかなり目立っていると言えた。
「そうしています」
「そうしないとな」
「本当に死にますね」
「風邪ひくどころかな」
それで済まずというのだ。
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