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ブランク

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第二章

「俺もこれまでは引退したって言ってな」
「俺の復帰はないって言ってたか」
「ああ、しかしな」
 それがというのだ。
「もう抑えられなくてな、レスラーからも社員からもな」
「俺の復帰を望む声は高いんだな」
「興行もあるしな」
 オブライエンは現実のこのことも話した。
「俺としてもお前が戻ってきたら嬉しい」
「本音だな」
「ああ、どうだ」
 ミッチェルにコーヒーを飲みつつ誘いをかけた。
「店の経営もそのままでな」
「復帰か」
「コーヒーを淹れてもいいさ」
「美味いだろ」
「この美味いコーヒーをな」
 まさにというのだ。
「それでもいいさ」
「復帰か」
「時々でもな、報酬はな」
 オブライエンはまた現実の話をした、するとだった。
 いい額なのでミッチェルも考えた、店の収入は安定していてもそれでもやはり金は大事だ。それでだった。
 暫く考え親しい者達とも相談してだ、遂に。
「復帰するのか」
「ああ」
 ジムでカッツェに話した、二人共動きやすい服装で汗をかいている。
「決めた、だからな」
「今こうしてか」
「トレーニングをしてるさ」
「それも日課でなくか」
「現役の時そのままのな」
 プロレスラーだった頃のというのだ。
「メニューをな」
「やってるか」
「そうしているさ」
「じゃあすぐに現役復帰か」
「いや」
 ミッチェルはカッツェの今の言葉に真剣な顔で返した。
「まだだ」
「すぐにとはいかないか」
「ずっと現役を退いていたからな」
 だからだというのだ。
「ブランクがあるからな」
「それでか」
「現役時代のメニューを暫くやってな」
 そうしてというのだ。
「身体を戻してな」
「それからか」
「あと練習試合を幾つかやって」
 そうもしてというのだ。
「それからな」
「復帰か」
「そうなるな」
「時間がかかるな」
「ブランクがあるとな」
 それならとだ、ミッチェルは必死に汗をかきつつ話した。
「やっぱりな」
「復帰まで時間がかかるか」
「体力に身体のキレを戻して」
 そうしたものをというのだ。
「そして試合の勘もな」
「取り戻してか」
「それで団体の方が試合を決めてくれて」
「それでか」
「復帰だ、だが復帰するからにはな」
 ミッチェルは真剣な顔で言った。
「俺もだ」
「真剣にやってるな」
「この通りな、カムバックの試合楽しみにしてくれよ」
「ああ」
 カッツェも汗をかいている、そうしつつミッチェルに笑顔で応えた。 
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