盗撮はしない
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第一章
盗撮はしない
所謂助平爺である、大村空海はそうした老人だ。八十になってもアイドルの水着や下着のグラビアが大好きだ。
「何度見ても飽きないね」
「お爺さんは変わらないわね」
妻で五十年以上連れ添っている夏奈も呆れている、二人共完全に白髪になっていて皺だらけの顔だ。空海は丸顔で夏奈は眼鏡をかけた面長の顔だ。空海の背は高いが夏奈は小さい。
「アイドルが好きでね」
「女の子が大好きだよ」
「浮気はしないけれど」
「そうした映画も好きだったし」
所謂ポルノ映画である。
「ビデオ、DVDもね」
「好きよね」
「昔からね」
そうだというのだ。
「わしは」
「そうよね」
「男は何十歳になっても」
八十になろうともというのだ。
「同じだよ」
「そうしたことが好きね」
「少なくともわしはな」
「それでグラビアも観るわね」
「そうだよ、死ぬまでだよ」
それまでというのだ。
「ずっとだよ」
「観ていくのね」
「そうするよ」
こんな話をしていた、兎角だ。
彼はそうしたものが好きだった、それで彼を知る者の中にはいい歳をしてという者もいた。だがそれでもだ。
彼はグラビアが好きでアイドルのDVDも観てアダルト関係も好きだったが。
とあるタレントの盗撮事件を聞いてだ、顔を顰めさせて言った。
「馬鹿な奴だよ」
「あれっ、あんた好きだろ」
ゲートボール仲間の友人が言ってきた。
「女の子は」
「好きだよ」
空海自身もそれはと返した。
「もっと言うと大好きだよ」
「それならな」
「いや、盗撮は駄目だぞ」
強い声で言うのだった。
「もうな」
「倫理か」
「そうだよ、しかもな」
「しかも?」
「何が面白いんだ」
こうも言うのだった。
「あんなことをして」
「盗撮はか」
「のぞきもだ、わし等が若い頃は出歯亀とか言ったな」
「随分古い言葉だな」
友人もこう返した。
「また」
「ああ、しかし覗きはな」
「昔はそう呼んだな」
「風呂とか覗いたな」
「元々そこからきた名前だしな」
「そんなことしてもお目当ての女の子が見られるか」
空海は言った。
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