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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第29話 さらば!ウルトラマン

 ウルトラセブンがガッツ星人の前に敗れ捕らえられてしまった。ガッツ星人の話によればセブンは夜明けと共に処刑するとの事だ。
 次の日の夜明けまで後13時間足らずしかない。今、ウルトラセブンの命は風前の灯であったのだ。

「大変な事になった。我々を幾たびも救ってくれたセブンが敵に捕まってしまった。何とかして救い出さなければ」
「隊長、それにダンも敵に捕まってるかも知れません!」

 アンヌがダンの身を案じる。今この中でダンがセブンだと言う事実を知っているのはフェイトだけだ。他の者は皆ダンの正体を知らないのだ。嫌、知る訳にはいかない。知ってはいけないのだ。
 誰もダンの正体を知ってはいけない。知れば、ダンはこの星を離れなければならなくなってしまう。
 もう誰も巻き込みたくなかったのだ。
 だが、それも既に遅しであった。セブンと共にダンも消えてしまった。
 アンヌの心配は頂点に達している。それは皆も同じだった。
 だが、今優先すべき事はダンの救出ではない。セブンの救出なのだ。

「アンヌ、辛い事だが、もうダンは敵に殺されてるかも知れない。今我々が成すべき事はセブンを救う事だ」
「ですが…」

 アンヌが更に言いかけたが、止めにした。
 分かっていたのだ。自分でも何を優先すべきなのかを。
 だが、それが分かっていたとしてもやりきれない気持ちで一杯になってしまう。ダンを救いたい。その気持ちは確かにある。
 だが、今はセブンの救出に全力を注がねばならない時なのだ。
 突如として発信源不明の通信が送られてきた。もしやセブン不在を聞きつけて新たな侵略者が現れたのでは? 
 不安の中その通信文を読み上げる。だが、それは全く予想だにしない、そして誰もが驚く相手からであった。

「これは…セブンの脳髄から送られた通信です!」
「って事はダンさ…セブンは生きてるんですね!?」

 フェイトの目に輝きが戻った。
 まだダンは生きている。
 彼を助けられる。
 その思いが彼女に希望をもたらしたのだ。皆も同じ思いでセブンから送られてきた電文の答えを待つ。

「それで、何て書いてあるんだ?」
「どうやらセブンはマグネリウムエネルギーが尽きて動けないそうなんです。其処で我々にそれを補給して欲しいと言って来てます」
「マグネリウムだと! 世界中の何処でも融合に成功してないエネルギーじゃないか。そんな物どうやって」
「あの…」

 皆が落胆する中、フェイトが恐る恐る手を上げる。それに皆の視線が集まる。皆の視線を一斉に浴びたフェイトは少し戸惑いながらも固唾を呑み口を開く。
 緊張してきた。だが、それすらも飲み込みフェイトは口を開いた。
 そして言葉を発した。

「ジュエルシードを使えば、もしかしたら…」
「そうか! 使用者の願いを歪にだが叶える事が出来るジュエルシードを用いればもしかしたら…流石だテスタロッサ君」

 キリヤマが賞賛した。僅かだが希望が見えてきた。
 確かにジュエルシードは危険な代物だ。
 だが、今からマグネリウムの合成をしていたのでは時間が掛かり過ぎる。此処は藁に縋る思いでそれに賭けるしかない。
 個々で膨大なエネルギーを持つジュエルシードなら可能性がゼロではないのだ。
 後はジュエルシードを手に入れるだけだ。しかも今こちらには2個ある。

「それでしたら僕が取って来ます。皆さんはその間他の方法を考えて置いてください」
「頼むぞ、ハヤタ」

 皆の期待にハヤタは頷く。急ぎ科学特捜隊本部へ戻りジュエルシードを取ってくる必要がある。

「ハヤタさん、私も一緒に行きますよ」
「うん、それじゃジュエルシードの運搬をお願いするよ。運搬中に起動したら大変な事になるしね」

 ハヤタの言う通りだ。ジュエルシードの保管は管理局の協力の下多少は出来るようになっていた。だが、運搬となると話は別だ。何があるか分からない。
 その為魔導師が居てくれるのなら心強い事でもある。早速ハヤタとなのははビートルに乗り科学特捜隊本部へと向った。
 ウルトラセブン処刑まであと11時間しか残されていない。




     ***




 上空をビートルが移動している。ハヤタの横でなのはが急ぐ気持ちを抑えながらシートに座っていた。チラリと時計を見る。今午後8時過ぎだった。

(後10時間…急がないと)

 刻々とセブン処刑の時間が迫ってきている。
 急がなければならない。
 焦る気持ちを必死に抑えつつ、ハヤタは操縦桿を握り締めた。
 待っていろセブン。すぐに助けに行くからな。
 ハヤタは内心でそう思っていた。自分と同じ光の巨人であるセブン。
 数少ない同じ仲間でありガーディアンズのメンバー。
 そんな彼を見殺しになど誰が出来るだろうか?
 出来る筈がない。だからこそ急ぐのだ。
 全てはセブンを救い、ひいてはこの星そのものを救う為に。

「こちらハヤタ。こちらハヤタ。本部応答願います」

 着陸許可を貰う為ハヤタは通信を送る。
 しかし、本来ならフジ隊員かムラマツキャップの声が聞こえてくる筈なのに一行に応答がない。聞こえてくるのは雑音だけであった。
 ハヤタは疑問に感じた。
 本来科学特捜隊は緊急時以外は大抵誰かが待機している筈なのだ。
 それが全く出ない。ハヤタの手がじっとりと汗ばんだのを感じた。嫌な予感がする。これが的中しなければ良いのだが。

「一体どうしたんだ?」

 ハヤタの胸に不安が現れだした。
 やがて、科学特捜隊本部が見えてきた。
 其処で二人が見たのは恐るべき光景であった。それはまた、ハヤタの予想通りの結果でもあった。しかも最悪の形だったのだ。
 本部を一体の怪獣が襲撃していたのだ。
 本部からは煙が立ち込めており機能の大半がやられている。

「ほ、本部が!」
「そんな…皆は!?」

 ビートルから降りたハヤタは絶望した。
 共に戦った仲間達と本部を滅茶苦茶にされたのだ。
 ハヤタは煮えくり返る思いでそれを見た。共に戦い抜いた仲間達の居た本部が無残な姿と成り果てていたのだ。
 絶望がハヤタの中を支配する。そんな時、ハヤタとなのはの前に突如としてそいつは現れた。

【ハッハッハッ、一足遅かったな、ウルトラマン!】
「何!?」

 声がした方を見ると其処には一体の宇宙人が居た。
 そいつは一昔前に世間を騒がせたあの宇宙人に似ていた。
 それを見たハヤタは真っ先にその異星人の名を叫ぶ。

「お前は、確かケムール人?」
【誰だそれは? 我々はゼットン星人だ。貴様等が探していたジュエルシードは既に我々が破壊した!これでウルトラセブンが復活する事はない! 残念だったなぁ!】
「ぐっ!」

 怒りに燃えるハヤタがスーパーガンを抜き出しゼットン星人を撃ち抜いた。撃ち抜かれたゼットン星人はその場に倒れ溶けてなくなってしまった。
 だが、未だに怪獣は暴れまわっている。ハヤタの怒りが頂点に達した。
 こいつだけは許さない。例え相打ちになったとしてでもあいつだけは倒す。その思いをハヤタは胸に抱いていた。

「よくも本部と皆を…許さん!」
「ハヤタさん!」

 懐からベータカプセルを取り出し天高く掲げてボタンを押す。
 閃光が辺りに放たれ彼を光の超人ウルトラマンに変えた。
 ウルトラマンは怒っていた。烈火の如く、憤怒の如くに怒っていた。
 地層から吹き上げるマグマの如くウルトラマンの心は怒りに燃え滾っていたのだ。
 その心を胸にウルトラマンは目の前に立つ”宇宙恐竜ゼットン”に挑んでいく。

【僕は今まで憎しみを込めて戦った事はない。だが、今回だけは別だ! お前だけは絶対に許さない!】

 激しい怒りを胸にウルトラマンはゼットンへと向っていく。
 時間は掛けない。先手必勝で片付ける。
 ゼットンに向いウルトラスラッシュを放つ。ノコギリ状に象られた円盤状のそれが真っ直ぐにゼットンに向って飛んでいく。
 しかしそれもゼットンが突如張った結界の前に粉々に砕け散ってしまった。その光景にウルトラマンは驚かされた。
 初めての光景だったのだ。
 今までウルトラスラッシュはどんな敵でも両断してきた。それがまさか砕けるなんて思いもしなかったのだ。
 まるで丸皿を割るかの様にウルトラスラッシュが目の前で叩き割られたのだ。

【結界か…しかし何て強度だ!】

 それが駄目なら接近戦で挑むだけだ。
 ゼットンに近づき拳を叩き込んだ。
 だが、その拳もゼットンの硬い体の前に全く通じなかった。

【がはっ!】

 それどころかカウンターの如く放たれた平手打ちの前にアッサリとウルトラマンが吹き飛ばされてしまった。
 強い、こいつは明らかに強い。今まで戦ってきたどの怪獣よりも遥かに強いのだ。
 其処へ更に連続にとゼットンの鉄拳が数発叩き込まれた。その一発一発がウルトラマンにとっては驚異的であった。
 距離をあけた時、ウルトラマンのカラータイマーが既に赤く点滅しだしていた。こちらはかなり弱ってしまった。だが、ゼットンはまだ無傷も同然だ。恐ろしい怪獣だ。
 だが、負ける訳にはいかない。奴だけはこの手で必ず倒さねばならない。でなければ、何の為に彼と、ウルトラマンと一心同体となり今まで戦い続けてきたのか? 
 此処で負けたらそれら全てが無駄になってしまう。それかではさせる訳にはいかない。

【負ける訳にはいかない! お前だけには!】

 ウルトラマンが腕を十字に組みスペシウム光線を放つ。光線は真っ直ぐゼットンに向かい飛んで行く。
 今まで幾多の怪獣を葬って来た必殺の光線だ。
 これで倒せない相手など居る筈がない。
 しかし、その思いは脆くも崩れ去って行った。
 それが命中した途端その光線をゼットンは全て吸収してしまった。

【なっ、スペシウム光線が!】

 驚くウルトラマン。そして、吸収した光線をカウンターの如くカラータイマーに向って打ち返してきたのだ。

【がっ……しまっ……】

 カラータイマーの赤い点滅が消え去り、胸のランプが赤から黒へと変貌してしまった。
 其処でウルトラマンの、ハヤタの意識は途切れた。
 徐々にウルトラマンの瞳から光が消えていく。ゼットンの前でウルトラマンは棒立ちの状態になってしまった。
 全く微動だにしない。
 その光景を見ていたゼットンもそれ以上何かしようとはしなかった。

「そ、そんな…ハヤタさん!」

 なのはの目の前で、ウルトラマンがゆっくりと瞳の光を失い倒れてしまった。
 もうウルトラマンは立ち上がる事はない。
 二度と。
 ウルトラマンは負けてしまったのだ。圧倒的力の前に…
 倒れたウルトラマンを尻目にゼットンは更に科学特捜隊本部を破壊しようと近づき始めた。
 だが、まだ終わっていない。
 まだゼットンに挑む存在は居たのだ。

「これ以上、此処を壊させはしない!」

 ウルトラマンに代わりなのはがゼットンに挑む。ゼットンの背後に向かいアクセルシューターを何発も放った。
 桜色の魔弾が弧を描き幾度も放たれていく。
 だが、やはりそれもゼットンの分厚い結界の前に無残に防がれてしまう。只爆煙が広がるだけでゼットンには蚊ほども効果がない。
 こんなのを幾らチマチマ撃ったってこちらが消耗するだけだ。

「だったら、これで!」

 デバイスの穂先を向けて魔力を収束させる。ゼットンは背後に現れた邪魔者に気づいたのか振り返る。
 しかし、その時には既に魔力の収束は終わっていた。
 これで勝負に出る。
 これが今のなのはの最大の武器だった。
 逆に、これを防がれたらもう打つ手がない。

「ディバインバスタァァァ!!」

 なのはにとって最大の魔力砲を放った。
 しかしそれもゼットンは難なく吸収してしまった。
 此処だ!
 ウルトラマンはこれで倒されたのだ。ならばあの時の、擬似ジュエルシードと同じ事をすれば良い。
 吸収するにしたって限度がある。
 風船も膨らませ過ぎればパンクする。
 その要領で行くしか手はない。

「い、一発で駄目なら何発でも!」
【危険です! あれを何度も放てばマスターの魔力が尽きてしまいます】
「それでも良い! ハヤタさんを殺したアイツを…私は絶対に許せない! だから…」

 叫び、ニ発目を放った。
 それもやはり同じように吸収される。
 今度は三発目。
 やはり同じだった。
 ゼットンは難なく吸収していく。
 あのディバインバスターを三発も放ったのにそれを全て吸収してしまったのだ。正に驚きであった。

「ま、まだまだぁ……」

 四発目を放とうとした時、ガクリとなのはは膝が折れた。

「そ、そんな……な、何で?」
【魔力限界です。これ以上の使用はマスターの生命維持に関わってきます!】

 魔力に限界が来たのだ。
 レイジングハートから冷たい印象も受け取れる死刑宣告にも似た宣言がなされた。
 魔力切れ。
 これのせいで体の力まで奪われてしまったのだ。今のなのはには二本の足で立ち上がる力さえない。ディバインバスターは確かに威力は強力だがその分魔力の消耗が激しい代物なのだ。
 故に連発するのは最悪命の関わる。

【前方の敵から高威力の魔力反応、来ます!】
「あっ!」

 其処へ今まで吸収した魔力砲をカウンターの如く打ち返してきた。
 全く容赦なく、情けも手加減もなしにそれを放ってきたのだ。

「くっ、レ、レイジングハート!!!」
【プロテクション!】

 咄嗟にレイジングハートがプロテクションを掛ける。
 しかし流石に三発分のディバインバスターに相当するエネルギーだったのだ。
 
「きゃああああぁぁぁぁぁ」

 瞬く間にプロテクションは破壊され、その光になのはは飲み込まれた。
 閃光の放つ轟音に彼女の悲鳴は掻き消された。
 閃光が止んだ時、其処にはボロボロになったなのはが倒れていた。
 纏っていた白いバリアジャケットは所々が裂けており、彼女自身体に生傷が見えていた。
 既に戦える力など残っていない。
 魔力も底を尽き決め手だったディバインバスターも難なく返されてしまったのだ。

「う…ぐぅ…」
【マスター、バリアジャケットの耐久度が危険域です。すぐに撤退して下さい】
「い、嫌だ…ハヤタさんや皆がやられちゃったのに、私だけ逃げたくない!」

 デバイスを杖にしてなのはは再び立ち上がる。
 其処へゼットンがトドメを刺そうと頭部から火球を放とうとする。今のなのはに動く力など無いに等しい。
 それに魔力も既に限界値な上にバリアジャケットも既に服同然の能力しかない。
 今あの火球を食らえば間違いなく死ぬ。もう手段はなかった。

(嫌だ…負けたくない! あいつにだけは…絶対に勝ちたい! 今此処で私が負けたら、誰がアイツを倒すの! 嫌だ、負けたくない! 負けたくないぃぃぃ!)

 レイジングハートを握り締めて強く祈る。
 その時、レイジングハートの中にから声が聞こえてきた。
 聞きなれない声だった。
 それも耳にではなく、なのはの脳裏に直接信号の様に語りかけてきた。

【ただ一つだけ、あの怪獣を倒す方法はある。だが、それを使えば君は…】
(私はどうなっても構いません! あの怪獣を倒したい! だから…)
【……分かった。今君にその力を託す】

 レイジングハートに温かな光が集まる。それを感じ取ったなのはは見た。レイジングハートの形が変わっている事に。
 以前の丸みを帯びたフォルムから一変して槍にも似たフォルムとなっている。
 その穂先に今まで以上の魔力が収束しているのが分かる。
 だが、それよりも早くゼットンの火球が発射態勢に入った。寸分の差で間に合わない。
 その時、ゼットンの側頭部を細い光線が命中した。

「撃て! 我々も加勢するんだ!」

 見ると其処には科学特捜隊のメンバーが皆居た。どうやら彼等は無事のようだ。
 その彼等が放った攻撃が良い陽動となったのだろう、ゼットンが火球のチャージを中断してしまった。
 今が好機だ。
 チャージは終わっている。
 収束も完了している。
 何時でも撃てる。
 後は、引き金を引くだけだ。

「ハヤタさん、見てて下さい」

 ギュッと唇を噛み、なのはは隣で横たわるウルトラマンを見た。脳裏に蘇ってくるのはウルトラマン、そしてハヤタとの出会いと激闘の日々。
 様々な思い出がなのはの脳裏を過ぎった。それを見たなのはの目から一筋の涙が零れ落ちる。
 だが、今は泣いていられない。
 泣くのはこいつを倒してからだ。
 魔力の限界に伴い体中が悲鳴を挙げている。
 恐らくこれを放ったら、最悪自分は死ぬだろう。
 だが、構うものか。
 こいつを倒せるのなら命を失うなど構いはしない。
 その思いと共に、なのはは引き金を絞った。

「スターライトォォォ、ブレイカァァァァ!」

 ゼットンに向かいそれは放たれた。ディバインバスターより遥かに強大で遥かに凄まじい魔力砲がゼットン目掛けて放たれた。
 ゼットンはそれすらも吸収しようとした。
 だが、その一撃は吸収するには余りにも強すぎたのか、数万トンもの巨体を軽々と宙へと持ち上げていく。

「キャップ! か、怪獣が宙に浮かんでいきます!」
「凄まじい力だ。彼女にあんな力があったなんて…」

 皆が息を呑む。そして、遥か上空でゼットンは粉々に砕け散った。脅威は去った。
 だが、それに対しての代償は余りにも大きすぎた。

「や、やった……私……勝った……ん……」

 言葉を言い終わる前になのははその場に倒れてしまった。多大な魔力の消費が彼女の体に負担となって押し寄せてきたのだ。
 加えて魔力反射によるダメージも大きい。最悪のケースも想定されている。
 ウルトラマンは力尽き倒れ、なのはもまた、多大なる魔力の消費とダメージの為その場に倒れ動かなくなってしまった。今立っているのは科学特捜隊のメンバーだけだ。

「セブンは捕らえられ、ウルトラマンは倒れた…これから先、我々に待っているのは破滅だけなのか?」

 光の巨人の死は誰もが絶望していた。
 その時、遥か空から赤い球が舞い降りてきた。それはあの時初めてウルトラマンが地球に降り立った時のそれに良く似ていた。
 その赤い球はウルトラマンの真上で止まると、徐々にウルトラマンを光の球の中へと誘っていった。
 その光景を誰もが息を呑み見つめるだけであった。
 嫌、見る事しか出来なかったと言う方がこの場合は正しいだろう。




     ***




【ウルトラマン、目が覚めたか?】

 修復されたカラータイマーのお陰で目を覚ましたウルトラマン。其処には別のウルトラマンの姿があった。姿形はウルトラマンに良く似ている。
 だが、カラータイマーの回りに銀色の丸いボタンが張られておりその体つきも何処か逞しく見える。

【ゾ、ゾフィー…】
【ウルトラマン、君は幾多の戦いで深い傷を負っている。光の国へ帰るんだ】
【それは出来ない。私の体には一人の地球人と共にある。今私が帰れば彼は死んでしまう】

 ウルトラマンの中にはハヤタが居る。
 今ここでウルトラマンが帰ればハヤタは死んでしまう事になる。それはウルトラマンにとって望むべき事ではなかった。
 元はと言えば自分が彼を殺したにも等しい。
 それなのに我が身可愛さに彼を見殺しになど出来ない。

【君は充分地球の為に貢献した。その青年もきっと許してくれる】
【それでも私は帰れない。この美しい星は幾多の危機に晒されている。今私が帰ればこの星はどうなる?】
【ウルトラマン、何時までも我々光の巨人がこの星に居ては駄目だ。この美しい星はこの星の人類の手によって守られるべきものなのだ。我々が何時までも介入し続ければ人類はきっと自ら努力し立ち向かう心をなくしてしまう】

 ゾフィーの言う事も一理あった。
 このままウルトラマンが人類を守り続ければきっと人類はウルトラマンに頼るようになり自ら戦う術を失ってしまうだろう。
 それでは本当に美しい星がなくなってしまうことになる。

「ウルトラマン、僕の事は良い。君は光の国へ帰るんだ」
【ハヤタ…君は命が惜しくないのか?】
「僕は既に死んだ人間だ。今更命は惜しくない。それに彼の言う通り君は地球の為に充分に貢献してくれた。もう後は君自身の事を考えるべきだ」

 ハヤタがウルトラマンに語り掛ける。
 しかし、それでもウルトラマンは首を縦に振りはしなかった。ハヤタを失いたくなかったのだ。
 彼を慕う者達は大勢居る。そんな彼を失う訳にはいかないのだ。

(ゾフィー、彼は私と同じだ。ならば…)
【……分かった】

 ゾフィーの中に居る何者かが彼と話をしていた。それを聞いたゾフィーが頷き、再びウルトラマンの方を向く。
 だが、その彼の言葉はウルトラマンとハヤタには届かない。
 彼がゾフィーにだけ語りかけたのだ。彼が何者なのか、それは今此処では分からない。いずれ分かる事だが、今は分からないのだ。

【ウルトラマン、君の気持ちは分かった。ならば、彼と共に光の国へ帰るならばどうだ?】
【ゾフィー、だがそれでは…】
【ハヤタが死ぬ事はない、君と彼は一心同体となり、共に戦えるようになる。その為には一度光の国へ帰り傷を癒すのだ。彼の言う通り、君が死んでしまえば元も子もない。今はそうするべきなのだ】
【……分かった。だが、私はまたこの星に戻って来る。この美しい星を守る為に……】

 ウルトラマンのその言葉にゾフィーは静かに頷いた。
 そして、眩い光と共にウルトラマンとハヤタはゾフィーと共に遥か大宇宙の彼方へと消え去って行った。
 再び地球に戻って来る約束と共に。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告
ウルトラマンは倒れ、セブンは捕らえられ、そして二つのジュエルシードは砕かれてしまった。
残された手段は各地に散らばったジュエルシードを集めるしかない。
だが、光の巨人が居なくなった報せを聞き恐竜帝国が全戦力を投入して攻撃に打って出た。
それに挑むゲッターロボとマジンガーZ。
だが、その力の差は圧倒的であった。

次回「激突!恐竜帝国」お楽しみに 
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