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西遊記

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第十二回 玄奘西方に旅立つのことその四

「菩薩殿ではないか」
「先日宮廷に来られたという」
「玄奘殿に二つの宝をと出された」
「あの方ですか」
「そうなのですか」
「間違いない」 
 廷臣の中でその場にいなかった人達にお話します。
「あの僧侶殿は」
「言われると確かに違いますな」
「外見は人のものですが」
「気が違います」
「後光が見えます」
「だからここは動かぬ様」
 皇帝は廷臣の人達に命じました。
「よいな」
「わかりました」
「御仏の行われることですから」
「我等は動きませぬ」
「決して」
 廷臣の人達も頷いてでした。
 動きませんでした、そして菩薩は僧の姿のまま玄奘に問います。
「大乗を学ばれるお考えはありますか」
「あります」
 玄奘は淀みなく答えました。
「むしろ大乗、世の全てを救うことがです」
「そのことがですか」
「拙僧の願いです」
 このことも言いました。
「そのことを常にです」
「お考えですか」
「そして願っています」
 そうだというのです。
「常に」
「では学べる場所は何処にありますか」
「残念ですが本朝にありません」
 そうだというのです。
「天竺にあります」
「あの国ですね」
「釈尊も御仏の教えも生まれた」
 そうしたというのです。
「あの地にです」
「ありますね」
「はい」
 そうだというのです。
「ですからあちらに行きたいとです」
「お考えですか」
「願っています」
 考えるのではなくというのだ。
「それも強く」
「ではです」
 菩薩は玄奘のその返事を受けて言いました。
「天竺の大雷音寺に行かれて下さい」
「そのお寺にですか」
「そこには如来がおわしまして」
 そうであってというのです。
「大乗の仏典三蔵があります」
「まさにその大乗の」
「はい、それがありまして」
 そうであってというのです。
「それこそが亡者を済度し」
「そうしてですか」
「昇天させられます」
「そうなのですか」
「ですから是非です」
 玄奘にさらに言います。
「天竺にです」
「行かれるべきですね」
「そしてそれがです」
「世を救うことになりますね」
「必ず」
「わかりました、しかしそこまで教えて頂けるとは」
 玄奘は感服して言いました。 
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