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離婚しない理由がない

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第二章

「もうな」
「全くだな、碌なことにならないな」
「絶対にな」
 友人に眉を顰めさせて言った、そしてだった。
 田所は友人から森井の話をさらに聞いた、聞けば聞く程酷いと思い離婚されない筈がないと言うのだった。
 そして数年後友人は田所に同窓会の場で言った。
「森井離婚したらしいぞ」
「奥さん逃げたか」
「遂にな」 
 冷めた声で話した。
「三行半突き付けてな」
「そうならない筈がないな」
「けれどな」
 それでもというのだ。
「あいつ全然わかっていないらしいぞ」
「何で奥さん逃げたかか」
「全くな、離婚する時自分が買ったもの全部持って行ったそうだが」
 その奥さんがというのだ。
「もう全部な」
「家のものはか」
「そうだったらしいな」
「やっぱりそうか」
「それで森井何て言ってるかって言うとな」
「今までずっと養ってくれた奥さんにか」
「爪切りまで持って行っただよ」
 そう言ったというのだ。
「これがな、それでな」
「逃げられたかわかってないんだな」
「全くな」
「聞いただけでわかるよ」
 田所は憮然として言った。
「俺はな」
「俺もだ、すぐにわかるな」
「一目瞭然だろ」 
 それこそというのだ。
「聞けばな」
「そうだよな」
「ああ、馬鹿なんだなあいつ」
 友人に心から言った。
「それもどうしようもないまでの」
「実際親戚の間じゃ馬鹿で有名らしいな」
「そりゃそうだな」
 田所は冷めた目で述べた。
「話を聞いててな」
「馬鹿にしか思えないか」
「それかアホだな」
「どっちでも言えるな」
「それで離婚されて食わせてくれる人いなくなったんだな」
 田所はこのことを確認した。
「そうなったんだな」
「ああ、遂にな」
「そんな奴働かないだろ」
 言うまでもないという感じで述べた。
「そうなってもな」
「そうだな」 
 友人も確信を以て応えた。
「反省しないで考えもあらためないでな」
「だからな」
「仕事に就かないでそのまま暮らしてな」
「親戚に金せびってな」
「そのうちそれでもやっていけなくてな」
「終わるさ」
 同窓会の場でこんな話をした、そして後日田所は森井が住んでいた団地の家賃を払えなくなり追い出されて転がり込んだ場所でも働かず尊大で悪口ばかり言っていられなくなり消えて以後行方不明だと聞いて思った、そんな奴はそうなると。


離婚しない理由がない   完


                  2025・7・18 
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