離婚しない理由がない
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第一章
離婚しない理由がない
森井慶穂の話を聞いてだ、かつて彼のクラスメイトで今はサラリーマンをしている田所三治小さな丸い目で長方形の顔に黒く短い髪の毛を持つやや小柄で痩せた彼は呆れて言った。
「あいつそんなことになってるのか」
「酷いだろ」
「酷過ぎるだろ」
彼のことを話した友人に居酒屋で一緒に飲みつつ言った。
「幾ら何でもな」
「そうだよな」
友人も言うことだった。
「働かないでな」
「家事もまともにしないでか」
「誰が何をしてもな」
「感謝しなくてか」
「親戚の家に上がり込んでな」
そうしてというのだ。
「財布落としたとか嘘吐いて金貰ってな」
「大飯かっくらってか」
「風呂も入って一泊してな」
「人の部屋に勝手に入って本漁ってか」
「それも乱暴にな、それで朝もな」
この時もというのだ。
「大飯喰らうんだ」
「お邪魔しますも言わないでご馳走になっても有り難うも言わないでか」
「ずっとふんぞり返っているらしいな」
「人様の家でか」
「親戚でもな、それでそんな生活を注意されてもな」
「逆キレか」
「掴みかかったりどついたろかとか言うんだよ」
そうだというのだ。
「自分の叔父さんで脳梗塞のリハビリ中の人でもな」
「普通しないだろ、そんなこと」
「そうだな、しかも自分は何もしないし出来ないんだ」
そうだというのだ。
「この世で一番偉いと思っていてな」
「何処が偉いんだ」
田所は心から疑問を抱いて言った。
「一体」
「そう思うな、お世話になったところや人の悪口も言うしな」
「注意されたからか」
「それでな」
「悪口言うんだな」
「それもどうでもいいことをな」
「中学で一緒だったけれどな」
田所はビールを飲みつつ首を捻って言った。
「そんなな」
「酷くなかったな」
「ああ、勉強しなくて成績は悪かったけれどな」
それでもというのだ。
「特にな」
「というかお前森井とあまり付き合いなかったな」
「そういえばそうか」
田所は言われて頷いた。
「俺はな」
「元々家で甘やかされてな」
「そんな奴だったか」
「それで四十になってもな」
「そんな風か」
「奥さんに食わせてもらってるらしいな」
「そのうち逃げられるだろ」
田所は達観した様に言い切った。
「どうせな」
「そうなると思うか」
「ならない筈ないだろ」
それこそというのだ。
「そんなのだとな」
「そうだな」
友人も否定せず応えた。
「そんな風だとな」
「ああ、奥さんも愛想尽かしてな」
そうしてというのだ。
「逃げるさ」
「離婚だな」
「目に見えてるよ」
そうなる未来がというのだ。
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