西遊記
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第十回 皇帝冥府から戻るのことその四
「丹薬を飲んで」
「飲めば仙人になりな」
「不老長寿を得られると聞いていますが」
「それは間違っておるのだ」
龍王は注意する様にお話しました。
「正しい丹薬なら確かにだ」
「不老長寿を得られ」
「仙人になれるがな」
正しい丹薬を飲めばというのだ。
「飲み続ければな、しかしな」
「間違った丹薬を飲みますと」
「それは毒であってな」
それでというのです。
「飲むと不老長寿になるどころかな」
「命を落とす」
「そうなる、皇帝も飲んでおるな」
「神仙のことにも興味がおありで」
「そなたも元々はな」
「道士でした」
魏徴自身もというのです。
「それで丹薬のこともです」
「知っておるな」
「世には本物と紛いものがあり」
「丹薬でもそれは同じでな」
「そうした丹薬を飲みますと」
「死ぬ、それでだ」
そうであるからだというのです。
「そなたが起きるとな」
「万歳老が危ういですか」
「だから起きればすぐにな」
まさにというのです。
「動くのだ、いいな」
「有り難きお言葉、ではです」
魏徴は書状を両手で恭しく受け取って応えました。
「是非です」
「皇帝を救うな」
「そうさせて頂きます」
「その様にな、それでだ」
「はい、万歳老が助かりますと」
「丹薬を変えるのだ」
「そうすべきですね」
「それを作っている道士に話してな」
「そうします」
「別の丹薬を出すのだ」
皇帝にというのです。
「よいな」
「それでは」
魏徴もそれではと応えました。
「その様に」
「それを守ればな」
「万歳老はですね」
「長生き出来る」
「かたじけないお言葉です」
「何、これはわしの為に骨を折ってくれたし」
龍王は一礼して言う魏徴に笑顔で返しました。
「それに唐の皇帝はまだ必要だ」
「本朝に」
「その統治実に素晴らしいとな」
その様にというのです。
「神界でも言われていてな」
「それで、ですか」
「万歳老もそうせよと言われた」
天帝もというのです。
「だからだ」
「天帝陛下のご判断なので」
「わしに礼を言うならな」
「天帝陛下にですか」
「言うのだ、よいな」
「ではそうさせて頂きます」
「うむ、しかしわしもこの度は反省した」
龍王は今度はしみじみとした口調で言いました。
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