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西遊記

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第十回 皇帝冥府から戻るのことその二

「もう叱責を加えたらな」
「すぐにですか」
「降らせる様に言う」
 雨をというのです。
「それでよしとする」
「そうですか」
「その様にな」
「そういえば」
 ここで宮中の窓の外を見ますと。
 雨が降っています、魏徴はそれを見て言いました。
「この雨は」
「少しだな」
「その減らした分でしょうか」
「そうやもな。これでだ」
「このお話は終わりですか」
「うむ、では打とう」
「それでは」
 魏徴も頷きます、そうしてです。
 囲碁を打っていきます、ですが。
 正午の時が告げられた時に魏徴は突如その場で頭を落としてしまいました、皇帝の傍にいる人達はそれを見て言いました。
「これは一体」
「魏徴殿はどうされたのでしょうか」
「一体」
「急に寝てしまった」
 皇帝が答えました。
「どうもな」
「急にですか」
「魏徴殿が」
「居眠りですか」
「常に天下のことを頭に入れてだ」
 そうしてというのです。
「苦労している」
「万歳老にも謹言され」
「そうしてですね」
「そのうえで」
「そうなるとな」
 それならというのです。
「心労も多い、ではだ」
「ここはですね」
「眠らせてやるのだ」
 こう周りの人達に言いました。
「よいな」
「わかりました、それでは」
「その様に」
「そっとしましょう」
 周りの人達も頷きました、こうして魏徴は眠るに任せられましたが彼は夢の中で龍王に対して言われました。
「やはり悪いことは出来ぬな」
「天帝に叱責されましたか」
「あの様なことはするなとな」
 その様にというのです。
「言われ特に北海龍王様にな」
「あの方にですか」
「うむ」
 そうだというのです。
「厳しくな、あの方は普段は穏やかな方だが」
「怒られるとですか」
「四海龍王の中で最も怖い」
「その北海龍王様からのご叱責もですか」
「受けてしまったわ」
「申し訳ありませぬ」
 魏徴は龍王に申し訳ないというお顔で頭を下げました。
「お話する相手を間違えました」
「いや、それを言うとわしもだ」 
 龍王も反省するお顔で応えました。
「悪いことをしたから素直にな」
「天帝と北海龍王様からですか」
「ご叱責を受けるべきであったわ」
「そう言われますか」
「考えてみればそなたは人界の者だ」 
 即ち人だというのです。 
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