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蒼と紅の雷霆

作者:setuna
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雷鎖:第三話 治龍局

 
前書き
原作と違ってソウに潰されているのでその張本人が本社にいる現状って怖いどころの騒ぎじゃないよな 

 
取り敢えず目を覚ましたパンテーラをソウが抱き上げ、取り敢えず話が出来る場所にまで移動した。

最初パンテーラがきりんを見た時に暴龍だった頃の影響か威嚇をしたが、途中で何故威嚇をしたのか不思議そうにしていた。

取り敢えずきりんの話を聞いて皇神の所業に呆れていたのは言うまでもない。

「何と言いますか…相変わらずのようですね皇神は…やはり確実に仕留めるべきでしたか」

「一応皇神はこの国の生活を支えてるから止めてあげて。パンテーラ、あんたが暴龍となったのは恐らく暴龍に覚醒したソウの近くにいたからだと思う。ソウの他の能力者を暴龍に変えてしまう龍放射を間近で浴びてたからあんたの暴龍化も加速した」

「確かに、彼の死後にソウの第七波動が異常な上昇を見せてからも傍にいましたし、私自身も時折意識が霞むことがありました…まさかそのようなことになるとは…」

「恐らく、俺が暴龍となる決定的な瞬間は弟が死んだことにより発生したABスピリットを取り込んだからだろう。他にも電子の謡精による支援による強化と何者かのABスピリットを取り込んだのも遠因になっていそうだが」

弟のGVが寿命で死に、その際に発生したGVの魂と言えるABスピリットを取り込んで紅き雷霆が強化されてしまったのが最後のきっかけとなったのだろう。

「正直迷惑をかけないように人里を離れてひっそりと暮らしてたあんた達を引っ張り出すことになったのは悪いとは思ってるんだけど…暴龍と戦えるレベルの能力者となるとあんた達と一族の人しかいないの。私が所属する“裏八雲”の占術師は1つの予言をした…まあ、ついこの間なんだけど。暴龍と、暴龍を生み出し統べる“王”が現れるってね」

「暴龍を生み出すきっかけを作ったのは厳密には皇神の馬鹿共だがな。やはり跡形もなく消し飛ばしておくべきだったか」

「だから止めて、皇神がなくなると裏八雲(うち)もヤバいから…一族の人がくれた情報のおかげであんたの位置が分かって良かったよ」

「その“一族”とは何だ?」

先程から聞く“一族”とは何なのか?

ソウが尋ねると予想外の正体を聞くことになる。

「あんた達の娘、アリスさんとその血縁の人達だよ。現皇神の実質的な支配者で私達も結構良くしてもらってる。と言っても多忙過ぎてあんたが利用されてることに気付くのに大分遅れちゃったようだけど怒らないであげてよ」

「あの子が…それにしても皇神の隠蔽体質も相変わらずのようですね。」

「再建した時は良かったんだけど、やっぱり大きくなるに連れて体質も戻ってきたみたいでね。正直一族さん達や裏八雲もかなり頭を悩ませてる…取り敢えず、2人の暴龍の力は私の第七波動で封じてるから日常生活を送るには問題ないよ…」

「ふむ、助かる。娘も戦っているなら親である俺達も力を貸そう…ところで小娘、この犬と猫のような姿は何だ?」

「とても愛らしい姿ですが、何故猫なのです?」

「…私にも分からないよ。あそこまで進行した暴龍を見たのも、封印したのはあんた達夫婦が初めてだし。ふふ、でも2人共似合ってるよ、可愛い」

ソウは紅と黒を基調にした大型犬、パンテーラは桃色と白を基調とした猫である。

「…恐らく、人型の状態でも危険な力だからだろう。だからより力を抑えられる小さい存在に変化させたか」

大型の龍へと変じる前でも今までとは比較にならない出力だったのでより暴走を抑えるための最適な姿がこれなのだろう。

「しかし、これはこれで便利だ。人間の姿では怪しまれても犬の姿ならば怪しまれる心配はない。見た目に油断した敵の隙を突いて相手を噛み殺すことも容易に出来る。ミッションには好都合だ、感謝するぞ小娘」

「…言ってることが可愛くない…取り敢えず一族の人が上層部を脅して私達を皇神の社員ってことにしてくれたからさ。後でアリスさんにも会いに行ってあげなよ?」

「そうか…お前から見てアリスはどうなんだ?」

「アリスさん?そうだね、綺麗で優しい…けど可愛い物に目がなくて怒らせると滅茶苦茶怖いかな?でも、あの人が皇神崩壊後にテログループと戦ってくれたから今のこの国がある…あんた達の血筋ってことで皇神では悪く言う人がいるけど、私達からすれば英雄…かな?」

どうやら娘は一人立ちした後も立派に自分のやりたいことを貫き通したようだ。

誇らしいと思うのと同時に随分と無理をしたのだなと溜め息を吐いた。

「それにしても、暴龍対策チーム…“治龍局”ですか。今は3人だけのチームでどこまでやれますかね?」

治龍局結成から数週間の間。

「人員が足りん」

ソウの一言にきりんも渋面になる。

何をするにも人手が圧倒的に足りないのである。

「…仕方ありません。人員を増やしましょう」

「でもどうやって?」

ただでさえ皇神崩壊を巻き起こした張本人のソウがいる部署に近寄る人物などアリス達一族を除いて仕事上、仕方なくなところが多い。

一族も皇神の上層部や、やらかした連中の締め上げに忙しいらしく、これ以上のサポートは望めない。

「私とソウ、そしてあなたの第七波動を使えば可能だと思います」

「「?」」

そして数日後。

「それで僕を呼び出したの?」

ソウの紅き雷霆によるイメージとソウの力の一部となったABスピリットをパンテーラの夢幻鏡ときりんの鎖環によって固定化して出来たのが目の前のGV(全盛期時代)なのだ。

正直、このGVからすれば老衰で死んだかと思えば若い姿で目を覚ますことになって困惑している。

しかも目の前の兄と義姉は犬と猫の姿だ。

一体どんなマジックを使ったら人間が犬と猫になるのだ。

「GV、お前にはこの小娘とチームを組んで欲しい」

「きりんとソウでは実力差がありすぎるのでチームにならないのですよ」

「この子と…?」

いきなり復活させられて、犬と猫の兄と義姉にいきなりきりんとチームを組んで欲しいと言われたGVの疑問は当然だときりんは思う。

「…取り敢えず、弟さんに説明してあげなよ。いきなり復活させられた挙げ句、私と組めって言われても困るでしょ」

きりんの常識的な発言にGVは安堵した。

「(この人、お兄さんとお義姉さんに振り回されてきたんだろうなぁ…)」

悪い人ではないが発言が時々怖いし、天然なとこがあるしでこの2人と老衰まで家族をやれたGVは尊敬に値する。

経緯を話すとGVの表情が渋い物になる。

確か、皇神崩壊のきっかけはソウの弟夫婦の妻子を誘拐したことで皇神が彼の逆鱗に触れたことだ。

しかし、“一族”の話を聞いて深い溜め息を吐くと頷いた。

「……あの子が頑張っているなら…僕も何かしないといけない。OK、力を貸すよ…」

「良いの?正直あんたが力を貸してくれるのは有り難いけど」

「皇神に対して思うことはたくさんある。でもあの子が過去に縛られずに頑張っているなら僕も何かしないと…これでも人の親だからね」

生前から皇神から受けた仕打ちのこと、特にオウカ達に手を上げたことは未だに許せることではないが、あの時の皇神の人間はとうに死んでしまっている。

ならば復活してしまった今は未来のために戦おう。

「ありがと、天下の蒼き雷霆も力を貸してくれるなんて心強いよ」

「本音を言えば君のような子供が戦うのは個人的にあまり好ましくないんだけどね」

親と言う立場となったGVからすればきりんのような少女が戦場に出るのは好ましくない。

しかし、かつてテロリストとして少年時代から戦場に出ていた自分が言っても説得力が皆無なのも理解している。

「僕はガンヴォルト…長いようなら兄さんが言っていたようにGVで良いよ」

「うん、分かった。よろしくね」

「GVは仲間になってくれましたし…後は可能なら彼女ですね」

後にソウ達による第七波動共同作業によって誕生したイマージュパルスによってかつて自分達の家族だったシアンの第七波動・電子の謡精モルフォも再現することが出来た。

しかし、電子の謡精の直接の支援を何度も受けたことによるごく僅かな残滓からの再現だったのでシアンのこともオリジナルのモルフォのことも何も知らない真っ白な存在だった。

ソウもパンテーラもGVもシアンはこの場にいないのだと改めて感じた。

力もオリジナルと比べて劣り、かつてのエデンとの戦いで力を奪われたモルフォと同程度の力だが、電子の謡精の精神感応力によって暴龍の発生も分かる上に万が一きりんが倒れた際の保険にもなる。

いくらソウが暴走しない暴龍でもパンテーラはそうではないのだから。

それから治龍局としての活動にも慣れてきた時、モルフォが話しかけてきた。

『ねえGV、ソウ。皇神には慣れた?』

「うん、最初はどうなるかと思ったけど…慣れるもんだね…」

「それにしても、俺が通路を歩く度に皇神の馬鹿共が道を開けるのは何故だ?」

「いや、皇神本社を消し飛ばした張本人のあんたが本社を堂々と闊歩してればそうなるでしょ…」

一部では“悪魔”だの“破壊神”とさえ恐れられており、それが現代にて蘇ったのだからそこらの社員からすれば恐怖の対象だろう。

GVもまさかこの時代でモーゼの十戒を見ることになるとは思わなかった。

「失礼します」

部署内に入ってきたのはGVにとって大切な女性の面影を残す女性であった。

「あ…サクラ…」

「お元気そうで何よりです…まさかこんな形とは言え、お父さん達にまた会えるなんて…」

きりんは見た目があまりにも若すぎる親子に微妙な顔を浮かべる。

アリスとサクラは運良く父親の第七波動を遺伝し、適合したのか紅き雷霆と蒼き雷霆(流石に実戦で使える出力ではない)の第七波動能力者。

第七波動の力で老化を止めており、かなりの高齢であるにも関わらず今のGVと見た目の年齢が近い。

「雷撃能力者って不老になれるわけ?」

「不可能ではないな、肉体を電子化して上手く調整すれば不老も可能だ」

「うわあ…強い上に不老まで可能とか…引いて良い?」

「勝手に引いてろ」

きりんとソウの会話を尻目にGVは娘との久しぶりの会話を楽しんだ。

GVもその気になれば延命も可能だったが、オウカと共に歳を取りたいと思っていたのでGVの寿命は人並みのそれだった。

「何か困ったことがあったら教えて欲しい。体に気を付けるんだよ、それからアリスにもよろしく」

「はい、ではまた」

サクラは部署から去っていく。

GVは娘との久しぶりの会話によって心に温かな物が満ちていくのを感じた。

「良かったな」

「うん、こんな形だけど…あの子とまた話せたのは嬉しいよ」

「ふふ…ここにシアンやオウカもいれば良かったのですが…」

ここにシアンとオウカがいればあの時、共に暮らしていた時の家族が揃ったのに。

イマージュパルスでは完璧な再現は不可能であるし、夢幻鏡による虚像(コピー)は本人ではない。

「シアン…って、前に言ってた電子の謡精の?歌姫プロジェクトとかプロジェクト・ガンヴォルト、プロジェクト・ソウとか…パンテーラから昔の皇神の極秘情報を渡された時、頭抱えそうになったんだけど…」

旧皇神の闇に触れ、しかも非人道的な実験の数々の情報。

皇神崩壊の際に流された情報は一端でしかなかったと言うわけだ。

昔は現在よりも能力者蔑視が激しいのもあり、当事者であるソウ達も理不尽な経験をしている。

「そうですか、でもあなたは運が良いです。私達の時代に生まれていたら当時の皇神はあなたを何としてでも手に入れ、あなたを機械に組み込んで能力者の制御装置として扱われていたでしょうからね」

現在でも能力者と無能力者のいざこざがないわけではないが、かなり沈静化している。

自分は良いタイミングで生まれてきたと改めて感じたきりんであった。 
 

 
後書き
オリキャラ:サクラ

第七波動:蒼き雷霆

この作品のGVとオウカの娘。
容姿は基本的にオウカだが、目の色は父親譲り。
第七波動は蒼き雷霆だが、戦闘で使える出力ではないため、傷の治療が主な使用。

SPスキルはリヴァイヴヴォルト 
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