金木犀の許嫁
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第七十二話 また来る時までその四
「全くです」
「悪くないですね」
「人を蹴落としたり騙したりしないなら」
そうであるならというのだ。
「別にです」
「悪くなくて」
「はい」
そうであってというのだ。
「別にです」
「そうですね」
「ですがやはり」
どうしてもというのだった。
「私達のご先祖様はです」
「世渡り上手ではなかったですね」
「よくも悪くも」
「そうでしたね」
「ですが生き延びて」
そうしてというのだ。
「薩摩まで逃れられました」
「歴史では死んだとなっていて」
佐京が話した。
「今もそう言われていますけれど」
「実は生き延びていて」
「それで、ですね」
「はい」
まさにというのだ。
「天寿を全う出来ました」
「よかったですね」
「はい」
まさにというのだ。
「何とか運はです」
「ありましたね」
「武運拙く敗れましたが」
大坂の陣ではだ。
「しかし秀頼公をお連れして逃げ延びられたので」
「よかったですね」
「そして実はです」
幸雄はさらに話した。
「伊賀でもこのことは」
「知られていましたか」
「密かに。服部家位でないとでしたが」
それでもというのだ。
「知られていました」
「実はですね」
「まあ木下家でも」
夜空は岸和田藩の藩主であり豊臣秀吉の正室であった北政所、ねねの実家であったこの家の話をした。
「言われていましたね」
「秀頼公は実は生き延びておられた」
「薩摩まで」
「一子相伝で」
代々の藩主が嫡男のみに伝えていたのだ。
「伝えられていましたね」
「そうでしたね」
「それは事実で」
幸雄は夜空にも話した。
「ご子息もです」
「引き取られて」
「分家としてです」
木下家のというのだ。
「大名にしました」
「そうでしたね」
「よかったです」
幸雄は心から言った。
「まことに」
「秀頼公もご子息も生き延びられて」
「私達のご先祖も」
「そして後藤殿も」
彼もというのだ。
「よかったです」
「そうです」
「若しです」
夜空は遠い目になって話した。
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