八条学園騒動記
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第八百六話 理解しやすくその十二
「外見や服装、動きや表情も」
「文章が上手だとわかりやすいね」
「けれど変な哲学者や思想家がね」
その何を言っているか書いているかわからない文章を書く、というのだ。マルティはそうした者達についてこれまで以上に否定的に言った。
「小説を書いても」
「わかりにくいね、場面とか」
「空母の中とか書いても」
「メカニカルとか二十世紀の大英帝国の何とか型の戦艦を思わせる緻密かつ精微なそれでいてスタイリッシュな素晴らしい芸術的とさえ言える艦内とか」
「ただ機械的な艦内って書くところをね」
それをというのだ。
「そう書くとね」
「確かにわからないね」
ベッカも言った。
「はっきり言って」
「そうだね」
「これをもっとね」
「わからなく書けるんだ」
「そうした人はね」
「変な言葉を入れて」
「何かそんな人が詩とか和歌書けるのかな」
ベッカはふと思った。
「漢詩でもね」
「言葉の数が決まっている」
「漢詩だと五字とか七字で書くよね」
「絶句とか律詩をね」
「そういう変にゴテゴテ書いて」
「文章も何が言いたいかわからない」
「そんなの書く人なんてね」
それこそというのだ。
「漢詩書けるかな、和歌だってね」
「うん、五七五七七でね」
「三十一語だけれど」
「日本語でね」
「文字数限られているけれど」
それでもというのだ。
「書けるのかな」
「そういうの書くのも文章が上手でないとね」
ローリーも言った。
「書けないね」
「そうだよね」
「うん、本当に下手な人はね」
「漢詩も和歌も書けないね」
「変な哲学書や思想書しか書けないよ」
「一見凄いこと言っていて実は中身のない」
「そうしたね」
まさにというのだ。
「空虚なものしかだよ」
「書けないんだ」
「多分論文も」
それもというのだ。
「何か色々書いていても」
「やっぱり中身のない」
「学問的な成果もない」
そうしたというのだ。
「つまらないものじゃないかな」
「そういうのしか書けないなら」
ベッカはローリーの話を聞いて眉を曇らせて言った。
「残念だね」
「そうだね」
ローリーも同意して頷いた。
「そんなのしか書けないのなら」
「残念だよね」
「凄くね」
「それで持て囃されても」
「偉大な哲学者とか思想家とか」
「教祖になれても」
それでもというのだ。
「歴史的にどう評価されるか」
「評価どころか相手にされないね」
ベッカは今度は冷たく言い切った。
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