西遊記
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第九回 易者龍王を占うのことその一
第九回 易者龍王を占うのこと
長安の外れにある杷河という川のほとりにおいてです、樵と漁師がお互いの仕事のお話をしていました。
「長安はいい街だがな」
「木は少ないっていうんだな」
「ああ、昔からな」
太った樵、張梢は痩せた漁師、李定にぼやいています。
「そうでな」
「だからあんたもだな」
「木を見付けてな」
そうしてというのです。
「切るのもだよ」
「苦労してるな」
「少なくともな」
樵はさらに言いました。
「街からちょっと行かないとな」
「森も林もなくてな」
「一々歩いて行かないといけなくて」
「苦労してるな」
「そうなんだよ」
こう言うのでした。
「わしはな」
「そう言うわしもだよ」
漁師も言ってきました。
「これがな」
「苦労してるんだな」
「ああ、この川の魚は多いが」
しかしというのです。
「大きく過ぎるのがな」
「かなりいるな」
「だからな」
それでというのです。
「網を破るんだよ」
「それも大変だな」
「ああ、だからな」
「あんたも大変だな」
「しかもな」
ここで、です。漁師はこうも言いました。
「最近雨降っていないな」
「ああ、どうもな」
「まあ長安は雨もな」
「少ないっていうな」
「それでだよ」
だからだというのです。
「川がどうも狭くなって」
「その分か」
「魚が集まってな」
「網にまとめてかかってか」
「破りかねないんだよ」
「それを言ったらこっちもな」
樵も言います。
「雨が少ないと木がな」
「枯れるか」
「枯れるところまでいかなくてもな」
それでもというのです。
「元気がなくなってな」
「切ってもか」
「質がよくなくてだよ」
「高く売れないか」
「ああ、困ったことだよ」
「早く降って欲しいな」
「せめてな」
樵は漁師に言いました。
「何時降るかわかればいいんだが」
「ああ、それならな」
漁師は樵の言葉を聞いて言いました。
「わかるぞ」
「おいおい、神仏でもないのにか」
「神仏でないけれどな」
それでもというのです。
「わかる人がいるんだよ」
「まさか今話題の玄奘様か」
樵は漁師に言いました。
「あの方か。高僧の」
「いや、その方じゃない」
漁師はそれは断りました。
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