ストロベリー味
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第一章
ストロベリー味
梅津利平はホラー漫画家である。
デビューから二十年ホラー漫画を描いている、細面で小さな明るい目に細い眉とアフロヘアを持つ一七〇位の背の痩せた男である。
彼はある日編集者の田中悟郎に原稿を渡してからこんなことを言った。
「ギャグ漫画描きたいね」
「あっ、いいですね」
田中は梅津の言葉を聞いて笑顔で応えた、丸眼鏡をかけた卵型の頭と小さな目と唇を持つ黒い短い髪の一七二程の背の細身の男である。
「やってみましょう」
「うん、けれど僕の絵柄は変わらないね」
梅津はそれはと話した。
「残念だけれど」
「そうですね、先生の絵柄は独特ですから」
田中もそれはと答えた、二人はファミレスの中で向かい合って話している、原稿を受け取りチェックをして仕事の打ち合わせと二人の夕食も兼ねていて二人共カレーを食べている。
「そのままいきましょう」
「そうするね」
「はい、作風で」
それでというのだ。
「勝負ですね」
「ギャグにするんだね」
「それも手です、それこそです
田中はカレーを食べつつ話した。
「苺ですね」
「苺?」
「はい、苺です」
こう言うのだった。
「それです」
「苺ですか」
「ストロベリー味ですよ」
「甘いギャグですね」
「タイトルにもです」
作品のというのだ。
「付ければ完璧です」
「そうなんですね」
「それでやってみませんか」
「何でもやってみることですね」
梅津は田中の話を聞いてこう返した。
「要するに」
「そういうことです」
田中もそうだと返した。
「ですからどうでしょうか」
「はい、それなら」
「先生実は明るいですし」
これまでの作風とは違ってとだ、田中は梅津の人柄の話もした。
「それでも出して苺な感じで」
「要はストロベジー味ですね」
「それでいきましょう」
「それなら」
梅津も頷いた、そして打ち合わせを重ね。
ウェブサイトでの連載となった、すると。
「絵柄そのままでか」
「物凄いギャグやってるな」
「何だよこの漫画」
「タイトルに苺ってあるぞ」
「あの人で苺かよ」
「実際甘酸っぱい恋愛ギャグもやるしな」
読者達は最初驚いた、そしてだった。
次にそのギャグに笑った、作品は忽ちのうちに話題となり。
「これまでのホラー漫画よりもです」
「人気出ていますね」
「もう話題沸騰で」
そうなっていてというのだ。
「閲覧数も多くて」
「単行本も出ましたが」
「売れています、アニメ化もです」
その話もというのだ。
「出ています」
「そうなんですね」
「ですから」
それでというのだ。
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