スイートペイン
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第一章
スイートペイン
忙しい、それは事実だった。
だがその理由を榊原遥は言わなかった。一六六程の背で整えたセミロングの髪を持っている、二重の大きな目とやや分厚い感じのピンクの唇に柔らかそうな色気のある身体を持っている。職業はOLである。
「暫く夜は会えないから」
「そこまで忙しいのかよ」
彼氏の奥保流星一七一程の背で細面でやや吊り目の細い目で黒くあちこちはねた感じの髪で痩せた彼は残念そうに応えた。
「最近は」
「ええ、だからね」
「今日も帰り遅いんだな」
「悪いけれどね」
「仕方ねえな」
市役所勤めでしかも特に忙しくない部署にいる彼は定時で帰ることが殆どだ、それで余計に残念に思ったが。
彼女のことも考えてだ、我慢した。
「じゃあな」
「ええ、またね」
「忙しくなくなったらな」
「会いましょう」
「その時にな」
流星は遥に言った。
「デートしような」
「二人でね」
「実はいいレストラン見付けたんだよ」
流星は遥に話した。
「そこに入ってな」
「そうしてなのね」
「コース楽しもうな」
「忙しくなくなったらね」
スマートフォンで話した、そしてだった。
流星は暫く一人で過ごした、命日メールやラインでやり取りしたが。
「寂しいな」
「彼女さんにお会い出来ないとですね」
「ああ」
仕事帰りに寄った居酒屋で後輩に話した。
「だからこうしてだよ」
「飲んでますね」
「やることがな」
それがというのだ。
「一人だとな」
「限られますね」
「ああ、それでな」
「飲んでますか」
「時々な、あとゲームだな」
これだというのだ。
「家に帰ってな」
「どっちかですね」
「飲むかゲームか」
一人ならというのだ。
「本当にな」
「どっちかだけで」
「寂しいぜ、まあ遥はな」
彼女のことも話した。
「浮気はしないからな」
「そこは安心していますね」
「忙しいって言ったらな」
それならというのだ。
「間違いなく仕事でな」
「忙しいですね」
「それなら仕方ないさ、俺もな」
ロックの梅酒を飲みつつ言った。
「我慢してな」
「待ちますね」
「どうしてもって時はあれだよ」
流星は後輩に笑って話した。
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