引き籠っても許すか
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第二章
岩清水は志桜里の母のパート先の前に来てだ、高らかに演説を行った。
「ここには筒地志桜里さんのお母さんがいます!」
「筒地さんの娘さんはいじめをしていました!」
「それは暴力と恐喝を伴う酷いものでした!」
「皆さんこんなことが許されるのでしょうか!」
「いじめを許していいのでしょうか!」
拡声器を使って行った、そのうえで。
車を出して選挙演説の様にだ、町中を走り回って言い回った。
「筒地志桜里さんのいじめはこんなものです!」
「こんな酷いいじめをいつも行っていました!」
「未成年で担任の教師と交際していました!」
「万引きもしていました!」
「売春を強要したり犬や猫を殺していました!」
こんなことを言った、そして。
仲間内でだ、彼は言った。
「加害者を追い詰める秘訣の一つですが」
「やっていないことも含めることですね」
「数々の事実の中に」
「悪質な犯罪を」
「作り話として入れることですね」
「はい、実際は被害者は現在大学生の男性で」
そうであってというのだ。
「売春は強要されていません」
「犬や猫も殺していません」
「その部分は作り話ですね」
「創作になりますね」
「嘘です」
岩清水はまさにと答えた。
「その部分は」
「そうですね」
「嘘です」
「しかし悪人を追い詰める為にです」
「敢えて嘘を吐いていますね」
「悪逆非道の輩を糾弾するには手段を選ぶ必要はありません」
岩清水は笑顔で言い切った。
「例え嘘を入れてもです」
「構わないですね」
「それも一切」
「左様ですね」
「はい、ですから」
そうであってというのだ。
「この嘘も喧伝してです」
「掲示板にも書き込み」
「どんどん追い詰めていきますね」
「そうしていきますね」
「そうしていきましょう」
こう言って志桜里の家の周りにビラを貼って置いてだった。
宣伝カーの様に言い回った、また彼女の家族の職場にも行って『演説』も行った。そうするとだった。
志桜里にだ、彼女の両親が怒った。
「お前のいじめが会社にも話がいってるぞ」
「お母さんのパート先にもよ!」
「会社クビになったらどうするんだ!」
「あんたのせいよ!」
「・・・・・・・・・・」
自室に引き籠っている志桜里は何も言えなかった、ベッドの上で毛布を被って座っているだけだ。薄茶色の髪の毛をボブにしていて童顔で小柄である。
その彼女にだ、両親は扉の向こう側から怒り続けた。
「いじめなんかするからよ!」
「ご近所でも話題になっているぞ!」
「売春強制したとか何よ!」
「犯罪者の娘なんていらないからな!」
「・・・・・・・・・」
志桜里は耳を塞ぐしか出来なかった、だが。
家にだ、抗議の電話が続いていた。
「死ね!」
「いじめは犯罪だ!」
「許されると思うな!」
「出て来いや!」
志桜里のスマートフォンにも始終来ていた、ブロックしても追い付かなかった。
メールでもラインでもだった、岩清水はそうしたものまで晒していたのだ。そして家の前にもだった。
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